■7月27日の午前9時から、安中市役所3階の安中市議会の議場で、平成23年第4回安中市議会臨時会が開かれました。傍聴者に配布された資料には、次のような会議手順が書かれてありました。
平成23年第4回安中市議会臨時会議事日程(第1号)
平成23年7月27日午前9時開議
第1 会期の決定
第2 会議録署名議員の指名
第3 承認第 3号 専決処分の承認を求めることについて
①安中市市税条例の一部を改正する条例について
②安中市都市計画税条例の一部を改正する条例について
第4 議案第47号 上告の提起及び上告受理の申立てについて
会期日程(予定表)
会期 1日間
日次/月/日/曜/開議/摘要
第1日/7月/27日/水曜/午前9時/○開会○会期の決定○会議録署名議員の指名○議案の上程○提案者の説明○議案に対する質疑・討論・採決○閉会
■9時から始まった臨時会では、市議24名全員是認出席の中、冒頭、奥原議長から挨拶がありました。「7月21日に本日理事会開催の告示がされたこと、案件は緊急を要すること、慎重な審議と妥当な議決をお願いしたい」と原稿を棒読みしました。
次に、岡田市長が「開会に当たり、議員各位にはご多用のなかご出席を賜り誠にありがたく、心から御礼申し上げたい。さて、本日の提案は、6月30日の専決処分の市税条例の改正の承認と、7月13日の控訴事件判決に対する上告の提起及び上告受理申立ての2件なので、よろしくご審議願いたい」と挨拶しました。
次に、議会運営委員長の斎藤盛久議員が議会運営について「議会運営委員会について7月21日と本日の開催前に召集し、それぞれ協議決定事項を報告。臨時会会期は本日1日。第1日目は7月27日で、開会、会期の決定、議案の上程、説明、議案に対する質疑等の採決を予定。承認第3号については専決処分の承認を求めるので委員会付託を省略し、即決願いたい。次の日程第4議案47号についても本議会は臨時会なので、委員会付託を省略し即決で願いたい。なお本会議閉会後全員協議会、その後に会派連絡協議会開催したいと議長から申し入れあった」と説明しました。
■そして、奥原議長が「これより開催。出席議員24名で成立」を宣言し、本日の会議の議題や、会期が1日間について諮り、事前に打ち合わせているのか、言い終わらないうちに「異議なし」の声がでる始末。「よって会期は1日とし、会議録署名は会議規則80条により7番今井敏博、8番吉岡完司,9番武者葉子を議長権限で指名する」と宣言しました。
その後、審議は日程第3号の安中市市税条例改正の専決処分の承認について、財務部長が棒読みの説明。聞いている議員は手元にある配布資料に目を落としながら聞けますが、傍聴席を占めた30人ほどの市民には、地方税法や地方自治法の条項が立て続けに引用されるので、余計さっぱり分かりません。
そんなことにはお構いなしに、財務部長は読み続けます。「2ページをみてください。厳しい経済雇用情勢に対応して、税制整備を図るための地方税法等の一部改正によって、6月30日交付で本市の市税条例も所要改正を必要とし・・・」などと続き、「地方自治法179第1項で6月30日専決処分により同条第3号で報告するものだ。3ページでは、改正の主な内容について。地方税法一部改正で市税条例該当条項、項ずれの修正、高齢者の居住の安定確保に関する法律改正。4月28日に公布6か月以内の施行で改正するもの」などと、メモをとる暇もなく細かい法律の条項の引用が続きました。
■これでは、きちんとしたメモがとれません。議員と同じ資料の配布も傍聴市民にはありませんから、正確な情報把握は不可能となりました。そこで、ルール違反とは知りつつ、持っていた携帯の録音スイッチを入れて、議場を見下ろす傍聴席のひじ掛けにおいておきました。これで、細かい法令の引用は正確に把握できると思いつつ、メモを取り続けました。
財務部長の説明が終わると、議長が「これより質疑に入る」と宣言しました。議場から「異議なし」などと言う声が出るやいなや、語調は「これをもって質疑をおわり」と宣言しました。
次に安中市都市計画税条例の一部を改正する条例について、同様に、議長に指名され、財務部長が説明しました。「6ページをみてください。本専決処分については、厳しい掲載状況云々で・・・」と説明が始まり、「7ページに改正の主な内容、地方税法の改正。専決による項ずれの修正。地方税法改正の旧第何項がどうのこうの・・・」と3分程度、配布資料に関する棒読み説明が続き、傍聴席にはチンプンカンプンのまま、財務部長が「以上説明に代えさせていただきよろしくご審議願います」と言い放って終わりました。
■この間、市議らは配布資料に目を落としていましたが、一番後ろの列に陣取る古参議員を見ていると、一番右奥の柳沢健一市議などは、椅子にどっかりと座り身じろぎもせず、配布資料をめくることもなく聞いていたのか居眠りをしていたのか分からず仕舞いでした。他にも古参市議で似たりよったりのがいました。
全体で数分間の財務部長の説明が終わり、奥原議長が「これで説明を終わります」と宣言があり、議場からは「異議なし」の声がしたかと思うと、議長はすかさず「承認第3号の専決処分の委員会付託を省略する」と宣言。「これより討論にはいります」と言うや否や、議場からは「なし」の声が出て、議長が「これより採決に入ります。報告の通り承認することに賛成の議員は挙手願います」というと、議場で一斉に手が挙げられるや否や、数を数えることもなく、議長は下を向いたまま「挙手全員であります。よって翻案は可決されました」と宣言しました。あらかじめ、各会派から意見の確認をとっていたようです。
■次に議長は「議案第47号。上告提起と上告受理申立てについて議題する。地方自治法117条の規定により高橋議員の退席を求める」と宣言しました。どうやら、岡田市長を提訴した未来塾の原告に高橋市議が名を連ねていることから、当事者として討論や採決に参加できないようです。
議長が「本議案について説明を求める」というと、岡田市長が挙手をしました。議長に「市長」と指名された岡田市長がおもむろに登壇し「議案第47号についてご説明します。議案書9ページごらんください。本件は、東京高裁の損害賠償請求控訴事件で、平成23年7月13日判決に一部不服があるので最高裁に上告提起と受理申立てするものです。判決は、広報誌に掲載した記事の一部が市民団体の社会的評価を低下させたとして、5万円の賠償金支払いを命じられました。これは一審判決と一部異なる判断で、一審では安中市の主張が認められ、二審で一部変更する判決となっているため、最高裁の判断が必要と考えるので審議と議決を願いたい。以上で、提案説明とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」と説明しました。
議長が「説明が終わりました。これより質疑に入ります」というと、議場から数人の議員の挙手がありました。議長はなぜか1番の共産党の金井議員から指し示しました。
■金井市議の発言の要旨は次の通りでした。
「議案47号について、2点うかがいたい。1点目は、提案説明をきくと、これまでの裁判の経過の中で一審と二審の判断が異なるので、我が国の三審制度に基づき最高裁に上告したいという趣旨は分かるが、最高裁に上告してまで勝訴できる見通しと根拠についてどう考えているのか。2点目として、本件について、日ごろから市長の言う説明責任が我々の議会に対して為されてこなかった。この訴訟の発端は市長談話だった。高裁判決は名誉棄損を一部認めたものと受けとれる。この結果の受け止め方と、判決受け入れの気持ちについてあらためてお聞きしたい」
すると、なぜか岡田市長は答弁せず総務部長が立って、あらかじめ用意してきた原稿のような、メモ書きのような紙に目を落としながら次のようにしどろもどろでしゃべりました。
「それでは、今の金井議員の質問に対して答弁させていただきます。1点目の上告受理申立の理由は、一審と二審の判断が違うので再度最高裁の判断を仰ぎたい。安中市への信頼関係のために理解願いたい。一審、二審の判断の違いについては、えーと、一審担当の地裁高崎支部の裁判長が、地裁に来る前まで東京高裁の判事をしていて、群馬県に赴任する直前の平成21年3月にも名誉棄損に関する裁判判決を担当していた。このため一審、二審の判決の重みには違いがなく、違いがあったとしても紙一重なので、最高裁の判断を仰ぎたいと思っている。2点目は、おしらせ版の市長の談話については一審判決の中に、『好ましい条件とは言えないが、名誉棄損になるとまでは言えない』とあり、名誉棄損という形での二審の判断を踏まえて、公正・公平な最高裁の判断を仰ぎたいと考えている」
総務部長の説明に対して、金井市議から次の質問がありました。
「総務部長もいうとおり確かに三審制度というものがあるが、最高裁に上告するには、それなりの裁判に勝てるという根拠が必要であり、それがないと勝てない。自分の拙い知識でも、最高裁では細かい事実確認などはしなくて、法律や憲法に基づいての基本的な判断をするものだと思う。その観点から争うことになれば、東京高裁の判決をもとにして棄却されると思われる。もう1点として名誉棄損が争点だが、名誉棄損の裁判は、そのことが事実であってもなくても、それを公開して、広く多数の人に知らしめるという行為を対象に名誉棄損が判断されるものだと理解している。その観点で、一部不適切な表現云々があったということだが、そもそも市民団体に対して市が広報を使って批判をして、冷水を浴びせるということに結果的になったのが今回の市長の談話。そのため名誉棄損に一部該当したのだと思うが、その点の判断はどのように受け止めているのか」
議員の話もそっちのけで、岡田市長は相変わらず、総務部長の持っているメモの一部を指で指示し、ここだここだとばかりに、反論すべき個所を指示しています。案の定、総務部長がまた答弁に立ちました。
「それでは再質問に対して答弁申し上げます。上告受理理由について、詳しいことは、訴訟代理人の弁護士と十分協議が必要だが、本件は市民団体への名誉棄損、憲法的には表現の自由を内包し、法令の判断についての重大事項を含むことであり、訴訟の遂行に影響を及ぼしかねないので、個々の具体的な事項については答弁を控えたい」
金井議員からは次の追加コメントが出ました。
「二審の判断は重要だと思う。この事件がきっかけで安中市内ではフリーマーケットというイベントが中断されたままになっており、市民感情も考慮すべきだ。そういったことで、市の活性化に貢献してきた市民団体にけんかを売るというのでは、市の運営や市民活動はうまくいかないのではないか、と市民は見ている。この点どう考えているのか」
そしてまた、総務部長が答弁しました。
「同じ市内の団体だが、提訴されたためこういう形で裁判となった。そういうことで第3者の公平な判断を仰ぐのが妥当と考えている」
■次に奥原議長が指し示したのは、平成の会の伊藤議員でした。珍しく挙手をして発言を求められた伊藤議員は質問をしました。
「何点か質問したい。まず、市議会にこれまで報告がされてこなかった。また今回、市民団体には多数の弁護士が付いている。一方、市側の弁護士は1人だけだ。今後上訴するに当たり相手方弁護士は相当数の弁護士が付いているわけで、はたして上告して勝てる要素的なものを考えても、実際のところ市は弁護士1人だけでよいのか。それから、今後、上告して審議となると、今後の弁護士費用について当局はどう考えているのか。また、本件訴訟を依頼している市の顧問弁護士が、市の関係で委ねている係争中の案件は幾つあるのか」
またまた、総務部長が立ち上がり答弁を始めました。まるで岡田市長のロボットです。
「それでは質問のあった3点について答弁する。1点目は裁判結果について市として、協議させていただいてきたところだ。また、弁護士についてはもう1人弁護士起用を考えている。訴訟費用は2人合わせて約30万年と考えている。さらに裁判に関連して職員の出張旅費を含めると約40万円で対応できると考えている。今回は、緊急的に2週間以内に上告申立をしなければならないということで、時間的に間に合わないため、予備費から支出させていただきたい。担当弁護士がかかえている訴訟の件数については、具体的な数字は把握していません」
これに対して伊藤議員から、次の追加質問が出されました。
「後段の自分の質問の意味は、弁護士自身が幾つ案件を抱えているかでなく、安中市関係の事案として幾つあるのか、という意味だ。実際にタクマの談合問題など、安中市が顧問弁護士に依頼している係争案件がいくつあるのかということ。顧問弁護士が個人的にいくつかかえているのかを聞いているのではない。また、もうひとつとして、これだけの係争をしてきた結果が敗訴となったわけだが、それだけの結果を受けて、当然皆が内部協議をしているのかということ。僅か40万円の弁護士等の費用だと言う表現だが、事の重大性から本来なら補正を付けてやるべきこと。急いでいるからと、訴訟ありきで、予備費で間に合わそうというのではなく、これはやはり補正予算をきちんと付けるべきだ」
自分で事実を捻じ曲げた市長談話を広報に掲載させておきながら岡田市長は一向に登壇して説明責任を果たそうとする風情はなく、またまた総務部長が答弁にたちました。
「答弁漏れがあり失礼した。市の顧問弁護士である渡辺弁護士がかかえるのは、タクマの談合と公社を巡る情報公開の裁判の2件。あと、予算の関係だが、2週間で判断しなければいけないので、予備費的な形態として40万円ぐらいという話で今も検討中。その中でまだ、概略的な話であって、また弁護士と契約で具体的な話をしなければんらないので、今の時点では、こういう対応しかとれない」
伊藤議員から再度次の追加質問が出ました。
「今後、来月も臨時会もあるのだし、今回議案が通ればの話だが、しっかりと明確に方針を出してもらいたい。あと、もう1人の弁護士も雇用するということだが、これもはっきりしないといけない。また、司直に何もかも任せるという対応でよいのか。何でもかんでも司直に行ってしまうということでなく、市民感情から、議会も立法府であり、執行部でもまだまだ協議しなければならないことがあり、極力協議を尽くしていただきたい」
■次に、議長は大野貞義議員を指名しました。大野市議の発言趣旨は次の通りです。
「この件は2008年3月議会で、陳情書で『お知らせ版第14号の事実確認と経過について』で討議したのが発端だった。この件については議会では審議未了となっており、陳情者は公正な判断を仰ぐ道を歩み、一審、二審と係争してきた。この中で東京高裁での控訴審での口頭弁論はいったい何回あったのか。或はこの間、証人尋問もあったのか。どういう訴訟行為がなされてきたのか。この判決主文の第4項(1)は仮執行することができるということで、損害賠償ということで5万円プラス年5分の金利を支払えということが書いてある。この行為がなされているのかどうか。また、控訴審で断罪されたわけで広い意味で言えば控訴審での結果が広く認められるべきだと思うがどうなのか」
またまた総務部長が答弁に立ちました。
「大野議員の質問について答弁したい。まず二審での口頭弁論については3回行われた。承認尋問については無し。準備書面を交わしただけだった。2点目の賠償5万円の金利については、上告する方針なのでまだ支払いをしていない。それから3点目の・・・(と言いかけた途端沈黙して)・・・以上です」
大野議員から再度次の質問が出されました。
「二審の裁判の過程で、互いに主張し合ったわけだが、この過程で市側の主張はどのようにかわっていったのか。どのように判断されて、この間裁判所の判断が変化したのか」
総務部長は岡田市長のかわりに答弁に立ち続けます。
「二審は渡辺弁護士に任せっきりにしいるので詳しい内容は分からない。二審は準備書面の文書のやり取りで行ったという話だ」
大野市議からは次の追加コメントがありました。
「他の市議からも話が出た通り、第一審、第二審とこの間、議会のほうにはほとんど報告がない。その点でから、どういう裁判での関係だったのかを確認したい。もうひとつは控訴審で断罪されているから、控訴審つまり第二審の判断というものを順守すべきだと考える。このことは市民の立場から見ても強い関心があるだろう。文字通り説明の機会がなかった。判決に処することを強く求めたい」
またまた総務部長が答弁しました。
「再度の質問に答える。市に関わる裁判については、裁判の結果が出た段階で議会に話をしてきている。二審についてはさきほど金井市議へ答えた通りでございます。ご理解を賜りたいと存じます」
■次に奥原議長が指し示したのは川崎議員です。川崎議員は次の質問をしました。
「これまでの3名の市議の質問でほぼ出尽くしたが、角度を変えて質問したい。この裁判ではやはり市長と市民団体との係争は成立せず、市民団体と安中市との間で裁判が進められている一面がある。裁判を傍聴したが、両方とも大きなエネルギーを使ってきていたことを感じている。そして高裁での判断が出た。一面で敗訴と言えるかもしれない。三審制の最高裁に上告したいのは理解できるが、多分、上告棄却になりかねない。そもそも、この裁判が何だったのかということを考えたい。言論の自由なのか、それとも個人的なさまざまな思いがあったのか。我々議会としては今日が判断できる初めての機会だ。法に定められた判断というものを、市民の間で意見の分かれている議案について、議会で判断しなければならないが、それ以前に、執行部の判断をどうなのか。市長だけが判断して、執行部は判断できないのか。市民に権限を付託された議員はもちろんだが、公僕として働いているみなさんの判断はどうなのか。執行権というものが皆さんにはあるはず。高裁判決から上告期限までの時間が短いというが、皆さんは話し合いをしたのか。話し合いというものが行われてきたのか。それとも、市長の判断だけで進んで来たのか。もう時間がないというので、市長の判断だけでこれまできたのか」最高裁で上告棄却があることは十分あり得る。高裁でも書面審査だけで判断されたわけで、最高裁になればなおさらそうなる。高裁の判断に重きを置くべきなのかどうか、私は分からないが、議会も判断が分かれれば、市民もまたこの件で意見が分かれるが、はたしてそれでいいのか、まず執行部で議論があったのかその点確認したい」
今度もまた総務部長が市長の前で矢面に立ちました。もう、何を言っているのかよくわかりませんが、たぶん次のようなことを言いたかったのでしょう。
「ご覧の通り裁判というかたちで、進んできており、法廷で審議される話なので、弁護士がやるもとなので、その内容そのものを答弁で議論するのはふさわしくないと考えている、三審制で上告の受理の観点についてだが、先ほども言ったが二審の判決内容が、一審の判決が一部変更されたのでこれについて第3者の公正な判断を仰ぐということなのでどうかご理解賜りたい」
川崎市議からも追加質問が出されました。
「執行部はこれまで時間があった。我々議会はいま判断を求められている。高裁の判決の後、どうして執行部は話をしてこなかったのか。高裁の判断の中で、市民団体との話し合いに同席した元市職員の証人としての位置付けがある。話し合いの結果、その後の市長の談話の記事を作成する過程で、「この談話で、これは、こういう表現では内容としてきついのでは」というとらえ方が元職員の証言として、それが高裁の判断になったと思う。執行部の判断が重視されている。我々議会では、高裁の判断が細やかな所を良く見ているという印象がある。弁護士にまかせっきりでよいのか。さきほど裁判費用も含めて、きちんと討議したうえで提起するのがあるべき姿ではないのか」
これに対して、相変わらず答えるのは総務部長でした。
「再度答弁する。元職員の証言等との関係だが、このことについても含めた形で三審制のもとで、最高裁の判断を仰ぐということでご理解をいただきたい」
川崎市議からはさらにコメントが出ました。
「そうすると議会は一つの通過点でしかない。高裁での判断があってからも、こっちに話がないし、やはり安中市民の負託を得て、公僕として、市職員として執行権を与えられているのだから、集めた情報を分析して議会に臨むのがあるべき姿なのではないか」
総務部長の答弁はもうよれよれです。
「先程の二審の判断で、一審の判決の中身が一部変更されたということ。安中市の名誉のために、上告することにしたい。この点お願いしたいのでぜひご理解を賜りたい」
■ここまで来て、時間が午前9時45分になっていました。新人議員の佐藤貴雄市議は、最初から質問すべく挙手をしてきたのにも関わらず、奥原議長は古参議員ばかり指名してきましたが、なぜか川崎市議に対する総務部長の3回目の答弁が終わるや否や、奥原議長は「ここで暫時休憩。再開は10時30分」と唐突に宣言しました。どうやら、最初からのそういうシナリオになっていたようです。
議場では、議員や執行部が退席してすっかりもぬけのからとなり、傍聴席にいた市民の間では、あまりの執行部の体たらくについて、いろいろ感想が飛び交っていました。
■そして、10時半になり、議事が再開されましたが、途端に議長がふたたび暫時休憩を発し、10時45分から再開となりました。どうやら、市側からの各会派への説得に時間がかかっているようです。
10時45分になり、最大会派の平成の会の所属議員がそろって一番最後に遅れて議場に入場してきました。全員が着席すると、いよいよ採決です。
傍聴席にいた市民らに、それぞれのグループごとに誰が挙手をするのかしないのか、分担してチェックするようにあらかじめ相談していました。
採択の前に、共産党の櫻井市議が反対討論を行いました。それが終わると、議長が「本件に賛成する諸君の挙手を求めます」という声のあと、一瞬の間にチェックする必要があります。国連のように押しボタン式であれば問題ないのですが、安中市議会の場合には、そういう設備もあるようですが、活用されたためしがありません。
■ほとんどの議員が挙手をしました。それをきちんと確認する風情もなく、奥原議長は「賛成多数と認めます。よって本案は提案通り可決されました」と宣言し、あっと言う間に臨時議会が終了しました。
傍聴席から、市民らがチェックした結果では、挙手した議員、挙手しなかった議員は次の通りです。
議席番号/氏名/所属会派/挙手した議員○挙手しなかった議員×
1 金井 久男 日本共産党安中市議団 ×
2 櫻井ひろえ 日本共産党安中市議団 ×
3 柳沢 浩之 清風クラブ ○
4 佐藤 貴雄 民声クラブ ×
5 吉岡 登 民声クラブ ○
6 小林 訂史 民政クラブ ○
7 今井 敏博 平成の会 ○
8 吉岡 完司 平成の会 ○
9 武者 葉子 公明党 ○
10 上原富士雄 公明党 ○
11 川崎 文雄 民主・社民クラブ ○
12 小宮ふみ子 民主・社民クラブ ×
13 大野 貞義 民主・社民クラブ ×
14 奥原 賢一 平成の会 -(議長)
15 齊藤 盛久 平成の会 ○
16 中島 徳造 平成の会 ○
17 土屋 弘 清風クラブ ×(ただし判然としないとの意見もあり)
18 高橋 由信 無所属(フォレスト) -(原告として当事者のため退席)
19 柳沢 吉保 平成の会 ○
20 上原 和明 平成の会 ○
21 田中 信一 平成の会 ○
22 廣瀬 晃 平成の会 ○
23 伊藤 清 平成の会 ○
24 柳沢 健一 平成の会 ○
↑臨時議会を終え、全員協議会の会場に入る市議ら。↑
■このように、暫時休憩の時間、岡田市長の意向を受けて、職員がいろいろと水面下で各会派と折衝し、最終的に賛成する方向に誘導します。
したがって、質疑の際に、厳しく市側にコメントを出した議員も、裁決の場合には賛成に回ることはよくあることです。おそらく、議員として市側に要求している事項について、ギブアンドテイクで市側から譲歩を求め懐柔されるというパターンが想像されます。
この結果、質疑では一様に鋭いコメントを発した4名の議員(金井、伊藤、大野、川崎)のうち、伊藤議員と川崎議員が賛成、金井議員と大野議員が反対の意思表示をしました。毎回挙手したにもかかわらず、奥原議長から指名されなかった新人の佐藤議員は反対の意思表示をしました。
■こうしてみると、市議会で過半数を占める平成の会が、岡田市長や執行部に対して、ギブアンドテイクで議案に対する意思表示をすることで、過半数という民主主義の多数決原理により、安中市の課題と方針が決まることがよくわかります。これでは、まともな議論と結果は望むべくもありません。
また、新人議員が熱心に挙手したにもかかわらず、最後まで無視した平成の会所属の奥原議長の采配にも問題があります。
■さらに、たしかに議場では傍聴者のこころえとして、静かに傍聴すること、私語をつつしむこと、録音・録画をしてはならないことなど、細かい注意書きが壁に貼られています。
しかし、あまりにもひどい執行部の答弁に対して傍聴席から野次がとぶのは、民主主義として健全な現象だと思います。ところが、執行部への批判のヤジに対して、議場の一番後ろに座っていて、上にある傍聴席からは見えにくい17番から24番議員らのうち、柳沢吉保議員と廣瀬晃議員が、市民から執行部に対して発せられたヤジに対して、「うるせえな」「議場から出ていけ」と声をあらげていたことは象徴的でした。
選挙期間中は猫なで声だった議員も、当選すれば上から目線で、しかも、執行部の擁護をする始末ですから、こういう発言をしたがる議員の実態は、実際に議会で傍聴しないとわかりません。
■また、録音・録画の禁止についても、課題が残ります。今回の臨時議会でも、傍聴席の右側にある記者席には、上毛新聞と読売新聞がいて取材をしていました。東京新聞もいたようですが、上毛新聞記者によると、暫時休憩の前にいなくなったとのことでした。
暫時休憩中に傍聴席で市民が歓談しているとまもなく、議会事務局員が2、3人、どやどやと上がってくるなり、当会の事務局長に向かって「小川さんというかたはどこにいる?」と強い調子で声をかけてきました。「ここにいますよ」と事務局長が答えると、「議場では録音禁止となっている。さきほど傍聴席で録音しているという情報があったが、録音機をチェックさせたもらい」と、一気にまくしたてました。そこで、ひじ掛けの上に置いてある携帯電話を示して、「これのことですか。議場でのやり取りの内容を正確に判断するためにさせてもらっている。ところで、録音しているという情報はだれから連絡を受けたのですか」と、議会事務局の職員に逆質問したところ、職員はそれには答えずに、「そこに議会傍聴の規則が書いてある。直ちに録音を消去してもらいたい」と詰め寄ってきました。
さっそく携帯の録音終了ボタンを押して、録音がされていたのかどうか、確認しようとしたところ、どこに録音データがあるのか確認に手間取り、業を煮やした事務局長は、携帯電話を市職員に差出し、「どこにデータが残っているのか確認できないので、自分でチェックしてほしい」と言いました。職員は「こういうのはどうやって確認してよいかわからないので」というので、事務局長がデータファイルの画像を出して、音声データをクリックすると、7月27日の録音データは見当たらないことが判りました。市職員が、「確かに消去しましたよね」としつこく確認を求めてくるので、事務局からは「先程携帯電話のスイッチを押した際に自動的に消去されたのか、それとも、最初から録音できていなかったのか、どうもよくわからない」と答えました。そして「ところで、なぜ録音していることが分かったのでしょうか」と再度質問しましたが、市職員らは「それは言えません」と黙ったままでした。
さっそく、当会が調査したところ、さきほど姿を消した東京新聞の記者が、1階にいた議会事務局の市職員に通報していたことが分かりました。
■議会の議事の様子については、議会事務局がすべて録音し、それを文字に起こして、議事録の綴りとして製本して保存しています。4年ほど前からは、安中市のホームぺージで市議会の項目にすべて議事録が掲載されています。ただし、録音してからホームページ上で市民に公開されるまでには3カ月以上かかります。従って、市民が議場のようすをリアルタイムで知ることは不可能な状況です。
当会は議事のやりとりの正確で迅速な市民への公表が、開かれた市政にとって重要であると判断して、敢えて録音により、メモの内容をより正確にすべく補正しようとしましたが、東京新聞記者がうしろから、携帯電話の録音スイッチを入れる様子を目撃しており、それを市職員に通報したため、議事のメモの正確性を担保する手段が失われてしまいました。
前述の議会でのやりとりで、もし不正確な点があれば、それは、報道の正確性、公正性を順守すべきはずの東京新聞記者により棄損されたことが理由ですので、ご容赦賜りたいと思います。
なお、臨時議会開催前に、当会では秘書行政課をおとずれ、未来塾と安中市の控訴審に関する一切の情報開示の請求を行いました。8月10日以降開示される見通しなので、開示されたらおってご報告します。
【ひらく会情報部】