市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

役人天国の群馬県・・・人事委員会は県人事課に「職員等懲戒処分指針に告発義務を加えよ」と勧告せよ!

2023-10-13 23:07:06 | オンブズマン活動


■10月10日、群馬県人事委員会は群馬県庁を訪れ、知事と議長に県職員の月給とボーナスを引き上げるよう勧告しました。月給を平均して2879円、過去10年では最大となる0.78%の引き上げ率です。県人事委員会によると、今年4月の県職員の平均給与は、36万8270円で、民間と比べて2932円、0.80%下回っているそうですが、そもそも、何かを産み出す仕事ではないのに、民間と比較して給与が決められること自体、理不尽な気もします。

 ちなみに、群馬県人事委員会というのは、群馬県HPによると「専門的、中立的な立場から、人事行政に関する調査、研究、企画、立案などを行います。主な業務としては、職員の給与勧告を行うことや、職員の採用試験及び選考を実施すること、それから職員の勤務条件に関する措置の要求や職員に対する不利益処分を審査し、これについて必要な措置を行うなどの事務があります」とあります

 同会は3名の委員で構成されており、委員長職務代理者の森田均氏は、県庁近くで法律事務所を営む弁護士で、2021年6月27日に続投のかたちで4年間の任期中です。委員の木部和雄氏は群馬銀行の副頭取から会長を歴任後、現在は群銀の相談役で佐田建設監査役も務めており、今週末の2023年10月14日に任期切れで、後任はやはり群銀の取締役会長の堀江信之氏が10月15日付けで就任し、4年間務める予定です。3人目の石川直美氏は有限会社石川不動産鑑定士事務所を営む女性鑑定業者で、2022年6月13日に続投のかたちで4年間の任期中です。

■さて、このように恵まれた月例給やボーナスが支給される県職ですが、もっと恵まれているのは、公務や公務外で違法行為をしても、所属先の群馬県人事課は決して刑事告発をしないことです。つまり、前科者のレッテルが付けられる可能性が極めて低く、安心して生活が送れる境遇の中で、人生が過ごせることです。

 なぜそのようなことが言えるのかというと、令和4年11月18日付で県の人事課が2名の職員に対する懲戒処分を下したことがきっかけです。

**********群馬県HP 2022年11月18日
【11月18日】職員に対する懲戒処分について(人事課)
更新日:2022年11月18日
 令和4年11月18日付けで職員に対して行った地方公務員法に基づく懲戒処分について、下記のとおり公表します。
              記
〇環境森林部関係
対象職員:田島秀樹
所属・職位・年齢:森林保全課・係長級・56歳
処分事由:起案・決裁などの事務手続を怠り、組織としての意思決定を経ないまま公文書19件を作成・施行したほか、これに関連する公文書の紛失や事務処理の放置など177件を発生させた。
処分内容:免職
処分年月日:2022年11月18日
備考:併せて、管理監督責任として、本日付けで当時の上司等のうち7名を減給10分の1(1月)、2名を戒告処分とした。

〇農政部関係
対象職員:茂木浩徳
所属・職位・年齢:東部農業事務所家畜保健衛生課・係長級・49歳
処分事由:県費により購入した物品を自宅に持ち帰るなどして自己の所有物としていた。っ処分内容:免職
処分年月日:2022年11月18日
備考:併せて、管理監督責任として、本日付けで当時の上司等6名を戒告処分、1名を訓告とした。
**********

 2名とも、それぞれ虚偽公文書作成・行使と窃盗の刑事罰に該当しており、当然、群馬県人事課は刑事訴訟法239条に基づき、告発の義務を行使しなければなりません。しかし、県人事課は、当会による度重なる告発要請にもかかわらず、「『職員の懲戒等の指針』において告発義務は明記されていない」ことを根拠に、警察に告発しようとしません。

 そのため、当会では令和5年2月24日付で、2名の職員の告発状を作成し、群馬県警捜査二課に提出し、受理するよう求めました。その後、県警から、2名の職員の懲戒処分に関して、県が、当会の情報開示請求に対して出してきたほぼ全部が黒塗りされた資料を提出してほしいと連絡があり、同年5月15日の午前11時半に県警本部を訪れて、捜査2課に次の2件の開示決定通知書と開示情報(実際には非開示も同然の黒塗り状態)を提示しました。詳しい経緯は次のブログ記事をご覧ください。
〇2023年5月28日:一般県民のツイートには直ぐに被害届を出すのに身内職員の不祥事を告発しない群馬県人事課の二重基準
〇2023年5月29日:県知事の被害届は即刻受理するのに県民が県職員の不祥事を告発しても受理しない群馬県警察の二重基準

 その後も、県警からは音沙汰がありませんでしたが、8月下旬に突然、県警から電話があり、8月31日に面談をしました。

 その中で、県警捜査二課の担当者らから、次の趣旨の説明がありました。

(1)半年ほどかかってしまったが、やはり本件告発状を受理できない。

(2)理由としては、既に懲戒免職を受けた公務員に対して、ムチ打つ必要性が乏しいからだ。

(3)つまり、既に“死に体”状態の元役人を、さらに刑事罰で懲らしめる必然性に乏しい。

(4)他方、我々としても、県職員に対して、一種の負い目のようなものを感じる場面もなくはない。つまり、県職員へのコンプレックスみたいなものと言えるかもしれない。(当会注:この意味は、給与面なのか、権限なのか、あるいは政治力による公務執行への影響なのか、よくわかりませんでした)

(5)オンブズマンのほうには、県行政に関連して、いろいろな情報提供があると思う。(当会:最近特に増えており、実のところ、手が十分にまわらず、てんてこ舞いの状態だ)我々としては、そういう、いわばフレッシュな情報を希望している。そのほうが、県警としてもモチベーションが挙げられる。ぜひ、次回はそういう活きのよい情報提供をもとにした告発をどしどし持ってきて相談してほしい。

■さすがに、「当会の告発状の写しを半年も預かりながら、まったく検討しなかった」という誹りを浴びることは避けたいと県警も考えたのか、当会に1枚の資料の提示がありました。


 見ると、令和2年度以降、令和5年度までの人事異動の変遷を表にしたものです。県警は、その表を当会に提示しつつ、こう言いました。

 「例えば茂木浩徳の場合、令和2年度の畜産試験場の場長だった上司の人物は、翌年度に東部農業事務所環境衛生係の主幹専門員(技)に降格となっている」

 「また田島秀樹の場合、令和2年度に吾妻環境森林事務所森林係で直属の係長だった人物は、令和4年度に森林係の副主幹専門員(技)に降格となっている」

 「なお、オンブズマンから指摘のあった、令和3年度と4年度に吾妻環境森林事務所著長だった人物は、かつて藤岡市の保安林設定手続きで虚偽の公文書を作成した“前科”があるということだが、少なくとも、田島秀樹が吾妻環境森林事務所に在籍していたのは令和2年度までであり、直属の上司ではないことから、今回の事件、つまり上信自動車道の整備に係る保安林解除手続きの瑕疵事件とは無関係だったことがわかる」

 「ということで、群馬県としても、2名の懲戒免職の職員の上司らに対して、管理監督責任を問題視して、戒告や訓告処分をしただけでなく、人事異動でも降格処分をした形跡がうかがえる。だから、それなりの事件の責任を関係者にもとらせたことで、本件についてさらに告発するまでもない、というのが県警としての判断ということで、理解してほしい」

■当会として、捜査機関である県警の担当者から、こう言われてしまうと、これ以上、告発を受理するよう迫っても、実現が不可能と悟らざるを得ませんでした。

 そのため、やむなく、告発状の受理を諦め、今後は当会に寄せられるさまざまな行政を巡る不祥事のネタ情報の中から、県警の興味を引きそうなものをピックアップして、都度告発相談をすることにしました。

 最後に当会から捜査二課担当者らに「先ほど提示していただいた2名の職員の所属先の上司や同僚など関係職員の名簿の写しをいただきたい。せっかく県警がここまで調べた証としたいので、お願いする」と申し入れました。すると、担当者は互いに顔を見合わせて、「県職員の名簿は公表されているので、問題ない。写しではなく、これをそのまま持って行ってもよい」と言ってくれました。

■その後、当会では、県警からもらった人事異動の推移を示す表をさらに充実すべく、平成30年度・令和元年度体制も付け加え、さらに令和5年度体制も追記して仕上げました。以下にその結果を示します。

*****茂木浩徳(農政部)関連*****
=====平成30年度・令和元年度体制=====
●東部農業事務所家畜保健衛生課
課長(技)       斎田好之 ⇒R2環境衛生係主幹専門員
次長(技)       庭野正人
〇環境衛生係
環境衛生係長(技)   片野良平
主幹(技)       石井秀和
主幹専門員       松原英二
●畜産試験場
場長(技)       勝山 均 ⇒R2退職?
次長(事)(総務係長) 石山貴浩 ⇒R2水産試験場次長(総務係長)⇒R4R5県民活動支援・広聴課情報公開係主幹専門員
研究調整官(技)    鈴木睦実 ⇒R2畜産試験場場長⇒R3R4R5東部農業事務所環境衛生係主幹専門員
〇飼料環境係
飼料環境係長(技)   柿沼博之 ⇒R2東部農業事務所環境衛生係長⇒R4退職?
独立研究員(技)主幹  田中克宏 ⇒R2~R5吾妻農業事務所農畜産指導係主幹
独立研究員(技)主幹  茂木浩徳 
主査(技)       新井英雄
主査(技)       真庭 進
技師          南 真子
技師          関野凱一

=====令和2年度体制=====
●東部農業事務所家畜保健衛生課
課長(技)       庭野正人
次長(技)       齊藤 満
〇環境衛生係
係長(技)       柿沼博之
主任(技)       藤井香織
主任
主幹専門員(技)    斎田好之
●畜産試験場
場長(技)       鈴木睦美 ⇒東部農業事務所環境衛生係主幹専門員(技)
次長(事)       大場祥夫
研究調整官(技)    浅田 勉
〇飼料環境係
飼料環境係長(技)   関上直幸
独立研究員(技)主幹  坂西啓悟
独立研究員(技)主幹  茂木浩徳
管理長代理(技)    新井英雄
技師          高野武彦
技師          南 真子
技師          吉澤隆吾
主幹専門員(技)    齋藤幸雄

=====令和3年度体制=====
●東部農業事務所家畜保健衛生課
課長(技)       庭野正人
次長(技)       片野良平
〇環境衛生係
係長(技)       柿沼博之
主任          藤井香織
主任          斎田好之
主幹専門員(技)    鈴木睦美
●畜産試験場
場長(技)       梅村 保 ⇒R4畜産課畜産防疫対策室室長へ⇒R5畜産試験場繁殖技術課主幹専門員
次長(事)       大場祥夫 ⇒R4R5吾妻農業事務所農業振興課次長(総務係長)へ
研究調整官(技)    浅田 勉
〇飼料環境係
飼料環境係長(技)   関上直幸 R4R5留任
独立研究員(技)主幹  茂木浩徳
独立研究員(技)    佐藤拓実
管理長代理(技)    新井英雄
技師          高野武彦
技師          南 真子
技師          富沢大輝

=====令和4年度体制=====
●東部農業事務所家畜保健衛生課
課長          小渕裕子 ←畜産防疫対策室室長から
次長          片野良平
〇環境衛生係
係長(技)       茂木浩徳
主任          藤井香織
主任          徳永真穂
主幹専門員(技)    鈴木睦美
●畜産試験場
場長(技)       平井光浩 ←農政部技術支援課精算環境室長
次長(事)       大場祥夫 ←会計管理課補佐(総務・決算係長)
研究調整官(技)    浅田 勉
主任研究員(技)係長  加藤 聡
〇飼料環境係
主任研究員(技)係長  関上直幸
独立研究員(技)主幹  佐藤拓実
管理長代理(技)    新井英雄
主査(技)       真庭 進
技師          高野武彦
技師          住吉帆南
技師          富沢大輝
技師          藤沢 望

=====令和5年度体制=====
●東部農業事務所家畜保健衛生課
課長          小渕裕子
次長          片野良平
〇環境衛生係
係長(技)       坂西啓吾 (令和2年度飼料環境係独立研究員主幹)
主任          藤井香織
主任          徳永真穂
主幹専門員(技)    鈴木睦美
●畜産試験場
場長(技)       平井光浩 ←農政部技術支援課精算環境室長
次長(事)       大場祥夫 ←会計管理課補佐(総務・決算係長)
研究調整官(技)    浅田 勉
主任研究員(技)係長  加藤 聡
〇飼料環境係
主任研究員(技)係長  関上直幸
独立研究員(技)主幹  佐藤拓実
管理長代理(技)    新井英雄
主査(技)       真庭 進
技師          高野武彦
技師          住吉帆南
技師          富沢大輝
技師          藤沢 望

*****田島秀樹(環境森林部)関連*****
=====平成30年度・令和元年度体制=====
●環境森林部森林保全課
●西部環境森林事務所

所長(技)       曲沢 修
副所長(技)      近藤尚志
次長(技)       春山直彦
次長(技)       小林直己
〇森林土木第一係
森林土木第一係長(技) 小林 宏
主幹(技)       阿部益義
技師          佐藤克彦
●吾妻環境森林事務所
所長(技)       桜井順児
次長(技)       神戸洋起
次長(技)       折田知徳
集約化専門官(技)   田村哲哉
〇総務環境係
総務環境係長(事)   松下 学
主幹(事)       楠伸一郎
副主幹(技)      中嶋慶子
主事          反町恭一郎
〇森林係
森林係長(技)     塚越 順
主幹(技)       田島秀樹
主任(技)       金井知巳

=====令和2年度体制=====
●環境森林部森林保全課
●西部環境森林事務所
所長(技)       剣持則之
副所長(技)      神戸洋起
次長(技)       赤上直人
次長(技)       佐藤高影
経営管理専門官(技)  小島 正
〇森林土木第一係
森林土木第一係長(技) 牧田和広
技師          宮内総介
技師          樋口 晃
●吾妻環境森林事務所
所長(技)       武田将行 ⇒R3林業試験場場長⇒R4退職?
次長(技)       飯塚哲也 R3留任⇒R4利根沼田環境森林事務所次長
次長(技)       角田 智 R3留任⇒R4桐生森林事務所次長
経営管理専門官(技)  田村哲也 ⇒R3R4渋川森林事務所経営管理専門官
〇総務環境係
総務環境係長(事)   小池隆弘
主幹(事)       楠伸一郎
主幹(技)       中嶋慶子
主事          松田直樹
〇森林係
森林係長(技)     阿部祥一 R3留任⇒R4R5森林係副主幹専門員
主幹(技)       田島秀樹 R3R4西部環境森林事務所森林土木第一係長⇒R4・11月懲戒免職

=====令和3年度体制=====
●環境森林部森林保全課
●西部環境森林事務所
所長(技)       剣持則之
副所長(技)      神戸洋起
次長(技)       佐藤正紀
次長(技)       影澤圭太
経営管理専門官(技)  塚越 剛
〇森林土木第一係
森林土木第一係長(技) 田島秀樹
技師          樋口 晃
技師(兼)       櫻井大陸
●吾妻環境森林事務所
所長(技)       佐藤 淳 ←藤岡森林事務所所長
次長(技)       飯塚哲也
次長(技)       角田 智
経営管理専門官(技)  小島 正 ←西部環境森林事務所
〇総務環境係
総務環境係長(事)   小池隆弘
主幹(事)       楠伸一郎
主幹(技)       中嶋慶子
主事          塚田未来
〇森林係
森林係長(技)     阿部祥一
主幹専門員(技)    原澤徳衛

=====令和4年度体制=====
●環境森林部森林保全課
●西部環境森林事務所
所長(技)       剣持則之
副所長(技)      神戸洋起
次長(技)       佐藤正紀
次長(技)       中山精治
経営管理専門官(技)  塚越 剛
〇森林土木第一係
森林土木第一係長(技) 田島秀樹
技師          小濱諒太
技師(兼)       櫻井大陸
●吾妻環境森林事務所
所長(技)       佐藤 淳
次長(技)       北村光弘
次長(技)       宇敷 貢
経営管理専門官(技)  小島 正
〇総務環境係
総務環境係長(事)   栗林淳一
主幹(事)       楠伸一郎
主幹(技)       多田悠人
主事          塚田未来
〇森林係
森林係長(技)     深田 勉
主幹専門員(技)    原澤徳衛
副主幹専門員(技)   阿部祥一 ←前年度の森林係長

=====令和5年度体制=====
●環境森林部森林保全課
●西部環境森林事務所
所長(技)       笛木元之
副所長(技)      佐藤 誠
次長(技)       関 博之
次長(技)       阿部充訓
林業政策専門官(技)  渡邉充代
〇森林土木係
森林土木係長(技)   小林 宏
技師          荻野祐介
技師          小濱諒太
技師          塩野谷瑞己
技師          高坂拓夢
●吾妻環境森林事務所
所長(技)       折田知徳
次長(技)       北村光弘
次長(技)       宇敷 貢
林業政策専門官(技)  塚越 剛
〇総務環境係
総務環境係長(事)   新保 恒
主幹(事)       楠伸一郎
主任(事)       徳田智加子
技師          多田悠人
〇森林係
森林係長(技)     牧田和広
主事          松本哲明
主幹専門員(技)    中山精治 ←西部環境森林事務所次長
副主幹専門員(技)   阿部祥一 ←前々年度の森林係長
**********

■県警は上記の異動の推移を示す表をもとに、「場長から主幹専門員へ」あるいは「森林係長から同係副主幹専門員へ」と異動になったケースは、「明らかに降格処分だ」と分析しています。

 果たしてそうなのでしょうか。主幹専門員や副主幹専門員は、60歳の定年を迎えた場合、再任用職員として雇用される場合の職位というふうに聞いたことがあります。そうすると、不法行為をした2名の職員の上司らが、本当にしかるべき監督責任の不備を問われて、きちんと処分されたのかどうか、特定できる証拠が見当たらないことになります。

 「誰も監督責任をとっていないのではないか」。その疑問を解くために、当会は、山本知事あてに開示請求したのですが、県人事課は、管理監督責任のある当時の上司等の職位や氏名を全て真っ黒塗りにしました。このことから、やはり群馬県職員は、前科者にならないよう人事課が庇ってくれるという観点からも、民間組織と比べて極めて“恵まれた”職場環境にあると言えるでしょう。

■それだけに、群馬県人事委員会におかれては、ぜひ山本知事に、「県職員の懲戒等処分の方針」に、告発義務を追記するよう、強く勧告をしていただきたいものです。

 富岡市の人事課担当が「当市の職員の懲戒処分の方針は、群馬県のそれを流用しています。なので、市として職員が不法・違法行為を犯しても、告訴・告発する必要は無いと考えています」と説明しているように、群馬県は県内の市町村の公務員の人事管理の手本とされています。

 県内の公務員のモラル・ハザードがこれ以上、低下しないように、群馬県が率先して、告訴・告発義務を内規に明文化しなければなりません。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

対馬市の核のゴミ調査拒否の背景にある東邦亜鉛の負の遺産と同社安中製錬所における重金属土壌汚染の連鎖

2023-10-13 08:32:09 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題

東邦亜鉛㈱の前身の日本亜鉛㈱が1939年(昭和14年)に買収した対馬の対州鉱山。出典:同社HPより

■9月27日、長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(いわゆる「核のごみ」)の最終処分場選定の前提となる「文献調査」について、調査を受け入れない考えを表明しました。同市長は27日午前10時に開会した市議会本会議で、現段階では「安全であるという市民の理解を得るのは難しい」と述べたのです。

 これに先立ち、対馬市議会は9月12日の本会議で、文献調査を受け入れるよう求めた市民からの請願について賛成10、反対8で採択していました。比田勝市長は市議会の決定と異なる判断を下した理由について①市民の合意形成が不十分だ②風評被害が懸念される――などを挙げて、核のゴミの受け入れにNOの見解を示したのです。

 自民党をバックに当選した同市長のこの発言は、極めて重い意味を持っています。なぜなら、対馬はいまでも有害な重金属汚染の問題を引きずっているからです。

■この問題について、折から東京新聞が、対馬のカドミウム公害を引き合いにして、核(放射能汚染)や有害な重金属汚染の廃棄物が、長期間にわたり、生活環境や自然環境に及ぼす深刻な問題について、わかりやすく提起する記事を掲載しています。早速見てみましょう。

**********東京新聞「こちら特報部」2023年9月28日
核のごみ NO 調査応募巡り市長が方針
対馬 公害の歴史
 原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分の受け入れを巡って揺れる長崎県対馬市。27日、比田勝(ひたかつ)尚喜市長は調査に応募しない意向を表明した。ただ市議会は推進派が多数を占めるほか、来春に市長選があり、予断を許さない。その対馬は昭和の時代、鉱山が操業され、カドミウム汚染に翻弄された。イタイイタイ病の発生も疑われた。過去に苦労した地に「核のごみ」を委ねていいものか。(木原育子、西田直晃)
■昭和にカドミウム汚染 大きな組織に依存する構図■

鎌田慧(さとし)さん(資料写真)
 対馬市長の方針が示された27日。安堵せず、嘆息交じりで話す人がいた。
 「(受け入れに伴う交付金に)群がらざるを得ない自治体は対馬だけでなく、もっと出てくるはずだ」
 「本音のコラム」でおなじみのルポライター、鎌田慧さん(85)。1969年にジャーナリストとして初めて踏んだ現場が対馬だった。カドミウム汚染が取り沙汰された状況を取材し、初の著書「隠された公害」を70年に上梓した。
 あれから半世紀以上。同じ地が「核のごみ」に揺れる。先行きが不透明な状況も残る。
 「歴史が繰り返されている。鉱山会社から、国や電力会社へ変わっただけ。生活が行き詰まると、どこか大きな組織に依存してしまう構図は変わっていない」
■69年に取材 鎌田慧さん 「住民沈黙 企業が支配」■
 過去に汚染をもたらしたのが対州鉱山だ。所在するのが旧厳原(いづはら)町。同町は、2004年に6町合併で誕生した対馬市の中でも、中心的な存在になる。市の玄関口のフェリー乗り場から西に数キロに位置する。
 市観光商工課の糸瀬富喜主任は「対州鉱山は厳原町の佐須という地域にあったので、地元の人は『佐須鉱山』と呼んだ」と話す。
 「同じ旧厳原でも市庁舎がある島の東側と違って、西側の佐須は農村地域。トンネルを抜けると、ぱっと日本の田舎の原風景が広がる感じだ」と続ける一方、「コロナ前までは韓国の観光客でにぎわったこともあったが、今は…」とも。
 対馬と鉱山は縁深い。古代から銀を産出し、地域を繁栄させた。1939年には日本亜鉛が買収。流れをくむ東邦亜鉛は高度成長期にかけ、対州鉱業所を置いて亜鉛や鉛を掘り出した。

東邦亜鉛の2017年環境報告書。対州鉱山の管理状況を伝える
 その一方、地元はカドミウム汚染に見舞われた。亜鉛族元素に区分されるカドミウムが原因で骨がもろくなる「イタイイタイ病」を疑う報道もあり、69年に要観察地域に指定された。
 鎌田さんが取材を始めたのがこのころだ。「ほとんどの住民は無言を貫き、逃げるばかり。町にとって大切な産業。住民は企業に完全に支配されていた」
 先の著書を出版した3年後の73年、「この資料は正確で聊(いささ)かかの誇張もない真実の記録です」との書き出しで企業内部から告発文が届いた。会社が組織ぐるみでごまかした資料を厚生省(現厚生労働省)に提出したと裏付ける文書だった。
 鎌田さんは「1人の人間が勇気を奮い、苦難を覚悟し、いわば身をていして訴え出てくれた。対馬は国境の島、要塞の島だが、企業に牛耳られた島でもあった。そんな三重苦を背負っていた」と回想する。
■鉱山、調査で偽装工作 閉山50年でも排水検査・報告■
◆坑廃水処理水の調査、今も続く 負の記憶 考慮を◆

カドミウムの汚染調査で偽装工作があったことを報じた当時の東京新聞
 対州鉱山は73年に閉山。翌年、告発文にあった不正の記事が世に出て騒動に。東京新聞も、汚染調査で偽装工作があったと報じた。
 現地では長崎大が約30年にわたり、住民の健康被害の追跡調査を続けた。イタイイタイ病と同じ症状の住民が確認されていたが、原因は断定できなかった。
 一方で余波は今も続く。
 東邦亜鉛は鉱山保安法などに基づき、発生源対策や坑廃水処理を実施する。対州鉱山管理事務所の杉村智律所長代理は「処理水に重金属が含まれていないか調査を続け、毎月経済産業省に報告している」と語る。
 閉山後、一度も基準値を超えていないという。市環境政策課の阿比留正臣課長は「問題の値は出ていないが、負担が続く面もある。国と県、市で毎年補助金も出している」と話す。
 環境問題に見舞われた対馬。「核のごみ」の最終処分とも長い関わりを持つ。
■議会側、反対から一転 来春市長選で争点か■
 80年代には動力炉・核燃料開発事業団の地質調査で島の一部地域が「処分地として良好」と評価された。最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は2006年ごろから説明会を複数回開いた。
 なぜ対馬で説明会を開いたのか。過去の環境汚染に思いを巡らせたのか。
 NUMO広報部の副部長は「(動燃の調査は)参考にしていない。説明会をいつから何度開いたか、どちらが働きかけたかは、個別のケースはお答えしていない」と繰り返した。
◆24年春に市長選、予断許さず◆
 対馬は揺れてきた。07年に市議会は受け入れ反対を決議した一方、今月には調査受け入れを促す請願を採択。市長は反対を表明したが、来春には市長選を控えており、不透明さが残る。
 万一、調査の応募に動いた場合、NUMOは対馬の過去に配慮するのか。
 手を挙げた場合、3段階ある調査のうち、第1段階の文献調査が始まる。先の副部長は「不適地を除くための調査。次の段階の調査でさまざまな要件が設けられ、そこで判断する可能性はある」とした。
 とはいえ、最終処分場の選定基準は曖昧さが残る。

経済産業省が入る庁舎=東京・霞が関で
 文献調査を踏まえた選定基準については、経産省資源エネルギー庁が7月に案を公表した。景観や文化財、国土防災を考慮し、土地の利用規制が起きるというが、それ以上の記載はなく、地域事情が深く考慮されるかは不明瞭だ。担当者は「対馬で文献調査を開始しておらず、予断を持って答えられない」と話す。
 選定基準はどうあるべきか。過去の苦労を無視して構わないのか。
 信州大の茅野恒秀准教授(環境社会学)は「地域の歴史的経験に正面から向き合うべきだ。住民は長い時間軸の中で暮らす。その経験に寄り添わずに信頼は得られない」と訴える。
■処分地選定「地域の経験寄り添って」■
◆対馬市、寿都町、神恵内村…共通するのは◆
 対馬市のほか、既に文献調査を受け入れた北海道寿都町、神恵内村にも共通するのは、高齢化や過疎化で疲弊した地元の活性化が叫ばれる点だ。
 明治学院大の藤川賢教授(地域環境論)は「困窮地域ほど新たな苦労を迎えやすい」と語る。「調査を受け入れると、観光業などにデメリットがあり、賛否の対立が疲弊を招く。小規模自治体の財政に貢献するというが、予算を長期にわたって執行できるわけではない。交付金が終了すれば困窮はより厳しくなる」
 そもそも選定基準の議論が十分と思えない。現状は文献調査の基準をまとめただけ。候補地を先に募り、基準は調査と並行して決められる。
 先の茅野氏は「『後出しじゃんけん』のように判断基準を決める進め方。最終処分場の選定は手順を含めたゼロベースでの見直しが必要だ」と話す。
◆デスクメモ◆
 対馬の過去を知るほど、対馬に迷惑施設を委ねていいかと感じた。ただ万一、応募に傾いたら「善意」に甘えていいか。苦労に苦労を重ねる危惧。善意というより、交付金を頼らざるを得ない「苦渋」の面も。各地に通じる問題。公平な最適解をどう考える。その議論こそ必要では。 (榊)
**********

■東邦亜鉛は、1937年(昭和12年)2月に日本亜鉛製錬株式会社として設立され、直後の同年6月に安中製錬所を操業開始し、1941年(昭和16年)9月に東邦亜鉛株式会社に社名変更しました。しかし、安中製錬所の操業開始に際して、当時は戦時下であったことから、東邦亜鉛は、地元住民に対して「兵隊さんの命を守る鉄兜を作るために必要な“高度鋼”を製造するためだ」として、ウソをつき騙したのです。そのため、筆者の子どものころは、地元の大人たちは東邦亜鉛安中製錬所のことを「コードコー」と呼んでいました。

 製錬所は、丘陵地の北斜面に位置し、現在では55ヘクタールもの面積に拡大しており、これ以外にも工場周辺のあちこちで、農地や山林を、子会社の安中運輸の名義や、従業員の中で農家を兼業している者の名義で土地を取得しています。

 このうち平地に広がるカドミウム汚染土壌の水田については、公害問題で世間の注目を浴びていた昭和40年代後半に排客土ないし15センチの上乗せ客土が対策事業として実施されました。しかし、製錬所の南側にある北野殿地区を主体とする丘陵地に拡がる畑地と、製錬所の東側に位置する岩井地区の畑地は、長年にわたる製錬所から排出される重金属を含む降下ばいじんや、敷地から風にのって伸び散る重金属交じりの土埃を浴びており、土壌汚染が深刻ですが、これまで放置されたままでした。

 平成7年ごろ、これら畑地の土壌汚染対策として、圃場整備を方式による排客土のための碓氷川流域公害防除特別土地改良事業として、群馬県が主体となり、公共事業で排客土工事を施工する事業計画がスタートし、地元に公害防除特別土地改良事業(略して「公特事業」)推進委員会が設置されました。これは当時玄米中のカドミウム濃度が1ppmを超える農地を対象とした農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(土染法)に基づき、畑地においても陸稲が栽培されていたことから、畑地についても重金属土壌汚染対策が必要となる対象とされたのでした。

 以来、28年にわたり計画が進められていますが、1988年に穀類、1998年にその他の食品目のカドミウム基準時の検討を開始していた、玄米中のカドミウム濃度の基準が、国際的な食品規格基準の策定を行う政府間機関であるコーデックス委員会(CAC)の下部組織である食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)が、玄米中に含まれるカドミウム濃度の安全基準を見直した結果、2005年に小麦、野菜類、2006年に精米の基準(0.4ppm)を策定し、公表しました。

*****コーデックス委員会の食品中カドミウム国際基準値*****
 コーデックス委員会が定めている食品中のカドミウムの国際基準値は、以下のとおりです(「食品及び飼料中の汚染物質及び毒素に関する一般規格」(General Standard for Contaminants and Toxins in Foods and Feed, CXS 193-1995)の要約)。
<食品>/<基準値(mg/kg)>/<基準値適用の食品部位>/<備考>
 精米/0.4/全体
 小麦/0.2/全体/普通小麦、デュラム小麦、スペルト小麦、エンマー小麦に適用。
 穀類/0.1/全体/コメ、小麦、ソバ、キノア、カニューアを除く。
 豆類/0.1/全体/乾燥した大豆を除く。
 根菜類/0.1/地上部を除いた全体。付着した土壌を除く(流水ですすぐ又は乾いたものは優しく払い落とす)。バレイショは皮を剥いたものに適用。/セロリアックを除く。
 果菜類/0.05/茎を除いた食品の全体。スイートコーン、生鮮コーンは、皮を剥いた粒及び軸に適用。/トマト及び食用きのこを除く。
 葉菜類/0.2/明らかに傷んだ又は萎れた葉は除いた後の通常販売される全体部位。/アブラナ科の葉菜類にも適用する。
 マメ科野菜類/0.1/可食部全体。水分が多い形態では鞘全体又は鞘を除いたものが食べられる。
 アブラナ科野菜類/0.05/球茎キャベツ及びコールラビ:明らかに傷んだ又は萎れた葉を除いた後の通常販売される全体部位。カリフラワー及びブロッコリー:花蕾(未熟な花房に限る。)芽キャベツ:"button"(側芽)に限る。/アブラナ科の葉菜類を除く。
 鱗茎類/0.05/タマネギ及びニンニクの乾燥した鱗茎:根及び付着した土並びに簡単に剥がれる羊皮様外皮を除いた全体部位。
 茎菜類/0.1/明らかに傷んだ又は萎れた葉を除いた全体部位。ルバーブ:葉柄のみ。アーティチョーク:花蕾のみ。セロリ及びアスパラガス:付着した土を除く。
**********

■こうした中、日本政府の農林水産省は2001年から食品中のカドミウムの実態調査を開始しました。これは、コーデックス委員会で玄米中のカドミウム濃度基準が0.2ppmに決まる動きをにらんで、これを何とか0.4ppmまで緩和することを目指し、2003年に調査結果と「消費者の健康保護が図られることを前提として、基準値を合理的に達成可能な範囲でできる限り低く設定する」という考え方(ALARAの原則)に基づいて推定した基準値案を作成し、CCFACに提出しました。

 その結果、日本政府のロビー活動が功を奏し、上記のとおりコーデックス委員会は、玄米中のカドミウム濃度を0.4ppmとしたのでした。

■こうした世界の動きに連動するかたちで、平成7年(1995年)頃スタートした群馬県主導の公特事業推進委員会も、このあおりを食いました。当初は、汚染農地の所有者からの事業参加の仮同意も順調に取得が進んでいたのですが、平成14年(2002年)に0.4ppmの基準値が策定されると、途端にスローペースとなりました。

 それでも地元の野殿・岩井の地権者らは、何とか事業を推進すべく、仮同意の取得を進め、ついに平成19年(2007年)3月5日に100名あまりの地権者全員の仮同意文書を集めたのでした。

 ところが、群馬県のスローモーな対応は相変わらず続き、年1回の本部役員会議を開くだけで、事実上足踏み状態が平成24年まで続きました。そのため、地元地権者で組織する公特事業推進委員会では、当時地元選出の2名の県議(岩井均、茂木英子)に紹介議員となってもらい、大沢正明群馬県知事に、公特事業の積極的な推進を要請する請願書を提出しました。

■すると平成25年から、群馬県がこの事業に対して積極的な姿勢を見せ始め、当初は平成29年には着工も夢ではないかもしれないという期待を地元住民に抱かせました。

 しかし、当時から10年が経過しようとしている現在、期待は幻想に代わり、群馬県は以前のようなスローダウン状態に逆戻りしようとしています。そのため、こうした状況を打開すべく、昨年7月12日に筆者が3代目の公特事業推進委員会の会長に推挙されました。

 以来、1年が経過しましたが、状況は深刻となっています。なぜなら、群馬県は東邦亜鉛に忖度して、積極的に公特事業を進めようとしないためです。

 それどころか、平成3年度と4年度に実施された岩井畑地区における現状回復方式による公特事業(当初、2.5ヘクタール規模の区画整理事業で計画されていたが、東邦亜鉛が地元有力者を使って地権者の切り崩しを諮り、着工寸前までに0.96ヘクターまで事業規模が縮小)に基づく農地の汚染土壌の排客土工事の最終段階で、排土を埋め立てた東邦亜鉛の敷地内の場所で、群馬県が東邦亜鉛に土壌検査を指示して測定させたところ、土壌汚染対策法に定めるカドミウム(基準値45ppm)、鉛(基準値150ppm)、ヒ素(基準値150ppm)をいずれも上回ったとして、急遽、排土の移動を禁止し、下層の土を入れ替える、いわゆる天地返し工法しか許可しないと、事業を担当する県農政部に横やりを入れたのでした。

 このため、野殿地区における事業の見通しに暗雲が立ち込めています。いかに、東邦亜鉛が行政に対して圧力をかけ、畑地の汚染土壌対策事業にブレーキをかけているかを痛感させられます。

■なお、日本政府は、農用地の土壌汚染防止に関する法律(土染法)は基本的に水稲や陸稲を作付けする水田や一部の畑地だけを対象にして,野菜や果実を栽培するその他普通畑は今後とも対象にしないつもりです。そのため、安中製錬所周辺の畑地の重金属汚染土壌は依然として放置されたままであり、しかも、毎年、少しずつ安中製錬所から排出される排煙中に依然として含まれるカドミウム、鉛、ヒ素などの重金属が周辺に降り積もり続けており、汚染が進行している状況にあります。

 対馬市の対州鉱山跡地で依然として鉱毒が周辺環境に負荷をかけているのと同様に、群馬県安中市の東邦亜鉛安中製錬所も、長年にわたり重金属を周辺に垂れ流し、あるいは巻き散らかしてきています。対州鉱山で見せた東邦亜鉛の企業倫理の欠如は、今もなお、安中の地で遺憾なく発揮されていると言えるでしょう。

【市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報「対馬の対州鉱山の様子」
**********ブログ「水辺遍路」2020年10月25日
対州鉱山の池(仮称)(長崎県対馬) 離島 九州編

山腹にラピュタ感のある建物
 対州鉱山は1973年に閉山した亜鉛鉱山。
 対馬筆頭格の河川である佐須川沿いに鉱山事務所があり、閉山してから半世紀近くがたった今も鉱毒管理が行われていて、敷地内に入ることもできず、池にも会えなかった。
 当初は採掘跡湖かと思ったが、立地や形態的には鉱滓ダムの可能性が高そうだ。

 川沿いに三つの池があるようだが近づけず







 枯れ沢となる川が多い対馬にあって、唯一、豊かな清流をもつ佐須川であるが、このあたりではさすがの佐須川もこんな具合

※参考情報「対州鉱山」
**********Wikipedia「対州鉱山」

対州鉱山跡(厳原町佐須地区)。2017年6月撮影

所在地:長崎県下県郡厳原町(現:対馬市)
座標 :北緯34.2285881687585度 東経129.2183346155609度
生産 :産出物 亜鉛
    生産量 22,000t/月(1966年)
歴史 :開山  ?
    閉山  1973年
所有者:日本亜鉛株式会社⇒東邦亜鉛株式会社
    取得時期 1939年
概要 :
 対州鉱山(たいしゅうこうざん)は長崎県下県郡(現・対馬市)厳原町樫根(かしね)にあった鉱山。
 東邦亜鉛によって経営されていた亜鉛の鉱業所で、1973年(昭和48年)に閉山した。なお、対州とは対馬国、対馬島の異称。
 東邦亜鉛は1943年(昭和18年)の対州鉱業所(対州鉱山)本格操業開始から、1973年(昭和48年)の閉山までの30年間経営を行っていた。当初は戦後の高度経済成長により、急速に業績を伸ばしていった。しかし昭和40年代半ばから貿易の自由化が推し進められ、外国産の安価な鉱石が輸入されるようになった。そのため、小規模で生産コストの高い国産鉱石はたちまち外国産に押され、経営が行き詰り閉山となった。
 対州鉱山は急速に厳原町の産業基盤を支える重要産業に成長していった。鉱山従事者で人口が増加し、町の税収は増え、鉄筋コンクリート造のアパートや商店、映画館などの遊興施設が建設されるなど、鉱山周辺の地域に活気をもたらした。
 しかし、繁栄は長く続かず、閉山後は鉱産税や電気・ガス・固定資産税の大幅な減収、下請け労働者の失業、商店の減収をもたらすなど、町の経済にとって大打撃となった。また、カドミウム汚染を引き起こすなど、町民の健康への影響も生じた。このカドミウム汚染に対して東邦亜鉛は汚染田の復元や農産物減収・健康被害者への補償を行うとともに、閉山から45年以上たった現在でも汚染が起きないよう監視機関(事務所)を設置している。
 東邦亜鉛株式会社 対州鉱山管理事務所 〒817-0243長崎県対馬市厳原町樫根248(北緯34度13分43秒、東経129度13分8秒)
歴史 :
 対馬では古くから、銀をはじめとする金属を産出していた(対馬銀山を参照)。
 大正時代中頃に鉱山が休止。
 1938年(昭和13年頃) 土佐出身の白川隆彦が鉱業権を取得し、当時の佐須、安田、久の恵等の坑を買収統合。
 1939年(昭和14年)8月 日本亜鉛株式売社が白川隆彦から鉱業権を買収。
 1941年(昭和16年)9月 日本亜鉛株式会社が社名を東邦亜鉛株式会社に改称。
 1943年(昭和18年)8月 本格操業を開始。
 1945年(昭和20年)4月 太平洋戦争の激化により、重油等の資材不足のため操業を一時休止。
 1946年(昭和21年)11月 連合国軍最高司令官総司令部は日本政府に鉛の増産を指令、同時に日本各地の鉱山は自家発電力用の重油の特配を受けることになる。
 1947年(昭和22年)2月 連合国軍最高司令官総司令部天然資源局技官が訪問。綿密な調査の末、対州鉱山の有望の認定を行う。
 1948年(昭和23年) この年、再度の資源調査により、鉱床・鉱量の確実性が認められ、全面的な支援を受けるようになる。
 1948年(昭和23年)8月 本格的に操業を再開。
 1949年(昭和24年) 小茂田発電所が完成(出力450kW2基)。
 1950年(昭和25年)6月 月産5,000t態勢が完成。
 1951年(昭和26年)3月 厳原町南室(なむろ)に船への積出施設が完成。南室まではトラックで運搬する。この年、日見抗の開発に着手。
 1952年(昭和27年) 悪水谷抗の開発に着手。
 1956年(昭和31年) 月産8,500tに拡張。
 1957年(昭和32年) 月産10,000tに拡張。
 1965年(昭和40年)4月 鉛・亜鉛原鉱石の月処理は14,000tと磁硫鉄鉱1,500t、計15,500t。
 1966年(昭和41年) 月22,000t。
 1968年(昭和43年)から1971年(昭和46年)にかけ、厳原町は同町下原(しもばる)の床谷(とこや)に鉄筋コンクリート造4階建ての改良住宅192戸を建設。
 1970年(昭和45年)8月 出鉱量300万tを達成。
 1973年(昭和48年)8月 閉山宣言が出される。
 1973年(昭和48年)10月 出鉱を停止し、鉱内撤収作業を開始。
 12月20日 閉山。30年の歴史に幕を閉じる。閉山時の従業員322名のうち、本社員の多くは、群馬県の安中製錬所に配属。
<閉山後>
 1974年(昭和49年)3月21日 佐須地区鉱業被害者組合の総決起集会が行われる。イタイイタイ病の再検診、汚染田の復旧、東邦亜鉛の監視機関の設置等を決議。この年、厳原町議会でも鉱害対策特別委員会を設置し、事実究明を開始。
 1974年(昭和49年)5月21日 佐須・椎根(しいね)川流域の住民の検診を開始(5月24日までの3日間)。対象者は300名。検診の結果、イタイイタイ病と認定する患者はおらず、腎臓障害など軽症患者の疑いがある経過観察者が25名。
 1974年(昭和49年)7月 被害者組合と東邦亜鉛の交渉の結果、企業100%負担によるカドミウム汚染田の復元を合意。
 1974年(昭和49年)12月 農産物減収補償交渉がまとまる。
 1975年(昭和50年) 厳原町により、休廃止鉱山鉱害防止工事が開始。鉱山の長い歴史(対州鉱山操業開始の前から)による汚染地域が河川流域の各地に存在することがわかったため。
 1979年(昭和54年)12月23日 国と長崎県と東邦亜鉛により、汚染田の復元工事が開始。客土方式で行われ、心土は同町の久根浜や豆酘などから、耕土は壱岐郡(現壱岐市)郷ノ浦町から運ばれた。
 1980年(昭和55年) 町による休廃止鉱山公害防止工事が完了。
 1984年(昭和59年)2月 カドミウムによる腎臓障害の疑いがある経過観察者への健康補償がまとまる。
 1985年(昭和60年)2月13日 汚染田の復元工事が完了。
<技術者養成>

東邦亜鉛株式会社対州鉱業所技術学園跡。2020年2月撮影
 鉱山の技術者を養成するため、東邦亜鉛が「東邦亜鉛株式会社対州鉱業所技術学園」(地域では「学園」と呼ばれていた)を開設していた。詳細については不明だが、かつての校地には現在も門柱が残っている。(北緯34度13分36秒、東経129度13分23秒)
**********

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

富岡市職員が住宅手当10年間235万円ネコババで停職6か月の怪・・・そのウラに隠された事情とは?

2023-10-13 00:29:43 | オンブズマン活動

Sep 12
富岡市/市役所職員が住宅手当235万円不正受給 停職6か月の懲戒処分 市民生活部の主事(50歳)が実家に住んでいるにもかかわらず、賃貸住宅に住んでいるとして約10年間の住宅手当235万円を不正受給。職員の氏名は発表せず。

■当会の公式X(旧ツイッター)の9月12日のアカウントで報じたように、富岡市で、職員が住宅手当を約10年間不正受給して235万円をネコババしていた事件が公になりました。メディアの報道記事を見てみましょう。

**********NHK群馬 NEWS WEB 2023年09月11日19:00
群馬 富岡市の職員が住宅手当235万円不正受給 停職6か月

 富岡市の50歳の職員が、実家に住んでいるにもかかわらず10年近くにわたってあわせて235万円の住宅手当を不正に受け取っていたとして、停職6か月の懲戒処分を受けました。

 懲戒処分を受けたのは、富岡市市民生活部の50歳の職員です。

 富岡市によりますと、職員は、10年前に生活の拠点を市内の賃貸住宅から実家に移したにもかかわらず職場に届け出ず、ことし6月までの9年7か月分の住宅手当あわせて235万円を不正に受給していました。

 職員がことし4月に行われた上司との面談の際に実家に住んでいると話したことから不正が発覚したということです。

 市の調査に対して、職員は「賃貸住宅を借り続けていたが、居住していないので、手当を返金しなければならないと思っていた。反省している」などと話しているということです。

 市は、11日付けで職員を懲戒処分にするとともに、再発防止策として全職員に対して住居や扶養などを正しく届け出るよう通知を出しました。

 富岡市の榎本義法市長は「法を順守すべき公務員としてあるまじき行為であり、市民の信頼を著しく失墜させたことは誠に遺憾で、深くおわび申し上げます」とコメントしています。



**********上毛新聞2023年9月12日06:00
住居手当235万円不正受給 群馬・富岡市職員の男性を懲戒処分
 住居手当を不正に受給したとして、群馬県富岡市は11日、市民生活部の男性主事(50)を停職6カ月の懲戒処分にした。主事は9年7カ月にわたり、約235万円を不正に受給していた。既に全額を返還している。
 市人事課によると、主事は2013年11月ごろ、生活拠点を賃貸住宅から実家へ移した。住居手当の対象外となったにもかかわらず必要な手続きを行わず、今年6月まで手当を受け取り続けた。主事は「手当の対象にならないのではないかと思ったが、手続きを怠った。申し訳ない」などと話しているという。
 榎本義法市長は「公務員としてあるまじき行為。誠に遺憾であり深くおわび申し上げる。綱紀粛正の徹底と再発防止を図る」とコメントした。

**********産経新聞2023年9月11日20:17
市職員が住居手当を10年間不正受給 群馬・富岡
 群馬県富岡市は11日、生活拠点が賃貸住宅から実家に移った後も9年7カ月にわたり、住居手当計約235万円を不正受給したとして、市民生活部の主事(50)を停職6カ月の懲戒処分とした。全額返還しており、市の聞き取りに「賃貸契約は続けており、(手当を)もらえるものならもらおうと思った」などと話しているという。
 市によると平成25年11月ごろに生活拠点が移った後も必要な手続きをしなかった。今年春に正確な通勤届を出すよう呼びかけられたことを受け、7月上旬に人事課に提出したものが、従来と変わっていたことで判明した。
**********

■当会では、事実関係を確認すべく、さっそく次の情報開示請求を富岡市に9月14日に提出しました、

*****9/14富岡市公文書開示請求*****
            公文書開示請求書
                          令和5年9月14日
   富岡市長様
                  請求者 郵便番号 371-0801
                      住所
                      (所在地) 前橋市文京区1-10-15
                        氏名 市民オンブズマン群馬
                      (名称・代表者氏名) 代表 小川 賢
                      電話番号(090)5302―8312
 富岡市情報公開条例第6条第1項の規定により、次のとおり公文書の開示を請求します。
<請求する公文書の内容>
2023年9月11日に富岡市人事課が行った職員の懲罰処分を巡り、富岡市職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(平成18年3月27日条例第33号)の第2条は「戒告、減給、停職又は懲戒処分としての免職の処分は、その旨を記載した書面を当該職員に交付して行わなければならない」と定めるが、今回停職6か月の懲戒処分とした判断に至る過程がわかる次の情報。
①「富岡市職員の懲戒等に係る指針」またはそれに準じた内規
②停職6か月の懲戒処分を決定するに至った調査委員会、懲罰委員会など庁内で開催した一切の会議録。
③平成25年11月ごろから令和5年6月分までを不正受給の対象とした住宅手当235万2000円の内訳及び根拠(遅延損害金の計算方法を含む)
④生活の拠点が賃貸住宅から実家へ移った場合、本来、必要な手続きの文書
⑤処分理由を地方公務員法第29条第1項第3号(全体の奉仕者たるにふさわしくない非行)、地方公務員法第33条(信用失墜行為の禁止)違反に限定した理由
⑥「全額返還した」というが、自主的に返納したのか、それとも返納命令に応じたのか
⑦住所手当の支給条件
⑧職員の住所要件を定めた規定、ないしそれに準じた内部規約
⑨その他、本件に関連する情報
**********

■本件の情報開示請求の背景には、10年間にわたり住宅手当を不正受給されていたにもかかわらず、なぜ富岡市は気付かなかったのか、そして、公金をごまかして懐に入れていた職員に対して、なぜ免職による解雇ではなく、6か月の休職という大甘な処分をくだしたのか、民間の常識からすると理解できない事項があったためです。

 そのため、9月14日付の情報開示請求書を富岡市役所に郵送するのではなく、直接持参して、担当部署に提示して、内容を予め見てもらい、見解をヒヤリングすることにしました。

■富岡市役所の2階の総務部の情報開示担当窓口で事情を説明したところ、富岡市総務部人事課の担当者が応対してくれました。

 同担当者は、当会の開示請求書を一読すると、困惑した表情を浮かべました。そして次の趣旨の説明を当会にしました。

(1)今回の非違行為による処分を受けた職員は、いわゆる障害を持った職員。
(2)どのような障害なのかは、個人情報にあたるので教えられない。
(3)市として、とりあえず6か月の休職という懲戒処分を本人に課したが、これが最終的なものではない。
(4)なぜなら、現在も本人を呼び出して、本人から直接事情を聴くなどして、本事案の調査を継続中であり、その結果次第では、処分内容が変わる可能性もあり得る。
(5)なぜなら、本人からの聞き取り査の目的は、本人が公務員として業務が遂行できるのに値しているかどうか、であり、結果次第では、仮に公務員としての能力に欠けると判断された場合は、別の処分が下されることになるため。
(6)したがって、今回の開示請求について、①と⑦については開示できるが、そのほかの項目については、現時点では未確定ないし未成熟な情報だったり、個人情報にからむ機微な情報だったりするので、取り下げてほしい。

 当会は、「そういう事情が背景にあるというのは知らなかった。現在も調査中で、障害のある職員ということで温情的な処分をとりあえずした、と理解する。そうすると、なぜ、そうしたハンディのある職員を公務に就かせていたのか、職務遂行の能力に欠けるとなれば、それにふさわしい適材適所に配置するなど、人事管理面で瑕疵はなかったのか」と疑問を投げかけました。

 人事課担当者は、「そうした事情を確認するためにも、現在、本人から詳しく事情を聴きとっている過程なので、現時点では、①と⑦以外は出せない」ということでした。

 当会としても、ハンディがどのようなものかがわからないものの、特別な事情により、こうした温情処分が為されたということは認識できました。そのため、①と⑦、⑧、⑨について開示請求とし、②から⑥までを取り消しました。

■この結果、10月3日付で通知の連絡があり、10月6日に富岡市役所を訪れて、情報開示を受けてきました。開示されたのは①と⑦で、⑧と⑨は非開示決定とされました。

*****10/3富岡市公文書開示決定通知書****
様式第2号(第4条関係)
          公文書開示決定通知響
                        富総第160号
                      令和5年10月3日
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様
                     富岡市長 榎本 義法

 令和5年9月19日付けで請求のありました公文書の開示については、次のとおり開示することと決定しましたので、富岡市情報公開条例第11条第1項の規定により通知します。
<請求のあった公文書の内容>
 2023年9月11日に富岡市人事課が行った職員の懲罰処分を巡り、富岡市職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(平成18年3月27日条例第33号)の第2条は「戒告、減給、停職又は懲戒処分としての免職の処分は、その旨を記載した書面を当該職員に交付して行わなければならない」と定めるが、今回停職6か月の懲戒処分とした判断に至る過程がわかる次の情報。①「富岡市職員の懲戒に係る指針」⑦住所手当の支給条件
<開示の日時>
令和5年10月6日 午前9時00分
<開示の場所>
富岡市役所
<開示の方法>
■閲覧 □視聴 ■写しの交付(□郵送)
<事務担当課等>
総務部人事課 人事研修係 (担当者 田中 秀実)
電話番号 (0274)62-1511 内線 1212
<備考>
※⑦は「職員の給与に関する条例」(HP参照可)
1 公文書の開示をする日時に都合が悪い場合には、あらかじめ事務担当課等に連絡してください。

*****10/3公文書非開示決定通知書*****
様式第4号(第4条関係)
            公文書非開示決定通知書
                            富総第161号
                          令和5年10月3日
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 様
                        富岡市長 榎本 義法

 令和5年9月19日付けで請求のありました公文書の開示については、次のとおり開示しないことと決定しましたので、富岡市情報公開条例第11条第2項の規定により通知します。
<請求のあった公文書の内容>
 2023年9月11日に富岡市人事課が行った職員の懲罰処分を巡り、富岡市職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(平成18年3月27日条例第 33号)の第2条は「戒告、減給、停職又は懲戒処分としての免職の処分は、その旨を記載した習面を当該職員に交付して行わなければならない」と定めるが、今回停職6か月の懲戒処分とした判断に至る過程がわかる次の惜報。⑧職員の住所要件を定めた内規、ないしそれに準じた内部規約、⑨その他、本件に関する情報
<開示を行わない理由>
富岡市情報公開条例第7条第6号(注:当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ)該当及び同条第11条第2号(注:開示請求に対する不開示措置)に該当するため
<事務担当課等>
人事課人事研修係 (担当者 田中 秀実)
電話番号(0274)62-1511 内線 1212
<備考>
⑧上記条例第7条第6号(注:当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ)
⑨上記条例第11条第2号(注:開示請求に対する不開示措置)
1 この決定に不服がある場合には、この決定があったことを知った日の翌日から起算して3箇月以内に、富岡市長に対して審査請求をすることができます(なお、この決定があったことを知った日の翌日から起算して3箇月以内であっても、この決定の日の翌日から起算して1年を経過すると、異議申立てをすることができなくなります。)。
2 この決定については、この決定があったことを知った日の翌日から起算して6箇月以内に、富岡市を被告として(訴訟において富岡市を代表する者は富岡市長となります。)、処分の取消しの訴えを提起することができます(なお、この決定があったごとを知った日の翌日から起算して6箇月以内であっても、この決定の日の翌日から起算して1年を経過すると処分の取消しの訴えを提起することができなくなります。)。ただし、上記1の審査請求をした場合には、当該審査請求に対する裁決があったことを知った日の翌日から起算して6箇月以内に、処分の取消しの訴えを提起することができます。
**********

 以上のとおり、富岡市は、「⑨その他、本件に関する不開示理由」として、市情報公開条例第11条第2号に該当するとしました。条例第11条を次に示します。「第2項」を赤字で記しました。「第2号」は富岡市の誤記のようです。

(開示請求に対する措置)
第11条 実施機関は、開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示するときは、その旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。ただし、開示請求に係る公文書の全部を開示する決定が直ちに行われ、即時に開示をすることができる場合は、口頭により通知することができる。
2 実施機関は、開示請求に係る公文書の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき、及び開示請求に係る公文書を保有していないときを含む。)は、開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。

 これは、非開示理由を示したものではなく、単に非開示処分の措置をした条例の該当事項を示したものであり、富岡市の判断は不適切です。おそらく、「その他、本件に関する情報」も、最初から取り下げを当会に申し入れてきた②から⑥と同様に、条例第7条第6号と同じく、当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれと同じ理由にしたかったところ、何らかの修正ミスがあったのかもしれません。

■そして、①と⑦が開示されました。それぞれの文書は以下のとおりです。

*****①市職員の懲戒処分の指針*****
〇富岡市職員の懲戒処分の指針について

 この指針は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条の規定による懲戒処分(以下「懲戒処分」という。)がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するにあたっての参考に供する事を目的として、次のとおり代表的な事例についての標準的な処分の量定に関し必要な事項を定めるものとする。

第1 基本事項
 本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである。
 具体的な処分量定の決定に当たっては、
(1) 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
(2) 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
(3) 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
(4) 他の職員及び社会に与える影曹はどのようなものであるか
(5) 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮のうえ判断するものとする。
 個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところである。例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、
(1) 非違行為の動機若しくは動態が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
(2) 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
(3) 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
(4) 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
(5) 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
がある。また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが考えられる場合として、
(1) 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
(2) 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるときがある。
 なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考にしつつ判断する。
第2 懲戒処分の種類
 地方公務員法第29条及び富岡市職員の懲戒の手続及び効果に関する条例に基づき、次の懲戒処分を行う。
(1) 免職 職員たる身分を失わせる処分
(2) 停職 一定期間(1日以上6月以下)、職務に従事させない処分
(3) 減給 一定期間(1日以上6月以下)、給料の一定額(10分の1以下)を減ずる処分
(4) 戒告 非違行為の責任を確認し、その将来を戒める処分

第3 標準例
1 一般服務関係
(1) 欠勤
 ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
 イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
 ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。
(2) 遅刻・早退
 勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
(3) 休暇の虚偽申請
 病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。
(4) 勤務態度不良
 勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
(5) 職場内秩序を乱す行為
 ア 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする。
 イ 他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。
(6) 虚偽報告
 事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。
(7) 違法な職員団体活動
 ア 地方公務員法第37条第1項前段の規定に違反して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は市の活動能率を低下させる怠業的行為をした職員は、減給又は戒告とする。
 イ 地方公務員法第37条第1項後段の規定に違反して同項前段に規定する違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおった職員は、免職又は停職とする。
(8) 秘密漏えい
 職務上知ることのできた秘密を漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
(9) 政治目的を有する文書の配布
 政治目的を有する文書を配布した職員は、戒告とする。
(10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠
 営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
(11) 入札談合等に関与する行為
 市が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合をそそのかすこと、事業者その他の者に予定価格等の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行った職員は、免職又は停職とする。
(12) 個人の秘密情報の目的外収集
 その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。
(13) セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)
 ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。
 イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙 電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。
 ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。
(14) パワー・ハラスメント
 ア パワー・ハラスメント(人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条に規定するパワー・ハラスメントをいう。以下同じ。)を行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与えた職員は、停職、減給又は戒告とする。
 イ パワー・ハラスメントを行ったことについて指導、注意等を受けたにもかかわらず、パワー・ハラスメントを繰り返した職員は、停職又は減給とする。
 ウ パワー・ハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させた職員は、免職、停職又は減給とする。
(注) (13)及び(14)に関する事案について処分を行うに際しては、具体的な行動の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとする。

2 公金財産等取扱い等関係
(1) 横領
 公金又は財産を横領した職員は、免職とする。
(2) 窃取
 公金又は財産を窃取した職員は、免職とする。
(3) 詐取
 人を欺いて公金又は財産を交付させた職員は、免職とする。
(4) 紛失
 公金又は財産を紛失した職員は、戒告とする。
(5) 盗難
 重大な過失により公金又は財産の盗難に遭った職員は、戒告とする。
(6) 財産損壊
 故意に職場において財産を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
(7) 失火
 過失により職場において財産の失火を引き起こした職員は、戒告とする。
(8) 諸給与の違法支払・不適正受給
 故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、減給又は戒告とする。
(9) 公金財産処理不適正
 自己保管中の公金の流用等公金又は財産の不適正な処理をした職員は、減給又は戒告とする。
(10) コンピュータの不適正使用
 職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
(11) 虚偽公文書作成
 ア その職務に関し、行使の目的で、公印を使用して、虚偽の公文書を作成し、又は公文書を変造した職員は、免職又は停職とする。
 イ 公印を使用せずに、アに規定する行為をした職員は、減給又は戒告とする。
(12) 公印偽造
 行使の目的で、公印を偽造した職員は、免職又は停職とする。
(13) 公文書等毀棄
 故意に公文書又は公務の用に供する電磁的記録を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
(14) 不適正事務処理
 故意又は重大な過失により自己の職務を不適正に処理した職員は、減給又は戒告とする。

3 倫理関係
(1) 収賄
 職務に関する行為をすること若しくは行為をしたこと若しくはしないこと若しくはしなかったことの対価若しくは請託を受けてその地位を利用して他の職員にその職務に関する行為をさせ、若しくは行為をさせないようにあっせんすること若しくはあっせんしたことの対価として供応接待若しくは財産上の利益の供与を受けた又はこれらの対価として第三者に対し供応接待若しくは財産上の利益の供与をさせた職員は免職又は停職とする。
(2) 贈与
 ア 職務に関して利害関係を有する事業者等(以下「利害関係者」という。)から、金銭、物品の贈与を受けた職員は、免職、停職、減給又は戒告とする。
 イ 利害関係者から不動産の贈与を受けた職員は、免職又は停職とする。
(3) 貸付け
 ア 利害関係者から金銭の貸付けを受けた職員は、減給又は戒告とする。
 イ 利害関係者から又は利害関係者の負担により無償で物品の貸付けを受けた職員は、減給又は戒告とする。
 ウ 利害関係者から又は利害関係者の負担により無償で不動産の貸付けを受けた職員は、停職又は減給とする。
(4) 役務の提供
 利害関係者から又は利害関係者の負担により無償で役務の提供を受けた職員は、免職、停職、減給又は戒告とする。
(5) 供応接待
 利害関係者から供応接待を受けた職員は、停職、減給又は戒告とする。
(6) 第三者を通じた行為
 利害関係者をして、第三者に対し、前(1)から(5)の行為をさせた職員は、免職、停職、減給又は戒告とする。

4 公務外非行関係
(1) 放火
 放火をした職員は、免職とする。
(2) 殺人
 人を殺した職員は、免職とする。
(3) 傷害
 人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。
(4) 暴行・けんか
 暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。
(5) 器物損壊
 故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
(6) 横領
 ア 自己の占有する他人の物(公金及び財産を除く。)を横領した職員は、免職又は停職とする。
 イ 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給又は
戒告とする。
(7) 窃盗・強盗
 ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
 イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
(8) 詐欺・恐喝
 人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。
(9) 賭博
 ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
 イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。
(10) 麻薬 覚せい剤等の所持又は使用
 麻薬 覚せい剤等を所持又は使用した職員は、免職とする。
(11) 酪酎による粗野な言動等
 酪酎して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又、乱暴又は品格を欠く言動をした職員は、減給又は戒告とする。
(12) 淫行
 18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。
(13) 痴漢行為
 公共の乗物等において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。
(14) 盗撮行為
 公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。

5 飲酒運転 交通事故·交通法規違反関係
(1) 飲酒運転
 ア 酒酔い運転をした職員は、免職とする。
 イ 酒気帯び運転をした職員は、免職又は停職とする。
 ウ 酒気帯び運転で人を死亡させた職員は、免職とする。
 エ 酒気帯び運転で人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職とする。
 オ 酒気帯び運転により物の損壊に係る交通事故を起こした職員は、免職又は停職とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職とする。
 力 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
(2) 悪質運転
 ア 無免許運転等の悪質な交通法規違反による運転で、人を死亡させた職員は、免職とする。
 イ 無免許運転等の悪質な交通法規違反による運転で、人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職とする。
 ウ 無免許運転等の悪質な交通法規違反による逓転で、物の物損に係る交通事故を起こした職員は、免職又は停職とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職とする。
 工 無免許運転等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職とする。
(3) その他の悪質な交通事故 交通法規違反
 ア 重大な交通事故により人を死亡させた職員は、免職、停職、減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職とする。
 イ 重大な交通事故により人に傷害を負わせた職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
 ウ 重大な交通事故により物を損壊させた職員は、減給又は戒告とする。―の場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
 工 その他重大な交通法規違反をした職員は、戒告とする。
(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮のうえ判断するものとする。

6 監督責任関係
(1) 指導監督不適正
 部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。
(2) 非行の隠ぺい、黙認
 部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。

第4 適用期日
 この指針は、平成28年5月19日から適用する。
 この指針は、令和2年6月1日から適用する。

*****⑦住居手当*****
○富岡市職員の給与に関する条例(平成18年3月27日条例第51号)抜粋
(住居手当)
第12条の3 住居手当は、次の各号のいずれかに該当する職員に支給する。
(1) 自ら居住するため住宅(貸間を含む。)を借り受け、月額16,000円を超える家賃(使用料を含む。以下同じ。)を支払っている職員(市が設置する公舎を貸与され、使用料を支払っている職員その他規則で定める職員を除く。)
(2) 削除
2 住居手当の月額は、次の各号に掲げる職員の区分に応じて、当該各号に定める額とする。
(1) 前項第1号に掲げる職員 次に掲げる職員の区分に応じて、それぞれ次に定める額(その額に100円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てた額)に相当する額
ア 月額27,000円以下の家賃を支払っている職員 家賃の月額から16,000円を控除した額
イ 月額27,000円を超える家賃を支払っている職員 家賃の月額から27,000円を控除した額の2分の1(その控除した額の2分の1が17,000円を超えるときは、17,000円)を11,000円に加算した額
(2) 削除
3 前2項に規定するもののほか、住居手当の支給に関し必要な事項は、規則で定める。
一部改正〔平成21年条例9号・34号・令和元年48号〕
**********

■⑦の富岡市職員懲戒に係る指針は、富岡市によるとホームページには掲載していないそうです。また、この指針には、刑事訴訟法第239条に定める公務員の告発義務の項目が含まれていません。

 富岡市によれば、この指針は、群馬県に倣っているとのことです。そのため、「群馬県職員の懲戒処分の指針について」と見比べてみると、確かに、全く同じ内容になっています。群馬県はこの指針をホームページで公表していませんが、当会のブログの次の記事に掲載しているので参照ください。
〇2023年5月29日:県知事の被害届は即刻受理するのに県民が県職員の不祥事を告発しても受理しない群馬県警察の二重基準

 唯一、富岡市の指針では、「第1 基本事項」の末尾で、「(1) 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出た時」という項目が付け加えてあるだけです。わかりやすいように、上記の指針では青字で当該箇所を示してあります。

■このように、富岡市で今回発生した住居手当の不正受給では、富岡市の50歳になる何らかのハンディを負った職員が、10年前までアパートに住んでいたのに、その後、実家に住み始めたにもかかわらず、9年7か月(115か月)にわたって、トータル235万円の住宅手当を不正に受け取っていたと報じられています。そうすると富岡市は、235万円/115か月=約2万4000円の住居手当を毎月だまし取られていたことになります。

 また、このことから、ハンディがあるとされる当該職員は、住居手当の計算式から、月額約5万3000円の市内賃貸アパートを借りていたことになります。

 この事件では、報道記事をもとに読み解くと、さらに不可解なことがあります。なぜなら、NHKの報道では、「富岡市によりますと、職員は、10年前に生活の拠点を市内の賃貸住宅から実家に移したにもかかわらず職場に届け出ず、ことし6月までの9年7か月分の住宅手当あわせて235万円を不正に受給していました。職員がことし4月に行われた上司との面談の際に実家に住んでいると話したことから不正が発覚したということです。」とありますが、産経新聞の記事では「市によると平成25年11月ごろに生活拠点が移った後も必要な手続きをしなかった。今年春に正確な通勤届を出すよう呼びかけられたことを受け、7月上旬に人事課に提出したものが、従来と変わっていたことで判明した。」と報じているからです。

■常識的に考えれば、産経新聞の取材に対する富岡市の説明が腑に落ちます。なぜなら、今年春に正確な通勤届を出すように呼びかけられたことを受けて、当該職員が7月上旬に人事課に提出したものが、従来の内容と異なり、実家から通勤していると届けたことで発覚し、6月までの住居手当の不正受給と判断したからです。

 これに対して、NHKの報道では、「職員がことし4月に行われた上司との面談の際に実家に住んでいると話した」ことで不正が発覚し、ことし6月までの住居手当を不正に受給していた」とあり、なぜ、6月まで市が住居手当を払い続けたのか、疑問だからです。NHKの取材に対して富岡市はどのような説明をしたのでしょうか?

 さらに言えば、産経新聞の記事では「市の聞き取りに『賃貸契約は続けており、(手当を)もらえるものならもらおうと思った』などと話しているという。」と報じていますが、NHKの報道では「職員は『賃貸住宅を借り続けていたが、居住していないので、手当を返金しなければならないと思っていた。反省している』などと話しているという」とあり、上毛新聞は「主事は『手当の対象にならないのではないかと思ったが、手続きを怠った。申し訳ない』などと話しているという。」と報じており、各社の書きぶりが微妙に食い違って見えます。

 また、常識的に考えれば、当該職員が「賃貸契約は続けており、手当をもらえるものならもらおうと思った」が「居住していないので、手当の対象にならないのではないかと思い、手当を返金しなければならないと思っていた」ところ、「手続きを怠った」と話していたこと自体、論理が一貫していないように見えます。単に手続きを怠っただけでは済まされないからです。なぜなら、賃貸契約で空き部屋だったとはいえ、家主には毎月5万3000円が支払われており、当該職員は、毎月2万9000円を自腹で支払い続けていたわけであり、この事件の背景には、別の何かが隠されているという疑惑がぬぐい切れません。

■いずれにしても、富岡市が報道関係者に対して、この事件についてどのように報じたのか、が重要になります。

 当会では、そういう情報も含めて、「⑨その他、本件に関する情報」として富岡市に開示請求を行いましたが、非開示とされてしまいました。

 そのため、富岡市に対して、⑨の非開示決定処分に対する審査請求を出すかどうか判断する前に、公開質問のかたちで、次の情報について、あらかじめ確認する必要があるのではないかと考えております。

(1)この事件について、富岡市が報道機関に提供した一切の情報。
(2)富岡市が、9月11日に当該職員に出した懲戒処分通知。(個人情報を除く)
(3)富岡市が、9月11日付で、再発防止策として全職員に対して住居や扶養などを正しく届け出るよう通知した文書。
(4)約10年間にわたる不正受給について、該当職員が不正に得た公金は弁済されているというが、遅延損害金に係る情報。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする