死を恐れる。死を恐れても、しかし、死は恐れるべきことではない。恐れるべきことではないが、しかし、恐れる。未知であって未体験だからである。しかし、生まれることもそうだったのではないか。未知で未体験だったのではないか。誕生以後もずっとそうだったのではないか。その間に太陽が光を投げてこなかったことはなかったのである。太陽の光の差す中で誕生し太陽の光の差す中で死んで行くのである。これはこれまでの多くの人が辿った道である。さぶろうもまた太陽の光の差す中で死んで行くのである。死を恐れながらもその死もまた摂取されていくのである。摂取不舎されていくのである。捨てられることはないのである。生がそうであったように。