こころも食事をする。魂もする。それぞれには胃袋がある。その空腹が頻繁だ。さっき食べたばかりなのにもう腹を鳴らす。刻々にものを欲しがる。しかし、贅沢者だから何でもいいという具合には行かない。それから、どちらにも喉があるらしくて喉を嗄らして水も欲しがる。渇きを訴える。潤うと黙る。だがしばらくするとまた騒ぐ。喚く。叫ぶ。走り出す。厄介この上もない。
目もそうする。耳もそうする。鼻もそうする。皮膚もそうする。五感はみな貪欲だ。欲しがる。欲しがれば与えてやるしかない。それが頻繁だ。だからその全部の世話をするのが一苦労だ。目には美しい風景を見せてやる。耳には美しい音楽を聞かせてやる。鼻は獣だ。野蛮だ。皮膚の訴えにはどう対処するか。膨らんでいるもの、柔らかいもの、血が通って温かいものを撫でて触りたがるので、困る。めったにそんなものが手近にあるわけがない。だからいつもいつも不平を鳴らしてばかりだ。
午前中はこころの食事にエッセー集の本を読んで聞かせてやった。いい気持ちになったらしくこころはそのうち寝てしまった。魂の食事には仏典朗読をした。一応これで満足をしたらしくて大人しくなった。しばらくはもう注文が来ないかと思って高を括っていたらまただ。お呼びだ。今度は何をしてあげたらいいというのだ。