ほんとに威張らなくちゃならないのか。誰に? 誰かに。威張るとどうなるのか? 気持ちが良くなる。ストレスが発散できる。ヘンな笑いが出る。
強いといって威張る。立派なことをしたと言って威張る。正義を貫いたといって威張る。にやりとする。
お金持ちだからといって。賢いといって。これだけの業績を残した、戦果を上げたといって豪語する。わざとわざと大きな顔を作る。褒美を高く掲げて見せる。美人をしているといってつんつんする。それで鬼の顔を見せて威張る。
威力権力に従えといって威張る。行政の力を背景にして威張る。地位と肩書きを示して威張る。国の名を騙って威張る。神の名を騙って威張る。
威張るのが大好きなのだ。従わなかったら痛い目に遭うぞといって今度は脅しに掛かる。平伏させる。平伏しない者は無礼打ちになる。恐ろしい世の中だ。
でも、ほんとにそんなに一方的に威張らなくちゃ生きて行けないのか。人に莫大な犠牲を強いてしか暮らしていけないのか。そんなに弱虫なのか。威張る材料も道具も持たないでいる人はどうして暮らしたらいいんだ。
一人の内に安住していることはできないのか。どっかり不動の山をして静かに美しく寡黙にして座ってはいられないのか、神に似せて造られた尊い存在という位置づけの人間というのは。
小人つらのさぶろうが威張っている。威張ることなどなんにもないのにそれでも威張っている。毛虫を踏みつけている。烏を追い散らしている。人のそれを借りて来て威張り散らしている。威張っていなくちゃ損だ。生きていることにならないと思い違えて鼻息を荒くしている。もうすぐ一生を終わるというのにこれだ。まったく無様だ。
ツツジの根元に蝶を網にかけて捕まえた蜘蛛がいる。春の嵐が荒れるたびに蝶が揺れている。だが威張る表現の具、文字言葉がないからそんなに威張っているふうには見えない。