■安中市では、日刊スポーツによる朝日新聞社専用ゴルフ場計画跡地(安中市野殿・大谷地区)や、ビックカメラが経営していたローズベイカントリークラブの用地に、全国でも上位にランキングされるメガソーラーがつくられ、既に稼働していますが、その他にも中小規模の太陽光発電施設が乱立しており、さながら、無法状態を呈しています。そうした中で、北陸・長野新幹線の安中榛名駅のすぐ北側にある安中市東上秋間の長岩地区では、地滑り地帯に指定されているにもかかわらず、居住地のすぐ周辺に太陽光発電施設が多数申請され、住民らの不安をよそに、行政がどんどん手続きを進め許可を出してしまい、着工されてしまう事例が多発しています。そうした中、当会に緊急通報があったので、さっそく現地を訪れました。
↑安中榛名駅。背後に群馬百名山の石尊山が見える。駅舎の直ぐ後ろの斜面にソーラーパネルが張り付いている。↑
安中榛名駅を正面から見ると、後ろに石尊山が控えていますが、駅舎のすぐ後ろにソーラーパネルが位置しています。
この石尊山は群馬百名山にも数えられており、安中市東上秋間の長岩と呼ばれる地区にあります。標高571メートルの里山の山頂はもとより、麓の県道からでも東には筑波山、南には赤久縄山・南アルプス、西には妙義山・浅間山などを俯瞰でき、眺望のすばらしい所ですが、南向きの斜面は日当たりもよく、ここを太陽光業者が目をつけています。
↑手前は新幹線のホーム。その北側斜面は地滑り地帯だが、現在太陽光発電施設を設置中。今後、新幹線への影響が心配される。↑
↑右手奥は新幹線の線路。地滑りが発生すれば一気に大量の土砂が線路を襲う。↑
↑さらにその上にも稼働中の太陽光発電施設がある。↑
↑重機で掘っただけの崖にそって簡易フェンスが設置されている。今後、土壌浸食されたらどうするつもりか。↑
↑群馬県安中土木事務所の標識。信じられないことに、ここは地滑り地帯で土砂災害警戒区域(平成24年10月12日指定群馬県第319号)に指定されているのに、太陽光発電施設だらけ!↑
↑さらに上って長岩北部地区にも地滑り防止区域の標識(昭和62年3月16日建設省告示第687号)が。↑
↑市道7516号線から見た合同会社セプトによる現場。↑
さて、通報された地元住民のかたにさっそく現場を案内してもらいました。
この太陽光発電施設の設置者は合同会社セプト(高崎市飯塚町1776番地6、代表社員齋藤梨香)で、設置同意は2020年7月22日、準備工の開始日が同年9月18日となっています。
↑東上秋間高圧発電所配置図↑
ZIP ⇒ hdzu.zip
この無謀な立地計画を阻止すべく安中市に計画及び施工上の問題点を再三にわたりアピールしてきた地元住民によりますと、次の問題点を指摘されています。
●その1:地滑り防止区域での計画であること
この計画予定地の広い部分が、地すべり防止区域(地すべり等防止法)・士砂災害警区戒域(上砂災害対策法)に入っています。なぜ、このような場所での発電設備設置計画を安中市が認めたのでしょうか。
↑安中市ハザードマップ抜粋図↑
ZIP ⇒ snuhbv.zip
すでに計画地内にある既存の擁壁は崩れかけていて,パネル等を安全に設置するためには、その補修として地すべり等防止法に基づく工事許可が必要になるのは明白です。ところが、安中市が同意した業者の届出には、そうした工事について検討が為されていません。
また、安中市の担当者も擁壁の崩れを視認しておきながら,具体的な対応をしていません。その結果、予定地の麓の住民の皆さんの安全・安心な生活環境が危険にさらされているのです。
さらに、予定地の近隣では、過去に大きな士砂災害も発生しています。今後、台風や、異常気象により各地で多発しているゲリラ豪雨があれば、たちまち計画地は危険な状態に陥ります。既存施設ならともかく、そのような危険な区域に新らに設備をつくるべきでないことは、行政としてすぐにわかりそうなものです。
しかし、巨額横領事件を起こしても誰も責任をとろうとしなかった安中市では、こうした住民軽視の対応が体質的に染みついてしまっているようです。なぜなら、前橋市、高崎市、藤岡市、富岡市、渋川市、桐生市、下仁田町など群馬県内の多くの市町村では、条例またはその施行規則等でこうした地滑り地帯のような危険区域内での太陽光発電所の新設を認めていないからです。
そのなかにあって安中市は、「土砂災害『特別』警戒区域」以外の区域における新設工事を認めているのです。危機管理の自覚に欠けており、行政としてあるまじき判断をしていると言わざるを得ません。
●その2:計画地からの雨水がそのまま既設の古い下流水路に流入すること
計画地の地表雨水は、集積されたあと電動ポンプで汲み上げ、計画地内の新設水路から計画地外の既設水路に放流する計画となっていますが、次のリスクをはらんでいます。
①電動ポンプ故障時には、あふれた水が、すぐ下にある住民宅の敷地に流れ込む危険がある。
②既設水路の流末は,住民宅の敷地内にある明治時代に造られた石積み水路に接続しており、その排水能力を超えれば、住民宅の敷地内で逸水が発生する。
特定の個人に対して、こうした災害による損害発生の受忍を求めるのであれば、当然ながら憲法29条3項に定める「補償」が必要となるはずです。ところが安中市は、水路について「群馬県の管理施設または民有地内の問題だ」などとして、市の責任を全然自覚しようとしません。
●その3:私権を無視した業者の工事車両の乗り入れを市が黙認していること
工事車両進入路についても、当初予定していたルートが農地であったにもかかわらず、一時転用許可が出ていないのに、業者が重機を進入させようとしました。勿論、ルートにかかっていた畑の所有者も同意した記憶がありません。こうした理由から、業者は、工事車両やパネルなどの資材搬入のために、幅が1.8mしかない簡易舗装のいわゆる「馬入れ」を使用しています。
ところが、そもそも「馬入れ」として使用されてきた地区の生活道路なので、当然、道路の地盤が軟弱です。そこに、大型ではないとはいえ、重い土木機械や資材を満載したトラックが通行する為、荷重に耐えきれず危険な状態を呈しています。
しかも、業者が搬人した資材や機械の一部は、道路交通法違反や農地法を無視した違反行為によって、計画地に運びこまれたものです。
●その4:雨水対策をせず無法状態のまま業者がパネル設置工事を始めたこと
準備工の段階で、計画地の士地の境界を十分に確認しなかったため、業者が無断で計画地に隣接する第三者所有の農地(畑) をつぶし、果樹を切り倒すという酷い被害が発生しています。
そうした被害を発生させた工事担当者が、いきなり計画地の地表に架台用の杭を打ち、その上にパネルを置く等の、乱暴な工事進行を始めています。
雨水処理の新設水路すら出来上がっていないのに、「既成事実をつくってしまえ」とばかりに業者は発電施設を設置し始めています。異常気象の昨今、いつ大雨が降るかわかりません。大雨になれば、土砂災害や溢水の危険性が増大するのは明白です。
周辺や下流の住民の安全・安心な生活環境の保全を担保するのが安中市行政のはずですが、後述のとおり、とんでもない暴挙をしでかす始末です。
■このような問題をふりまきながら、しかし安中市も群馬県も無策のままで、業者の無茶な計画がまったく止まらないため、周辺の住民は反対署名活動を行い、40名以上の署名を添えて、行政に提出しました。
あわせて、業者の工事車両の通行に対して抗議活動をするとともに、警察の指導を仰ぎ、道路の封鎖にも踏み切りました。
さらに無策を続ける安中市当局に対して、周辺住民は、地滑り地帯における施設設置の危険性、施工の杜撰さを具体的に指摘し、住民等に対する業者による説明会の開催や、ズサンな工事の一時延期などの指導を求めました。
ところが、安中市は、「すでに市長の『同意』が出ている」という理由で、住民らの望む上記の対応を実行しようとしません。
■そのため現状は、安中市の「指導」がなされないことをよいことに、工事業者は工事をどんどん進行させ、ひたすら既成事実化をはかっています。
例えば計画では、施設用地の全面に防草シートを敷くことになっているのですが、実際の施工では、シートを敷く前に、ボロボロと崩れる状況を呈する弱い地盤に、直接、架台用の杭を打ち込んでいます。これでは計画通りの仕様にもとづく工事完成はとうていおぼつきません。
さらに新設する水路も、仮掘りをしただけの状態のまま、パネルを並べ始めている始末で、大雨による土砂崩れや、お粗末な排水対策による下流への溢水の危険性は前述のとおりです。
■安中市住民である地元の皆さんの行政に対する要望は次のとおりです。
【その1】「安中市における太陽光発電設備の設置に関する条例」(以下「安中市太陽光条例」という)に基づく市長の「指導・助言」「勧告」権限を使って、工事の延期、安全対策の再検討を行い、安全が確認できない場合には、市長が出した施工同意を、直ちに撤回すること。
【その2】安中市太陽光条例につき、県内の多くの市町村と同じように「地すべり防止区域」「土砂災害警戒区域」内の発電所新設を認めないように、直ちに条例を改正すること。
地元住民の皆さんは、安中市の行政責任を厳しく指摘しています。なぜなら、安中市は、無秩序な太陽光発電所建設を規制し、市民生活の安全・安心を確保するために条例を制定したにもかかわらず、形式的な審査で、安易に施工同意を行っており、計画・施工の具体的問題点が明らかになった後も、条例に明記された市長の「助言・指導」「勧告」権限の発動を行おうとしません。その結果、周辺住民らが危険にさらされる事態を放置しているからです。
このように、安中市の怠慢は明らかです。地元住民の皆さんは、安中市行政のこのような無策の体質に対して猛省を求め、住民の安心・安全な生活環境の保全を最優先にする施策と実行を求めているのです。
なお、平穏で安全な生活を営々と営んできた地元住民の皆さんは、無法状態で着々と無謀な施設設置工事を進める業者の酷い計画に対して、「工事許可」を出した群馬県安中土木事務所、そして「同意」を出した安中市を相手取り、今後、司法の場で争うことも視野に入れて検討中とのことです。
■実際に現場の状況を案内してもらったところ、驚くべき光景を目にしました。
↑この現場は、2月24日に安中市建設部土木課長が、業者を直々に指導して、重さ5トンもある杭打ち機を、「馬入れ」として住民が使っていた狭い道路を使って搬入させたもので、ご覧の通りコンクリート舗装面や路盤にダメージがみられる。↑
2月24日以降も毎日繰り返される機材の搬入作業で、幅が約1.8mしかない簡易舗装の狭い村道に、圧力と振動が加わり続けた結果、上記の写真に示す通り、石垣の一部が崩落寸前状態にあります。
見ればお分かりのとおり、路面にクラックが生じ、そこからの影響で崩壊に至った訳ではありません。繰り返される通行車両の振動等により、明治時代に構築された石垣の経年劣化とあいまって、崩壊に至った可能性が高いことは明らかです。
石垣下には地元住民が暮らす家屋や蔵があります。このまま業者が村の生活道路を使用し続けることは、到底容認できません。安中市は直ちに業者の通行を中止させなければなりません。よくある対策として、路面に鉄板を敷き養生して、道路を使用させるなどの中途半端な処置は、言語道断で認められません。ただちに、通行止めの措置がとられるべき、根本的な問題です。
↑北側の隣接農地から見たセプトの工事現場。↑
↑下から石尊山方向に現場を見上げた写真。奥に見える山からここまでの広大なエリア全部の降水量が全部、下流に隣接する民家の庭先の水路の集水面積になる。↑
■一方、業者が公示をしている施設から流れ出る排水が流れ込む既設の水路が庭先を通る下流の住民の皆さんは、水路から溢れた水による災害を非常に強い懸念を持っています。
令和元年12月17日に業者である合同会社セプトが安中市に届けた設備計画は、同年12月24日付の建設部土木課「地域開発事業に係わる意見書」により「市道7516号線の東側水路」に関して、それが民地内にあることから、①地権者の同意を得ること、②「断面の小さい水路を考慮した上で再度流量計算をし、(民地内で)あふれることが無いようにして下さい」との指摘がなされました。
そして、同年12月27日付「指導・助言通知書」にて、その内容が市から業者に通知されました。それを受けて、業者が雨水の排水計画を修正し、現在の群馬県管理既存水路に接続する水路新設計画に変更されました。
この修正計画 について、令和2年4月17日付「セプト 東上秋間排水についての指導」と称する「都市整備課真下」名義の文書の中で、「②流末処理について」の標題の下、「東上秋間3507-1の南側に隣接している水路部分(について)洪水流量に耐えることの説明をすること」旨の指摘が、現場写真2葉を添えてなされました。
ところが同年4月28日付の「都市整備課 開発係」名義の「セプト様東上秋間 太陽光条例 指導事項(案)」と称する書面における「②流末処理について」では、既存水路の管理者特定とその排水同意確認に内容が変更され、流量についての説明要求は消えてしまいました。
このため同年6月30日に予定された、安中市長の「指導」の正式通知以前の、日付が不詳の大成測量による「回答」でも、東上秋間3507-1の民家の南側の水路の流量についての検討はなされませんでした。
その上、こうした「回答」を前提に、同年6月30日付の「指導· 助言」が、業者であるセプトに通知され、翌日には同社名義の回答が提出され、同日、都市整備課が収受したことになっています。
業者から回答を受けてから「助言・指導」を通知し、改めて翌日付で「回答」を収受するという茶番が、なんと安中市と業者の間で堂々と行われているのです。その結果、当初の計画段階から指摘された雨水の流末にあたる東上秋間3507-1の民家の敷地内の溢水懸念については、完全に無視されているのです。
既存水路は、平成2年度地すべり対策工事の一部として、群馬県安中土木事務所によって新設されたものです。管理者は安中土木事務所です。それは地すべり防止区域の地下水を集水し、それを排水するための施設の一部なのです。
↑太陽光発電施設のすぐ脇にある地滑り対策の水抜きタンク施設。↑
↑平成3年度に整備。このような地滑り地帯に0.6ヘクタールの太陽光発電施設の設置を許可するのだから、まともな行政とは到底言えない。↑
↑梅林の中にある地滑り防止対策の排水路の起点に案内していただく。↑
↑これも地滑り対策のための排水路の整備が平成3年に施工された。ここが排水路の起点。↑
↑県が整備した排水路はここを起点に下流の民家のほうまで続いている。右はイノシシ用の罠。豚熱の蔓延のためか、捕獲頭数はやや減少気味だという。↑
当然流量も同区域内の地下水排出を基準にして算出したもので、敷地内の地表に降った雨水を集水して流すことを想定していません。その水路を新たに利用するのであれば,新たな利用による流量計算及び流末への影響を検討せざるを得ず、安中市の「都市整備課真下」氏の指摘は全く正しいといえます。
それにも関わらず、「指導案」で安中市がそれを削除したことには大いなる疑問が残ります。そこに、行政の「恣意」の存在、すなわち「初めに発電所許可ありき」が強く疑われます。現在、紛糾している問題の根源は、このときの安中市行政の暴挙により生じたと言っても過言ではありません。
なお安中土木事務所では、今回の新設水路の既存水路との接続については、当該地番の民家敷地内の流量について、特に計算していませんが、令和2年の水路新設時には当時の状況を確認し、当該地番の民家敷地内水路の流量計算をした上で、水路を新設しました。
↑上流側のU字水路に比べると幅の狭い古い石積み水路。市土木課職員がメジャーで幅を計測中。民家の住民が都度、土砂や緩んだ石垣を補修して、なんとか維持されている。↑
↑民家の庭先を通る古い天然石の石積みの水路。土砂がたまり、台風や豪雨の際は溢水の恐怖に怯えるという。↑
↑上を走る市道7516号線の振動で一部崩れかかった水路脇の土手の古い石垣。↑
↑左手から民家の庭先を通る古い水路からの排水と、奥から手前に別の水路が合流して下流の30年前に県が整備した水路に接続している。↑
↑合流後、下流に向かう排水路。平成3年に県の事業で整備したもの。最低でもこれくらいの断面積が欲しいところ。↑
しかしそれ以後30年が経過しており、民家敷地内の水路の傷みも進行しています。今回、安中市の指導で業者が「新規水路」を接続するということで、群馬県安中土木事務所は安中市役所関係部署の判断を信頼し、流末確認をしなかった、というのが実情と思われます。群馬県安中土木事務所の姿勢の当否はともかく、本来住民の安心・安全な生活環境の保全の責務を有する安中市役所が、市民である地元住民の生命と財産の保全を施工の最優先の要件とすべきことは言うまでもありません。だから、安中市行政が為すべき任務を怠っている実態は到底許されません。
安中市長の「指導・助言」に関しては、他にも、当初より「事前に現地調査をよく行い、住民とトラブルの起こらないように努めること」「隣接地に被害が及ばないように,十分注意して工事すること」等の指摘が市の土木課から業者に対して為されています。
ところが、現実の施工の実態は、前述のとおり、隣地の畑が勝手につぶされ、住民との間で警察沙汰になっています。安中市の指導を軽視する業者の姿勢は、尋常ではありません。業者が市の指導に従わなかったことへの、安中市による業者への制裁発動が強く求められています。
↑業者が勝手に果樹を伐採して造成した畑。業者が入れないように立入禁止の標識とトラロープが張ってある。↑
↑この畑にも同様に立入禁止の標識とロープを張り、業者が無断で進入路をつくって入らないように防御。↑
↑畑に入る前に、まずは農道に業者の重機や車両が入らないように、道路自体をロープで封鎖しなければならないほど、業者の横暴ぶりが酷い。この道路封鎖は警察にも届けて承認済み。↑
■流末地の地権者である坂田準ー氏から、市に対して意見書が出されています。
今回の太陽光発電所設置計画に関して、直接、地すべり・土砂崩れ・逸水等、一連の危険にさらされているのは、隣接地の住民である坂田準ー氏です。
同氏はその専門的な知見に基づき、上述の水路に係る流量計算を含め、意見書として「群馬県安中市東上秋間3527と周辺に計画されている太陽光発電設備の安中市の設置同意についての再考察」を作成しました。
※東上秋間3527周辺に計画されている太陽光発電設備の安中市設置同意についての再考察↓
ZIP ⇒ h3527zdsul.zip
行政は、財産と生命を脅かされている安中市住民の率直かつ切実な声に耳を傾けなければなりません。
■なお、地すべりを含めた土砂災害に関して、「ぐんまの自然と災害」(2018年上毛新聞社 刊)掲載の「地すべり対策工の模式図」の写しが、この問題を理解するのにたいへん参考になります。
※地すべりはどのようにして止めるのか↓
ZIP ⇒ n.zip
この書籍は、過去の群馬県内の災害事例を集めたものですが、その中に安中市やその周辺地域の土砂災害事例が数多く収録されています。それらを虚心坦懐に受け止めれば、およそ今回のような地すべり防止区域・土砂災害警戒区域内での太陽光発電所施設の設置がいかに無謀な暴挙であるのか、誰しも理解できるはずです。当然、安中市や群馬県の公僕の皆さんも、住民の目線でこの問題に接すれば、容易に理解できるはずです。理解して、住民側に立って、この問題を解決しなければならない責務があるのです。
【3月7日追記】
3月6日に地元住民の方から緊急連絡がありました。自宅裏の簡易舗装された「馬入れ」道を、工事業者が公示のアクセス道として、資機材や什器車両等の搬入路として利用し続けることに対し、地元住民は供用停止を安中市に申し入れています。3月5日に筆者が現場を訪れた際にも、地元住民のかたがたは、安中市土木課の職員2名(大河原氏と反町氏)に直訴して、「これ以上、道路が損壊しないように、通行止めなど、必要な措置をしてください」と強く要請しました。
↑業者が唯一の進入路として無理やり重機や車両を通行させている「馬入れ」道路。手前の石垣が破損しているのがわかる。↑
↑こんな場所を市土木課の課長が「大丈夫だ」と先導して、業者の重機の通行を許したため、石垣が破損してしまった。↑
↑簡易舗装に痛々しく印されたキャタビラの跡。↑
↑地元住民の先導で、業者が資材や車両の搬入に使っている「馬入れ」道路を登る市の土木課職員2名。↑
↑右側の石垣の石積みも工事のせいで、外側に張り出してきている。↑
ところが、3月6日になり、業者の作業員が突然やって来て、「馬入れ」道路の石垣の崩壊箇所にモルタルを挿入し、応急処置を施したのです。おそらく、3月5日に市役所に戻った土木課職員が、業者を手引きした張本人の課長に顛末を報告したため、土木課長が慌てて業者に連絡を取ったものと推察できます。連絡を受けた業者も、よほど焦った様子で、実際に、応急措置の箇所を確認すると、早くも既にモルタル周辺にひび割れが入っていました。これでは到底、道路供用に耐えるものではありません。なぜなら、石垣の破損個所の問題ではなく、道路自体の路盤補強は必須であり、石垣全般の改修が不可欠だからです。
そもそもこの事件は、地元住民が3月5日に安中市職員に口頭で伝えただけで、業者には話していません。3月6日の業者の突然の行為を目の当たりにして、道路管理者の安中市の指示無くしては、道路の石垣の補修は出来ないはずです。つまり、総括すると、安中市と業者は一蓮托生で、小手先の処理だけで、抜本的対策をしないまま、業者が村道を使用続けられるように配慮していることを痛感させられます。
このように、住民の安全・安心な生活環境の保全より、市外の業者の利益重視を優先する安中市の姿勢は、全国から、太陽光発電で一儲けを企む不良業者の注目を浴びることになり、安中市がきちんとした指導監督をしないという実態が、ますます全国の不良業者の知るところとなり、負のスパイラルがますます加速してしまうわけです。
当会は、微力ながら、安中市が行政の事務事業を市民優先で為されるために、今後とも市内各地の太陽光発電施設の乱開発に警鐘を鳴らすとともに、本件を含め、できる限り支援してまいります。
【3月8日追記】
地元住民からの通報によると、3月5日に安中市土木課職員2名が、排水路の調査にやって来た際に、太陽光発電施設の設置業者が、資材搬入や車両・重機の進入路として、もともと地元住民が生活や営農に使う幅1.8mの狭い生活道路を強引に使用したため、古い石垣が過大な荷重と振動により一部崩落した状況を見てもらいました。そして、安中市土木課の課長自ら、業者の重機の進入を誘導したため、こうした事態を招いた経緯を土木課職員らに告げました。
すると、なんと、3月6日土曜日に、業者が一部石垣から飛び出して崩落しかかっている石の周囲を、いつのまにか、モルタルで固めて補修されていたのを、その日の午後、地元住民が発見しました。
どうやら、3月5日に市役所に戻った土木課職員らから報告を受けた土木課長が、さっそく太陽光発電施設業者に通報したものと推測されます。
通報を受けた業者が、押っ取り刀で週末の土曜日にも関わらず、公道である生活道路を支える個人所有の石垣を、勝手に損傷させた上に、今度は勝手にモルタルを塗りつけたわけで、安中市土木課が、通報した際に、モルタルで補修するよう指示した可能性も指摘されます。
ことほど左様に、安中市は、太陽光発電施設設置業者の立場を最優先し、パネル設置を業者が円滑に実施できることしか頭にないようです。なぜ、市民である地元住民の生活環境には思いが及ばないのでしょうか。到底、行政の行なう行為とは思えません。
さらに、翌日の3月7日日曜日朝、地元住民が、太陽光発電施設設置業者により違法に補修された石垣を見てみると、小石とモルタル小片が下のU字溝に落ちているのが発見されました。
業者の違法な補修が、地元の生活道路をさらに毀損するという結果に、地元住民の皆さんは、安中市行政の住民軽視の対応ぶりを目の当たりにして、「呆れて言葉もでない」と嘆いています。
地域に居住して、ふるさとの生活環境を安全に維持してくれている納税者市民である住民の方々の意見に耳を貸さず、不法行為を平然と行う業者に加担する安中市行政の本末転倒ぶりに呆れ果てた地元住民の皆さんは、再度バリケード設置など実力行使をするしかないでしょう。
引き続き、今後のこの問題の推移に注目してまいります。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
↑安中榛名駅。背後に群馬百名山の石尊山が見える。駅舎の直ぐ後ろの斜面にソーラーパネルが張り付いている。↑
安中榛名駅を正面から見ると、後ろに石尊山が控えていますが、駅舎のすぐ後ろにソーラーパネルが位置しています。
この石尊山は群馬百名山にも数えられており、安中市東上秋間の長岩と呼ばれる地区にあります。標高571メートルの里山の山頂はもとより、麓の県道からでも東には筑波山、南には赤久縄山・南アルプス、西には妙義山・浅間山などを俯瞰でき、眺望のすばらしい所ですが、南向きの斜面は日当たりもよく、ここを太陽光業者が目をつけています。
↑手前は新幹線のホーム。その北側斜面は地滑り地帯だが、現在太陽光発電施設を設置中。今後、新幹線への影響が心配される。↑
↑右手奥は新幹線の線路。地滑りが発生すれば一気に大量の土砂が線路を襲う。↑
↑さらにその上にも稼働中の太陽光発電施設がある。↑
↑重機で掘っただけの崖にそって簡易フェンスが設置されている。今後、土壌浸食されたらどうするつもりか。↑
↑群馬県安中土木事務所の標識。信じられないことに、ここは地滑り地帯で土砂災害警戒区域(平成24年10月12日指定群馬県第319号)に指定されているのに、太陽光発電施設だらけ!↑
↑さらに上って長岩北部地区にも地滑り防止区域の標識(昭和62年3月16日建設省告示第687号)が。↑
↑市道7516号線から見た合同会社セプトによる現場。↑
さて、通報された地元住民のかたにさっそく現場を案内してもらいました。
この太陽光発電施設の設置者は合同会社セプト(高崎市飯塚町1776番地6、代表社員齋藤梨香)で、設置同意は2020年7月22日、準備工の開始日が同年9月18日となっています。
↑東上秋間高圧発電所配置図↑
ZIP ⇒ hdzu.zip
この無謀な立地計画を阻止すべく安中市に計画及び施工上の問題点を再三にわたりアピールしてきた地元住民によりますと、次の問題点を指摘されています。
●その1:地滑り防止区域での計画であること
この計画予定地の広い部分が、地すべり防止区域(地すべり等防止法)・士砂災害警区戒域(上砂災害対策法)に入っています。なぜ、このような場所での発電設備設置計画を安中市が認めたのでしょうか。
↑安中市ハザードマップ抜粋図↑
ZIP ⇒ snuhbv.zip
すでに計画地内にある既存の擁壁は崩れかけていて,パネル等を安全に設置するためには、その補修として地すべり等防止法に基づく工事許可が必要になるのは明白です。ところが、安中市が同意した業者の届出には、そうした工事について検討が為されていません。
また、安中市の担当者も擁壁の崩れを視認しておきながら,具体的な対応をしていません。その結果、予定地の麓の住民の皆さんの安全・安心な生活環境が危険にさらされているのです。
さらに、予定地の近隣では、過去に大きな士砂災害も発生しています。今後、台風や、異常気象により各地で多発しているゲリラ豪雨があれば、たちまち計画地は危険な状態に陥ります。既存施設ならともかく、そのような危険な区域に新らに設備をつくるべきでないことは、行政としてすぐにわかりそうなものです。
しかし、巨額横領事件を起こしても誰も責任をとろうとしなかった安中市では、こうした住民軽視の対応が体質的に染みついてしまっているようです。なぜなら、前橋市、高崎市、藤岡市、富岡市、渋川市、桐生市、下仁田町など群馬県内の多くの市町村では、条例またはその施行規則等でこうした地滑り地帯のような危険区域内での太陽光発電所の新設を認めていないからです。
そのなかにあって安中市は、「土砂災害『特別』警戒区域」以外の区域における新設工事を認めているのです。危機管理の自覚に欠けており、行政としてあるまじき判断をしていると言わざるを得ません。
●その2:計画地からの雨水がそのまま既設の古い下流水路に流入すること
計画地の地表雨水は、集積されたあと電動ポンプで汲み上げ、計画地内の新設水路から計画地外の既設水路に放流する計画となっていますが、次のリスクをはらんでいます。
①電動ポンプ故障時には、あふれた水が、すぐ下にある住民宅の敷地に流れ込む危険がある。
②既設水路の流末は,住民宅の敷地内にある明治時代に造られた石積み水路に接続しており、その排水能力を超えれば、住民宅の敷地内で逸水が発生する。
特定の個人に対して、こうした災害による損害発生の受忍を求めるのであれば、当然ながら憲法29条3項に定める「補償」が必要となるはずです。ところが安中市は、水路について「群馬県の管理施設または民有地内の問題だ」などとして、市の責任を全然自覚しようとしません。
●その3:私権を無視した業者の工事車両の乗り入れを市が黙認していること
工事車両進入路についても、当初予定していたルートが農地であったにもかかわらず、一時転用許可が出ていないのに、業者が重機を進入させようとしました。勿論、ルートにかかっていた畑の所有者も同意した記憶がありません。こうした理由から、業者は、工事車両やパネルなどの資材搬入のために、幅が1.8mしかない簡易舗装のいわゆる「馬入れ」を使用しています。
ところが、そもそも「馬入れ」として使用されてきた地区の生活道路なので、当然、道路の地盤が軟弱です。そこに、大型ではないとはいえ、重い土木機械や資材を満載したトラックが通行する為、荷重に耐えきれず危険な状態を呈しています。
しかも、業者が搬人した資材や機械の一部は、道路交通法違反や農地法を無視した違反行為によって、計画地に運びこまれたものです。
●その4:雨水対策をせず無法状態のまま業者がパネル設置工事を始めたこと
準備工の段階で、計画地の士地の境界を十分に確認しなかったため、業者が無断で計画地に隣接する第三者所有の農地(畑) をつぶし、果樹を切り倒すという酷い被害が発生しています。
そうした被害を発生させた工事担当者が、いきなり計画地の地表に架台用の杭を打ち、その上にパネルを置く等の、乱暴な工事進行を始めています。
雨水処理の新設水路すら出来上がっていないのに、「既成事実をつくってしまえ」とばかりに業者は発電施設を設置し始めています。異常気象の昨今、いつ大雨が降るかわかりません。大雨になれば、土砂災害や溢水の危険性が増大するのは明白です。
周辺や下流の住民の安全・安心な生活環境の保全を担保するのが安中市行政のはずですが、後述のとおり、とんでもない暴挙をしでかす始末です。
■このような問題をふりまきながら、しかし安中市も群馬県も無策のままで、業者の無茶な計画がまったく止まらないため、周辺の住民は反対署名活動を行い、40名以上の署名を添えて、行政に提出しました。
あわせて、業者の工事車両の通行に対して抗議活動をするとともに、警察の指導を仰ぎ、道路の封鎖にも踏み切りました。
さらに無策を続ける安中市当局に対して、周辺住民は、地滑り地帯における施設設置の危険性、施工の杜撰さを具体的に指摘し、住民等に対する業者による説明会の開催や、ズサンな工事の一時延期などの指導を求めました。
ところが、安中市は、「すでに市長の『同意』が出ている」という理由で、住民らの望む上記の対応を実行しようとしません。
■そのため現状は、安中市の「指導」がなされないことをよいことに、工事業者は工事をどんどん進行させ、ひたすら既成事実化をはかっています。
例えば計画では、施設用地の全面に防草シートを敷くことになっているのですが、実際の施工では、シートを敷く前に、ボロボロと崩れる状況を呈する弱い地盤に、直接、架台用の杭を打ち込んでいます。これでは計画通りの仕様にもとづく工事完成はとうていおぼつきません。
さらに新設する水路も、仮掘りをしただけの状態のまま、パネルを並べ始めている始末で、大雨による土砂崩れや、お粗末な排水対策による下流への溢水の危険性は前述のとおりです。
■安中市住民である地元の皆さんの行政に対する要望は次のとおりです。
【その1】「安中市における太陽光発電設備の設置に関する条例」(以下「安中市太陽光条例」という)に基づく市長の「指導・助言」「勧告」権限を使って、工事の延期、安全対策の再検討を行い、安全が確認できない場合には、市長が出した施工同意を、直ちに撤回すること。
【その2】安中市太陽光条例につき、県内の多くの市町村と同じように「地すべり防止区域」「土砂災害警戒区域」内の発電所新設を認めないように、直ちに条例を改正すること。
地元住民の皆さんは、安中市の行政責任を厳しく指摘しています。なぜなら、安中市は、無秩序な太陽光発電所建設を規制し、市民生活の安全・安心を確保するために条例を制定したにもかかわらず、形式的な審査で、安易に施工同意を行っており、計画・施工の具体的問題点が明らかになった後も、条例に明記された市長の「助言・指導」「勧告」権限の発動を行おうとしません。その結果、周辺住民らが危険にさらされる事態を放置しているからです。
このように、安中市の怠慢は明らかです。地元住民の皆さんは、安中市行政のこのような無策の体質に対して猛省を求め、住民の安心・安全な生活環境の保全を最優先にする施策と実行を求めているのです。
なお、平穏で安全な生活を営々と営んできた地元住民の皆さんは、無法状態で着々と無謀な施設設置工事を進める業者の酷い計画に対して、「工事許可」を出した群馬県安中土木事務所、そして「同意」を出した安中市を相手取り、今後、司法の場で争うことも視野に入れて検討中とのことです。
■実際に現場の状況を案内してもらったところ、驚くべき光景を目にしました。
↑この現場は、2月24日に安中市建設部土木課長が、業者を直々に指導して、重さ5トンもある杭打ち機を、「馬入れ」として住民が使っていた狭い道路を使って搬入させたもので、ご覧の通りコンクリート舗装面や路盤にダメージがみられる。↑
2月24日以降も毎日繰り返される機材の搬入作業で、幅が約1.8mしかない簡易舗装の狭い村道に、圧力と振動が加わり続けた結果、上記の写真に示す通り、石垣の一部が崩落寸前状態にあります。
見ればお分かりのとおり、路面にクラックが生じ、そこからの影響で崩壊に至った訳ではありません。繰り返される通行車両の振動等により、明治時代に構築された石垣の経年劣化とあいまって、崩壊に至った可能性が高いことは明らかです。
石垣下には地元住民が暮らす家屋や蔵があります。このまま業者が村の生活道路を使用し続けることは、到底容認できません。安中市は直ちに業者の通行を中止させなければなりません。よくある対策として、路面に鉄板を敷き養生して、道路を使用させるなどの中途半端な処置は、言語道断で認められません。ただちに、通行止めの措置がとられるべき、根本的な問題です。
↑北側の隣接農地から見たセプトの工事現場。↑
↑下から石尊山方向に現場を見上げた写真。奥に見える山からここまでの広大なエリア全部の降水量が全部、下流に隣接する民家の庭先の水路の集水面積になる。↑
■一方、業者が公示をしている施設から流れ出る排水が流れ込む既設の水路が庭先を通る下流の住民の皆さんは、水路から溢れた水による災害を非常に強い懸念を持っています。
令和元年12月17日に業者である合同会社セプトが安中市に届けた設備計画は、同年12月24日付の建設部土木課「地域開発事業に係わる意見書」により「市道7516号線の東側水路」に関して、それが民地内にあることから、①地権者の同意を得ること、②「断面の小さい水路を考慮した上で再度流量計算をし、(民地内で)あふれることが無いようにして下さい」との指摘がなされました。
そして、同年12月27日付「指導・助言通知書」にて、その内容が市から業者に通知されました。それを受けて、業者が雨水の排水計画を修正し、現在の群馬県管理既存水路に接続する水路新設計画に変更されました。
この修正計画 について、令和2年4月17日付「セプト 東上秋間排水についての指導」と称する「都市整備課真下」名義の文書の中で、「②流末処理について」の標題の下、「東上秋間3507-1の南側に隣接している水路部分(について)洪水流量に耐えることの説明をすること」旨の指摘が、現場写真2葉を添えてなされました。
ところが同年4月28日付の「都市整備課 開発係」名義の「セプト様東上秋間 太陽光条例 指導事項(案)」と称する書面における「②流末処理について」では、既存水路の管理者特定とその排水同意確認に内容が変更され、流量についての説明要求は消えてしまいました。
このため同年6月30日に予定された、安中市長の「指導」の正式通知以前の、日付が不詳の大成測量による「回答」でも、東上秋間3507-1の民家の南側の水路の流量についての検討はなされませんでした。
その上、こうした「回答」を前提に、同年6月30日付の「指導· 助言」が、業者であるセプトに通知され、翌日には同社名義の回答が提出され、同日、都市整備課が収受したことになっています。
業者から回答を受けてから「助言・指導」を通知し、改めて翌日付で「回答」を収受するという茶番が、なんと安中市と業者の間で堂々と行われているのです。その結果、当初の計画段階から指摘された雨水の流末にあたる東上秋間3507-1の民家の敷地内の溢水懸念については、完全に無視されているのです。
既存水路は、平成2年度地すべり対策工事の一部として、群馬県安中土木事務所によって新設されたものです。管理者は安中土木事務所です。それは地すべり防止区域の地下水を集水し、それを排水するための施設の一部なのです。
↑太陽光発電施設のすぐ脇にある地滑り対策の水抜きタンク施設。↑
↑平成3年度に整備。このような地滑り地帯に0.6ヘクタールの太陽光発電施設の設置を許可するのだから、まともな行政とは到底言えない。↑
↑梅林の中にある地滑り防止対策の排水路の起点に案内していただく。↑
↑これも地滑り対策のための排水路の整備が平成3年に施工された。ここが排水路の起点。↑
↑県が整備した排水路はここを起点に下流の民家のほうまで続いている。右はイノシシ用の罠。豚熱の蔓延のためか、捕獲頭数はやや減少気味だという。↑
当然流量も同区域内の地下水排出を基準にして算出したもので、敷地内の地表に降った雨水を集水して流すことを想定していません。その水路を新たに利用するのであれば,新たな利用による流量計算及び流末への影響を検討せざるを得ず、安中市の「都市整備課真下」氏の指摘は全く正しいといえます。
それにも関わらず、「指導案」で安中市がそれを削除したことには大いなる疑問が残ります。そこに、行政の「恣意」の存在、すなわち「初めに発電所許可ありき」が強く疑われます。現在、紛糾している問題の根源は、このときの安中市行政の暴挙により生じたと言っても過言ではありません。
なお安中土木事務所では、今回の新設水路の既存水路との接続については、当該地番の民家敷地内の流量について、特に計算していませんが、令和2年の水路新設時には当時の状況を確認し、当該地番の民家敷地内水路の流量計算をした上で、水路を新設しました。
↑上流側のU字水路に比べると幅の狭い古い石積み水路。市土木課職員がメジャーで幅を計測中。民家の住民が都度、土砂や緩んだ石垣を補修して、なんとか維持されている。↑
↑民家の庭先を通る古い天然石の石積みの水路。土砂がたまり、台風や豪雨の際は溢水の恐怖に怯えるという。↑
↑上を走る市道7516号線の振動で一部崩れかかった水路脇の土手の古い石垣。↑
↑左手から民家の庭先を通る古い水路からの排水と、奥から手前に別の水路が合流して下流の30年前に県が整備した水路に接続している。↑
↑合流後、下流に向かう排水路。平成3年に県の事業で整備したもの。最低でもこれくらいの断面積が欲しいところ。↑
しかしそれ以後30年が経過しており、民家敷地内の水路の傷みも進行しています。今回、安中市の指導で業者が「新規水路」を接続するということで、群馬県安中土木事務所は安中市役所関係部署の判断を信頼し、流末確認をしなかった、というのが実情と思われます。群馬県安中土木事務所の姿勢の当否はともかく、本来住民の安心・安全な生活環境の保全の責務を有する安中市役所が、市民である地元住民の生命と財産の保全を施工の最優先の要件とすべきことは言うまでもありません。だから、安中市行政が為すべき任務を怠っている実態は到底許されません。
安中市長の「指導・助言」に関しては、他にも、当初より「事前に現地調査をよく行い、住民とトラブルの起こらないように努めること」「隣接地に被害が及ばないように,十分注意して工事すること」等の指摘が市の土木課から業者に対して為されています。
ところが、現実の施工の実態は、前述のとおり、隣地の畑が勝手につぶされ、住民との間で警察沙汰になっています。安中市の指導を軽視する業者の姿勢は、尋常ではありません。業者が市の指導に従わなかったことへの、安中市による業者への制裁発動が強く求められています。
↑業者が勝手に果樹を伐採して造成した畑。業者が入れないように立入禁止の標識とトラロープが張ってある。↑
↑この畑にも同様に立入禁止の標識とロープを張り、業者が無断で進入路をつくって入らないように防御。↑
↑畑に入る前に、まずは農道に業者の重機や車両が入らないように、道路自体をロープで封鎖しなければならないほど、業者の横暴ぶりが酷い。この道路封鎖は警察にも届けて承認済み。↑
■流末地の地権者である坂田準ー氏から、市に対して意見書が出されています。
今回の太陽光発電所設置計画に関して、直接、地すべり・土砂崩れ・逸水等、一連の危険にさらされているのは、隣接地の住民である坂田準ー氏です。
同氏はその専門的な知見に基づき、上述の水路に係る流量計算を含め、意見書として「群馬県安中市東上秋間3527と周辺に計画されている太陽光発電設備の安中市の設置同意についての再考察」を作成しました。
※東上秋間3527周辺に計画されている太陽光発電設備の安中市設置同意についての再考察↓
ZIP ⇒ h3527zdsul.zip
行政は、財産と生命を脅かされている安中市住民の率直かつ切実な声に耳を傾けなければなりません。
■なお、地すべりを含めた土砂災害に関して、「ぐんまの自然と災害」(2018年上毛新聞社 刊)掲載の「地すべり対策工の模式図」の写しが、この問題を理解するのにたいへん参考になります。
※地すべりはどのようにして止めるのか↓
ZIP ⇒ n.zip
この書籍は、過去の群馬県内の災害事例を集めたものですが、その中に安中市やその周辺地域の土砂災害事例が数多く収録されています。それらを虚心坦懐に受け止めれば、およそ今回のような地すべり防止区域・土砂災害警戒区域内での太陽光発電所施設の設置がいかに無謀な暴挙であるのか、誰しも理解できるはずです。当然、安中市や群馬県の公僕の皆さんも、住民の目線でこの問題に接すれば、容易に理解できるはずです。理解して、住民側に立って、この問題を解決しなければならない責務があるのです。
【3月7日追記】
3月6日に地元住民の方から緊急連絡がありました。自宅裏の簡易舗装された「馬入れ」道を、工事業者が公示のアクセス道として、資機材や什器車両等の搬入路として利用し続けることに対し、地元住民は供用停止を安中市に申し入れています。3月5日に筆者が現場を訪れた際にも、地元住民のかたがたは、安中市土木課の職員2名(大河原氏と反町氏)に直訴して、「これ以上、道路が損壊しないように、通行止めなど、必要な措置をしてください」と強く要請しました。
↑業者が唯一の進入路として無理やり重機や車両を通行させている「馬入れ」道路。手前の石垣が破損しているのがわかる。↑
↑こんな場所を市土木課の課長が「大丈夫だ」と先導して、業者の重機の通行を許したため、石垣が破損してしまった。↑
↑簡易舗装に痛々しく印されたキャタビラの跡。↑
↑地元住民の先導で、業者が資材や車両の搬入に使っている「馬入れ」道路を登る市の土木課職員2名。↑
↑右側の石垣の石積みも工事のせいで、外側に張り出してきている。↑
ところが、3月6日になり、業者の作業員が突然やって来て、「馬入れ」道路の石垣の崩壊箇所にモルタルを挿入し、応急処置を施したのです。おそらく、3月5日に市役所に戻った土木課職員が、業者を手引きした張本人の課長に顛末を報告したため、土木課長が慌てて業者に連絡を取ったものと推察できます。連絡を受けた業者も、よほど焦った様子で、実際に、応急措置の箇所を確認すると、早くも既にモルタル周辺にひび割れが入っていました。これでは到底、道路供用に耐えるものではありません。なぜなら、石垣の破損個所の問題ではなく、道路自体の路盤補強は必須であり、石垣全般の改修が不可欠だからです。
そもそもこの事件は、地元住民が3月5日に安中市職員に口頭で伝えただけで、業者には話していません。3月6日の業者の突然の行為を目の当たりにして、道路管理者の安中市の指示無くしては、道路の石垣の補修は出来ないはずです。つまり、総括すると、安中市と業者は一蓮托生で、小手先の処理だけで、抜本的対策をしないまま、業者が村道を使用続けられるように配慮していることを痛感させられます。
このように、住民の安全・安心な生活環境の保全より、市外の業者の利益重視を優先する安中市の姿勢は、全国から、太陽光発電で一儲けを企む不良業者の注目を浴びることになり、安中市がきちんとした指導監督をしないという実態が、ますます全国の不良業者の知るところとなり、負のスパイラルがますます加速してしまうわけです。
当会は、微力ながら、安中市が行政の事務事業を市民優先で為されるために、今後とも市内各地の太陽光発電施設の乱開発に警鐘を鳴らすとともに、本件を含め、できる限り支援してまいります。
【3月8日追記】
地元住民からの通報によると、3月5日に安中市土木課職員2名が、排水路の調査にやって来た際に、太陽光発電施設の設置業者が、資材搬入や車両・重機の進入路として、もともと地元住民が生活や営農に使う幅1.8mの狭い生活道路を強引に使用したため、古い石垣が過大な荷重と振動により一部崩落した状況を見てもらいました。そして、安中市土木課の課長自ら、業者の重機の進入を誘導したため、こうした事態を招いた経緯を土木課職員らに告げました。
すると、なんと、3月6日土曜日に、業者が一部石垣から飛び出して崩落しかかっている石の周囲を、いつのまにか、モルタルで固めて補修されていたのを、その日の午後、地元住民が発見しました。
どうやら、3月5日に市役所に戻った土木課職員らから報告を受けた土木課長が、さっそく太陽光発電施設業者に通報したものと推測されます。
通報を受けた業者が、押っ取り刀で週末の土曜日にも関わらず、公道である生活道路を支える個人所有の石垣を、勝手に損傷させた上に、今度は勝手にモルタルを塗りつけたわけで、安中市土木課が、通報した際に、モルタルで補修するよう指示した可能性も指摘されます。
ことほど左様に、安中市は、太陽光発電施設設置業者の立場を最優先し、パネル設置を業者が円滑に実施できることしか頭にないようです。なぜ、市民である地元住民の生活環境には思いが及ばないのでしょうか。到底、行政の行なう行為とは思えません。
さらに、翌日の3月7日日曜日朝、地元住民が、太陽光発電施設設置業者により違法に補修された石垣を見てみると、小石とモルタル小片が下のU字溝に落ちているのが発見されました。
業者の違法な補修が、地元の生活道路をさらに毀損するという結果に、地元住民の皆さんは、安中市行政の住民軽視の対応ぶりを目の当たりにして、「呆れて言葉もでない」と嘆いています。
地域に居住して、ふるさとの生活環境を安全に維持してくれている納税者市民である住民の方々の意見に耳を貸さず、不法行為を平然と行う業者に加担する安中市行政の本末転倒ぶりに呆れ果てた地元住民の皆さんは、再度バリケード設置など実力行使をするしかないでしょう。
引き続き、今後のこの問題の推移に注目してまいります。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】