市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】酷暑の中で行われた8.20ダブル口頭弁論の様子

2020-08-21 20:15:00 | 群馬高専アカハラ問題
■高専組織の悪質極まる情報隠蔽体質……当会ではその是正を狙って、2019年10月、第一次・第二次の二度にわたり各種情報不開示処分の取消を求めて高専機構を提訴しました。当会ではこの二つの訴訟を「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトとして、取り組みを続けてまいりましたが、審理も佳境に差し掛かったところで、新型コロナ緊急事態宣言による長期中断に遭ってしまいました。

 その後、夏になってようやく再開の歯車が回り始め、裁判所の配慮かはたまた被告高専機構側の意向が反映されたのか、8月20日午後に二つの訴訟の口頭弁論が連続してセッティングされました。このダブル口頭弁論に向けて、原告・被告双方の準備書面も出揃い、あとは当日を待つばかりとなりました。

○2020年7月9日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】七夕の第一次訴訟第3回弁論報告&第二次訴訟の再開通知到来!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3180.html
○2020年8月14日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】コロナ凍結の第二次訴訟再開目前に届いた被告高専機構の準備書面(2)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3190.html
○2020年8月16日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟で当会が原告準備書面(2)提出…機構は準備書面無し!?
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3192.html

■そして、高専過剰不開示体質是正訴訟の天王山となるであろうダブル口頭弁論の当日8月20日を迎え、当会出廷者が満を持して東京地裁に向かいました。


高崎駅前の商業ビルの屋上に設置された日付、時間、温度の電光表示板。


8月20日の昼さがり、気温42.0℃と表示されていた。8月15日には43.0℃の表示目撃者も。

■当日8月20日(木)も日本列島は広く高気圧に覆われ、各地で気温が上昇しました。気象庁の発表では、埼玉県熊谷市や群馬県桐生市などで38.6度を観測しました。そうした猛暑のなか、午後1時54分高崎発のとき320号に乗車し東京に向かいました。昼下がりの新幹線車内は乗車率4割程度でした。

 午後2時44分に東京駅に到着し、いつものように丸ノ内線に乗り換えて、霞ヶ関で降り地上に出るとちょうど午後3時でした。



間もなく埋設工事が始まるのか、地表になにやら白くマーキングが。

午後3時ともなると、裁判所に出入りする人も少ない。

 玄関のアルコール消毒液で手を拭き、手荷物をX線検査のために預け、金属探知ゲートをくぐって裁判所の中に入りました。右手のエレベーターホールに行くとちょうど昇りのドアが開いたので乗り込んだところ、8階までノンストップの高層階用エレベーターでした。8階で降り、その向かい側のエレベーターで1階下の7階に着きました。

■まずは、703号法廷で15時30分からおこなわれる第一次訴訟第四回口頭弁論の番です。703号法廷は皇居側(法務省側)の一番奥に近い位置にあります。入口脇の開廷表を見ると、当日審理される12件の事案がずらりと並んでいました。その一番最後に、確かに「令和元年(行ウ)第515号 法人文書不開示決定処分取消請求事件」という事件名があり、あわせて原告当会と被告高専機構の名前が記されていました。

 開廷表に更に目を通していたら、当日の午後1時15分に4つの事件の判決言渡しがあったうちのひとつに、どこかで見たことのある名前が原告欄にありました。あの和歌山ヒ素入りカレー事件で有名なかたと同姓同名の人物が国を相手取った事件です。令和2年(行ウ)第217号損害賠償請求事件と記してありましたが、はたしてどのような事件と判決だったのだろうか、としばし思いを巡らせました。

 ということで、ここに間違いないことを確認して、時計を見ると、まだ午後3時7分でした。開廷までには時間があるため、控室で過ごそうと中に入ると、真っ暗で誰もいませんでした。入口の照明スイッチを入れて、ノートパソコンを起動していると、突然電話がありました。

 出廷者の本業の相手先からの電話でしたが、長電話になり、終わったのが開廷の5分前でした。急ぎ703号法廷の傍聴席に入ると、既に高専機構の訴訟代理人の藍澤弁護士が法廷内の被告席に着いていました。当会が幾度となく世話になっている前橋地裁は出頭簿の置いてある位置が違うので、いつものクセで動きかけたところで「おっと」と思い出し、法廷の中に入って、原告席の壁側の机の上にある出頭簿の用紙の原告欄に名前を大きく記入し、着席しました。

 傍聴席に目をやると、七夕の日に行われた前回口頭弁論と同じく、高専機構関係者と思しき傍聴者が3名いるのが見えました。どうも、公務として給料を貰いながら合法的に仕事をサボるうまみに味を占めたようです。

■まもなくマスクを着けて、森裁判長と陪席裁判官2名が右側のドアから入ってきました。壇上で着席するとすかさず書記官が「令和元年(行ウ)第515号」と事件番号を読み上げました。第一次訴訟第四回口頭弁論でのやり取りは以下のとおりです。

~~~~~~~~~~
裁判長:はい、期日間に原告から準備書面(2)が出ております。これ陳述されますね。

原告:はい、陳述します。

裁判長:はい。それから甲号証として、35号証から46号証までいただいております。これ全部写しということで提出されますね。

原告:はい、提出します。

裁判長:被告からも乙5号証をいただいております。これ提出されます?

被告:はい。

裁判長:それで、えー、今回の原告の準備書面に書いてあるところについて、ちょっと被告人にお伺いしたい点が1点ございます。

被告:はい。

裁判長:で、それはですね。今回の原告の準備書面(2)の、えー……10ページから11ページにかけて、なんですが、10ページの下のほうで、「また」(※筆者注:「また,上記の被告の主張は,文面のとおり群馬高専の補助職員のうち各学科所属の者に限って適用されうるものであり,その他の部署に所属の補助職員に関する退職時の所属や職名のみの情報について,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する旨の主張は一切ないから,議論の余地なく開示が妥当である。」)で始まる段落があるんですけど、原告よりこの主張は、補助職員のうち各学科所属の者について適用されうるものであり,その他の部署に所属の補助職員に関する退職時のうんぬんかんぬんについては主張が一切ないから、議論の余地なく開示が妥当である、というふうにしております。で、実際のところ、被告のほうには、その、補助職員で各学科所属の者でない、その他の部署に所属する補助職員っていらっしゃるんですか?

被告:はい、あのう、事務系の、えーと、いわゆる総務とか、そういった部署に、えーと、複数補助職員が、まあ、若干名おりますけれども、えー、まあ、そのへんも、あのう、技術系の職員と同じように、えー、1名ないし若干名ですので、そうすると、ある機会とすれば、当該本人が特定できてしまうというような問題かと思いますけれども。

裁判長:えーと、とすると、同じことが妥当すると言うことなんですか?主張として?

被告:はい、ご指摘の通りです。
(それを聞くと、裁判長は向かって左側の右陪審裁判官になにやらひそひそと語り掛けて、右陪審裁判官も何やら小声で返事をしていた。その間約30秒)

裁判長:あ、わかりました。じゃあ、そういうふうなご主張というふうなことでお伺いします。よろしいですかね。原告のほうも。もう、被告がそういうふうなつもりだというふうなことで。

原告:(被告としてそういう)つもり(ということ)ですから、はい。それはそれで……、あ、それからひとつ、前回、甲31、32、33あたりで提出しました甲号証の、その、年報、学校の校報、この出どころについて、お尋ねいただいたんですけれども、これ確認しましたところ、いずれもホームページに公表資料として掲載されているということを確認しておりますので、ここで一言申しておきます。

裁判長:はい、わかりました。はい。

原告:したがいまして、開示決定書とか、開示通知とか、そういうものはなく、ただダウンロードしただけのものをお出ししたということです。

裁判長:はい、はい。ありがとうございます。

原告:はい。

裁判長:えー、裁判所としましては、あのう、今までご主張等いただきましたけれども、あのう、本件につきましては判断の熟する程度に審理をしたというふうに考えております。それで、双方から特段、これ以上主張、立証が、望むところがなければこの段階で終結して判断をしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

被告:はい。

原告:はい、異存ございません。

裁判長:はい、わかりました。それでは、双方主張の継続がなし、ということで判断させていただいて、弁論を終結いたします。

被告:……。

原告:はい、ありがとうございます。

裁判長:判決の言渡しですが、少し先になります。11月24日の、1時15分、午後1時15分、11月24日火曜日の午後1時15分に当法廷で行います。

被告:……。

原告:はい、ありがとうございます。

裁判長:それでは、これで終わります。閉廷します。

(以上約4分30秒間)
~~~~~~~~~~

 裁判長はそう言い残し、立ち上がると陪席裁判官を連れて法廷を退場していきました。当会出廷者が、机の上のパソコンとメモ用紙をカバンに詰めて、書記官らに「お世話になりました」と声をかけてから、法廷内を眺めると、藍澤弁護士と3名の傍聴者はすでに外に出ており、703号法廷の外に出ても、誰も見当たりませんでした。

 傍聴人入口のドアが開きっぱなしになっていたので、閉めようとすると、中から書記官が来て、ちょうど閉めるところでした。あらためて「お世話になりありがとうございました」と声をかけてから、エレベーターホールに出ました。そこにも被告高専機構側の関係者(藍澤弁護士と傍聴人)らの姿はなく、既に第2ラウンドのある4階に向かったようでした。当会出廷者もそのままエレベーターの下降ボタンを押しました。

■4階に移動した後、さっそく419号法廷に行き開廷表をチェックしました。間違いなく、16時ちょうどから同法廷で開かれる第二次訴訟第二回口頭弁論の予定が記されていました。後で気付いたことですが、清水裁判長は依然本件担当ながら、それ以外の裁判官と書記官が全員、2月の前回口頭弁論から総入れ替えされていました。年度をまたいだのでメンバーが更新されたものとみられます。

 ●前回時「裁判官:村松悠史,松原平学 書記官:山本尚秀」⇒ 今回時「裁判官:河山泰弘,釜村健太 書記官:戸谷多恵」

 チェック後、午後3時40分ごろから待合室で待機しましたが、誰も来ません。被告の訴訟代理人や傍聴に来た高専機構職員らも姿が見えません。おそらくどこかで雑談をして時間調整をしているものとみられます。そこで、当会出廷者が、控室にて隙間時間を利用して本業の打合せの電話をしていたところ、控室の前に数名のかたがたが集まってきました。隣の法廷で行われる別の裁判の傍聴に来た人たちのようです。

 仕事の打合せの電話を終え、開廷7分前になったので、傍聴入口のドアを開けて419号法廷の傍聴席に入りました。奥の左手に書記官補佐の若手の職員がたむろしているだけで、中には他に誰もいませんでした。傍聴席の原告側に最も近い席に座り、時間が来るのを待っていました。やがて書記官が来たので、出頭簿に署名して法廷にはいりました。

 原告席に座って間もなく、藍澤弁護士と、そのお供の高専機構関係者と思しき3名が一緒にドカドカ入ってきました。開廷2分前でした。

 そして定刻の午後4時になり、書記官補佐の「ご起立ください」という声で全員起立していると、マスクを着けた清水裁判長と陪席裁判官2名が右側のドアから入ってきました。裁判官が壇上で着席するとすかさず、書記官補佐が「令和元年(行ウ)第549号」と事件番号を読み上げました。第二次訴訟第二回口頭弁論のやり取りは以下のとおりです。

~~~~~~~~~~
裁判長:それでは開廷します。前回の弁論から、裁判所の構成が一部変わりましたので、弁論の更新をいたします。従前のことということでよろしいですね。(※上述の年度替わりに伴ったメンバー入れ替えを指している)

原告:はい。

裁判長:出していただいただいた準備書面について、原告のほうで準備書面(1)を陳述されますね。

原告:はい。

裁判長:被告は準備書面の(1)と(2)を陳述と言うことですね。

被告:はい。

裁判長:それから、書証に関しましては、甲号証は甲9号証から17号証まで写しとしてですね。

原告:写しで、はい。

裁判長:乙号証は1号証から3号証まで写しとして提出ですね。

被告:はい。

裁判長:で、あのう、出していただいた書面についてちょっと、えー、確認をしたいんですけれども、まずあのう、えー、その、えー、まあ、5条1号の但書のイにあたるかどうかということで、双方、準備書面でお書きになっているんですが、本件は、4号該当性が問題となっていまして、1号但し書きのイというのは、1号該当性が認められる場合の規定ですので、やっぱり4号該当性とは、まあ、関係がないわけですね。あのう、ですので、まあ、あのう、本件は4号の該当性について双方議論すれば、まあ十分なのかな、と思うところでありまして、1号但書該当性というのはあまり議論しても意味がないんじゃないか、というふうに思いますが、いかがでしょうか。

被告(注:いきなり嬉しそうに)はい、ご指摘の通りだと認識しております。

原告:……はあ。

裁判長:じゃあ、あのう、えーと、まあ、5条1条但し書に関しては(双方)撤回するということでよろしいでしょうかね。

被告:はい!

原告:……ええ、はい。

裁判長:えーと、それで、そのうえですけれども、被告のほうで準備書面をふたつ出していただいて、えー、その4号該当性についても主張されているわけなんですけれども、答弁書では、もうひとつですね、今回準備書面で書かれていることは非常勤講師の対応の問題と、あと派遣候補者になる人が、躊躇を感じるのではないか、というようなことについて書かれているんですけれども、その他に答弁書を見ますと、他の高専の教員や採用希望者による恣意的な異動および採用の方法というようなことがかかれていますけれども、ちょっと抽象的でありまして、具体的にどういうことを言いたいのかというのは、これだけではよくわからないですね。その点についての疎明が十分でないような気がしますので、その点については補充をお願いしたいと思います。

被告:はい、承知しました。(注:直前の口頭弁論とは打って変わって、声が大きい)

裁判長:それとですね、えーと、この、本件の制度の仕組みに関わるところではあるんですけれども、準備書面を拝見しますと、高専の校長が派遣者の受入れについて、受入先の高専の校長と協議をして決めるというようなことが書いてあるんですが、ただ、あのう、趣旨について誰がどういう権限をもっているのかということで、まあ、えーと、学校ごとにまあ、非常勤講師の雇用も決めるというようなことも書いてあるんですけれども、法人が人事権を持っているということであると、学校ごとに決めるというのもよくわからないところもありまして。ですので、誰がどのような権限を持っていて、どういう手続きで、これらの一連の手続きを行っているのかというようなところを、もう少し、具体的にですね、その権限関係がわかるように説明していただいた方がいいと思うんですね。

被告:はい。

裁判長:そこのところの補充をおねがいします。

被告:はい、承知いたしました。

裁判長:えーと、被告のほうで以上の補充をするということなんですけれども、あのう、原告として、今の時点で、被告が出したものについて反論されるか、それとも、被告の補充が出てから、それに対して反論されるかと、という点についてはいかがでしょうか。

原告:はい、まずそのコロナのせいで4か月くらい延びてしまったんですけれども、その間で、今回の訴訟指揮で出されるべき被告の準備書面(2)がもう出てきてしまったので、これに対して、原告として言いたいことがありますので、ぜひ、それ、準備書面(2)に対する反論を出させていただきたいと思います。

裁判長:はい、分かりました。では、双方で書面を出すということでよろしいでしょうか。

被告:……。

原告:はい。

裁判長:はい。そうすれば、それぞれ準備書面をお出しいただくのですが、提出期限を決めたいと思います。

原告:こちらはもう、半月もあればよろしいんですけれども。

裁判長:いちおう、同じ期限と言うことで。

原告:ええ、そうですね。同じように出しますけれども、2週間もあればこちらはOKですけども。

裁判長:期限より早くお出しいただいても全く問題ありません。(微笑む)

原告:はい、わかりました。

被告:9月末まででお願いできますでしょうか。

裁判長;9月の末ですね…9月30日までということでよろしいでしょうか。

被告:はい。

裁判長:ではあのう、双方とも、9月30日までにお出しください。

被告:……。

原告:はい。

裁判長:では次回の弁論ですが……と、あのう、曜日とか時間帯でこの辺は避けてほしいとか、あるいは、この辺が良いとか、曜日としては当部では、火曜日、木曜日、金曜日の法廷です。

原告:ああそうですか。できればどちらかと言えば、金曜日のほうがいいんですけど。時間的にはいつでもいいです。もちろん、火でも木でもいいんですけども、もし選ばせていただけるのであれば、金曜日が、私のほうとしてはいいです。

裁判長:時間帯では午前でも午後でもいいですかね?

原告:はい、どちらでもいいです。

裁判長:それから、被告はよろしいですかね。

被告:はい、結構です。

裁判長:それでは次回10月16日の金曜日ではいかがでしょうか。

被告:はい。

原告:はい、OKです。

裁判長:それでは午前11時ではいかがでしょう。

原告:はい、承知しました。

裁判長:では次回、10月16日金曜日午前11時といたします。

原告:はい。

裁判長:本日はこれで閉廷します。

原告:はい、ありがとうございます。

(以上約10分50秒間)
~~~~~~~~~~

 こうして第二次訴訟の第二回口頭弁論も終了しました。

■終了後、傍聴席にいた3名のうち、白シャツ姿の傍聴者はいち早く部屋の外に出ましたが、柄物シャツを着た2名の傍聴者は、代理人の藍澤弁護士が法廷から出てくるまで待って、一緒に外に出ていきました。当会出廷者もその後を追うように出ていきましたが、被告高専機構側の一団はしきりにこちらを気にしている様子でした。なので、コロナ密を避けるためにも、藍澤弁護士と機構職員を先に行かせ、別のエレベーターで下に降りました。1階に着いて、エレベーターから正面ロビーに出ると、既に高専機構側関係者の姿は見当たりませんでした。

 裁判所の外に出ると、4時過ぎでもお構いなしの真夏の日差しが照り付けて、セミの声が聞こえました。





ほぼ連日、プラカードを掲げて抗議している不当裁判の被害者。心境はいかばかりか。歩道にはみ出た樹木の枝を裁判所にきちんと切らせたのは快挙と言える。なぜなら前橋地裁の場合、当方が指摘しても一向にはみ出たままだからだ。

■さて、以上のとおり、第一次訴訟については事前の見込みどおり結審し、判決の言い渡しが11月24日(火)午後1時15分から東京地裁703号法廷にて行われることになりました。森裁判長ら裁判官が各項目についてどのように判断を下していくかは未知数ですが、原告当会としてももう何もできることはありませんから、三か月後の結果を待つ所存です。

 問題はやはり、10月16日(金)午前11時から第三回口頭弁論が開かれることになった第二次訴訟の方です。上記報告のとおり、裁判長が法5条1号ではなく法5条4号が争点になると言い出した瞬間、藍澤弁護士は突如として弾かれたように勢いづき始め、まさに「水を得た魚」そのものの雰囲気でした。

 法5条4号ヘの不開示事由(※人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ)が単一の争点になると、高専のことなど何も知らない裁判官相手に、「とにかく高専機構の業務に支障をきたす」とまくし立てていれば、なんとか押し切れると判断している可能性が指摘されます。藍澤弁護士と高専機構側も、そうした観点から何かしらの「手ごたえ」を感じ、元気付いたのかもしれません。

 とはいえ、どこまで行っても被告高専機構側の言い分が詭弁とこじつけを積み上げているだけの張りぼてなことには変わりありませんから、原告当会としてはそうした見せかけの勢いに惑わされず、冷静になってその致命的な穴を突いていくことになります。

■あわせて気になるのは、裁判の長期化です。当会が第二次訴訟の訴状を東京地裁に提出したのは、2019年10月18日でした。すると、第三回口頭弁論に至るだけで丸一年を費やしていることになります。加えてこのペースでは、判決が2021年に持ち越されることも確実になってしまいました。

 提訴当時、対象が多岐にわたる第一次訴訟は長期化し、対象と争点が極めてシンプルな第二次訴訟は早期結審するだろうと考えていましたが、イレギュラーが重なりすぎて、第一次訴訟の方が早く結審してしまいました。

 雑賀洋平が1年間の沼津バカンスから群馬に戻り、コロナ騒ぎのドサクサ紛れで学級担任に就任して既に4か月以上が経ちます。つまり、すでに沼津派遣期間を明らかにすること自体の実用上の利益はなくなり、過去の処分の不当性を証明することによる高専組織の情報隠し体質の是正が唯一の目的となりました。ところがこうも長期化が続くと、高専組織の体質是正に取り組むことすらどんどん先送りにされてしまいます。

■高専過剰不開示体質是正訴訟におけるダブル口頭弁論の報告は以上となります。当会として、第一次訴訟については判決待ちの状態となりましたから、第二次訴訟について、9月30日提出期限の準備書面の作成に着手してまいります。

【8/31追記】
■第一次訴訟については、上記のとおり、口頭弁論終了直後の時点ではそのまま判決を待つ所存でした。しかし、あらためて口頭弁論の内容を精査してみると、裁判長の質問を受けて藍澤弁護士が口頭で行った疎明の内容が正確でないことに気付きました。「学科の所属でない補助職員」の有無について聞かれた際、藍澤弁護士は総務等事務部署にわずかに存在しているという旨の回答をしました。しかし当会として、その記載は、訴状から一貫して指摘している群馬高専の「教育研究支援センター」所属の技術職員を念頭に置いたものでした。にも関わらず、被告側は継続して争点のひとつとなっているはずのこの点について、一切言及しませんでした。

 このままでは、被告側の一方的な説明が鵜呑みにされたまま、判決に移られてしまう危険性があります。新たな事実主張を伴わなければ、弁論終結後でも準備書面は出せることから、補足説明として8月27日に以下の原告準備書面(3)を東京地裁と被告代理人弁護士事務所に郵送で提出しました。

*****原告準備書面(3)*****ZIP ⇒ iitrj.zip
令和元年(行ウ)第515号 法人文書不開示処分取消請求事件
原告  市民オンブズマン群馬
被告  独立行政法人国立高等専門学校機構

         原告準備書面(3)
                     令和2年8月27日
東京地方裁判所民事第2部Bc係  御中

                原告  市民オンブズマン群馬
                    代表 小川 賢

            記

 令和2年8月13日付原告準備書面(2)における原告側主張について、新たな事実主張を伴わない範囲で、補足説明をする。

1 原告準備書面(2)10ないし11頁にかかる主張について
 原告は、当該箇所で「また,上記の被告の主張は,文面のとおり群馬高専の補助職員のうち各学科所属の者に限って適用されうるものであり,その他の部署に所属の補助職員に関する退職時の所属や職名のみの情報について,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する旨の主張は一切ないから,議論の余地なく開示が妥当である。」と記載した。
 このことに関し、令和2年8月20日第四回口頭弁論において、被告が「補助職員であって各学科所属でない者の有無」に関する事実の説明を裁判長から求められたところ、被告は、総務課等の事務系部署に複数補助職員がいるものの、少人数である(ため法5条本文1号前段の個人識別情報に該当する)旨を口頭にて疎明した。
 しかし、被告の言及した一部の事務系職員のみならず、群馬高専の教育研究支援センター所属の技術補佐員も明らかにこれにあたり(令和2年4月6日付被告準備書面(2)6頁)、原告のかかる主張も教育研究支援センター所属の者を含め念頭に置いたものである。そして教育研究支援センター所属の者については、特に一段事情が異なることは、訴状4項、原告準備書面(1)3項、原告準備書面(2)3項および甲10ないし11、甲31ないし33によって一貫して指摘しているとおりである。被告は上記の第四回口頭弁論における口頭疎明においてこの点言及しなかったため、本準備書面によって原告側主張の補足説明とする。
以上
**********

■3か月間をかけ、果たしてどのような判決が書き上げられるのでしょうか。当ブログで判決のご報告をする頃にはすでに師走も目前です。提訴から丸一年を潰したからには、マトモな判決が出てほしいものです。【追記終】

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟で当会が原告準備書面(2)提出…機構は準備書面無し!?

2020-08-16 23:22:00 | 群馬高専アカハラ問題
■国立高専校長の選考実態、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟の弁護士費用、長野高専連続自殺の発生年月日などなど、高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報は枚挙にいとまがありません。こうした悪質な情報黒塗りの数々のいくつかをピックアップして不開示処分の取消しを求めた第一次訴訟(令和元年(行ウ)第515号)では、既報のとおり被告高専機構側もなりふり構わぬ抵抗を見せています。

 その第一次訴訟では、4月6日に被告高専機構側の準備書面(2)が出された直後、新型コロナ騒動での予期せぬ中断に遭ってしまいました。その後なんとか再開し、7月7日に第3回弁論が開かれました。森裁判長は、原告・被告双方に、追加主張があれば8月13日までに提出するよう指示し、8月20日の第4回口頭弁論で結審する可能性が高いことを示唆しました。

○2020年4月12日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】銀座弁護士の本気?第一次訴訟で被告高専機構が準備書面(2)を提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3148.html
○2020年7月9日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】七夕の第一次訴訟第3回弁論報告&第二次訴訟の再開通知到来!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3180.html

■原告当会としては、雇い主の高専機構と裁判所に尻を叩かれる形で銀座の田中・木村法律事務所が出してきた分量だけのお粗末な準備書面(2)を吟味し、原告準備書面(2)として余すところなく杜撰な点を指摘していくことにしました。

 指定された提出期限である8月13日当日、刷り上がった原告準備書面(2)および附属書類を東京地裁民事第2部窓口に現地提出するため、当会担当者が東京に向かいました。

■その2日前は群馬県伊勢崎市・桐生市で、今年全国初の40℃超えを記録し、前橋市でも最高気温39.8℃を記録する猛暑日でした。そして13日も、2日前のように記録的なレベルには至らないものの、引き続き前橋で最高気温35.9℃を観測する猛暑でした。この日は、昼前に迎え盆を済ませましたが、帰宅するやいなや汗だくの服を着替えて、高崎駅に向かい、腹ごしらえをしてから午後1時37分発の上越新幹線とき364号に乗車しました。

 お盆休みのうえに新型コロナの感染再拡大もあり、車内はガラガラでした。大宮までノンストップの為、東京駅に着いたのは午後2時28分でした。さっそく丸ノ内線に乗り換え、午後2時39分に霞ヶ関の駅を降りて地上に出ると、久しぶりに、裁判所の塀のところに、「植え込みの一部が道路にはみ出している」と書かれた抗議のプラカードが掲げてありました。

 不当裁判の被害にあったかたがたの心境は実によく分かります。当会もこれまで数えきれないほどの住民訴訟を提起してきましたが、ほとんど9割9分は敗訴を強いられてきたからです。これまで勝訴できた事案は、談合事件と情報不開示取消訴訟くらいです。その数少ない勝訴の実績を引っ提げて、この日、原告準備書面(2)と附属書類を携えながら、裁判所の玄関をくぐりました。

 玄関にある手荷物検査エリアの手前で、感染対策のアルコール消毒液を手にかけて、もみ手をしながら中にはいりました。検査エリアでは手荷物のX線検査と、金属探知ゲート通過による身体チェックを受け、チェック前に渡された手荷物の番号札を係員に渡して、準備書面の入ったカバンを受け取りました。

■東京地裁の民事第2部は10階の北側(法務省側)にあります。通路を北に向かって歩いてゆくと一番奥の左側に民事第2部と民事第38部があります。そこを入ると正面に民事第2部の窓口があります。コロナ感染予防対策として、窓口には、上からビニールフィルムがだらりと垂れ下がっています。昼下がり、他には誰もいないため、番号札も不要で、窓口に立つと直ぐに女性書記官が応対してくれました。

 予めカバンから取り出しておいた原告準備書面(2)正本と証拠説明書正本及び甲号証一式をダブルクリップでひとまとめにして入れておいた封筒を開け、中から、おもむろに書類を取り出して、ぶら下がったビニールの下端を手で払いのけながら、書記官の前に差し出しました。当会担当者から「今日が書面の提出期限日なので直接うかがいました。来週20日に弁論でお世話になります」と話しかけたところ、「はい、承知しております。わざわざご苦労様です」とねぎらっていただきました。

東京地裁庁舎総合案内図

■当会担当者が、「なお、副本については、これから地下1階の郵便局から被告訴訟代理人の弁護士事務所に郵送しておきます」と告げると、書記官は「承知しました」と言い、当会担当者が「それでは、来週お目にかかります」と告げると、書記官は頷いて、当会が提出した書類を手にして席に戻っていきました。

 さっそくすぐわきにあるエレベーターで地下1階に直行し、郵便局を目指しました。中に入って、備え付けの机の上で、副本の入った封筒を取り出しました。予め住所を記載済みだったので、ダブルクリップで止めてある書類が中にあることを確認したうえで、備え付けの糊を使って封筒の口を封印し、「きって・はがき」窓口前の列に並びました。ここでも他の郵便局と同様に、床にフィジカルディスタンスの離隔距離を考慮した立ち位置がマーキングされており、その上で、前に並ぶ2人ほどが手続きを終えるのを待ちました。

 待つこと2分ほどで当会担当者に順番が回ってきたので、封筒を提出し「特定記録郵便でお願いします」と告げました。担当の男性職員は手際よく処理してくれ、渡された受領証と領収書をみると、ちょうど午後3時の記録が印字されていました。こうして東京地裁民事第2部と被告高専機構の訴訟代理人弁護士への準備書面提出を完了しました。

■原告当会が8月13日に提出した第一次訴訟の原告準備書面(2)の内容は次のとおりです。

*****原告準備書面(2)*****ZIP ⇒ 20200813iqj.zip
令和元年(行ウ)第515号 法人文書不開示処分取消請求事件
原告  市民オンブズマン群馬
被告  独立行政法人国立高等専門学校機構

               原告準備書面(2)
                          令和2年8月13日
東京地方裁判所民事第2部Bc係  御中

                     原告  市民オンブズマン群馬     
                     代表 小川 賢

                   記

 令和2年4月6日付け準備書面(2)(以下「被告準備書面(2)」)での被告側主張に対し,原告として以下反論する。

1 訴状別紙1項にかかる主張について
 (1)被告は,被告準備書面(2)1項において,甲3号証の国立高等専門学校長候補者一覧の記載項目名およびその簡単な概要と性質(以下「記載項目名等情報」)を初めて原告に対し明らかにした。この記載項目名等情報について,やはり明らかにしないことが妥当と判断されるような要素は認められず,現に被告は記載項目名等情報を明らかにできたわけだから,本決定のみならず答弁書や被告準備書面(1)においてまで被告が記載項目名等情報を明かさなかったことについて,正当な根拠は一切存在していなかったと結論するほかない。したがって,訴状のとおり,まず個別の項目名等については本決定の不開示を取り消して開示とすることが妥当である。
そして本決定時点において記載項目等情報が明かされておらず,そのために本件提訴時点では個別の項目について不開示妥当性を検証することが不能とされており,本件係争中にようやく記載項目等情報が明らかとされたことに鑑みれば,行政事件訴訟法第7条および民事訴訟法第64条の規定に基づき,訴状別紙1項にかかる請求に関しては,判決における認容度合いに一切かかわらず被告はその請求分について訴訟費用を全額負うべきである(この点,被告は答弁書において争うとしながらも,とくに反論は見当たらない)。
   付言すると,被告は,本決定に先立って,国立高等専門学校長候補者一覧に関し同様の不開示決定をした際(甲35),記載項目名は明らかにすべきであるとの原告の要請を組織として明確に拒否している(甲36)。このことからすれば,記載項目等情報を明かさなかったことについて,やむをえない過失であったということはできない。

 (2)被告準備書面(2)1項において被告が記載項目名等情報をはじめて明らかとしたので,これら各項目について不開示妥当性をあらためて検討する。

ア 原告が訴状において認めているとおり,甲第3号証の国立高等専門学校長候補者一覧の記載項目のうち,候補者の氏名が候補者を特定する情報として独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という)5条1号前段の個人識別情報に該当することについては,争わない(そもそも請求にない)。なお,生年月日もこれに準ずる。

イ 被告は,被告準備書面(2)1項(2)の結論として,学歴,学位,専門分野,職歴,現職に関する記載の5点が個人識別情報に該当する旨主張する。
ところが,被告は直後の被告準備書面(2)1項(3)において「たとえば整理Noや職歴のうち現職に関する記載,推薦機関の種別のみを開示した場合には,個人を特定できる可能性は低いものの」などとし,現職に関する記載について個人識別情報にあたらないことを自ら認めていることがうかがえる(同一準備書面の同一項内で主張が自己矛盾を起こしているのは理解に苦しむものである)。
  また,被告が被告準備書面(2)1項(2)において上記5点の個人識別情報該当性を主張するにあたり,その理由を説明するところによれば,「このため,氏名を不開示として学歴や職歴,専門分野のみを開示した場合でも,(中略)該当の候補者を特定することが容易に可能となる。」とあり,学位および現職に関する記載について特に言及がないのは明らかである。現職に関する記載が個人識別情報に該当しないことは(上で指摘したとおり)被告自身認めるところであり,また,学位というのはたとえば一般的に「工学修士」や「理学博士」といったものであり,個人識別性は認められない(仮に個人識別性を生じる箇所があれば,法6条に基づきその部分を区別して開示すればよい)から,学位および現職に関する記載は法5条1号前段の個人識別情報に該当せず,開示が妥当である。

ウ 被告は,被告準備書面(2)1項(3)の結論として,整理No,主な学歴,学位,専門分野,職歴や現職(被告に所属する者の場合には現在の所属先),推薦機関の種類別といった項目が,法5条4号への不開示情報に該当する旨主張する。
  しかしそのうち,被告準備書面(2)1項(3)で被告が新規に該当性の理由を説明するのは整理No,現職に関する記載,推薦機関の種別の3点のみであり,その余の項目については,「学歴,経歴といった個人に関する事項が開示される場合はもちろん,(中略)候補者が推薦の内諾を拒否するといった事態が生じることも考えられる。」とごく短く言及されるにとどまる。その記述から解釈するに,個人識別情報であれば同時に法5条4号へも満たし,かつ,上にいうその余の項目の個人識別性は被告準備書面(2)1項(2)で既に示していると被告が考えていることがうかがえるが,これらのうち学位および現職に関する記載が個人識別情報に該当しないことは前項イで指摘したとおりである。

エ 被告は被告準備書面(2)1項(3)で,整理No,現職に関する記載,推薦機関の種別の3点が,個人識別情報ではないながらも,これらを開示した場合,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となり,そのため推薦機関が候補者の推薦について消極的となってしまうおそれがあることから,被告の円滑な人事に支障をきたすものとして法5条4号へ該当性を主張するようである。
  しかしまず,「校長に就任しなかった候補者の(推薦機関の)構成が判明する」ことと,「推薦機関が候補者の推薦に消極的になる」ことにいったいどのような連関があるのか,被告はこの点一切説明しておらず,主張根拠がまったく不明である。
  なお,高等専門学校校長となる資格は,高等専門学校設置基準(昭和三十六年文部省令第二十三号)第10条の3においては「人格が高潔で,学識が優れ,かつ,高等専門学校の運営に関し識見を有する」とされており(甲37),また被告自身が被告による校長候補者の選考基準も,被告自身が甲8号で説明するとおり,「教育,研究,社会貢献に係る実績・能力,組織の長としての実績・経験・能力,職務に対する意欲・熱意」とされている。
  すなわち,候補者本人の純粋な実力や資質のみをみて公平に選考が行われることは言うまでもなく,候補者や推薦機関においても当然このことは了解済みと解される。したがって,推薦機関やその種別が選考上において加味され,特定の候補者に有利または不利に作用するということは有り得ず,候補者や推薦機関もそのことを了解しているのは明らかな以上,校長に就任しなかった候補者の構成といった情報が明らかとなることで,推薦機関が候補者の推薦に消極的になるという被告の危惧は,著しくその根拠を欠いたものと言わざるを得ない。
  また,被告は同様の理由で,候補者が推薦の内諾を拒否するといった事態が生じるおそれもある旨主張するが,そのようなおそれが生じ得ないことは上記指摘のとおりである。
加えて,国立高等専門学校長候補者の募集は,候補者となる者が推薦機関を通じ主体的に応募する性質のものであり,その際に当該応募人が推薦機関に推薦を依頼するものであって,推薦機関が有望な人物に主体的に接触し,推薦されてもらえないか打診する性質のものではない。したがって,「候補者が推薦の内諾を拒否する」などという,原理的にまず生じ得ない事態を理由に挙げる被告の主張は,率直に理解に苦しむものである。
  以上から,整理No,現職に関する記載,推薦機関の種別が法5条4号へに該当するという被告の主張は失当であり,開示が妥当である。

オ 被告は被告準備書面(2)1項(4)において,甲第3号証の一覧表は,被告が各推薦機関から提供された校長候補者の学歴,職歴等の事項のすべてを記載したわけではなく,提供された情報のなかから校長の選定の考慮要素として主要と考えられる事項を整理して記載したものである旨主張するが,常識としてこうした一覧表に,たとえば提出された履歴書の記載をぜんぶ余さず記載するといったことがあり得ないのは当然であり,「主要と考えられる事項」すなわち記載項目については被告が被告準備書面(2)1項(1)において現に明らかにしたのだから,被告のこの主張には何ら意味がない。
  また被告は,推薦機関ごとに記載事項に細かい差異があることも理由に,法5条4号へ該当性を主張するようである。この真偽については原告において検証不能であるが,一覧表の性質からいって,学位,整理No,現職に関する記載,推薦機関の種別等項目については,推薦機関に関わらず普遍的に記載されているとみるのが妥当であり,これら共通事項を開示することで選考基準が明らかになるとは思われない。したがって,これら4つの項目については,開示することが妥当である。

カ 被告は被告準備書面(2)1項(5)において,全候補者数を開示しようとすれば推薦機関別の候補者数を容易に推測できることになることを理由に,校長の選考という人事管理に支障を生じるおそれがある旨主張するが,推薦機関それ自体は校長の選考要件となっていないことは原告が前項で指摘したとおりであり,推薦機関別の候補者数を明かしても被告内部における校長選考の具体的基準といった機微にかかる情報を明かすことにはつながらないのは明らかである。よって,法5条4号へ該当性を主張する被告の主張には理由がない。

キ 加えて,そもそも,甲第3号証の国立高等専門学校長候補者一覧に記載のある人物のうち半数程度は,選考に合格し最終的に国立高等専門学校長に就任した者にかかるものであって,それらの者の氏名,生年月日,学位,学歴,専門分野,職歴等はすべて公開情報となっている(甲38)。したがって,これらの者に関する情報が法5条1号イに定めのある公知情報であることは明らかであり,被告は法6条の部分開示規定に則り,これらの者に関する情報について一切開示すべきである。(被告は本決定においてそうした情報も不開示としており,その点においても過失が認められる)

(3)以上から,訴状別紙の1にかかる請求について,被告準備書面(2)1項で新規に明らかとされた情報を踏まえ,改めて以下の請求が認容されるべきである。

・記載のある者のうち,選考通過者にかかる情報については,その一切の開示。
・記載のある者すべてについて,整理No,現職に関する記載,推薦機関またはその種別,学位の開示。
・訴状別紙の1にかかる請求分の訴訟費用について,被告がその全額を負担すること。

2 訴状別紙2項にかかる主張について
(1)被告は,被告準備書面(2)2項(1)において,「原告が別紙2項で取消を求めているのは,甲第4号証の群馬高専元校長の西尾典眞氏の印影及び退職理由に関する被告の不開示決定である。」などとしているが,印影にかかる不開示決定の取消は原告の請求にない。

(2)被告は,被告準備書面(2)2項(2)において,「甲第4号証の退職届は,被告との雇用契約を終了するという被用者としての意思を表示したものであって,この意思表示は,退職理由のいかんにかかわらず被用者の個人としての行為であることは明らかである。」などと主張し,訴状別紙2項にかかる情報が法5条1号但書ハに該当しない,とする。
   しかしこの主張は,西尾氏のかかる人事を,あたかも所属組織の関知しないまま独立した個人の意思で行われる一般的な転職行為であるかのように扱った詭弁であり,実際には被告自身が出向であったと認めるとおり,組織間の都合と命令で行われ個人としての意思が一切介在しないものであったのは明らかである。西尾氏が,群馬高専校長退職時,何らかの個人的な事情により,自発的にその意思で被告からの退職を思い立ったのであれば,退職の意思表示は個人に属する情報であると解されることは原告においても認めるところであるが,被告はかかる人事がそうであるとは説明していない。
   甲第4号証の退職届にかかる人事は,被告と文科省双方の人事の連携のもとおこなわれ,その際,何らかの内示ないし職務命令によって西尾氏が退職届の作成も含めた形式的作業(以下「退職行為」)を命じられていたことは明らかである。(そうでないのであれば,被告は,被告ないし文科省が西尾氏に退職行為を命じた事実がないこと,むしろ退職行為が西尾氏の独立した意思によるものであること,を説明しなければならない。)また仮に,西尾氏が被告に在籍していた時,形式的に文科省の所属から一旦離れているにせよ,今度は独立行政法人である被告の一員としての性格を帯びることは当然である。また,退職行為の命令が私人としての西尾氏に宛てられたものでないことも明らかである。
   したがって,退職行為は,仮に形式上西尾氏の身分に関する行為であっても,文科省職員ないしは独立行政法人である被告の一員としての担当職務のひとつとしての性格を帯びており,当然甲第4号証の退職届はその遂行にかかる情報というべきであるから,開示は妥当である。

3 訴状別紙3項にかかる主張について
(1)被告は,被告準備書面(2)3項の(2)において,甲5号に記載のある補助職員のうち群馬高専各学科所属の者について,退職時の所属や職名のみを開示した場合でも,群馬高専内外の者に,当該所属や職名が誰に関する記載であるか容易に特定することが可能となるため,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する旨主張する。
   しかし,同僚等学内関係者にとって新たに「容易に個人を特定することが可能」になる状況が成立すること自体が有り得ないのは原告準備書面(1)3項①で指摘したとおりであるが,被告はこの点一切言及せず,法5条1号本文前段の不開示情報に該当すると繰り返すに留まる。また,学外の者からも特定が不可能もしくは著しく困難であることも,訴状4項および原告準備書面(1)3項①で原告が再三指摘のとおりであるが,被告はこの点も一切触れないまま,群馬高専外部者からの特定可能性を無根拠に主張し続けている。
   また,上記の被告の主張は,文面のとおり群馬高専の補助職員のうち各学科所属の者に限って適用されうるものであり,その他の部署に所属の補助職員に関する退職時の所属や職名のみの情報について,法5条1号本文前段の個人識別情報に該当する旨の主張は一切ないから,議論の余地なく開示が妥当である。
   なお,人事前後の「所属」と「職名」のうち群馬高専における「職名」のみを分離して開示することも容易であったのは甲32号証を見ても明らかである。この場合は被告の主張をすべてそのまま採用しても法5条1号本文前段には当たらないから,最低でも法6条に基づいて被告はこうした措置を取ることが可能であったはずのところ,被告は全面不開示としたことも指摘しておく。

(2)被告は,被告準備書面(2)3項の(2)ないし(3)において,国立印刷局編「職員録」(以下「職員録」)への掲載有無を,教職員にかかる情報の開示内部基準としており,職員録への掲載のない補助職員(技術補佐員含む)は氏名や所属を公にする慣行はなく,法5条1号ただし書イに該当しない旨主張する。
   しかし,職員録は被告が独自に基準として用いているだけの参照資料であり,そこへの記載の有無と,その他に慣行として公にしている事例があるかどうかに,何ら連関がないことは自明であり,被告のこの主張はその意図を図りかねるものである。事実,技術補佐員に関しては甲10ないし11,甲33のような公表慣行の存在を原告が指摘しているにも関わらず,被告はこの点一切言及していない。
   なお原告は,答弁書に事実と異なる主張が多数含まれていることを原告準備書面(1)3項②において指摘したが,被告からこの点への言及や反論は見当たらないから,答弁書4項(2)における主張に事実誤認が多数含まれていることに疑問の余地はない。

(3)また被告は,被告準備書面(2)3項(3)において,技術補佐員の退職挨拶の掲載は慣行の扱いではなく,法5条1号但書イに該当しない旨説明する。
   しかし,かかる主張が採用されてしまうと,たとえば今後,公表が事実上の慣行と認められる程度で行われていても,開示実施機関がたんに個別事例の積み重ねに過ぎないと強弁すれば不開示とされてしまうといったことが認められてしまうのであり,法に基づいた国民の利益が不当に侵害されてしまうおそれがある。なお,法5条1号但書イの「慣行として公」とは,事実上の慣行であれば足り(甲39),被告がそれを慣行として捉えているか,もしくは個別事例の集合と捉えているかには左右されない。あわせて被告は,年報以外でも(技術補佐員の)異動や退職を群馬高専の外部に公開していない旨主張するが,甲10のようなHPや,甲11および甲33のような年報における職員氏名一覧の掲載状況を追跡することで異動や退職といった人事状況も事実上の公表情報として把握できるのであり,人事内容を直接公表している必要はない。特に被告は,甲10に示した氏名等情報のHP掲載事実と,その推移から人事情報が把握可能である事実には一切触れておらず,仮に年報の記載を公表慣行と認めないにしても,依然として公表慣行が存在していることは否定できない事実である。
   なお,被告は被告準備書面(2)3項(3)において,「群馬高専では,甲第33号証と,甲11号証の両年報では公開対象とする情報が異なっている」旨を付記するが,まったく具体性のない記述であり,今回請求箇所と関係ない箇所について変更していてもこのような主張はできるため,考慮する意味はない。

(4)被告は,本決定において,訴状にいう不適切不開示箇所を不開示とするにあたり,「個人情報に該当する部分」とのみ記述して,原告にその不開示の理由や妥当性(各不開示箇所がなぜそれに該当するのか)を検証不可能な形でかかる処分をおこなった。このことは,法の運用として極めて不適切であると言わざるを得ない。そして本決定時点において,各不開示箇所と前後の開示箇所で扱いを異にする理由が明かされておらず,そのために本件提訴時点では個別の不開示箇所について不開示妥当性を検証することが不能とされており,本件係争中にようやくに一定の不開示理由が明らかにされたことを鑑みれば,行政事件訴訟法第7条および民事訴訟法第64条の規定に基づき,訴状別紙3項(1)にかかる請求に関しては,判決における認容度合いに一切かかわらず被告はその請求分について訴訟費用を全額負うべきである。
   なお,本決定に先立って,原告が被告に対して各不開示箇所の具体的な不開示事由を問い合わせたところ,被告は「不開示が妥当とされたので不開示とした」とのみ回答して,各不開示箇所にかかる不開示妥当性の検証を不能とした(甲40)。このことからすれば,被告は明確に組織としての意思で各不開示箇所にかかる不開示妥当性の検証を不能とさせたことは明らかであり,やむを得ない過失であったということはできない。

(5)被告は,被告準備書面(2)3項(4)において,原告が訴状別紙3項(2)で開示を求める情報が法5条1号本文前段の個人識別情報に該当し,さらに法5条1号但書イに該当しない旨を主張するが,特にその根拠についての記載はなく,答弁書および被告準備書面(1)における結論をただ繰り返しているだけであるとみられることから,考慮する意味はない。

(6)被告は,被告準備書面(2)3項(2)および(4)において,本件訴訟に先行して原告が申し立てた審査請求に対する答申書(乙2)を,訴状別紙3項(1)および(2)にかかる箇所の不開示を支持したものとして援用する。
  しかし,原告がおこなった「本件訴訟に先行して原告が申し立てた審査請求」というのは,被告による平成29年9月20日付法人文書開示決定(29高機総第77号,甲41ないし42)において,発令年月日および記載項目名を除いたすべての箇所について不開示決定をしたため,まずはインターネット上における明らかな公開情報に限り不開示処分を取り消させるべく,平成29年10月11日に審査請求をおこなったものである(甲43)。その際,訴状にある観点からの請求は特に行っておらず,したがって審査会にこれらの点について審査を請求したという事実はない。審査会が特に開示すべきという判断を下さなかったのは,審査請求当時,たんに原告がそれらの点について判断を求めなかったことから,残った不開示措置が現状維持とされたためであり,特に本件訴訟における原告の主張を否定し,また被告の主張を支持したものではない。

4 訴状別紙4項にかかる主張について
(1)被告は,被告準備書面(2)4項(1)において,「弁護士費用は,被告が委任した弁護土の個々の具体的業務に対して支払われた報酬単価を内容とするものであり,これは特定の法律事務所の具体の案件処理に係る取組体制や実作業等の詳細な内訳等に基づき出される営業秘密に属する情報である。この情報を公とすることにより,当該特定法律事務所の事案処理に係る方針や費用算定の方針等が明らかとなり,当該特定法律事務所及び弁護士の競争上の地位その他の正当な利益を害する」とし,法5条2号イ該当性を主張するが,答弁書および被告準備書面(1)から細かい文言を変えて同じ主張を繰り返しているだけで,特に新規の主張はない。なお,訴状のとおり,原告は弁護士費用等情報の詳細な個別内訳については必ずしも開示を求めておらず,被告が当該弁護士事務所に支払った弁護士費用の総額や大項目ごとの合計(以下「合計金額等情報」)といった,特定法律事務所の内部規定等運営上における機密情報を推察することが不能である情報に関して開示を求めている。
   原告として,合計金額等情報から,当該特定弁護士事務所の営業秘密に属する情報を逆算することなど明らかに不可能であることを訴状および原告準備書面(1)において再三指摘しているにも関わらず,被告はこの点一切説明しないまま,成立し得ない「おそれ」を根拠に,法5条2号イ該当性を主張し続けている。法5条2号イに定めのある「おそれ」とは,情報の開示により事業者等が何らかの不利益を受けるおそれがあるというだけでは足りず,競争上の地位又は事業運営上の地位その他正当な利益に対する具体的な侵害を受ける蓋然性が客観的に明白である場合に限られると解されることに鑑みれば,こうした観点からしても,まず合計金額等情報については法5条2号イに該当するとはいえず,開示は妥当である。
   なお,被告は「甲第6号証の支払決議書の記載金額のすべてが弁護士費用の支払いに関するものであるため,「全体金額」を開示することは個別の支払金額等を開示することと同義である。」とも主張するが,記載金額のすべてが弁護士費用の支払いに関するものであることが,なぜ全体金額の開示と個別の支払金額を開示が同義であることの理由になる,と被告が考えているのか不明であり,主張の意図を図りかねるというほかない。

(2)被告は,被告準備書面(1)に引き続き,被告準備書面(2)4項(2)において,本件訴訟に先行して原告が申し立てた審査請求に対する乙3号証の答申を援用するが,そもそも当該答申自体が極めて不当なものというべきである。なぜなら,原告はかかる審査請求において「①弁護士費用情報の開示を支持する答申例・判例が多数存在すること」「②審査会自身が,弁護士費用情報の開示を支持する判例を出しており,答申選にも掲載していること」「③弁護士費用情報が開示された事例は多数あるにも関わらず,その結果,特定弁護士事務所の権利利益が害された事例は存在せず,法5条2号イにいうおそれが生じるとする根拠が不明であること」「④法5条2号イにいうおそれが生じないことは明らかであり,それでも生じると主張するのであれば,その具体的な根拠を提示すべきこと」などを指摘したにも関わらず,争点となるべき原告のこうした主張に対して審査会は一切の判断や検討を示さないまま,被告の一方的な説明のみを採用して,「諮問庁の説明は否定しがたい」とのみ言及して結論とした(乙3)。なぜ「否定しがたい」のかや,原告の上記①ないし④にかかる主張がなぜ否定されるかについて,審査会は一切言及しておらず,とうてい公平中立な審査とは言い難いものであることは明らかである。また,上記②のとおり,審査会自身の過去答申例と矛盾していることは致命的である。これは,乙4に示す答申でも同様である。そのため,原告は訴状別紙4項にかかる請求について,あらためて裁判所による審理を求めているものである。

(3)また,弁護士費用情報の開示を支持する最近の地方自治体による答申例としては,葛飾区平成31年度答申第2号(甲44)もある。この答申においては,宮崎地裁平成9年1月27日判決・東京高裁平成3年5月31日判決が「『公開することにより当該事業を営む個人に明らかに不利益を与えると認められる情報』に該当するというためには,当該情報が公開されることにより,事業活動等に何らかの不利益が生じるおそれがあるというだけでは足りず,競争上の地位等の正当な利益は具体的に侵害されることが客観的に明白な場合をいう」と判示していることを指摘しつつ,弁護士費用情報の開示を妥当と裁決している(なお,被告が「正当な利益が具体的に侵害されることが客観的に明白」である説明を一切なしていないことは,上記で指摘したとおりである)。
   さらに,弁護士費用の開示を認める同様の答申例としては,墨田区による令和元年11月1日付31墨行審第37号答申(甲45),目黒区による平成30年8月8日付け目企広第755号・平成30年8月22日付け目企広第862号答申(甲46)がある。いずれも,日本弁護士連合会の会則である報酬規程第6条が「弁護士等は,弁護士等の報酬に関する自己の情報を開示し,及び提供するよう努める」と規定し,弁護士報酬に関する基準等の情報開示を要求している事実を指摘して,弁護士との契約金額を非公開とすべき特段の事情を認めることは困難であると判断している。特に,甲45号の答申においては,弁護士報酬等にかかる契約情報について,「単に着手金及び報酬金を訴訟1件当たりの単価として定めたものに過ぎず,この定め方に,弁護士業務の営業機密やノウハウに属するような競争上重要な要素などが含まれているとは認められず,これを非公開として保護すべき事情はない。」と言及している。

5 訴状別紙5項にかかる主張について
(1)被告は,被告準備書面(2)5項(1)において,日時情報を開示することにより報告書の対象者が特定されるおそれがあり,法5条1号前段の個人識別情報に該当する旨を主張するが,答弁書および被告準備書面(1)と同様の主張を繰り返しているだけであり,新規の主張や根拠は認められない。日時情報を開示したとして,様々な観点から報告書の対象者のプライバシー権等が侵害されえないと結論されることは訴状および原告準備書面(1)で指摘のとおりである。
   また,被告は,「しかし,自死事案であることが周知されているかどうかと,上記のとおり事案経過の詳細が明らかになることは別の問題であり,しかもカウンセラーの講演はおよそ対象事案が「慣行として公にされている」ことの根拠となるものではない。原告の指摘は,法5条1号ただし書イに該当することの根拠とはなりえない。」などと主張するが,原告が甲7号証の記載などから自死事案であることが周知されていることを指摘したのは,法5条1号但書イとの兼ね合いを検討したものではなく,被告が被告準備書面(1)において「学校の内外を問わず当該案件が発生したことを公表しておらず」などと説明していることとの矛盾を指摘したものである。そして,被告はこの点,自死事案であることが学内において周知されている事実自体については特に否定しておらず,被告準備書面(1)における当該説明が誤っていること,自死事案であることが学内において周知されていること,は明らかである。
   こうした事実に加え,訴状において原告が示したような方法ですでに被告が事実上日時情報を明らかとしている(または明らかとできる)ことを鑑みれば,被告が日時情報を開示することにより,報告書の対象者が新たに失う権利利益(特に法5条1号前段該当性を満たすプライバシー権)はとくに存在しないというべきであり,開示することが妥当である。

(2)被告は,被告準備書面(2)5項(2)において,「日時の記載が開示される可能性があることが被告の教職員に認知されると,類似の事件・事故事案が発生して報告書を作成する際,自身の対応経過が明らかとなって批判の対象となることなどを懸念して,教職員が対応経過の詳細についての報告を控えるなど,被告が事件・事故に関する経緯の詳細を把握したり,報告書を作成することに支障が生じるおそれがある。」などとして,日時情報の法5条4号柱書該当性も主張するようである。
   しかし,既に開示されている甲7号証のとおり,対応内容自体はすでに一定度明らかとされているものであり,そこから記載のある日時のみ新たに明らかになることで,被告の教職員がいきなり批判の対象にされるという被告の主張は,あまりに飛躍していて到底受け入れがたい。また,誰が「批判」をするのか,被告が想定するところの主体も不明であり,主張の趣旨も不明瞭である。
   ところで,学生の死亡事案に対応した長野高専の教職員について,当該教職員の氏名・所属その他を特定可能な情報はすべて法5条1号前段に基づいて不開示とされており,またそうすることに原告としても異存はない。すると,記載のある当該教職員が誰かも不明である以上,そもそも「批判」のしようもないのであり,日時情報の開示の有無によってこの状況に変化があるとも考えられないことから,被告のかかる主張は著しく前提を欠いたものと言わざるをえない。
   さらに,仮に被告のかかる主張を採用するとしても,教職員の対応にかかるもの以外の日時情報は法5条4号柱書に該当しないことは明らかであって,こうした箇所について開示されるべきであることに変わりはない。

                         以上
**********

○証拠説明書(甲35~46号証) ZIP ⇒ 20200813ib3546j.zip
○書証(甲35~46号証) ZIP ⇒ b3546.zip
○被告訴訟代理人あて送付書兼受領書 ZIP ⇒ 20200813tiqj.zip


■ところで冒頭説明のとおり、森裁判長は前回口頭弁論で、追加主張があれば8月13日を期限に提出するよう指示しましたが、その指示は原告だけに向けたものではありませんでした。すなわち、入れ違いに被告高専機構側が準備書面(3)を提出している可能性は高いと考えられました。

 帰宅してから当会事務局長に確認したところ、やはり8月13日の午前10時過ぎに田中・木村法律事務所からFAXで書面が送られてきていたことが判明しました。しかし確認してみると、準備書面は含まれておらず、乙5として答申例のコピーが一部のみと、あとはその証拠説明書だけが送られてきていました。

○送付書と被告証拠説明書 ZIP ⇒ 20200816ti5j.zip
○乙5号証 ZIP ⇒ 202008165.zip

*****被告証拠説明書*****
令和元年(行ウ)第515号 法人文書不開示処分決定取消請求事件
原 告  市民オンブズマン群馬
被 告  独立行政法人国立高等専門学校機構

            証  拠  説  明  書

                           令和2年8月13日

東京地方裁判所民事第2部Bc係 御中

             被告訴訟代理人弁護士  木  村  美  隆
                  同      藍  澤  幸  弘
                  同      角  谷  千  佳

              記

●号証:乙5
○標目: 答申書(平成29年度(独情)答申第56号)
○原本・写:写
○作成年月日:H30.2.7(答申日)
○作成者: 情報公開・個人情報保護審査会(総務省ホームページより)
○立証趣旨: 日本政策金融公庫が支払った弁護士費用の単価額について,法律事務所の競争上の地位を害するおそれがあるとして,当該事項が法5条2号イに該当すると判断した答申例があること。なお,諮問手続において,諮問庁である日本政策金融公庫は,弁護士が依頼者との間で締結する個別の委任契約における報酬内容が弁護士間の競争上重要な要素であること等を指摘した裁判例(諮問庁が被告となっているもの)を引用しており,委任契約における弁護士報酬の内容について,法5条2号イに該当する旨判断した裁判例があると推測される。
*********

【乙5号証は上に掲載のファイルもしくはhttps://www.soumu.go.jp/main_content/000531629.pdfをご覧ください】

■このように被告高専機構側は、最後の反論機会において、準備書面すら作らない手抜きそのもので、弁護士費用情報の不開示を支持する総務省情報公開・個人情報保護審査会の答申を新たに1つだけ持ち出してくるに留まりました。しかし、そもそも総務省審査会自体が、他判例や自治体多数の判断どころか、自分たちの過去の答申例とすら矛盾した答申をメンツからかせっせと作り続けているのですから、前後する年度で同じ組織の同じメンバーが量産してきた似たような答申例を2、3ばかり出してきても、説得力はそこまで上がらないはずです。

 しかも、「法5条2号イに該当する旨判断した裁判例があると推測される。」となぜか証拠説明書の中で主張を始める始末です。ひょっとして判例があるのではないか、などという曖昧な「推測」でいちいち審理が左右されていては敵いません。実際の判例のコピーどころか年度も裁判所も事件番号すらも示せないのでは、わざわざ目玉が飛び出るほどの金を使ってプロの弁護士を使っている意味がありません。

 ベラボウな家賃を払ってわざわざ銀座に事務所を置いているのですから、裁判所に行って裁判資料を漁ることはいくらだってできるはずです。腐ってもプロとして仕事をしているのですから、判例集を事務所に取り揃え、膨大なデータ量と優秀な検索機能を誇る有料判例データベースとも利用契約しているはずです。依頼人の高専機構からはたっぷりと金を貢がれているにも関わらず、弁護士3人掛かりでここまで手間を惜しんで横着するのですから、やはり安定の「田中・木村法律事務所クオリティ」を再確認させられました。

■当会の原告準備書面(2)、そして被告高専機構側の出してきた「添え物」を見て、本件を担当する森裁判長はどのような評価をし、判断を下すのでしょうか。

 8月20日の15時半から東京地裁7階703号法廷で開かれる本第一次訴訟第4回口頭弁論の様子については、追ってご報告します。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】コロナ凍結の第二次訴訟再開目前に届いた被告高専機構の準備書面(2)

2020-08-14 01:15:00 | 群馬高専アカハラ問題
■群馬高専アカハラ犯の雑賀洋平が沼津に「人事交流」で異動していた最中、この「異動」に関する経緯等情報の開示を求めたところ、沼津異動期間がなぜか黒塗りとされて文書が出てきました。裏には、高専機構の情報不開示アドバイザーであるいつもの銀座の弁護士の影がありました。とにかく執拗に延々と理不尽な黒塗りで嫌がらせしてくることに辟易としたため、2019年10月の高専過剰不開示体質是正訴訟プロジェクトの一環として、ここに争点を絞った訴訟を提起し、第二次訴訟としておりましたことは既報のとおりです。

 提訴に応じて今年1月29日に被告高専機構の答弁書が出され、それを踏まえて2月4日に第1回口頭弁論が開かれました。そして、被告の説明不足を指摘した清水裁判長の訴訟指揮により、3月3日に答弁書補充となる被告準備書面(1)が提出されたため、当会ではこうした被告高専機構の杜撰な主張を一点一点指摘して準備書面を作成しました。ところがこのたった2か月程度の間に、いきなり現れた新型コロナウイルスの脅威が瞬く間に全世界を覆い尽くしてしまい、歴史的な緊急事態宣言発令に揺れる2020年4月7日の東京で、当会は原告準備書面(1)を提出したのでした。この緊急事態宣言のため、4月21日に控えていたはずの第2回口頭弁論は中止され、再開の目途すら付かなくなってしまっていました。

 その後、7月8日にようやく再開の連絡があり、並行する第一次訴訟と事実上日程を併合する形で、8月20日にようやく半年と半月ぶりの口頭弁論が開かれるはこびになりました。

○2019年10月20日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その3)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3057.html
○2020年3月5日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第二次提訴に対する高専機構からの答弁書と第一回口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3128.html
○2020年4月13日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】緊急事態宣言に揺れる東京で原告当会が第二次訴訟準備書面(1)提出!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3149.html
○2020年7月9日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】七夕の第一次訴訟第3回弁論報告&第二次訴訟の再開通知到来!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3180.html

■すると、待ち望んだ口頭弁論再開が2週間後に迫る8月7日、被告高専機構の代理人弁護士事務所である銀座の田中・木村法律事務所から、被告準備書面(2)が突然FAXで送られてきました。
 内容は、原告当会が4月7日に提出した上記の原告準備書面(1)に対しての再反論となっています。本来、コロナ騒ぎがなければ、第2回口頭弁論では原告準備書面(1)までを吟味して次の訴訟指揮がなされるはずでしたが、未曾有の事態によってその日程は宙に浮いてしまいました。今回、「コロナ様」のおかげで転がり込んできた4か月もの時間をフルに使って、原告準備書面(1)を無効化するためのありとあらゆる詭弁とハッタリを用意してきたものと思われます。それを示すように、今回の被告準備書面(2)は7ページと、手抜き恒例事務所にしてはそれなりの分量です。

■それでは、第二次訴訟に関しての被告高専機構側の準備書面(2)の内容を見てみましょう。

*****被告準備書面(2)*****ZIP ⇒
FAX送信分:20200807f1iqjfaxm.zip
郵送によるクリーンコピー:20200808c1iqjxnrs.zip
令和元年(行ウ)第549号 法人文書不開示処分取消請求事件
 原 告  市民オンプズマン群馬
 被 告  独立行政法人国立高等専門学校機構

          準 備 書 面(2)
                     令和2年8月7日

東京地方裁判所民事第51部2B係  御中

           被告訴訟代理人弁護士  木 村 美 隆
                同      藍 澤 幸 弘

             記
 原告の令和2年4月6日付準備書面(1)について
 1 同1項(1)について
(1) 原告の指摘事項
   原告は,被告における高専間人事交流制度(以下「人事交流」という)の実施にともなう人員補充について,被告が一般採用により正規教員または非常勤講師を補充する場合には「補充必要性」を公表周知すべきであること,他校から人事交流制度により教員を補充する場合には,派遣受入校(かつ派遣元校)の校長が選択的に却下できるので人事管理に支障は生じない,と指摘する。
   しかし,原告の上記指摘は,人事交流の実施にともなう人員補充が,派遣期間内に限定されたものであることを前提としていると解され,実際に各高専が非常勤講師を採用する場合の実態とは異なっている。また,人事交流において交換的に教員を派遣する揚合には双方で派遣期間の調整が行われるのであり,関係者が派遣期間の内容を承知している。被告のいう人事管理上の支障が生じるおそれ(法5条4号へ)は,このような交換的派遣を念頭に置いたものではない。

(2)高専間人事交流制度にともなう非常勤講師の採用の態様
 人事交流により派遣元校が教員を派遣する場合,派遣元校の他の教負や非常勤講師が,派遣教員の実施していた授業を担当する方法により派遣教員の業務を代替する場合もあれば,派遣実施前に非常勤講師を新たに採用する場合もあり,派遣教員が行っていた業務を補充する方法は,各学校の判断に委ねられている。なお,人事交流により派遣元校と派遣受校が交換的に教員を派遣することはあるが,派遣元校の業務を補充するために他校から非常勤講師が異動するという対応は行っていない。
 そして,各学校が人事交流の実施にともなう人員補充を念頭に非常勤講師を採用(被告の外部から採用する場合もあり,派遣元校以外の被告の高専に所属する非常勤講師等と新たに契約を締結する場合もある)しようとする場合,候補者には派遣教員の派遣期間に応じた契約期間を提示している。そして,この契約期間終了後に契約を更新するかどうかは各学校の業務の実情に応じて判断されており,非常勤講師の担当する授業内容を変更して契約を更新するといった場合もある。このように派遣教員が派遣元校に復帰した後には,常に非常勤講師の契約を終了させるといった取り扱いは行っていないため,非常勤講師を募集する際には人事交流の実施にともなう人員補充のための採用であることまでは示していない。
 以上のように,派遣教員の実施していた業務を補うために非常勤講師を採用する場合でも,当該採用は人事交流の実施をきっかけにしたものにすぎず,派遣期間の終了によって非常勤講師の契約がただちに終了するものでもない。それにもかかわらず,同制度における派遣が決定した段階(甲第3号証の作成日は,派遣開始日の約6ヶ月前である)で派遣期間が外部に公開されると,非常勤講師の募集が同制度による派遣にともなうものであり,派遣期間満了後には契約更新の見込みはないといった推測を生じさせることともなって,派遣元校における非常勤講師の採用活動に支障が生じるおそれがある。
 よって,甲第3,4号証のうち,交流期間派遣期間の記載は,法5条4号への「人事管理に係る業務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」のある情報が記載されたものに該当する。

2 同1項(2)について
(1)原告の指摘内容
 原告は,人事交流における派遣期間について,派遣元校や派遣受入校の教員に周知されないとの被告の主張は事実に反し,学校長が内部の教員等に人事交流の派遣期間等の情報について守秘義務を課されていたり,慣例としてそのよう(保秘扱いとして)に運用されている事実は認められないとし,また,実際に派遣教員や各高専管理者が口頭やホームページ等の挨拶で派遣期間を教員,学生に周知することが通例であると指摘する。

(2)派遣受入校への派遣期間の通知方法と派遣期間の取り扱いについて
 人事交流に関し,被告が各高専の学校長に通知した書面は甲第3,4号証のとおりである。甲第3号証は,派遣元校及び派遣受人校の各校長への通知であり,甲第4号証は全高専の校長へ宛てた通知であるが,これら通知の方法は,被告が甲第3,4号証の文書のデータを被告内部(機構本部及び各高専)で利用しているファイル共有システム(被告内のネットワークからのみ接続可能である)に保存し,その旨を甲第3号証は該当する高専の人事担当者に, 甲第4号証については校長,事務部長ほかの人事担当者(以下「人事管理者」という)に告知する方法により行っている(乙1)。甲第3号証が保存されたフォルダは,アクセス権限を有する者しか開くことができず,甲第4号証については人事管理者にフォルダやファイルを開くためのURLを通知する(乙2) という方法で管理しており,甲第3号証はアクセス権限を有する人事担当者数名のみが閲覧できる運用,甲第4号証は人事管理者のみに通知する運用となっている。このように,人事交流における派遣情報は,アクセス権限を有する者ないし人事管理者のみが知りうる態様で管理されており,派遣決定がなされた段階で,被告が派遣期間を派遣元校や派遣受入校の教員に周知している実態はない。
 また,甲第16号証で指摘する教員の挨拶文が,人事交流で派遣された教員のものであること,甲第14号証が奈良工業高等専門学校のホームページから引用されたものであることは原告が指摘するとおりである。しかし,派遣された教員が派遣受入校において自身の派遣期間を明らかにするかは,各教員や各高専の判断によるのであり,派遣された教員が派遣期間を自ら公開する慣行があるといった実態はない。
 そもそも,人事交流にともない非常勤講師の補充がなされるのは,人事交流の開始前であって,人事交流の実施後に派遣教員が派遣期間を公開したとしても,非常勤講師の補充に対する影響は小さいと考えられる。その意味で,派遣から約半年前の派遣決定時に派遣期間を公開することと,派遣教員が派遣開始後に派遣期間を公開することは,非常勤講師の補充に対する影響が大きく異なるというペきである。

3 同1項(3)について
(1)原告の指摘内容
 原告は非常勤講師の雇用は形式上1年ごとの更新であるところ,人事交流による人員派遣にともない非常勤講師を採用する場合には,採用の際に見込まれる勤務期間をあらかじめ通知することが通常であり,被告の「派遣期間が認知されると更新の可能性が低いと応募者側が判断して応募を見合わせるおそれがある」との主張は,たとえば採用の際,契約更新の可能性が皆無であるとあらかじめ分かっているにもかかわらず,そのことに一切触れないまま,契約に至らせることを優先して「更新可能性有」などと虚偽を伝えていることに等しい,と指摘する。

(2)非常勤講師の採用期間について
 しかし,人事交流による人員派遣にともない非常勤講師を採用するにあたり,候補者には派遣期間にあわせて実質的な契約期間を説明していること(非常勤講師の契約は,形式的には1年ごとの更新となっていることは,原告の指摘のとおりである),各高専の業務の実情により派遣期間満了後も契約を更新する場合もあり,募集をする際には,人事交流の実施にともなう人員補充のための採用であることまでは示していないことは前記1項(2)で述べたとおりである。
 原告は,人事交流にともなう非常勤講師の採用が,派遣期間の穴埋めとして採用される者であり,派遣期間を終えた派遣教員が派遣元校に復帰するかどうかと,非常勤講師の契約更新可能性の有無が直結しているのは明らかである,との認識を前提に前記(1)の指摘をしているが,その前提となる認識が実態と異なっている。派遣教員の派遣元校への復帰と,非常勤講師の契約を更新するかどうかは必ずしも直結していないことは,上記のとおりである。

4 同2項について
(1)原告の指摘内容
 原告は,被告が派遣期間情報の記載された文書を各高専内部の一般教職員や学生に向けて配布掲示させたり,インターネット上等で公表したりといった積極的な措置を行っていないにすぎず,派遣期間情報を積極的に不開示情報として扱うよう定めた規程ないし慣例が存在していない以上,派遣期間情報は法5条1号ただし書きの,「慣行として公にすることが予定されている情報」に該当する,と指摘する。

(2)派遣期間情報が「慣行として公にすることが予定されている情報」に該当しないこと
 しかし,法5条1号ただし書きの「慣行として公にすることが予定されている情報」とは,公にすることが慣行として行われていること,事実上の慣習として公にされていること,または公にすることが予定されていることを意味しており当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても,それが個別的な事例にとどまる限り「慣行として」にはあたらず(乙3),例えば取材や雑誌への投稿・掲載等でたまたま明らかになっているものであれば,「慣行として」には該当しないとされる。
 原告は人事交流の実施後に派遣教員が挨拶等で派遣期間に言及したり,高専が派遣期間を開示している事案があることを指摘して派遣期間が「慣行として公にすることが予定されている情報」に該当すると指摘するが,被告において派遣受入校の高専や派遣教員が派遣期間を公にするような慣行はなく,これらの個別的な事例があったことが「公にする慣行」があることの根拠となるものではない。
 また,そもそも人事交流における派遣実施後に派遣期間が明らかにされることと,その約半年前の段階における派遣決定時に派遣期間が公にされることは意味が異なることは前記のとおりであり,派遣教員等が派遣期間を明らかにすることは,派遣決定時における派遣期間を開示する「公の慣行」の根拠となるものではない。
 なお,被告において,人事交流における派遣決定時に派遣期間を公にする慣行はない。

5 同3項について
(1)原告の指摘内容
 原告は,人事交流におけるすべての事案に関する派遣期間の開示を求めているわけではなく,訴状別紙に示す雑賀氏個人の派遣期間情報に限って開示しても,法5条4号への「公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」が新たに生じうるおそれはなく,法6条に従って部分開示されるべきであると指摘する。

(2)法6条における部分開示の内容
 そもそも法6条は部分開示について「独立行政法人は開示請求に係る法人文書の一部に不開示情報が記録されている場合において,不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは,開示請求者に対し,当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。」と規定しており,不開示部分について裁量的に開示する義務を生じさせる規定ではない。
 人事交流における派遣期間の情報が不開示事由に該当することはこれまで主張したとおりであり,法6条に関する原告の主張は,同条の解釈を誤ったものといぅべきである。
 なお,甲第15号証は人事交流における派遣者及び派遣期間を一覧にまとめたものであり,原告がどのような経緯でこの書面を入手したかは不明であるが,被告がこのような一覧表をホームページで外部に公開したり,被告内部においてこのような一覧表が周知されているといった実態はない。
                                      以上
**********

*****証拠説明書と乙号証*****ZIP ⇒
FAX送信分:20200808c1iqjxnrs.zip
郵送によるクリーンコピー:20200808c2i13jxnrs.zip
令和元年(行ウ)第549号 法人文書不開示処分決定取消請求事件
原 告  市民オンブズマン群馬
被 告  独立行政法人国立高等専門学校機構

            証  拠  説  明  書

                           令和2年8月7日

東京地方裁判所民事第51部2B係 御中

             被告訴訟代理人弁護士  木  村  美  隆
                  同      藍  澤  幸  弘

              記

●号証:乙1
○標目:メール(平成31年度高専・同技科大間教員交流制度派遣推薦者の派遣決定について)
○原本・写:写
○作成年月日:H30.10.10
○作成者:被告
○立証趣旨:被告が人事交流の派遣元校及び派遣受入校の人事担当者のみがアクセスできるファイルに甲第3号証を保存する形式で派遣決定の内容を通知しており,派遣決定時に,派遣期間を関係する高専の教員等に公開,周知していないこと

●号証:乙2
○標目:メール(平成31年度高専・同技科大間教員交流制度派遣者の決定について)
○原本・写:写
○作成年月日:H30.10.10
○作成者:被告
○立証趣旨:被告が人事交流の派遣決定時に,被告が各高専の校長,事務局長等の人事管理者に限り派遣決定に関する文書(甲4)にアクセスするためのURLを告知しており,派遣決定の内容を各高専の教員等に公開,周知していないこと

●号証:乙3
○標目:独立行政法人国立高等専門学校機構における法人文書の開示決定等に係る審査基準(抄)
○原本・写:写
○作成年月日:H16.4
○作成者:被告
○立証趣旨;被告における,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律に基づく処分に関する審査基準の概要,法5条1号ただし書イの「慣行として公にされた情報」とは,公にすることが慣行として行われていること,事実上の慣習として公にされていることを意味しており,当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても,それが個別的な事例にとどまる限り「慣行として」にはあたらないこと。
なお,本審査基準は,文部科学省における行政文書の開示決定等に係る審査基準に準じている。
**********

■4か月間もかけて熟慮してきたわりには、致命的な点を間違えています。なぜか、原告当会が開示を求める雑賀洋平の派遣開始決定が派遣から約半年前に作成されたことをもって、原告当会が派遣開始前の時点で当該情報の公開を求めたことに話がすり替わっています。そしてその事実誤認、というよりもはや妄想を前提に、雪崩をうったように何度も致命的に間違えた主張をしています。

 なお、当会が雑賀洋平の沼津異動経緯に関する情報について開示請求をしたのは、とっくに沼津に異動済みの2019年8月9日です(https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3041.html)。そもそも因果関係として、雑賀洋平が沼津に異動したと知ったために開示請求をしたのですから、時系列がアベコベです。

 しかも、ご丁寧にも高専機構は、「人事交流の実施後に派遣教員が派遣期間を公開したとしても,非常勤講師の補充に対する影響は小さいと考えられる。その意味で,派遣から約半年前の派遣決定時に派遣期間を公開することと,派遣教員が派遣開始後に派遣期間を公開することは,非常勤講師の補充に対する影響が大きく異なるというペきである。」として、異動完了後にその予定期間を公開しても問題ないと自ら認めてしまいました。信じられないまでの自爆行為ですが、高専機構と田中・木村法律事務所はいったい何を考えているのでしょう。

 本気で事実誤認しているものでないとすれば、故意に原告当会のやってもいないことをやったことにして、話の大前提をすり替えたまま、強引に判決に持ち込もうとしているとしか考えられません。国立高専の人事交流制度という極めてマイナーな領域の話なので、いくら適当なことを言っても、裁判官はよく理解しないまま国家機関である自分たちの主張を鵜呑みにして判決を出してくれると期待しているのでしょうか。しかし、原告が開示請求をしたのが雑賀の沼津異動前か異動後かというのは、もっとも根本的で単純な事実関係なのですから、いくら高専の認知度の低さを利用して煙に巻こうといっても無理があります。

■今回、被告高専機構側はコロナのおかげで空いた時間を使い、本来は原告の準備書面(1)を踏まえて行われるはずだった第2回口頭弁論の直前に、自分たちの準備書面(2)を差し込んできました。しかし普通に考えれば、このタイミングでは準備書面は出さずにおいて第2回口頭弁論を済ませ、第3回口頭弁論直前に準備書面を提出したうえそのまま結審させていれば、準備書面の作成にはさらに時間を使え、しかも原告側に反論機会を与えないまま時間稼ぎもできたはずです。

 そこから推測すると、被告高専機構側は、原告が最後に準備書面を出したまま第2回口頭弁論で結審されてしまうリスクを恐れて、あえてこのタイミングで準備書面を提出してきたものと考えられます。しかし、裁判官がよほどのポンコツでなければ、いくらなんでもこの破綻した準備書面がそのまま通るとも思えません。

■原告・被告双方から出揃っている準備書面を見て、清水裁判長はどのような判断を下すのでしょうか。当会では、コロナによるイレギュラーや被告側のなりふり構わない杜撰な主張に鑑み、再度原告に反論機会を与えるため第3回口頭弁論を開くことを強く要請する方針です。8月20日の16時から東京地裁4階419号法廷にておこなわれる第2回口頭弁論の様子については、追ってご報告します。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】七夕の第一次訴訟第3回弁論報告&第二次訴訟の再開通知到来!

2020-07-09 01:03:00 | 群馬高専アカハラ問題

前日同様の梅雨空の下、前日とは打って変わってひっそりとした風情の裁判所と歩道。

■国立高専校長の選考実態、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟の弁護士費用、長野高専連続自殺の発生年月日などなど、高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報は枚挙にいとまがありません。こうした悪質な情報黒塗りの数々のいくつかをピックアップして不開示処分の取消しを求めた第一次訴訟(令和元年(行ウ)第515号)では、既報のとおり被告高専機構側もなりふり構わぬ抵抗を見せています。

 その第3回口頭弁論が4月14日に予定されていたのですが、寸前で発表された新型コロナ緊急事態宣言により急遽中止され、再開も見通しがつかない状況に置かれてしまっていました。その後、6月2日にようやく東京地裁から連絡があり、再日程が7月7日の13時半からに設定されていました。第一次訴訟のこれまでの流れは以下の記事で説明しておりますのでご覧ください。
○2020年6月3日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】コロナ中断の第一次訴訟に再開通知…第3回口頭弁論再日程は7月7日
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3170.html

 2月18日の前回口頭弁論では裁判長が直々に被告高専機構側の主張の杜撰さを指摘し、苦言が相次ぎました。そうした手厳しい指摘の数々を受けて、尻を叩かれた形の高専機構が、正確には高専機構が大金をはたいてすがる銀座の木村・藍澤・角谷弁護士トリオが4月6日に出してきたのは、「本気」のうかがえる10ページにも及ぶ被告準備書面(2)でした。その翌日、上述のとおり緊急事態宣言で裁判所が機能停止したため、被告準備書面(2)は陳述されないまま3か月以上塩漬けになっていました。七夕の第3回口頭弁論で、ようやくこの塩漬けが解かれることになります。
■7月7日、蒸し暑い曇り空の下、当会出廷者が東京地裁に向かいました。既報のとおり、この前日にも佐野太受託収賄初公判と前橋バイオマス訴訟の上告で訪れていたため、二連チャンです。

 ……移動途中、この前日の佐野太受託収賄初公判についての苦い記憶が呼び起こされていました。当会が別途追及を続ける長野高専の悲惨な現状を作り出した石原祐志・天下り前校長、そして、文科省のトップ幹部にのし上がった佐野太。共に早稲田大院理工研究科を出て1985年に科学技術庁内局に採用された唯一無二の同門同期でしたが、ほどなく石原祐志は出世コースで佐野太に差を付けられ、早々に本省からドロップアウトして外郭団体を渡り鳥することになりました。ところが、トップ級官僚まで登り詰めた佐野太の絶大な庇護のもとに長野高専校長という座を射止め、カモにされた同校で横暴の限りを尽くしました。

 ところが急転直下、18年7月に佐野太がバカ息子を裏口入学させた事件が発覚して失脚、石原は後ろ盾を失ってしまいました。王様気分で育てていた長野高専の金魚のフン幹部からかろうじて名誉教授の称号をもぎ取ったものの、校長の椅子どころか高専機構からも追われ、理化学研究所で閑職の悲哀を味わっています。そんな石原祐志・前長野高専校長の晩年を汚した盟友の顔を一目見ようと、勇んで群馬県から初公判の傍聴に臨もうとしていました。

 佐野太被告については、昨年秋以降、起訴されて一年以上が経過しても、いっこうにマスコミ報道がされないため、東京地裁刑事第16部に佐野太の刑事公判がいつ開かれるのか、随時問い合わせてきました。そうした中で、今年に入り、刑事公判が間もなく開かれると聞き、初公判はぜひ傍聴したいと念じていました。ところが肝心の当日朝、前橋バイオマス訴訟上告用書類の最終調整に手間取り、しかも、コロナのせいで割合空いていた朝の国道18号の交通量がもとに戻っていることに考えが及ばず、結局予定していた新幹線より2つ遅れの新幹線に乗るハメになり、10分の差で傍聴整理券取得を逃してしまいました。

 閑話休題。前日のそんな悔しい気持ちを思い起こさせるかのような梅雨空のもと、その日もN95マスクを付けて高崎から11時46分発の新幹線に乗り、東京駅から丸の内線に乗り換えて、霞ヶ関に着いたのは12時48分でした。そして小雨の降るなか裁判所に辿り着きました。報道陣と傍聴希望者でごった返していた昨日の賑わいも夢のように、ひっそりとしていました。

■さっそく玄関に備えられているアルコール液で手を消毒し、荷物検査と金属探知機を通り抜けて、昨日と同じ右手のエレベーターで7階の703号法廷に向かいました。


東京地裁第703号法廷の7月7日(火)開廷表。

 昨日の反省の反動で、開廷予定時間の30分前に着いてしまったので、誰もいない奥の控室でパソコンを取り出し、本件の裁判資料を入れたファイルを立ち上げて、ざっと目を通していました。ちなみに裁判所の中はWiFiが使えません。

 しばらくすると、ワイシャツをきたクールビス姿の男が二人、控室の前にやってきましたが、こちらを見ると中に入らずに引き返していきました。既に見慣れた藍澤弁護士ではありませんでしたが、703号法廷とその向かい側の704号法廷には午後1時半の本件の弁論以外に事件は入っていないので、おそらくこの事件を傍聴に来た高専機構関係者とみられます。

 開廷10分前に控室を出て、703号法廷の傍聴席入口のドアについている小窓を開けて中を覗くと既に照明が点けられていました。ドアノブを手をかけて開けようとしたら、スンナリ開いたため、中に入ると、既に男性書記官が開廷準備をしていたので、挨拶をして、出頭簿に名前を書くと、「どうぞ中にお入りください」と言われました。

 中に入って原告席に座り、隣の椅子の上にカバンを置き、控室で本件裁判資料を立ち上げておいたパソコンを机の上に置き、開廷時間を待ちました。すると、さきほど控室に入ろうとした男性2名が傍聴席に入ってきました。相変わらずくたびれた風情の藍澤弁護士もやってきて、出頭名簿の自分の欄に〇をつけると、被告席に着きました。この時、開廷5分前でした。さらにもう一人、男性の傍聴者が加わり、今回は初めて傍聴席に3名の姿が見られました。この一人も、筆者に近寄ったり声掛けをする風情ではありませんでした。筆者が試しにその人を見据えても特に表情や態度に変化は見られませんでした。したがって少なくともオンブズマン支援者だとは思えませんでした。3人ともワイシャツにスラックス姿でマスクを着用し、等間隔に座っていました。

 703号法廷は7階にありますが、裁判官が来るまでしばし静寂の時間が経過する際、部屋がなにやらミシミシと小さな音をときどき立てるのが気になります。これは、他の法廷でも耳にすることがあり、天井裏の空調ダクトの揺れだと思われます。コロナ対策で、裁判所も換気対策として風量を挙げているのかもしれません。しかし、今日のミシミシ音はかなり気になるレベルでした。ひょっとしたら、地下鉄の振動で、建物のこのあたりが共振を起こしているのかもしれません。

 などと思いを巡らしていると、1時半の定刻より1分ほど早く、裁判官席の右奥のドアの開く音がして、3名の裁判官が入ってきました。それにあわせて、いつものとおり、全員起立して軽くお辞儀をしたあと、久しぶりに本件弁論がスタートしました。

■第三回口頭弁論でのやり取りは以下のとおりです。

~~~~~~~~~~
書記官:令和元年(行ウ)第515号。

裁判長:はい、期日間に、被告から準備書面(2)が出されています。だいぶ前の話ではございますけれども。準備書面(2)は陳述されますか。

被告藍澤弁護士:はい。

裁判長:それから乙4号証が出されていますね。

被告:はい。

裁判長:えー、原告のほうでは今回の被告準備書面に対する反論はございますか。

原告:いや、特にありません。

裁判長:特にない?

原告:ええ。まあ、必要に及ばずと思っているんですけど。

裁判長:そうですか。裁判所のほうとしても、もうこれはかなり判断、こういう事案でもございますし、していいというふうには考えておるところですが、1点だけですね。

原告:はい。

裁判長:弁護士費用に関する情報なんですが、これがですね、あのう、どうも両様の考え方があるようで……ございます。で、この点については、もう被告のほうでは今回、準備書面の中でだいぶ書き込んでもらっておりますけども、双方とも、この件についてですね。補充される主張、あるいは、実際こういう裁判例があるとか、裁判のなかでの主張がございましたら、そのあたりは裁判所としてもう一回弁論を待って、お待ちしたいというふうに考えております。

原告:分かりました。

裁判長:なければもう、それはそれでかまいません。

原告:はい。ではそれをメインにして……一応ない、と申し上げたんですけど、気付きの点を書かせていただきます。

裁判長:他にもありましたら、お願いします。

原告:はい。

裁判長:かなり高い確度で次回は終了する考えでおります。

原告:はい、承知しました。

裁判長:被告のほうもそういう進行でよろしいでしょうか。

被告:はい。

裁判長:はい、ありがとうございます。それぞれどのくらいの時間がかかりますでしょうか。

原告:1ヶ月程度みていただければ。

被告:はい、同じく。

裁判長:1ヶ月程度、はい。では1か月程度でお出しいただくことを前提として、次回期日ですが、8月20日木曜日はいかがですか。午前、午後。たとえば午前でしたら11時とかいかがですか。

被告:すいません。午後の2時以降に……ああ、すいません。2時半以降なら。

原告:私はいつでも、こちらはいつでもOKです。

裁判長:では、2時半で。

原告:はい、わかりました。14時半。

裁判長:8月20日木曜日。

被告:あのう、3時はどうでしょうか。

裁判長:すいません、3時から別件があるので。

被告:はい。

裁判長:では3時半に。

被告:でもよろしければ。

原告:こちらはいつでも何時でもかまいません。では、15時半ね。

裁判長:それでは、15時30分で。それから先程お願いしました主張、立証のですね、締切りですけども、8月13日ということでお願いできますでしょうか。

原告:はい、承知いたしました。

裁判長:(被告に向かって)よろしいでしょうか。

被告:はい。

裁判長:それではこれで今日は終わりたいと思います。(と言い残して、陪席の2人の裁判官を従えて退廷)

(以上、この間約4分間)
~~~~~~~~~~

■というわけで、久しぶりの弁論を終えました。この中で森裁判長は、次の第四回口頭弁論での結審を示唆しました。もし原告・被告双方に追加の主張があれば、8月13日までに提出したうえで、8月20日(木)15時30分から第一次訴訟最終ラウンドのゴングが鳴らされることになります。

 ところで傍聴席にいた高専機構職員とみられる3人は、口頭弁論終了後、うち2名が藍澤弁護士と連れ立って何やら今後の作戦を話しながらエレベーターに乗って去っていきました。残るひとりは別途少し遅れて、通路に立つ筆者の脇を無言でさっさとすり抜け、帰って行きました。

 というわけで、高専機構としてもさすがに裁判の進行が気になっている様子がうかがえました。とはいえ、高専機構の職員が3人も傍聴に動員されたことは、かつて第6回口頭弁論までやり合ったうえに控訴審にまで達した群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟を通じてすら、一度もありません。そこから考えると、高専機構側も何かしらの事情を抱えているようです。

 当会が群馬県など地方自治体を相手取って行政裁判を起こした際は、だいたい職員が公務時間中に何人もぞろぞろ大名行列をなしてやってきます。不必要なほどの人数が徒党を組んでやってきて、全員が「公務」ということで公金から給料を貰いながら、「裁判観戦」を終えて帰っていきます。

 高専機構職員も、群馬県職員のように、裁判を利用すれば合法的に仕事をさぼれることに気付いたのでしょうか。それとも、渾身の法廷戦術を披露したあげくの前回口頭弁論の体たらくから、弁護士に丸投げだと手を抜かれるという危惧が生じて、「監視」を付けることにしたのでしょうか。真相は当人のみぞ知ります。

■ところで、当会が「高専過剰不開示体質是正訴訟」として起こしている裁判は、この「第一次訴訟」に加えて、「第二次訴訟」(民事第51部担当の令和元年(行ウ)第549号)もあることは周知のとおりですが、こちらは4月21日に予定されていた口頭弁論が緊急事態宣言直後に取り消されたまま、何の音沙汰もなくなってしまっていました。

 4月14日に予定されていた第一次訴訟第三回口頭弁論の再開通知が6月2日になされたのに、その1週間後の予定だった第二次訴訟第二回口頭弁論の再開通知が7月7日になっても届かないというのは、いくらコロナ禍での未曾有の混乱中とはいえ、変な話です。

 よって、口頭弁論終了後に民事第51部に立ち寄って、書記官に問い合わせたところ、「現在先行する事件から順次再開しているので、お申し越しの令和元年(行ウ)第549号事件については、追って連絡をすることになっている」と説明がありました。そしてパソコンでチェックしながら「本件につきましては、おそらく8月終わりか9月頃のセッティングになろうかと思われます。近々正式に通知することになります」と見込みを伝えられました。

■すると、翌8日の昼前に東京地裁民事第51部から電話がありました。担当の山本書記官いわく「昨日ご連絡をいただきありがとうございます。不在にしてて申し訳ありません。昨日お問い合わせの次回期日ですが、まことに勝手に決めさせていただき恐縮ですが、8月20日16時でお願いしたいと思います」とのこと。

 そこで、(あれっ、8月20日と言えば確か)と思い、当会担当者が「ちょっとお待ちください。念のため、スケジュール表を確認しますので」と言いつつ、パソコンの日程表を確認したところ、やはり前日に決まったばかりの第一次訴訟第四回口頭弁論(8月20日(木)15時30分)のぴったり直後になることがわかりました。

 なので、「ちょうどその直前に、民事第2部担当で同じく高専機構を相手取った事件の第4回弁論期日があるので、願ってもない時間帯です」と返すと、山本書記官は「前橋から来られるのですよね」と言いました。担当者からは、「1度の往復で2件の事件に対応できるので、大変ありがたいです。ご配慮ありがとうございます」とお礼を言い、期日請書を提出しました。

○第二次訴訟第二回口頭弁論期日請書 ZIP ⇒ i2_820j.zip

■当会としても出廷負担が減るため、このダブル日程は確かに紛れもなくありがたいものです。なので当会担当者も、電話をもらった当初はありがたい偶然として素直に喜んでいました。

 しかしよくよく考えれば、東京地裁の抱える膨大な事件数からして、偶然ということは考えにくいとすぐに気付きました。すると、裁判所の担当者がわざわざ気を利かせてくれたのでなければ、被告高専機構とその訴訟代理人である田中・木村弁護士事務所の希望が反映された形である可能性があります。

 真相は不明ですが、これで高専機構も「大名行列」を作りやすくなって小躍りしていることでしょう。

■よって、きたる2020年8月20日(木)のダブル口頭弁論の日程は、以下のようになります。

●第一次訴訟第四回口頭弁論:15時30分~
(東京地裁7階703号法廷)
●第二次訴訟第二回口頭弁論:16時00分~
(同地裁4階419号法廷)


 現実の民事裁判や行政裁判は、ゲームやドラマとは違って、特に丁々発止のやり取りや見せ場といったものはなく、口頭弁論は数分で終わってしまいます。

 したがって、白熱したシーンもなく味気ないものですが、それを承知の上で興味がございましたら、当日のこの時間帯にフリーであればぜひ傍聴にお越しください。2つの口頭弁論のうちの片方でも構いません。

 現実の裁判の雰囲気を味わえるほか、「高専」という組織の負の側面を具現化した藍澤弁護士と高専機構の職員らの姿を直接目にすることは、「高専とは何か」という問いを深く考え直す契機にもなるものと思料します。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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群馬高専“物質工学科”アカハラ事件を検証する…やっぱり杜撰だった西尾時代の調査経緯(後編)

2020-06-06 23:37:00 | 群馬高専アカハラ問題
★本記事前編を未読の方はこちら⇒ http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3172.html

(前編のあらすじ)群馬高専がまだ西尾校長時代であった2016年。言わずと知れた雑賀洋平による電子情報工学科アカハラ事件や寮生連続自殺・不審死事件が大きく注目されたことをきっかけにして、当会には堰を切ったように多数の告発が寄せられました。そうした中で発覚した事案のひとつが、主に2009~10年にかけて、同校物質工学科(以下「K科」)の教員3名が同学科の教員や学生にアカハラとみられる行為をはたらいていたことです。しかも悪質なことに、当時の竹本学校長(在職2010.4~2013.3)が、事件の揉み消しとみられる言動をしていたことも明るみに出ました。
 このK科アカハラ事件の実態調査に関して、当会では2019年10月8日、西尾時代におこなわれた「調査」の内容と経緯を明らかにするため、文書開示請求を群馬高専に提出しました。しかし、同年11月27日に開示された資料は真っ黒けでした。そのため当会は、疑問点を洗い出し、学校側に質問をしたものの、群馬高専側の対応はスローなものでした……。(以上「前編のあらすじ」)

■年末の質問受付メールで約束された「年明け早々」の返信を待っていると、1月30日にようやく以下の返信が到来しました。そして、開示文書にあらためて通し番号を付けなおしたもの、およびその通し番号と開示通知項目名の対応表が添付されてきました。事実上の開示やり直しということになります。

*****20/01/30群馬高専回答メール(1)*****
From: 群馬高専総務課 尾内
Date: 2020年1月30日(木) 17:02
Subject: RE: 12月5-6日開催の第11回高専出身校長研究会について(ご質問)
To: masaru ogawa
Cc: 群馬高専村田, 高専機構総務課総務係

市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様

お世話になっております。群馬高専の尾内でございます。

ご指摘いただいておりました(1)の件につき,お時間を頂戴いたしておりましたが,別紙のとおり,開示資料に通し番号を付し,対応表を作成いたしましたので,ご確認のほどよろしくお願いいたします。

また,(2)のご質問につきましては,今回開示の調査メモに基づき,資料No.66の回答メモを作成いたしておりますので,当該回答メモが最終結論に該当する文書でございます。なお,当該回答メモの作成日は,平成29年6月7日以前となりますが,具体的な特定は困難な状況です。
**********

*****資料対応表&通し番号付き開示文書*****ZIP ⇒ tj.zip
                       別紙
           開示文書 資料対応表

1. 市民オンブズマン群馬からの公開質問状を受けての事情聴取の実施について → No.1
2. 調査メモ(まとめ) → No.2~No.41
3. 調査メモ1 → No.42~No.43
4. 調査メモ2 → No.44~No.45
5. 調査メモ3 → No.46~No.47
6. 調査メモ4 → No.48~No.49
7. 調査メモ5 → No.50~No.53
8. 調査メモ6 → No.54~No.56
9. 調査メモ7 → No.57~No.58
10. 調査メモ8 → No.59~No.63
11. 調査メモ9 → No.64
12. 調査メモ10 → No.65
13. 回答メモ → No.66


【当会注:通し番号付き開示文書は併載ZIPファイルにてご覧ください】
**********

■こうして、群馬高専が開示文書をどう区分しているのかだけは、ようやく判明しました。これにより前記質問メールの(1)は解決されました。

 しかし意味が分からないのは(2)への回答で、群馬高専側が「No.66 回答メモ」を、本件アカハラ調査の「最終報告書」に相当するものだと説明していることです。質問状への回答方針(=調査結果)は西尾体制が何かしらの形で用意したにせよ、文書としての「回答メモ」は、明らかに前述の面談に臨むにあたり就任したての山崎校長のもと急遽用意された、説明内容を簡潔にまとめたメモ書きあるいは台本に過ぎないはずです。こんな1枚の「メモ」が、職員を動員して数か月を要した大調査の「最終報告書」というのは、無理筋にもほどがあります。

 加えて、仮に群馬高専側の説明を認めるにしても、当時の西尾校長は、調査が完了しているのに在任中にその結果を説明しなかったうえ、キチンとした最終報告書も作らないまま文科省に逃亡してしまったという二重の大問題が結局浮上してきます。


その出どころをめぐってひと悶着が起こった「No.66 回答メモ」。B項の方は、2016年12月26日に群馬高専総務課長から回答保留の三行半紙切れを渡されたとき、入れ違いに追提出した公開質問に関するもの(上記記事リンク参照)

 したがって同日、当会から以下の追質問メールを送信しました。

*****20/01/30当会質問メール(2)*****
From: masaru ogawa
To: 群馬高専総務課 尾内
Cc: 群馬高専総務課 村田、高専機構総務課総務係
日付: 2020/01/30 23:15
件名: Re: 12月5-6日開催の第11回高専出身校長研究会について(ご質問)

群馬高専総務課課長 尾内様
毎々お世話になります。受験業務等でたいへんお忙しい中、当会からの要請に応えていただき感謝申し上げます。

(1)については差し当たり了解いたしましたが、(2)のご回答については大きな疑問があります。

「No.66の回答メモ」は、あくまでも当会が2017年5月8日の貴学山崎校長宛「ご面談のお願い」にて調査結果の報告を依頼したことへの対応として作られた面談回答内容のメモに過ぎないはずです。
メモを作るためには、何かしらの最終調査報告を参照しなければならないはずで、「メモが最終調査報告である」というのは無理があるのではないか、と思います。

また、もし、「回答メモが最終調査報告である」とするのであれば、貴学西尾典眞前校長は(2月までに調査が終わっていたにも関わらず)最終調査報告を作成することなく退職されたということになります。
さらに貴学山崎現校長は着任後に最終調査報告を作ろうともせず完全に放置し、当会からの要請が無ければ最終報告は作られなかったということになります。
極めつけには調査に数ヶ月をかけ職員を各所に派遣した重大事案調査にも関わらず、正式な報告書としての体裁とは程遠い「回答メモ」をもって最終報告書としている、という問題の多い結論になってしまいますが、そのような理解で差し支えないでしょうか。

その上で、再度お聞きしますが、
「No.66の回答メモが最終調査報告である(すなわち、回答メモ以外は全て調査記録で、調査結果・最終判断・判断理由をまとめ、報告書としての体裁を整えた正式な最終報告書は作られていない)」
ということでよろしいでしょうか。肯定・否定で明瞭に回答を知りたく存じます。

また、「当該回答メモの作成日は,平成29年6月7日以前となりますが,具体的な特定は困難な状況です。」とのことですが、このように法人文書として開示がなされたということは、当然法人文書ファイルに記載があってのことと思料されます。法人文書ファイルには基本的に作成日、取得日、保存日等の情報を記載するのが規則のはずですが、そうした情報すら記録がされていない、という理解でよろしいでしょうか。

なお、参考として、「調査メモ(まとめ)」の作成日または保存日についてもお教え下さい。
**********

■すると、受験・卒業関連業務による多忙のためか、また待ちぼうけを喰らい、3月9日になってようやく追質問への回答メールが届きました。

*****20/03/09群馬高専回答メール(2)*****
From: 群馬高専総務課 尾内
Date: 2020年3月9日(月) 9:48
Subject: RE: 12月5-6日開催の第11回高専出身校長研究会について(ご質問)
To: masaru ogawa
Cc: 群馬高専村田, 高専機構総務課総務係

市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様

お世話になっております。群馬高専の尾内です。
ご照会いただいておりました件につきまして,お時間がかかってしまい大変申し訳ございませんが,以下のとおりいただいたご質問に対して朱書きにてご回答申し上げます。


>その上で、再度お聞きしますが、
>「No.66の回答メモが最終調査報告である(すなわち、回答メモ以外は全て調査記録で、調査結果・最終判断・判断理由をまとめ、報告書としての体裁を整えた正式な最終報告書は作られていない)」
>ということでよろしいでしょうか。肯定・否定で明瞭に回答を知りたく存じます。

→ 1月30日付けでご返信したメールのとおり,「回答メモ」が「調査メモ」の内容を踏まえ,「最終結論に該当する文書」として作成されたものでございます。

>また、「当該回答メモの作成日は,平成29年6月7日以前となりますが,具体的な特定は困難な状況です。」とのことですが、このように法人文書として開示がなされたということは、当然法人文書ファイルに記載があってのことと思料されます。法人文書ファイルには基本的に作成日、取得日、保存日等の情報を記載するのが規則のはずですが、そうした情報すら記録がされていない、という理解でよろしいでしょうか。

→ 「当該回答メモ」は,法人文書ファイルの中の一部として綴られているものでございます。なお,当該法人文書ファイルは,作成取得年度,保存期間の起算日,保存期間等が記載された法人文書ファイル管理簿に登載され,管理されております。

なお、参考として、「調査メモ(まとめ)」の作成日または保存日についてもお教え下さい。

→ 事情聴取の最終日である平成29年2月7日以降に作成されたものと判断しますが,作成日の特定まではできておりません。なお,本調査メモ(まとめ)が綴られている法人文書ファイルにあたっては,前記と同様に管理されております。
**********

■というわけで、回答に1か月以上をかけておきながら、圧倒される禅問答ぶりです。「回答メモ」が、最終報告書ないし「最終結論に該当する文書」なのであれば、必然的に様々な問題が出てきてしまいませんか、ということを指摘しているのに、「回答メモ」が最終結論だとひたすら繰り返すばかりで対話が成立していません。

 これ以上似た問答を繰り返しても同じところを回り続けるだけなのは明白だったので、手法を変えて、曖昧さを残さないよう回答方式を「YES/NO」に固定した質問メールを3月19日に送りました。

*****20/03/19当会質問メール(3)*****
From: masaru ogawa
To: 群馬高専総務課 尾内
Cc: 群馬高専村田, 高専機構総務課総務係
日付: 2020/03/19 12:25
件名: Re: 12月5-6日開催の第11回高専出身校長研究会について(ご質問)

群馬高専総務課
課長 尾内様

いつもお世話になります。
毎々、ご照会の件でやりとりをさせていただいておりますが、当方といたしましても、可能な限り正確なことをお聞きしたいと考えております。
したがって、曖昧なご回答や、きっちり質問内容に答えていない「回答」は、好ましくなく、学生らに学術的な論理のやり取りを教えるはずの貴学の品位を貶めかねないものではないか、とも危惧いたします。
また、そうした姿勢は、変に推量や解釈の余地を生みかねず、双方にとって不利益であると考えます。

さて、「1月30日付けでご返信したメールのとおり,「回答メモ」が「調査メモ」の内容を踏まえ,「最終結論に該当する文書」として作成されたものでございます。」とする3月9日付メールでの貴ご回答につきまして、再度お聞きいたします。
当方からはここに関して「肯定・否定で明瞭に回答を知りたく存じます。」と記したにも関わらず、「1月30日付けでご返信したメールのとおり」などとし、大変失礼ながら回答になっていないご回答になっているように見受けられます。

したがって、もう一度、以下の2点についてご質問いたします。
回答文は不要ですので、「はい・いいえ」のみでご回答をお願いいたします。

(1)本件調査に関し、「報告書としての体裁を整えた正式な最終報告書」はこれまで一切作成されていない。⇒はい・いいえ
(2)本件調査に関し、西尾校長時代に調査の「結論」は出されておらず、山崎校長就任以後にはじめて「結論」がまとめられた。⇒はい・いいえ

以上取り急ぎ。

市民オンブズマン群馬
代表 小川賢
**********

■極めてシンプルな2択質問がたった2つなので、5分で回答できるはずなのですが、また10日以上かかって3月末に回答メールが届きました。完全に群馬高専限定の話なのでいちいち高専機構本部にお伺いを立てる必要性も皆無同然に思われますが、それでも無理やり時間稼ぎがしたいようです。

*****20/03/31群馬高専回答メール(3)*****
2020年3月31日(火) 8:38
群馬高専総務課 尾内

市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様

お世話になっております。群馬高専の尾内です。
ご照会いただいておりました件につきまして,お時間がかかってしまい大変申し訳ございませんが,
以下のとおりいただいたご質問に対して朱書きにてご回答申し上げます。

(1)本件調査に関し、「報告書としての体裁を整えた正式な最終報告書」はこれまで一切作成されていない。⇒はい
※本事案に対する調査委員会は立ち上げていないことから調査報告書もございません。

(2)本件調査に関し、西尾校長時代に調査の「結論」は出されておらず、山崎校長就任以後にはじめて「結論」がまとめられた。⇒いいえ
**********

■驚くべきことに、「調査委員会」が立ち上がっていないので調査報告書も存在しないというのです。職員を長期にわたって動員し、聴取のため職員を公金で各所に派遣していたにも関わらず、調査報告書すら作らないのではいったい何のために「調査」したというのでしょう。そもそも、「調査委員会」を立てる立てないを一体どういう基準で決めているのでしょう。調査報告書を作って残したくない事案について「調査委員会」を立ち上げないなどという恣意的なことが許されるのであれば、やりたい放題です。

 しかも、「山崎校長就任後にはじめて結論がまとめられた」に否定で返しているということは、西尾時代に結論が出されていたということに他なりません。であるならば、なぜ「西尾時代にまとめられた『結論』はこの文書ですよ」と示せないのでしょう。どうして面談用の「回答メモ」が結論などという不合理な一点張りをしつこく続けるのでしょう。

 こうしてまた新たに生じた疑問の数々から、当会では4月6日に再度以下の質問メールを送信しました。

*****20/04/06当会質問メール(4)*****
From: masaru ogawa
To: 群馬高専総務課 尾内
Cc: 群馬高専村田, 高専機構総務課総務係
日付: 2020/04/06 18:00
件名: Re: 12月5-6日開催の第11回高専出身校長研究会について(ご質問)

群馬高専 総務課長
尾内様

 毎々お世話になっております。
 先日は年度末でお忙しい中ご回答をいただき感謝申し上げます。
 先日の2点質問へのご回答を踏まえ、更に疑問が湧きましたため、以下質問致します。

(1)「本件調査に関し、『報告書としての体裁を整えた正式な最終報告書』はこれまで一切作成されていない」という質問について、「はい」で答えられていること、さらに「※本事案に対する調査委員会は立ち上げていないことから調査報告書もございません。」との付言がなされていることを当方として確認しました。
 しかし、開示資料から、本件調査がそれなりの規模と期間をもって行われたことは明らかであり、それにも関わらず当時、「調査」をするにあたって調査委員会を立ち上げなかった理由はなぜか、お答えください。

(2)「本件調査に関し、西尾校長時代に調査の『結論』は出されておらず、山崎校長就任以後にはじめて『結論』がまとめられた」という質問に「いいえ」で答えられていることを当方として確認しました。
 ということは、西尾校長時代に調査の結論が出されていたことになりますが、その「結論」は、開示資料のうち、通し番号でいうと何番(から何番)に記載があるか、お教えください。
 また、山崎校長が作った「回答メモ」における最終結論は、西尾校長時代に出されていたその「結論」をおおむねそのまま踏まえたものであるという理解でよろしいでしょうか。

 以上、年度初めと新型コロナウイルス対応でお忙しい中恐縮ですが、迅速なご回答をよろしくお願い申し上げます。

  市民オンブズマン群馬
  代表 小川賢
**********

■すると、半月後に回答メールが届きました。

*****20/04/22群馬高専回答メール(4)*****
From: 群馬高専総務課 尾内
Date: 2020年4月22日(水) 13:54
Subject: RE: 12月5-6日開催の第11回高専出身校長研究会について(ご質問)
To: masaru ogawa
Cc: 群馬高専村田, 高専機構総務課総務係

市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様

お世話になっております。群馬高専の尾内です。
ご照会いただいておりました件につきまして,お時間をいただき大変申し訳ございませんが,以下,朱書きのとおりご回答申し上げます。

(1)「本件調査に関し、『報告書としての体裁を整えた正式な最終報告書』はこれまで一切作成されていない」という質問について、「はい」で答えられていること、さらに「※本事案に対する調査委員会は立ち上げていないことから調査報告書もございません。」との付言がなされていることを当方として確認しました。
 しかし、開示資料から、本件調査がそれなりの規模と期間をもって行われたことは明らかであり、それにも関わらず当時、「調査」をするにあたって調査委員会を立ち上げなかった理由はなぜか、お答えください。
→本件の調査は,市民オンブズマン群馬からの質問状を受けて,まず関係者への事実確認を行ったものであり,調査委員会としての位置付けではございません。よって,その確認結果も「調査メモ」としてございます。

(2)「本件調査に関し、西尾校長時代に調査の『結論』は出されておらず、山崎校長就任以後にはじめて『結論』がまとめられた」という質問に「いいえ」で答えられていることを当方として確認しました。
 ということは、西尾校長時代に調査の結論が出されていたことになりますが、その「結論」は、開示資料のうち、通し番号でいうと何番(から何番)に記載があるか、お教えください。
 また、山崎校長が作った「回答メモ」における最終結論は、西尾校長時代に出されていたその「結論」をおおむねそのまま踏まえたものであるという理解でよろしいでしょうか。
→調査の結論に該当する資料はNo.66の回答メモでございます。また,当該メモは西尾校長在職時に作成され,現校長に引き継がれたものでございます。
**********

■このように、「調査委員会としなかった理由はなにか」と聞いているのに、「調査委員会としての位置付けではございません。」と、またオウム返しで呆れてしまいました。いつまでこの不毛なやり取りを繰り返せばよいのでしょう。

 それよりも驚いたのは、「No.66の回答メモ」が西尾校長在職時に作成され、現校長はそれを引き継いだに過ぎない、という新説明が出てきたことです。

 では、「No.66の回答メモ」に書き込まれている「H29.6.7(面談) 山崎・猿田より」という文字はいったい何なのでしょう。それに、「回答メモ」の形式はもちろん正式な体裁の回答文書ではなく、しかも2つの公開質問状への回答が1枚にまとめられたものとなっていますが、これは当会が面談形式でその2つの公開質問状への一括回答を希望していなければ生み出されない代物ではないでしょうか。というのも、当会は一応にも当初、文書での回答を求めており、山崎校長就任後の5月になって初めて、2つの公開質問状についてまとめて面談方式で同時に回答することを要請していたからです。その時系列からすれば、因果関係が滅茶苦茶です。だいいち、西尾校長時代に作られたという新説明は、上記の1月30日付け群馬高専回答メール(1)で「当該回答メモの作成日は,平成29年6月7日以前となります」などと説明していたのと整合が付きません。西尾時代に作られたというなら、「山崎校長就任以前」となるはずです。疑問まみれです。

 何より、西尾校長時代に「結論」が出ていたのであれば、なぜ西尾前校長は在任中に当会に調査結果を通知しようとしないままに文科省に逃亡し、それを「引き継いだ」とされる山崎新校長も当会から催促されるまで説明を放ったらかしにしていたのでしょう。いくらなんでも無責任にもほどがあり、結局また新しい大問題が出てくるだけです。

 こうした観点に基づき、4月23日に当会から以下の質問メールを送信しました。

*****20/04/23当会質問メール(5)*****
From: masaru ogawa
To: 群馬高専総務課 尾内
Cc: 群馬高専村田, 高専機構総務課総務係
日付: 2020/04/23 8:10
件名: Re: 12月5-6日開催の第11回高専出身校長研究会について(ご質問)

群馬高専総務課長
尾内様

毎々お世話になります。
COVID-19対応に追われる最中、ご連絡賜りありがとうございます。
折り返しで恐縮ですが、次の2つの質問をさせていただきます。

(1)調査委員会を立ち上げなかった件について、貴ご回答(1)中では、「調査委員会としての位置付けではございません。」とされていらっしゃいますが、「調査委員会としての位置付けでない」ことは開示資料を一瞥すれば明らかです。そして、元々の弊質問の趣旨として、それを前提に、「調査委員会としての位置づけとしなかった理由」をうかがっております。「関係者への事実確認」が調査委員会扱いでない理由についてお答えいただきたく存じます。調査委員会の立ち上げに際し、明確な基準等があれば、ご教示ください。

(2)調査の結論の件につきまして、貴ご回答(2)中では、開示資料中、No.66回答メモが西尾校長在職時に作成され、現校長に引き継がれたものとの説明がございます。しかし、今年1月30日にいただいた貴メールにおいては、「なお,当該回答メモの作成日は,平成29年6月7日以前となりますが,具体的な特定は困難な状況です。」という説明がありました。事実関係が貴ご回答(2)のとおりであれば、上記メールの記載は「平成29年6月7日以前」ではなく「平成29年3月31日以前」(かつ最終調査結果受領後)でないとおかしいのではないでしょうか。

以上取り急ぎ。

市民オンブズマン群馬
代表 小川賢
**********

■また20日間ほど間が空いて以下の回答が届きました。気分はすっかり、飛脚で書状をやり取りする江戸時代の人間です。もっとも、江戸時代ですら同じ上毛間のやり取りでここまで時間がかかることはなかったでしょうが。

*****20/05/13群馬高専回答メール(5)*****
From: 群馬高専総務課 尾内
Date: 2020年5月13日(水) 9:44
Subject: RE: 12月5-6日開催の第11回高専出身校長研究会について(ご質問)
To: masaru ogawa
Cc: 群馬高専村田, 高専機構総務課総務係

市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様

お世話になっております。群馬高専の尾内です。
ご照会いただいておりました件につきまして,お時間をいただき大変申し訳ございませんが,以下,朱書きのとおりご回答申し上げます。

(1)調査委員会を立ち上げなかった件について、貴ご回答(1)中では、「調査委員会としての位置付けではございません。」とされていらっしゃいますが、「調査委員会としての位置付けでない」ことは開示資料を一瞥すれば明らかです。そして、元々の弊質問の趣旨として、それを前提に、「調査委員会としての位置づけとしなかった理由」をうかがっております。「関係者への事実確認」が調査委員会扱いでない理由についてお答えいただきたく存じます。調査委員会の立ち上げに際し、明確な基準等があれば、ご教示ください。
→前回の貴殿からのご質問の趣旨は,調査メモの基となった調査に対して,調査委員会を立ち上げなかった理由を求めておられましたが,この調査は,まずは関係者への事実確認を目的としたものであり,その後,調査委員会を立ち上げるか否かの判断材料としたものでございます。よって,本調査については調査委員会としての位置付けでない旨を前回ご回答申し上げたものでございます。なお,この調査結果(調査メモ)を受けて本校では,資料No.66の回答メモに記載のとおり,ハラスメント行為を事実とする明確な根拠が確認できなかったことから調査委員会を立ち上げる必要性はないと判断したものでございます。


(2)調査の結論の件につきまして、貴ご回答(2)中では、開示資料中、No.66回答メモが西尾校長在職時に作成され、現校長に引き継がれたものとの説明がございます。しかし、今年1月30日にいただいた貴メールにおいては、「なお,当該回答メモの作成日は,平成29年6月7日以前となりますが,具体的な特定は困難な状況です。」という説明がありました。事実関係が貴ご回答(2)のとおりであれば、上記メールの記載は「平成29年6月7日以前」ではなく「平成29年3月31日以前」(かつ最終調査結果受領後)でないとおかしいのではないでしょうか。
→資料No.66の回答メモの作成日の特定が困難である以上,回答メモに記載の日付以前であることは間違いないことから,平成29年6月7日以前とご回答申し上げたものでございます。
**********

■かくのごとく堂々巡りが繰り返されています。常識として、普通は事実関係を確認することも目的に「調査委員会」を立ち上げ調査をおこなうものであって、「調査結果をみて調査委員会を立ち上げるかどうか判断する」というのでは、因果関係がアベコベです。

 もしも「ハラスメント行為を事実とする明確な根拠が確認できた」ならば、「調査委員会」を立ち上げて、まったく同じような調査をもう一度はじめから行う気だったとでもいうのでしょうか。そう考えれば、群馬高専の説明は滅茶苦茶にもほどがあります。

 回答メモの作成日の問題にしても、「西尾校長が作った」というのが本当であれば平成29年4月1日~6月7日の間に作ったことは有り得ないにも関わらず、相変わらずの能面回答です。というより、(群馬高専の言い分の通りとして)なぜ一応にも重大な調査結論であるはずの「回答メモ」に作成年月日や作成者氏名を付していないのでしょうか? 公文書を作っているという自覚が無いのでしょうか? この点も理解できません。

■さて、メールの応酬はこのあたりにして、開示文書の内容にも目を向けてみましょう。ほとんどがノリ弁なので調査内容はまったくわかりませんが、辛うじて日付等断片的な部分は残されているので、各文書のポイントを抽出の上整理してみましょう。

1. 市民オンブズマン群馬からの公開質問状を受けての事情聴取の実施について → No.1
⇒事情聴取の実施要項。日付はないが、作成時期は当会の公開質問状提出(16/12/19)直後か。

2. 調査メモ(まとめ) → No.2~No.41
⇒全開示文書の中でもっとも比重の高い「調査メモ」だが、これも作成日付不明。「1. 調査に至った経緯」、「2. 調査の目的」、「3. 調査方法」、「4. 調査員」(完全黒塗り)、「5. 記録」(完全黒塗り)が端的に記されたのち、「6. 調査結果」として、日時以外完全に黒塗りながら、以下の内容が記されているようだ。
・H28.12.22の聞き取り調査記録(No.3-9):10:00~、10:30~、11:00~、13:00~、13:30~、14:00~、14:45~の7回。
・H29.01.10の聞き取り調査記録(No.10-11):14:30~の1回。
・H29.01.17の聞き取り調査記録(No.11-12):11:00~の1回。
・H29.01.19の聞き取り調査記録(No.12-15):11:00~12:30の1回。
・H29.01.24の聞き取り調査記録(No.15-24):13:00~、14:55~の2回。
・H29.01.26の聞き取り調査記録(No.24-28):13:00~の1回。
・H29.01.31の聞き取り調査記録(No.28-32):10:40~の1回。
・H29.02.07の聞き取り調査記録(No.33-34):15:00~の1回。
・H29.01.06の調査記録(No.34-区切り不明):調査形態も不明。
・H29.01.16付「群馬工業高等専門学校 ■■■■様」(No.40-41):どういった文書なのかまったく不明。

3. 調査メモ1 → No.42~No.43
⇒「2/24 ■■■■より受領」と書いてある以外完全黒塗りで、文書の作成目的すら全く不明。

4. 調査メモ2 → No.44~No.45
⇒電子メールのようにも見えるが、どういう文書なのか、作成日付も含め一切不明。

5. 調査メモ3 → No.46~No.47
⇒No.46の方には「1/30 15:35」と手書きで書かれており、No.47の方には「1/24 ■■■■より受領」と手書きで書かれている以外は完全黒塗りで、文書の作成目的すら全く不明。また、日付とNo.の順番が逆な理由も不明。

6. 調査メモ4 → No.48~No.49
⇒H29.01.16日付「群馬工業高等専門学校 ■■■■様」:黒塗りの仕方をみても恐らく上記のNo.40-41と同一の文書のようだが、なぜ重複しているのかは不明。

7. 調査メモ5 → No.50~No.53
⇒以下の2点が含まれている。
・No.50-51(題名不明):上記のNo.44-45と同様の電子メールのような文書。どういう文書なのか、作成日付も含め一切不明。黒塗りの付け方が異なるので、上記とは別の文書らしい。
・No.52-53(題名不明):「平成29年1月19日(木)11:00~12:30」という記載以外全面黒塗りで、文書の作成目的すら不明。No.50-51が電子メールであるとしたら、これはその電子メールに添付された文書ということだろうか。

8. 調査メモ6 → No.54~No.56
⇒「報告書」と表題が付けられた平成29年1月6日付文書。右上に手書きで「1/10 ■■■■より受領」の記載。それ以外全面黒塗りで、文書内容は一切不明。仮にも「報告書」という標題があるのに、開示文書の名称を「調査メモ6」などとしている理由も不明。

9. 調査メモ7 → No.57~No.58
⇒以下2点の文書が含まれている。
・No.57(題名不明):電子メールのような文書。どういう文書なのか、作成日付も含め一切不明。
・No.58(題名不明):「平成29年1月19日(木)16:30」という記載以外全面黒塗りで、文書の作成目的すら不明。No.57が電子メールであるとしたら、これはその電子メールに添付された文書ということだろうか。

10. 調査メモ8 → No.59~No.63
⇒すべてが黒塗りされていて文書の性質含め完全に不明。辛うじてNo.62の右上の「1/10 ■■■■より受領」という手書き文字だけが読み取れる。

11. 調査メモ9 → No.64
⇒「H29.2.16」という手書きの記載以外全面黒塗りで、文書の作成目的すら不明。

12. 調査メモ10 → No.65
⇒「2/24 ■■■■より受領」という記載以外全面黒塗りで、文書の作成目的すら不明。

13. 回答メモ → No.66
⇒開示文書の中で唯一、まったく黒塗りされていない。内容は冒頭の面談で受けた「説明」とまったく同一である。前述のとおり、この「回答メモ」の作成経緯をめぐって当会と群馬高専の間で半年近いメール問答になったが、結局、どういう経緯でいつこの文書が作られたのか、確たることはほとんど不明のまま。なぜ、文書作成日すら記されていないのか、謎としかいいようがない。

■このように、K科アカハラ事件に関する調査の分量や期間自体は、皮肉にも、被害学生への聞き取りすら行われなかった群馬高専J科アカハラ事件よりはずっと重厚で、それなりに大がかりな規模で行われていたことがわかります。(注:あくまで「質」は度外視の「量」のみの観点として、また、「当社比」ならぬ「群馬高専比」として)

 調査メモ(まとめ)を見ると、当会の公開質問状提出3日後の2016年12月22日には既に7名に聞き取りが行われていて、これはアカハラ事件当時から一貫して在籍していたK科関係者を対象にしたものと考えられます。そしてその後1か月半にわたり、何度も単発で聴取がなされていることがわかります。恐らく、各地に散らばってしまった2010年前後の当時関係者を特定しつつ、アポイントを取りながら調査員を派遣して聴取を行い、更にその証言をフィードバックして、自校関係者に再聴取したものと考えられます。

 また、「群馬工業高等専門学校 ■■■■様」という書き出しの文書が存在するのを見るに、文書での問い合わせのようなものも行った様子がうかがえます。一部調査を外部調査機関に委託した可能性も考えられますが、そうした調査過程の一切は闇の中です。

■それにしても、この規模の調査ともなればかなりの人手と公金を費やしたはずですが、その果ての「結論」が、ペラペラの「回答メモ」1枚というのは竜頭蛇尾が過ぎます。明らかに割に合っていません。いくらデータを取るだけ取ったところで、その処理と検討の過程が杜撰なのであれば、結局調査自体も極めて杜撰なものと化してしまいます。

 そして、徹底的なノリ弁開示のせいで、受け取った紙束のほとんどが一体何の文書なのかすらもサッパリわからないようにされてしまいました。これでは、どういう流れと方針で調査が行われたのか、大まかにどういう結果が得られたのか、そうした大雑把な調査実態も一切把握できず、中身と「結論」に至る過程が果たして妥当なのか(そもそも記載があるのか)を検証することもできません。

 アカハラを不存在と結論付けられる材料を一切示せないのに、「アカハラなど存在しなかったのだから掲載イニシャルを消せ」などというふてぶてしい要求をどう納得して受け入れろというのでしょうか。納得できる根拠が何ひとつ説明されないのでは、たとえば当時の西尾校長が問答無用で調査結果を握りつぶして「アカハラは存在しなかったことにしろ」と下命していたとしても、そうした悪意のケースと見分けの付けようがありません。

 形式上であれ告発人の当会にこうしたマネをするということは、群馬高専の学内でハラスメント被害者が調査と救済を訴えても、対応は推して知るべしといったところでしょう。

■さらに、「調査」文書に記された日付は、当会の公開質問状提出3日後の2016年12月22日にはじまり、もっとも古いもので翌年2月24日です。すると、調査自体は2月中までにほぼ完遂していた可能性が極めて高いことになります。

 そうなると、2017年3月15日に当会担当者が群馬高専を訪れたとき、当時の村田係長が「引き続き調査中」と説明し、進捗を明かそうともしなかったのはいったい何だったのでしょうか。

 あの日の西尾校長は、オンブズマン対応を係長に押し付けた櫻井総務課長と2人きりで校長室に籠り、何やらコソコソ密談をしていました。校長室から2人が出てきたところを見計らってインタビューを掛けましたが、西尾校長は無視して足早に廊下を進み、総務課の北側ドアの中に姿を消していってしまいました。それが、当会関係者が最後に見た西尾典眞の姿になりました。

■当時、既に文科省への逃亡が決まっていた西尾校長にとって、多少無理やりでも「アカハラ不存在ありき」の結論を既成事実に仕立ててしまい、後任の山崎校長に後処理を押し付けて去っていくことは確定事項だったのでしょう。そして後を継いだ山崎校長は、「回答メモ」まで含めてすべて西尾時代の遺産だと強弁することで、「調査」実施と「結論付け」に対する諸責任はうまく回避しつつ、「アカハラは存在しなかった」だけを便利な遺言に連呼しているというわけです。

 こうしてみると、西尾と山崎の間で見事に「調査」と「結論」に関する責任の所在がアヤフヤにされているのがわかります。西尾校長の退任も既に3年以上前になってしまいましたが、在任当時の彼の下らない悪知恵と抜け目の無さはやはり一級品だと未だに再確認させられます。

 竹本校長、西尾校長、山崎校長が三代掛けて築き上げた負の遺産である10年前の群馬高専物質工学科アカハラ事件。当会では今後も、群馬高専のアカハラ体質の改善、そして歴代校長が揉み消してきた数々の叫びの真相究明に向けて尽力してまいります。


頭一つ抜き出た長身と顔つきが特徴的の群馬高専前校長・西尾典眞。信州大学HP(http://www.shinshu-u.ac.jp/topics/archive_data/2011/01/iso14001-6.html)より。その悪魔もかくやというレベルの所業の数々は、https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2633.htmlにて簡潔に説明したとおり。2018年春に文科省を定年退職し、満額の退職金を抱えて野に姿を消した後の行方は、杳として知れない

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この記事おわり】

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