■1995年5月18日に安中市土地開発公社で発覚した史上空前の巨額詐欺横領事件の単独犯とされた安中市元職員の実弟が経営する運送会社である多胡運輸が所有するタンクローリーが、2008年(平成20年)8月3日の早朝、首都高5号線熊野町ジャンクションで横転炎上した事故で、原因者の多胡運輸らを相手取り、首都高が東京地裁に提訴した損害賠償請求事件の第1回口頭弁論が2011年10月7日に開催されて以降、現在もなお係争中のようですが、当会では、この裁判の情報等について、首都高の道路施設を保有している独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に対して、平成24年11月28日付で公開請求しました。その結果、同12月25日付で不開示処分とされたため、平成25年1月4日付で異議申立をしていたところ、同1月28日付で同機構から当会の異議申立てについて、内閣府の情報公開・個人情報保護審査会に諮問した旨の通知が到来しました。そして、平成25年2月12日付で同審査会から、同機構が作成した情報不開示の理由説明書が送られてきて、これに対する意見書を3月6日までに提出するように通知がありました。
そこで、本日付で次の内容の意見書を内閣府に提出しましたので報告します。
↑永田町合同庁舎の入口。セキュリティチェックが厳しく、玄関ロビーで意見書を手渡した。↑
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平成25年3月6日
〒100-0014東京都千代田区永田町1-11-39
永田町合同庁舎5階
内開府情報公開・個人情報保護審査会 御中
電話:03-5501-1739
FAX:03-3502-0165
異議申立人
〒379-0114群馬県安中市野殿980
市政をひらく安中市民の会
小 川 賢
電話:027-382-0468
FAX:037-381-0364
意 見 書
1 諮 問 庁:独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
諮問番号:平成25年(独情)諮問第3号
事 件 名:特定会社のタンクローリーに係る特定事故で首都高速道路株式会社が被った損害に関する文書の不開示決定に関する件
2 異議申立人は、平成24年11月28日付けの法人文書開示請求書により、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)に対して、以下の情報(以下「本件情報」という。)について開示請求を行ったところ、平成25年2月12日付府情個第355号で、諮問庁の理由説明書が送られてきたため、これに関して、次のとおり意見を述べる。
(1)機構による不開示決定の不当性
機構は、異議申立人による開示請求を受け、以下の理由を付して、平成24年12月25日付け総総第119号の法人文書不開示決定通知書により、不開示決定(以下「原処分」という。)を行った。この決定理由について、機構は「異議申立人が開示請求を行なった(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書は、作成・取得しておらず不存在であるため。」と理由説明書で主張するが、一般市民にとっては、それをそのまま鵜呑みにすることは困難である。なぜなら、首都高速道路株式会社(以下「首都高」という。)史上最大と言われる物損事故である特定会社のタンクローリーに係る特定事故で首都高速道路株式会社が被った損害は、首都高にとっても、施設を保有する機構にとっても、さらに、そこを通行する利用者にとっても、規模的に甚大であり、本件について、組織内で協議をした経緯があるはずであり、その結果、(1)役員会の議事録、(2)監事監査関係、(3)記者発表などの情報が存在こそすれ、不存在であるはずが無いからである。
さらに、マスコミ報道によれば、2011年7月に利用者の特定会社を相手取って首都高が計約34億5千万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した事件が存在することは明らかであるから、一般市民の通常の考えによれば、少なくとも(6)争議関係、(7)警告書等、(8)措置命令書管理簿、(9)措置命令書(控)等の情報が存在することが想定される。
しかし、(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書はいずれも機構の内部文書であるため、機構が不存在と主張すれば、それを覆せる根拠を外部にいる異議申立人として入手できる立場には無い。
機構は、(10)原因者負担督促状(控)等の法人文書に限り、「その存否情報が独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号。以下「法」という。)第5条第2号イに該当する法人に関する情報であるとして、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある不開示情報であるため、法第8条の規定に基づき、当該法人文書の存否を明らかにしないで、開示請求を拒否する」と判断した。
平成24年12月14日付の物流ウィークリーは、本件の特定事故について、次のように報じている。次に当該記事を引用する。
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出典元のURL:http://weekly-net.jp/2012/12/post-1534.html
関交協に突然賠償請求 高速道路保有・債務返済機構
【事故】2012年12月14日 13:19
08年8月、ガソリンを積んだ大型トレーラが首都高で横転、炎上するという事故が起こった。道路がトロトロに溶けるという日本の高速道路史上、未経験の大火災事故だった。4年以上経った今も、事故を起こした多胡運輸(群馬県高崎市)と首都高速道路会社との間で裁判は続いているが、多胡運輸が加入する関東交通共済協同組合(大高一夫理事長)に、今年に入って当然、荷本高速道路保有・債務返済機構から損害賠償の請求書が届いていたことが本紙の取材で分かった。関交協が支払えるのは危険特約として再共済を利用した10億円が限度。「それをはるかに上回る金額」の要求に関係者は戸惑っている。
全面復旧までに2か月以上かかり、市民の生活から首都圏経済まで大打撃を与えた事故を起こした多胡運輸は保有車両30台。直荷主の出光興産から元請けのH(異議申立人による注:ホクブトランスポート㈱のイニシャル)運送を経由して仕事をする、いわゆる下請け業者だ。事故の2か月後、関東運輸局は同社に対し車両5台を55日間使用停止とする行政処分を行った。さらに特別監査の結果、運転者に対する指導監督違反など8項目の法律違反が判明。追加の車両停止処分と運行管理者資格者証の返納命令を発出している。
当初、被害総額は復旧工事費20億円、通行止めに伴う通行料金の逸失利益25億円の計45億円と噂されたが、9か月後に首都高速が関交協に示した「損害見積もり」は、復旧費用17億円、営業損害15億6000万円の計32億6000万円だった。その頃、関交協には、東京都建設局(排水システム被害ほか)、東京ケーブルテレビジョン(配線ケーブル全焼)、隣接するマンション(外壁被害)など首都高速以外の各方面からの損害賠償が出そろったが、現在、2次被害も含めて「ほぼ片付いた」という。
未解決なのが首都高速に対する損害賠償。多胡運輸との裁判がいまだに続いており、損害賠償額は決定していない。そこに機構からの請求書。関交協は「まだ被害総額も確定せず、当事者の賠償額も決まっていないのに訳が分からない」と困惑。確かに民営化に際して採用された「上下分離方式」では「下」の部分、つまり道路施設は機構の所有物で、損害賠償を請求できる立場といえるが、裁判には現在も参加しておらず「突然、一方的に」加害者の保険会社に文書が送られてきた格好だ。
首都高速に「今後、どう対応するのか」聞いてみたが、「ノーコメント」。膠着状態が続く炎上事故の裁判が、複雑な様相を見せ始めた。(土居忠幸)
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この報道記事によれば、機構は、加害者(=原因者)である多胡運輸が加入する保険会社の関東交通共済協同組合に、2012年の早い時期に損害賠償の請求書を発出したことがうかがえる。ということは、(10)原因者負担督促状(控)等が存在することを意味している。
以上のように、開示請求に係る(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書については、機構が存在を否定しているが、少なくともその一部は存在している可能性がある。
また、機構が不存在とした「2011年7月に首都高が事故の原因者らを相手取り東京地裁に提訴した損害賠償請求事件関連情報を含む「(13)その他」情報」については、上記の報道記事によれば、機構は特定事故を巡る首都高が原告として、被告の特定会社を相手取っている訴訟には参加していないことがうかがえるが、これだけ規模の大きな重要事件であることから、首都高の上級機関である機構に、その裁判情報が不存在であるということは到底考えられない。よって、異議申立人は、(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書について「実際に機構が作成ないし受理した書類である」ので、公にすることが必要だと判断する。そして(10)の法人文書も異議申立人の主張どおり、公にされなければならない。
(2)機構の主張への反論
(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書の一部には、前述のとおり、機構が作成ないし受理していなければならない文書、あるいはその可能性が高い文書が含まれていなければならないはずであることから、異議申立人の主張には正当な理由がある。ただし、どの項目の法人文書が存在するのかは、異議申立人には調査できる権能がないことから、情報公開・個人情報保護審査会の手できちんと機構を調査してもらうしか方法がないのも事実である。
(10)の法人文書について、機構は
「道路法(昭和27年法律第180号)第58条に定める原因者負担金について機構が行った原因者への督促に係るものである。機構が行う原因者負担金の督促は、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)第40条第1項並びに第45条第3項及び第4項の規定に基づき、首都高速道路株式会社等の高速道路会社が督促した原因者負担金が指定した期限までに納付されない場合に、高速道路会社からの申諸により行うものであり、納付すべき金額が納付されないときは、機構は国税滞納処分の例により強制徴収することができるものである。 したがって、出光興産㈱、ホクブトランスポート㈱及び多胡運輸㈱(以下「本件特定会社」という。)に係る(10)の法人文書の存否を答えることは、本件特定会社が原因者負担金を滞納しているという事実の有無(以下「本件存否情報」という。)を明らかにする結果を生じさせるものである。」
と理由説明書で主張している。ちなみに道路法第58条は次のとおり原因者負担金について定めている。
~~~~~~~~~~
(原因者負担金)
第58条 道路管理者は、他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については、その必要を生じた限度において、他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担させるものとする。
~~~~~~~~~~
また、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)第40条第1項並びに第45条第3項及び第4項は次のとおり原因者負担金の督促について定めている。
~~~~~~~~~~
(道路に関する費用についての道路法の規定の適用)
第40条 会社管理高速道路に関する道路法第57条から第63条までの規定の適用については、同法第57条中「道路管理者以外の者」とあるのは「道路管理者及び当該会社以外の者」と、「同条の規定により道路管理者の承認を受けた者」とあるのは「道路整備特別措置法第8条第1項第13号の規定により第24条本文の規定による道路管理者の権限を代わつて行う独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)の承認を受けた者」と、同法第58条第1項及び第59条第3項中「道路管理者」とあるのは「会社」と、同法第58条第1項及び第60条ただし書中「を負担させる」とあるのは「について負担を求める」と、同法第59条第3項中「全部又は一部を」とあるのは「全部又は一部について」と、「負担させる」とあるのは「負担を求める」と、同法第60条本文中「第21条の規定によつて道路管理者」とあるのは「道路整備特別措置法第8条第1項第11号の規定により第21条の規定による道路管理者の権限を代わつて行う機構」と、「この法律」とあるのは「この法律及び道路整備特別措置法」と、同条ただし書中「当該他の工作物の管理者に」とあるのは「会社は、当該他の工作物の管理者に」と、同法第61条第1項中「道路管理者」とあるのは「機構」と、同条第2項中「道路管理者である地方公共団体の条例(指定区間内の国道にあつては、政令)」とあるのは「政令」と、同法第62条後段中「第38条第1項の規定により道路管理者」とあるのは「道路整備特別措置法第9条第1項第8号の規定により第38条第1項の規定による道路管理者の権限を代わつて行う会社」とする。
(負担金等の強制徴収)
第45条 道路法第73条の規定は、第10条第1項、第11条第1項、第12条第1項及び第15条第1項の規定に基づく料金並びに当該料金に係る第26条の規定に基づく割増金について準用する。この場合において、同法第73条第1項から第3項までの規定中「道路管理者」とあるのは「地方道路公社」と、同条第2項中「条例(指定区間内の国道にあつては、政令)」とあるのは「政令」と読み替えるものとする。
《追加》平16法101
2 (略)
3 会社は、第42条第4項の規定により会社の収入となる負担金(以下この条において単に「負担金」という。)を納付しない者がある場合においては、督促状を発して督促し、その者が督促状において指定した期限までに納付しないときは、機構に対し、その徴収を申請することができる。
《追加》平16法101
4 道路法第73条の規定は、前項の規定による申請に基づき機構が負担金を徴収する場合について準用する。この場合において、同条第1項から第3項までの規定中「道路管理者」とあるのは「機構」と、同条第2項中「条例(指定区間内の国道にあつては、政令)」とあるのは「政令」と読み替えるものとする。
《追加》平16法101
前述のように報道では、機構は加害者(=原因者)の多胡運輸が加入する保険会社(関東交通共済協同組合)に、2012年の早い時期に損害賠償の請求書を発出したとされており、(10)原因者負担督促状(控)等の類の法人文書が存在していることは明らかである。
また、機構は、不開示の理由として、機構にとって「その他正当な利益」が害されるおそれがあると主張し、情報公開・個人情報保護審査会の答申(平成21年度(行情)答申第535号)を挙げて、「これには国税を滞納しているか否かに係る事実が含まれるとされており、原因者負担金を滞納しているか否かに係る事実についても同様にこれに含まれるものと考える。」と主張している。
しかし、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)第40条第1項並びに第45条第3項及び第4項の規定では、首都高等が督促した原因者負担金が原因者により支払われない場合、首都高等が機構に申請して、機構が督促し、それでも支払われない場合には、「国税財滞納処分の例」により強制徴収できる、と定めているだけである。すなわちここでは、法律により国税滞納者に対する強制徴収にならって、問答無用で財産の差押さえが可能であるという法的な類似性を示しているだけであって、それを直ちに「原因者負担金を滞納しているか否かに係る事実についても同様にこれに含まれるものと考える。」と主張するのは失当である。日本国民の義務である国税支払いの滞納者と、公益的な事業とはいえ、民営化された首都高の施設に損害を与えた原因者の義務である原因者負担金支払いの滞納者とでは、その性格は全く異なるからである。
機構はまた、法第5条第2号ただし書について、異議申立人の主張である「(10)の法人文書に係る情報を“公にすることにより保護される一般利用者の生活又は財産の利益のほうが、これを公にしないことにより保護される当該法人の権利利益よりも”上回る理由として、当該情報を公にしないと“事故の損害の負担が利用料金に転嫁される蓋然性が高くなる”こと」に対して、「“当該情報の不開示”と“事故の損害の負担が利用料金に転嫁される蓋然性が高くなる”こととは無関係なので、ただし書に規定する情報には該当しない」と主張している。
異議申立人は、機構がこのような主張をすることについて、この事故で影響を受けた不特定多数の首都高利用者をはじめ、この事故の原因者である多胡運輸も絡んで1975年に発覚した群馬県安中市土地開発公社を舞台にした51億円余の巨額詐欺横領事件の影響で毎年2000万円ずつ、あと89年間も公金を金融機関に支払い続けなければならない状況に置かれている安中市民ら、一般国民の気持ちを、機構が全く勘案していないのではないかと、非常に憂慮するものである。
特定会社のタンクローリーに係る特定事故は、2008年8月3日(日)早朝発生したが、その事故の影響の甚大さにもかかわらず、事故による被害と復旧については首都高のホームページやマスコミによる報道が逐次なされた。しかし、事故の原因者である多胡運輸や、その元請であるホクブトランスポート、そして荷主である出光興産は、この事故に関する責任や謝罪を含め、記者会見を開くことも無く、一貫して沈黙を守っている。マスコミも、原因者ら特定会社に対しては、なぜか取材には消極的な姿勢をとっていた。実質的に荷主から配送業務を請け負っていたホクブトランスポートは、事故発生の3日後から、ホームページを閉鎖しており(その後一昨年の秋ごろから再開)、この事故を契機に情報発信を警戒している姿勢が、国民の批判を浴びている。※例えば次のブログ参照。
http://www.tanteifile.com/newswatch/2008/08/09_01/index.html
また、ネット上でも、当該の特定事故に関する情報操作について原因者やマスコミ対応への不信感を綴った書き込みがなされており、異議申立人が管理するブログにおいても、「首都高」「横転炎上」「多胡運輸」「ホクブ」「出光」というキーワードでのアクセスが、今でも頻繁に行われている。※異議申立人が管理する次のブログ参照。
http://pink.ap.teacup.com/applet/ogawaken/msgcate22/archive
こうした背景には、この特定会社による特定事故に関する情報不足が厳然として存在している。首都高の事故発生から復旧までに、生活面、産業面で多大な負の影響を被った首都高の利用者やその関係者にとって、事故を起こした原因者からの責任の自覚や謝罪、そして損害賠償に向けた姿勢が全く示されていない上に、それらについてマスコミも取材しようとせず、時間の経過とともに事件の風化だけが進んでいく状況のなかで、こうした社会・経済面に多大な影響を及ぼした事故については、真相の究明、責任の所在、再発防止策、他の一般利用者の安心・安全といった要件がきちんと明らかにされない限り、いろいろなコンフリクトや不具合が発生しかねないのである。
こうした状況を打開するには、首都高そして機構がきちんと原因者に対してその権限を最大限行使して、事故の真相と責任の所在、再発防止、そして、事故によって被った損害をきちんと原因者に負担させることにより、事故とは無関係の一般利用者に対して料金に転嫁していない証をしめすことで、一般利用者の安心・安全を担保するしか、方法はないと考える。
(3)特記事項
機構の理由説明書によれば、多胡運輸が損害賠償金を支払わない場合には、首都高の申請に基づき、「機構は国税滞納処分の例により強制徴収することができる」とある。国税の滞納者に対して、差し押さえが出来るということと同じ権限を法律で付与されていることになる。
となれば、本件特定会社である出光興産㈱+ホクブトランスポート㈱+多胡運輸㈱が原因者負担金を滞納していれば、機構は、問答無用で財産を差し押さえればよいことになる。
しかし、機構からの理由説明書をよく読むと、「(10)の法人文書の存否を答えることは、本件特定会社が原因者負担金を滞納しているという事実の有無を明らかにする結果を生じさせるものであり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。」として「ここにいう“その他正当な利益”とは、ノウハウ、信用などの法人の運営上の地位と解されているが、情報公開・個人情報保護審査会の答申(平成21年度(行情)答申第535号)では、これには国税を滞納しているか否かに係る事実が含まれるとされており、原因者負担金を滞納しているか否かに係る事実についても同様にこれに含まれるものと考える。」とある。
そして、「本件存否情報は、当該法人に関する情報であり、これを公にした場合、信用などの法人の運営上の地位を害するおそれがあることから、本件特定会社の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。したがって、本件存否情報は、法第5条第2号イの不開示情報に該当するものである。」と結論付けている。
ここでいう「当該法人」というのが、首都高なのか、それとも多胡運輸+ホクブトランスポート+出光興産なのかは、いまひとつよく分からないが、本件特定会社という文言が示されていることから、多胡運輸側のことを意味していると思われる。
となると、事は重大である。なぜなら、巨額の損失を首都高(=機構)に与えた多胡運輸側に対して、機構側が「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」と認識しているからだ。
安中市土地開発公社では、公社の保証人である安中市と公社が、多胡運輸の経営者の実兄を相手取り、民事訴訟で23億円余りの損害賠償請求をして勝訴した途端、国税庁は元職員多胡邦夫に対して、巨額の不当利得に対する課税を免除した。
今回の事件では、依然として首都高と多胡運輸ら原因者との間で係争中とはいえ、財産差し押さえという伝家の宝刀を抜く権限を持つ機構としては、「(10)原因者負担督促状(控)等」の存在を公表することにより、「その他正当な利益」が害されるという問題が発生するおそれがあると主張している。しかし、どのような問題なのか、具体的な事例が示されていない。
異議申立人は、本件情報の開示により、機構にとっての「その他正当な利益」が害されることはないと考えるが、さらに特定会社である多胡運輸側の「法人の運営上の地位を害するおそれ」などは、全く考慮される必然性は無いと考えている。
むしろ、本件情報をきちんと開示することにより、機構がきちんと督促状等を多胡運輸側に出していることが公に認識されることになり、そのことにより、事故により生活や仕事の面で様々な悪影響を被った首都高利用者らはもとより、多胡運輸の絡んだ地方自治体では史上最大級の横領事件の真相解明に尽力中の異議申立人をはじめ、不特定多数の首都高の利用者や国民に対して説明責任を果たすことにもつながり、ひいては、首都高や機構の信用を高めることになるからである。
かかる状況を、あらゆる観点から検討、分析、熟慮しても、機構による不開示決定の処分には根拠が無く、処分の取消を求める。
以上
**********
■引続き、当会は、地方自治体における横領事件では史上最高額となる安中市土地開発公社を巡る巨額詐欺横領事件の真相解明と原因究明ともに、事件の鍵を握る元職員の実弟が経営する多胡運輸やその後ろ盾になっているホクブトランスポート、さらに出光興産による首都高速史上最高額の物損事故を巡る処理の経緯と行方を調査することにより、上記の安中市の横領事件の背景を追及してゆく所存です。
【ひらく会情報部】
そこで、本日付で次の内容の意見書を内閣府に提出しましたので報告します。
↑永田町合同庁舎の入口。セキュリティチェックが厳しく、玄関ロビーで意見書を手渡した。↑
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平成25年3月6日
〒100-0014東京都千代田区永田町1-11-39
永田町合同庁舎5階
内開府情報公開・個人情報保護審査会 御中
電話:03-5501-1739
FAX:03-3502-0165
異議申立人
〒379-0114群馬県安中市野殿980
市政をひらく安中市民の会
小 川 賢
電話:027-382-0468
FAX:037-381-0364
意 見 書
1 諮 問 庁:独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
諮問番号:平成25年(独情)諮問第3号
事 件 名:特定会社のタンクローリーに係る特定事故で首都高速道路株式会社が被った損害に関する文書の不開示決定に関する件
2 異議申立人は、平成24年11月28日付けの法人文書開示請求書により、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)に対して、以下の情報(以下「本件情報」という。)について開示請求を行ったところ、平成25年2月12日付府情個第355号で、諮問庁の理由説明書が送られてきたため、これに関して、次のとおり意見を述べる。
(1)機構による不開示決定の不当性
機構は、異議申立人による開示請求を受け、以下の理由を付して、平成24年12月25日付け総総第119号の法人文書不開示決定通知書により、不開示決定(以下「原処分」という。)を行った。この決定理由について、機構は「異議申立人が開示請求を行なった(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書は、作成・取得しておらず不存在であるため。」と理由説明書で主張するが、一般市民にとっては、それをそのまま鵜呑みにすることは困難である。なぜなら、首都高速道路株式会社(以下「首都高」という。)史上最大と言われる物損事故である特定会社のタンクローリーに係る特定事故で首都高速道路株式会社が被った損害は、首都高にとっても、施設を保有する機構にとっても、さらに、そこを通行する利用者にとっても、規模的に甚大であり、本件について、組織内で協議をした経緯があるはずであり、その結果、(1)役員会の議事録、(2)監事監査関係、(3)記者発表などの情報が存在こそすれ、不存在であるはずが無いからである。
さらに、マスコミ報道によれば、2011年7月に利用者の特定会社を相手取って首都高が計約34億5千万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した事件が存在することは明らかであるから、一般市民の通常の考えによれば、少なくとも(6)争議関係、(7)警告書等、(8)措置命令書管理簿、(9)措置命令書(控)等の情報が存在することが想定される。
しかし、(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書はいずれも機構の内部文書であるため、機構が不存在と主張すれば、それを覆せる根拠を外部にいる異議申立人として入手できる立場には無い。
機構は、(10)原因者負担督促状(控)等の法人文書に限り、「その存否情報が独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号。以下「法」という。)第5条第2号イに該当する法人に関する情報であるとして、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある不開示情報であるため、法第8条の規定に基づき、当該法人文書の存否を明らかにしないで、開示請求を拒否する」と判断した。
平成24年12月14日付の物流ウィークリーは、本件の特定事故について、次のように報じている。次に当該記事を引用する。
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出典元のURL:http://weekly-net.jp/2012/12/post-1534.html
関交協に突然賠償請求 高速道路保有・債務返済機構
【事故】2012年12月14日 13:19
08年8月、ガソリンを積んだ大型トレーラが首都高で横転、炎上するという事故が起こった。道路がトロトロに溶けるという日本の高速道路史上、未経験の大火災事故だった。4年以上経った今も、事故を起こした多胡運輸(群馬県高崎市)と首都高速道路会社との間で裁判は続いているが、多胡運輸が加入する関東交通共済協同組合(大高一夫理事長)に、今年に入って当然、荷本高速道路保有・債務返済機構から損害賠償の請求書が届いていたことが本紙の取材で分かった。関交協が支払えるのは危険特約として再共済を利用した10億円が限度。「それをはるかに上回る金額」の要求に関係者は戸惑っている。
全面復旧までに2か月以上かかり、市民の生活から首都圏経済まで大打撃を与えた事故を起こした多胡運輸は保有車両30台。直荷主の出光興産から元請けのH(異議申立人による注:ホクブトランスポート㈱のイニシャル)運送を経由して仕事をする、いわゆる下請け業者だ。事故の2か月後、関東運輸局は同社に対し車両5台を55日間使用停止とする行政処分を行った。さらに特別監査の結果、運転者に対する指導監督違反など8項目の法律違反が判明。追加の車両停止処分と運行管理者資格者証の返納命令を発出している。
当初、被害総額は復旧工事費20億円、通行止めに伴う通行料金の逸失利益25億円の計45億円と噂されたが、9か月後に首都高速が関交協に示した「損害見積もり」は、復旧費用17億円、営業損害15億6000万円の計32億6000万円だった。その頃、関交協には、東京都建設局(排水システム被害ほか)、東京ケーブルテレビジョン(配線ケーブル全焼)、隣接するマンション(外壁被害)など首都高速以外の各方面からの損害賠償が出そろったが、現在、2次被害も含めて「ほぼ片付いた」という。
未解決なのが首都高速に対する損害賠償。多胡運輸との裁判がいまだに続いており、損害賠償額は決定していない。そこに機構からの請求書。関交協は「まだ被害総額も確定せず、当事者の賠償額も決まっていないのに訳が分からない」と困惑。確かに民営化に際して採用された「上下分離方式」では「下」の部分、つまり道路施設は機構の所有物で、損害賠償を請求できる立場といえるが、裁判には現在も参加しておらず「突然、一方的に」加害者の保険会社に文書が送られてきた格好だ。
首都高速に「今後、どう対応するのか」聞いてみたが、「ノーコメント」。膠着状態が続く炎上事故の裁判が、複雑な様相を見せ始めた。(土居忠幸)
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この報道記事によれば、機構は、加害者(=原因者)である多胡運輸が加入する保険会社の関東交通共済協同組合に、2012年の早い時期に損害賠償の請求書を発出したことがうかがえる。ということは、(10)原因者負担督促状(控)等が存在することを意味している。
以上のように、開示請求に係る(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書については、機構が存在を否定しているが、少なくともその一部は存在している可能性がある。
また、機構が不存在とした「2011年7月に首都高が事故の原因者らを相手取り東京地裁に提訴した損害賠償請求事件関連情報を含む「(13)その他」情報」については、上記の報道記事によれば、機構は特定事故を巡る首都高が原告として、被告の特定会社を相手取っている訴訟には参加していないことがうかがえるが、これだけ規模の大きな重要事件であることから、首都高の上級機関である機構に、その裁判情報が不存在であるということは到底考えられない。よって、異議申立人は、(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書について「実際に機構が作成ないし受理した書類である」ので、公にすることが必要だと判断する。そして(10)の法人文書も異議申立人の主張どおり、公にされなければならない。
(2)機構の主張への反論
(1)~(9)及び(11)~(13)の法人文書の一部には、前述のとおり、機構が作成ないし受理していなければならない文書、あるいはその可能性が高い文書が含まれていなければならないはずであることから、異議申立人の主張には正当な理由がある。ただし、どの項目の法人文書が存在するのかは、異議申立人には調査できる権能がないことから、情報公開・個人情報保護審査会の手できちんと機構を調査してもらうしか方法がないのも事実である。
(10)の法人文書について、機構は
「道路法(昭和27年法律第180号)第58条に定める原因者負担金について機構が行った原因者への督促に係るものである。機構が行う原因者負担金の督促は、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)第40条第1項並びに第45条第3項及び第4項の規定に基づき、首都高速道路株式会社等の高速道路会社が督促した原因者負担金が指定した期限までに納付されない場合に、高速道路会社からの申諸により行うものであり、納付すべき金額が納付されないときは、機構は国税滞納処分の例により強制徴収することができるものである。 したがって、出光興産㈱、ホクブトランスポート㈱及び多胡運輸㈱(以下「本件特定会社」という。)に係る(10)の法人文書の存否を答えることは、本件特定会社が原因者負担金を滞納しているという事実の有無(以下「本件存否情報」という。)を明らかにする結果を生じさせるものである。」
と理由説明書で主張している。ちなみに道路法第58条は次のとおり原因者負担金について定めている。
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(原因者負担金)
第58条 道路管理者は、他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については、その必要を生じた限度において、他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担させるものとする。
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また、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)第40条第1項並びに第45条第3項及び第4項は次のとおり原因者負担金の督促について定めている。
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(道路に関する費用についての道路法の規定の適用)
第40条 会社管理高速道路に関する道路法第57条から第63条までの規定の適用については、同法第57条中「道路管理者以外の者」とあるのは「道路管理者及び当該会社以外の者」と、「同条の規定により道路管理者の承認を受けた者」とあるのは「道路整備特別措置法第8条第1項第13号の規定により第24条本文の規定による道路管理者の権限を代わつて行う独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)の承認を受けた者」と、同法第58条第1項及び第59条第3項中「道路管理者」とあるのは「会社」と、同法第58条第1項及び第60条ただし書中「を負担させる」とあるのは「について負担を求める」と、同法第59条第3項中「全部又は一部を」とあるのは「全部又は一部について」と、「負担させる」とあるのは「負担を求める」と、同法第60条本文中「第21条の規定によつて道路管理者」とあるのは「道路整備特別措置法第8条第1項第11号の規定により第21条の規定による道路管理者の権限を代わつて行う機構」と、「この法律」とあるのは「この法律及び道路整備特別措置法」と、同条ただし書中「当該他の工作物の管理者に」とあるのは「会社は、当該他の工作物の管理者に」と、同法第61条第1項中「道路管理者」とあるのは「機構」と、同条第2項中「道路管理者である地方公共団体の条例(指定区間内の国道にあつては、政令)」とあるのは「政令」と、同法第62条後段中「第38条第1項の規定により道路管理者」とあるのは「道路整備特別措置法第9条第1項第8号の規定により第38条第1項の規定による道路管理者の権限を代わつて行う会社」とする。
(負担金等の強制徴収)
第45条 道路法第73条の規定は、第10条第1項、第11条第1項、第12条第1項及び第15条第1項の規定に基づく料金並びに当該料金に係る第26条の規定に基づく割増金について準用する。この場合において、同法第73条第1項から第3項までの規定中「道路管理者」とあるのは「地方道路公社」と、同条第2項中「条例(指定区間内の国道にあつては、政令)」とあるのは「政令」と読み替えるものとする。
《追加》平16法101
2 (略)
3 会社は、第42条第4項の規定により会社の収入となる負担金(以下この条において単に「負担金」という。)を納付しない者がある場合においては、督促状を発して督促し、その者が督促状において指定した期限までに納付しないときは、機構に対し、その徴収を申請することができる。
《追加》平16法101
4 道路法第73条の規定は、前項の規定による申請に基づき機構が負担金を徴収する場合について準用する。この場合において、同条第1項から第3項までの規定中「道路管理者」とあるのは「機構」と、同条第2項中「条例(指定区間内の国道にあつては、政令)」とあるのは「政令」と読み替えるものとする。
《追加》平16法101
前述のように報道では、機構は加害者(=原因者)の多胡運輸が加入する保険会社(関東交通共済協同組合)に、2012年の早い時期に損害賠償の請求書を発出したとされており、(10)原因者負担督促状(控)等の類の法人文書が存在していることは明らかである。
また、機構は、不開示の理由として、機構にとって「その他正当な利益」が害されるおそれがあると主張し、情報公開・個人情報保護審査会の答申(平成21年度(行情)答申第535号)を挙げて、「これには国税を滞納しているか否かに係る事実が含まれるとされており、原因者負担金を滞納しているか否かに係る事実についても同様にこれに含まれるものと考える。」と主張している。
しかし、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)第40条第1項並びに第45条第3項及び第4項の規定では、首都高等が督促した原因者負担金が原因者により支払われない場合、首都高等が機構に申請して、機構が督促し、それでも支払われない場合には、「国税財滞納処分の例」により強制徴収できる、と定めているだけである。すなわちここでは、法律により国税滞納者に対する強制徴収にならって、問答無用で財産の差押さえが可能であるという法的な類似性を示しているだけであって、それを直ちに「原因者負担金を滞納しているか否かに係る事実についても同様にこれに含まれるものと考える。」と主張するのは失当である。日本国民の義務である国税支払いの滞納者と、公益的な事業とはいえ、民営化された首都高の施設に損害を与えた原因者の義務である原因者負担金支払いの滞納者とでは、その性格は全く異なるからである。
機構はまた、法第5条第2号ただし書について、異議申立人の主張である「(10)の法人文書に係る情報を“公にすることにより保護される一般利用者の生活又は財産の利益のほうが、これを公にしないことにより保護される当該法人の権利利益よりも”上回る理由として、当該情報を公にしないと“事故の損害の負担が利用料金に転嫁される蓋然性が高くなる”こと」に対して、「“当該情報の不開示”と“事故の損害の負担が利用料金に転嫁される蓋然性が高くなる”こととは無関係なので、ただし書に規定する情報には該当しない」と主張している。
異議申立人は、機構がこのような主張をすることについて、この事故で影響を受けた不特定多数の首都高利用者をはじめ、この事故の原因者である多胡運輸も絡んで1975年に発覚した群馬県安中市土地開発公社を舞台にした51億円余の巨額詐欺横領事件の影響で毎年2000万円ずつ、あと89年間も公金を金融機関に支払い続けなければならない状況に置かれている安中市民ら、一般国民の気持ちを、機構が全く勘案していないのではないかと、非常に憂慮するものである。
特定会社のタンクローリーに係る特定事故は、2008年8月3日(日)早朝発生したが、その事故の影響の甚大さにもかかわらず、事故による被害と復旧については首都高のホームページやマスコミによる報道が逐次なされた。しかし、事故の原因者である多胡運輸や、その元請であるホクブトランスポート、そして荷主である出光興産は、この事故に関する責任や謝罪を含め、記者会見を開くことも無く、一貫して沈黙を守っている。マスコミも、原因者ら特定会社に対しては、なぜか取材には消極的な姿勢をとっていた。実質的に荷主から配送業務を請け負っていたホクブトランスポートは、事故発生の3日後から、ホームページを閉鎖しており(その後一昨年の秋ごろから再開)、この事故を契機に情報発信を警戒している姿勢が、国民の批判を浴びている。※例えば次のブログ参照。
http://www.tanteifile.com/newswatch/2008/08/09_01/index.html
また、ネット上でも、当該の特定事故に関する情報操作について原因者やマスコミ対応への不信感を綴った書き込みがなされており、異議申立人が管理するブログにおいても、「首都高」「横転炎上」「多胡運輸」「ホクブ」「出光」というキーワードでのアクセスが、今でも頻繁に行われている。※異議申立人が管理する次のブログ参照。
http://pink.ap.teacup.com/applet/ogawaken/msgcate22/archive
こうした背景には、この特定会社による特定事故に関する情報不足が厳然として存在している。首都高の事故発生から復旧までに、生活面、産業面で多大な負の影響を被った首都高の利用者やその関係者にとって、事故を起こした原因者からの責任の自覚や謝罪、そして損害賠償に向けた姿勢が全く示されていない上に、それらについてマスコミも取材しようとせず、時間の経過とともに事件の風化だけが進んでいく状況のなかで、こうした社会・経済面に多大な影響を及ぼした事故については、真相の究明、責任の所在、再発防止策、他の一般利用者の安心・安全といった要件がきちんと明らかにされない限り、いろいろなコンフリクトや不具合が発生しかねないのである。
こうした状況を打開するには、首都高そして機構がきちんと原因者に対してその権限を最大限行使して、事故の真相と責任の所在、再発防止、そして、事故によって被った損害をきちんと原因者に負担させることにより、事故とは無関係の一般利用者に対して料金に転嫁していない証をしめすことで、一般利用者の安心・安全を担保するしか、方法はないと考える。
(3)特記事項
機構の理由説明書によれば、多胡運輸が損害賠償金を支払わない場合には、首都高の申請に基づき、「機構は国税滞納処分の例により強制徴収することができる」とある。国税の滞納者に対して、差し押さえが出来るということと同じ権限を法律で付与されていることになる。
となれば、本件特定会社である出光興産㈱+ホクブトランスポート㈱+多胡運輸㈱が原因者負担金を滞納していれば、機構は、問答無用で財産を差し押さえればよいことになる。
しかし、機構からの理由説明書をよく読むと、「(10)の法人文書の存否を答えることは、本件特定会社が原因者負担金を滞納しているという事実の有無を明らかにする結果を生じさせるものであり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。」として「ここにいう“その他正当な利益”とは、ノウハウ、信用などの法人の運営上の地位と解されているが、情報公開・個人情報保護審査会の答申(平成21年度(行情)答申第535号)では、これには国税を滞納しているか否かに係る事実が含まれるとされており、原因者負担金を滞納しているか否かに係る事実についても同様にこれに含まれるものと考える。」とある。
そして、「本件存否情報は、当該法人に関する情報であり、これを公にした場合、信用などの法人の運営上の地位を害するおそれがあることから、本件特定会社の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。したがって、本件存否情報は、法第5条第2号イの不開示情報に該当するものである。」と結論付けている。
ここでいう「当該法人」というのが、首都高なのか、それとも多胡運輸+ホクブトランスポート+出光興産なのかは、いまひとつよく分からないが、本件特定会社という文言が示されていることから、多胡運輸側のことを意味していると思われる。
となると、事は重大である。なぜなら、巨額の損失を首都高(=機構)に与えた多胡運輸側に対して、機構側が「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」と認識しているからだ。
安中市土地開発公社では、公社の保証人である安中市と公社が、多胡運輸の経営者の実兄を相手取り、民事訴訟で23億円余りの損害賠償請求をして勝訴した途端、国税庁は元職員多胡邦夫に対して、巨額の不当利得に対する課税を免除した。
今回の事件では、依然として首都高と多胡運輸ら原因者との間で係争中とはいえ、財産差し押さえという伝家の宝刀を抜く権限を持つ機構としては、「(10)原因者負担督促状(控)等」の存在を公表することにより、「その他正当な利益」が害されるという問題が発生するおそれがあると主張している。しかし、どのような問題なのか、具体的な事例が示されていない。
異議申立人は、本件情報の開示により、機構にとっての「その他正当な利益」が害されることはないと考えるが、さらに特定会社である多胡運輸側の「法人の運営上の地位を害するおそれ」などは、全く考慮される必然性は無いと考えている。
むしろ、本件情報をきちんと開示することにより、機構がきちんと督促状等を多胡運輸側に出していることが公に認識されることになり、そのことにより、事故により生活や仕事の面で様々な悪影響を被った首都高利用者らはもとより、多胡運輸の絡んだ地方自治体では史上最大級の横領事件の真相解明に尽力中の異議申立人をはじめ、不特定多数の首都高の利用者や国民に対して説明責任を果たすことにもつながり、ひいては、首都高や機構の信用を高めることになるからである。
かかる状況を、あらゆる観点から検討、分析、熟慮しても、機構による不開示決定の処分には根拠が無く、処分の取消を求める。
以上
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■引続き、当会は、地方自治体における横領事件では史上最高額となる安中市土地開発公社を巡る巨額詐欺横領事件の真相解明と原因究明ともに、事件の鍵を握る元職員の実弟が経営する多胡運輸やその後ろ盾になっているホクブトランスポート、さらに出光興産による首都高速史上最高額の物損事故を巡る処理の経緯と行方を調査することにより、上記の安中市の横領事件の背景を追及してゆく所存です。
【ひらく会情報部】