■「節穴」という言葉があります。この意味を調べると、「板などの節が抜けおちたあとの穴」とともに「見る能力のない目。見えるはずのものを見落としたり、物事の意味を見抜く力のないことをあざけっていう語」とあります。先週10月13日に県庁記者クラブで記者会見をする羽目になった東和銀行ですが、なぜ10億円近くもの巨額融資金をやすやすとだまし取られたのでしょうか?
まずは、10月13日の刀水クラブでの東和銀行の記者会見を取材したマスコミ各社の報道記事を見てみましょう。
**********テレ朝News 2023年10月13日18:56
東和銀行の融資詐欺事件 総額10億円近くだまし取られたか
融資金の詐欺事件、総額は10億円近くにのぼるとみられています。
田中利武容疑者(59)と生方幹樹容疑者(39)は、群馬県の東和銀行高崎支店にうその融資申込書類などを提出し、およそ1000万円をだまし取った疑いで逮捕されました。
東和銀行は会見を開き、田中容疑者が仲介して融資金をだまし取った取引は30以上あるとみられ、被害は9億7600万円にのぼることが新たに分かりました。
また2人の行員が、融資の申し込みに必要な書類の確認を怠っていたことも明らかになりました。
**********上毛新聞2023年10月13日21:56
融資金の詐欺被害は6億7000万円 東和銀行(群馬・前橋市)が異例の行員60人処分
↑会見する桜井副頭取(左から2人目)🄫上毛新聞社↑
東和銀行(群馬県前橋市)が事業運転資金などの名目で融資金をだまし取られた詐欺事件で、同行は13日、県庁で会見を開き、回収の見通しが立たない被害額が総額で6億7000万円超に上ることを明らかにした。申請書類の改ざんなどを見抜けなかった理由については、融資を担当した行員らが取引先の事業実態の確認を怠ったと説明。同行は役員以下、事件に関係した約60人を減給や降格処分とすることを発表し、融資管理体制を見直す方針を示した。
同行の調査によると、2019年3月~22年5月、詐欺容疑で逮捕された男(59)=東京都足立区=が仲介する形で、高崎支店が計32の取引先に対し、総額9億7600万円の融資を実行した。しかし昨年6月、男への資金流用や不正があったことが判明。同行は男に渡った6億7700万円を、回収の見通しが立たない被害額としている。
これまでの調査で、同じ詐欺容疑で逮捕された別の男(39)を含め、少なくとも八つの取引先で申請書類の改ざんを確認した。同行はこのうち七つについて、担当行員2人が見積書などの原本確認を怠る不適切な取り扱いをしたことを確認した。行員の一人は「実績を上げたい気持ちを優先した」と話しているという。同行はこの行員2人が男らとの共謀や書類改ざんへ関与した事実はなかったとしている。
同行は行内規定に基づき、江原洋頭取ら役員8人を減給3カ月(5~20%)、関係した行員約50人を減給や降格処分にした。不適切な融資を行っていた期間が3年超と長く、異動で多くの行員が関わったことなどから、処分は異例の人数に膨らんだ。
会見した桜井裕之副頭取は改ざんを見抜けなかった原因について「形式的な書類確認にとどまり、取引先の状況把握を怠った」と説明。ルールに基づく事務が徹底されなかったとし、原本確認の厳格化や新規取引先の確認方法の見直しを再発防止策に挙げた。
**********朝日新聞デジタル2023年10月13日22:52
融資金6.7億円不正流用されたか 東和銀行、詐取容疑で逮捕の男に
↑会見で説明する東和銀行の桜井裕之・代表取締役副頭取=2023年10月13日、前橋市大手町1丁目、吉村駿撮影↑
↑東和銀行の本店=2021年1月、前橋市↑
個人事業主を装い、東和銀行(前橋市本町2丁目)から約1千万円の融資金をだまし取った疑いで男2人が群馬県警に逮捕された事件を受け、東和銀は13日、同市内で会見した。逮捕された男1人に、東和銀の融資先から融資金が6億円以上流れていたことを明らかにした。男はこの融資先を銀行側に紹介していたといい、東和銀は「融資の管理体制が十分ではなかった」と説明した。
12日に詐欺容疑で逮捕されていたのは、東京都足立区のアルバイトの男(59)と群馬県高崎市の会社員(39)。
県警によると、会社員の男が個人事業主を装い、虚偽の確定申告書を出して融資金をだまし取っていたという。融資金は会社員の口座に振り込まれた後、ほとんどがアルバイトの男の口座に移っていた。会社員は「金に困っていた」と話しており、県警はアルバイトの男が融資を受けるよう持ちかけたとみている。
東和銀によると、アルバイトの男が当時経営していた高崎市の電気工事会社と2016年から取引があり、その後たびたび顧客を紹介されていた。昨年5月、会社員とは別の人物が東和銀高崎支店に「資金を流用してしまった」と申告したことがきっかけで問題が発覚したという。
東和銀が紹介された取引先を調べたところ、全32の取引先で流用が判明。19年3月~22年5月に融資した9億7600万円のうち、6億7700万円がアルバイトの男が管理している口座などへ移っていたという。
32の融資に関わったのは2人の行員。通常、融資の申し込みがあれば、融資先を訪問し、売り上げなどの経営状況を確認したり、確定申告書など必要書類の原本を確認する必要があるが、2人はそれを怠っていたという。このうち1人は「融資の実績をあげたいという気持ちだった」と話しているという。東和銀は、男らとの共謀や、書類の改ざんは認められなかったと説明している。
東和銀の桜井裕之・代表取締役副頭取は「お客様の状況把握が徹底されていなかった」「取引があったため、信用してしまったのではないか」と説明。現場の担当者任せになっていたことが今回の事案を招いたとし、「担当者や役職者などによる複数の確認を徹底するなどして、再発防止をしていく」と話した。(吉村駿)
**********東京新聞2023年10月14日
東和銀融資 仲介者に不当還流
群馬県警 詐欺容疑で男2人逮捕
東和銀行(前橋市)は13日、取引先への融資が、3年余りにもわたって仲介者へ還流する案件があったと発表した。取引先32カ所に対して行った総額9億7600万円の融資のうち6億7700万円が不当に還流した。
この関係で群馬県警は12日、詐欺の疑いで、東京都足立区古千谷本町、元会社経営田中利武(59)と高崎市問屋町、会社員生方幹樹(39)両容疑者を逮捕した。
逮捕容疑では、両容疑者は2020年3月、偽った書類で申し込んだ1千万円の融資のうち、「諸経費を除いた約965万円をだましとったとされる。田中容疑者は当時、高崎市内で電気工事会社を経営していた。
銀行の調査によると、還流案件は19年3月から22年5月までに発生。取引先32カ所のうち、26カ所は田中容疑者側に直接資金が流れ、6カ所は別の会社を通した後に還流した。
少なくとも8カ所で必要書類の改ざんを確認した。融資金の一部は回収したものの、田中容疑者に流れた資金を中心に多くが回収不能となる可能性があるという。
昨年5月、生方容疑者とは別の取引先から「資金を渡してしまった」と申し出があり発覚した。同年9月、両容疑者を県警に刑事告訴していた。
同行は書類の原本確認などを怠るなど、不適切な取り扱いがあったとして、融資を担当した2人のほか、監督責任がある約50人を減給などの処分にした。頭取ら8人も報酬の一部を返上する。回収不能金は昨年度決算で引当金を計上しており、本年度決算の業績予想に影響はないという。
内部監査を担当した桜井裕之副頭取は「担当者任せの部分があったのが一因。複数人でチェックするなど、再発防止に努めたい」と話した。
(羽物一隆)
**********
以上の報道記事を読んでも、すぐにはどのように騙し取られたのかがピンときません。冒頭のテレ朝の解説が、最もわかりやすいように思われます。
ところで、今回の詐欺事件のプレーヤー2名のうち、「東京都足立区のアルバイトの男」とか「仲介者」と言われている田中利武容疑者(59)について、群馬県法に次の掲載があります。
**********群馬県報第9897号(令和3年(2021年)4月30日)
■公告
建設業法(昭和24年法律第100号)第29条第1項第7号の規定による処分をしたので、同法第29条の5第1項の規定により、次のとおり公告する。
令和3年4月30日 群馬県知事 山 本 一 太
1 処分をした年月日 令和3年4月20日
2 被処分者
商号又は名称:株式会社エルテック
主たる営業所の所在地:群馬県高崎市棟高町1868番地80
代表者氏名代表取締役 田中利武
許可番号:群馬県知事許可(般-1)第24762号
3 処分の内容 建設業法第29条第1項第7号の規定による建設業許可の取消処分
(1) 取消処分の対象となる許可番号 群馬県知事許可(般-1)第24762号
(2) 取消処分の対象となる建設業 建築工事業、電気工事業
4 処分の原因となった事実 被処分者の代表取締役は、令和元年5月22日に前橋地方裁判所高崎支部から道路交通法(昭和35年法律第105号)の規定違反により懲役7月執行猶予3年の刑の言渡しを受け、同年6月6日にその刑が確定しているにもかかわらず、同年7月3日付け及び令和2年3月2日付けで提出した建設業許可申請書に、申請者及び申請者の役員等が建設業法第8条各号に規定されている欠格要件に該当しないことを誓約する旨を記載した誓約書及び賞罰がない旨を記載した許可申請者(法人の役員等)の住所、生年月日等に関する調書を添付し、もって不正の手段により、令和元年8月2日付け及び令和2年3月27日付けで同法第3条第1項の許可を受けた。このことは、同法第29条第1項第7号に該当する。
**********
この株式会社エルテック)は、資本金300万円建設業許可番号:群馬県知事第024762号、許可業種:一般建設業電気工事で、2017年4月12日に法人番号3070001033361で群馬県高崎市足門町788番16に所在する法人として前橋地方法務局で新規に法人登録され、2018年10月5日に、国内所在地が群馬県高崎市菅谷77-161に変更後、2020年10月22日に国内所在地が群馬県高崎市棟高町1868-80に変更されています。最終更新日は2020年11月13日で、この後、上記のとおり、2021年4月20日に建築業許可が取り消されました。この地域の労働局は群馬労働局。高崎労働基準監督署が所轄の労働基準監督署です。
■群馬県報には田中容疑者に関連して、もう1件記載があります。
**********群馬県報第9891号(令和3年(2021年)4月9日)
■公告
建築士法(昭和25年法律第202号)第26条第1項の規定による処分をしたので、同条第4項において準用する同法第10条第5項の規定により、次のとおり公告する。
令和3年4月9日 群馬県知事 山 本 一 太
1 処分をした日 令和3年3月19日
2 処分を受けた者等
(1) 名称 REGALO建築士事務所
(2) 所在地 群馬県高崎市棟高町1868-80
(3) 開設者 株式会社エルテック 代表取締役 田中利武
(4) 建築士事務所の別 二級建築士事務所
(5) 登録番号 群馬県知事登録第4981号
3 処分の内容 建築士事務所登録の取消し
4 処分の原因となった事実 虚偽の事実に基づいて登録を受けた。
**********
このREGALO建築士事務所について、地元紙が昨年6月に次の報道をしています。
**********上毛新聞社2022年6月18日
建築工事を手がけるRegalo設計(群馬県高崎市)が事業停止
建築工事を手がけるRegalo設計(群馬県高崎市棟高町、中沢哲也社長)が事業を停止し、自己破産申請の準備に入ったことが17日、分かった。
**********
上記記事のRegalo設計が田中容疑者の関わるREGALO建築士事務所と同一の法人とみられるRegalo設計について次の法人情報があります。
**********
法人番号 3070001030367
法人名 株式会社Regalo設計
フリガナ レガロセッケイ
住所 〒370-3521群馬県高崎市棟高町1868番地80
社長/代表者 中澤哲也
電話番号 0270-26-6021
法人番号指定日 2015/10/05以前
最終登記更新日 2021/09/01
登記の変更履歴
2021/09/01 名称・商号変更 旧:株式会社なかざわ建設から⇒新:株式会社Regalo設計に変更
2021/09/01 所在地変更 旧:群馬県伊勢崎市豊城町1497番地1(〒372-0012)から⇒新:群馬県高崎市棟高町1868番地80(〒370-3521)に変更
**********JC Net 2022年6月21日
群馬に拠点をおく、(株)Regalo設計が自己破産の準備に入ったことが判明した。
負債総額は約1.5億円。
以下要約。
1 破綻企業名 (株)Regalo設計
2 本社地 群馬県高崎市棟高町1868-80
3 代表 中澤哲也(※本件との関係は不明だが、同姓同名の人物として、東京の立川にあるもえぎ法律事務所の中澤哲也弁護士(東京弁護士会所属)がいる。同弁護士の略歴は群馬県高崎市出身、群馬県立高崎高等学校卒業、早稲田大学法学部卒業、同志社大学大学院司法研究科修了、最高裁判所司法研修所司法修習過程修了とある)
4 創業 1997年
5 設立 2014年12月.
6 資本金 100万円
7 業種 建築工事会社
8 売上高 2021年10月期、約5億円
9 破綻 2022年6月14日 事業停止/自己破産申請の準備中
10 委託弁護士 金澤宏尚弁護士(田中善信・二階堂慎法律事務所)電話:027-326-3038
11 裁判所 未定
12 負債額 約1.5億円
13 破綻理由
同社は建築工事会社、地元工務店や住宅メーカーからの下請から、最近は自社ブランドを持つ注文住宅を主に店舗や老健施設などの建築工事に展開していた。しかし、それまで1億円前後の売上高から急成長させた結果、資金繰りが付いて行かず、金融機関の支援も限界で受けられず、支払い難から信用不安を引き起こし、今回の事態に至った。
**********
こうしてみると、田中容疑者は、2016年からRegalo設計を通じて東亜銀行と取引実績を作り、その後、㈱エルテックを作って、群馬県に建築業登録を繰り返し、それらの書類を東和銀行の融資担当の行員に提示し、実績を上げたいと思う行員らに言葉巧みに取引先を紹介し、一方で、取引先として金に困った生方幹樹容疑者に個人事業主を装わせ、ウソの融資申込書類を東和銀行に提出させ、融資金をだまし取らせて、そのうちの大半を、生方容疑者から田中容疑者に還流させたものとみられます。
今回発覚したのは、「昨年5月、会社員とは別の人物が東和銀高崎支店に『資金を流用してしまった』と申告したことがきっかけで問題が発覚したと朝日新聞が報じていますが、同紙は田中容疑者を「アルバイトの男」と表現していたり、「アルバイトの男が当時経営していた高崎市の電気工事会社と2016年から取引があり、その後たびたび顧客を紹介されていた」と報じるなど、よくわからない部分があるのが気になります。
■さて、安中市役所を舞台にした土地開発公社のタゴが、群馬銀行安中支店に対して、ウソの融資申込書(金銭消費貸借証書)による融資金の騙し取り事件は、通称「タゴ51億円詐欺事件」と呼ばれていますが、これはタゴが安中市のずさんな公印管理を悪用しただけでなく、群馬銀行の審査部も不自然な融資申込書類に気付かないまま、どんどんタゴに融資をして、結局、51億円余りの巨額の公金が騙し取られるという失態を呈しました。
今回の東和銀行の詐欺事件でも、安中市土地公社から舞台を民間企業に移した格好で、同様にウソの書類を用いて、あたかもまともな手続きを装って融資金の騙取が繰り返されていました。
報道記事にあるとおり、通常、融資の申し込みがあれば、銀行は、融資先を訪問し、担当者にヒヤリングをして、その過程で必要な資料の提示を求め、売り上げなどの経営状況を確認したり、確定申告書など必要書類の原本を確認する必要があります。東和銀行の行員2人はそれを怠っていて、このうち1人は「融資の実績をあげたいという気持ちだった」と話しているといいますが、東和銀行は、実行犯らとの共謀や、書類の改ざんは認められなかったと説明しています。しかし、警察の捜査の結果、そのような事実が確認されたのかどうかは、定かでありません。
タゴ事件では15年間同一職場にタゴを配置していたため、しかも、上司や同僚の目が「節穴」だったうえに、群馬銀行の審査部の目も「節穴」だったことから、地方自治体としては空前絶後の51億円余りの詐欺横領事件として被害が肥大化しました。
今回の東和銀行を舞台にした詐欺事件では、2019年3月から2022年5月までの3年3か月の期間に発生したもので、そのうちの後半2年間はちょうど新型コロナの蔓延時期に重なるため、犯行が10億円に肥大化したのかもしれません。
■また、注目すべきは、この事件に関連して責任を取らされた行員が約60名に及ぶことです。東和銀行の従業員数は、単体で1287名(2023年3月時点。臨時440名を除く)なので、実に20人に一人が処分対象になったことになります。まさに東和銀行として大失態と言えます。
社会的責任が通常の企業とは桁違いの金融機関として、信頼の失墜は、なんとしても避けなければなりません。なので、記者会見をし、組織の緩みを立て直すべく大量処分という形での自浄作用を示す必要があったわけです。
もう一つ注目すべきは、10億円もの回収不能金、つまり、損失を出しながら、「既に昨年度決算で引当金を計上しており、本年度決算の業績予想に影響はない」という東和銀行の発表です。
事実、東和銀行の「令和5年3月期決算概要」によれば、令和5年3月期における損益状況は、本業の収益力を示すコア業務純益が53億49百万円、経常利益は39億51百万円、当期純利益は40億70百万円となっています。
■ことほどさように、現在、銀行業界は2年前から好調を維持しています。
**********NHK News Web 2023年5月15日21:03
大手金融グループ3社 昨年度決算 増益か前年度同水準に
大手金融グループ3社の昨年度の決算は、コロナ禍からの経済活動の正常化に伴い国内外で資金需要が高まったことなどから最終的な利益が三井住友とみずほで増益となり、三菱UFJも過去最高だった前の年度とほぼ同じ水準となりました。
発表によりますと大手金融グループの昨年度の最終的な利益は、三井住友フィナンシャルグループが8058億円と前の年度より14%増え、みずほフィナンシャルグループは5555億円と4.7%増加しました。
また、三菱UFJフィナンシャル・グループは、前の年度より1.3%少ない1兆1164億円で過去最高だった前年度とほぼ同じ水準でした。
大手金融グループの決算が堅調だったのは、コロナ禍からの経済活動の正常化に伴って国内外で資金需要が高まり、金利収入などが増えたほか、アメリカの金利の上昇で現地での貸し出しの利ざやが改善したためです。
3社は、今年度の業績予想について、いずれも最終的な利益がさらに増えると見込んでいますが、15日記者会見した各社のトップは、欧米でくすぶる金融不安や海外経済の減速懸念などのリスク要因が業績に及ぼす影響に警戒感を示しました。(以下略)
**********
東和銀行は第2地方銀行として分類されますが、10億円近い回収不能金を単年度の引当金で損金処理してもなお、40億円の純利益を出しています。
■そうすると、安中市土地開発公社で平成7年5月18日に発覚した51億円余りの巨額詐欺横領事件(通称「タゴ51億円事件」により、当初38億円とも言われた巨額損失を出した群馬県を代表する金融機関である群馬銀行の最近の業績をどうなのでしょうか。
群馬銀行の令和5年3月期の決算短信には、冒頭に次の記載があります。
*****群銀2023年3月期決算短信の添付資料から*****
1.経営成績等の概況
(1)当期の経営成績の概況
当連結会計年度の経営成績は、次のとおりとなりました。
経常収益は、資金運用収益やその他経常収益(株式等売却益等)が増加したことなどから前期比263億92百万円増加し1,765億89百万円となりました。経常費用は、その他業務費用(国債等債券売却損等)が増加したことなどから前期比271億87百万円増加し1,382億73百万円となりました。
これらの結果、経常利益は、前期比7億94百万円減少し383億16百万円となりました。
一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等調整額の減少を主因に前期比14億96百万円増加し279億33百万円となりました。
(2)当期の財政状態の概況
当連結会計年度末の財政状態は、次のとおりとなりました。
総資産は期中4,862億円減少し10兆6,623億円となり、負債は期中4,727億円減少し10兆1,464億円となりました。
また、純資産は期中134億円減少し5,158億円となりました。
主要勘定につきましては、貸出金は期中2,332億円増加し5兆9,912億円となりました。
有価証券は期中1,162億円増加し2兆6,172億円となりました。預金は期中855億円増加し8兆448億円となりました。
**********
このように群馬銀行も業績が絶好調であることがわかります。
■こうした状況下において、現在、安中市は、28年前に土地開発公社を舞台に発覚したタゴ51億円事件で、タゴが群銀からだまし取った合計51億円あまりのカネのうち、民事訴訟で平成10年(1998年)12月8日に和解(実質的は安中市の全面敗訴も同然)が確定した24億5000万円の損害賠償金を毎年クリスマスの12月25日に群銀にプレゼントし続けています。
そして、安中市と市土地開発公社と安中市が連帯して債務24億5000万円のうち、4億円を平成10年(1998年)12月25日に支払い、翌平成11年(1999年)から毎年クリスマスに2000万円ずつ分割で返済しています。民法により10年ごとに安中市・公社は証文(つまり安中市の債務保証書)を群銀に提出しており、これまでに2009年と2019年に群銀に証文を提出しており、次回は2029年となる計算です。
群銀との和解条項によれば2009年以降は安中市の債務保証のもと、同公社の財政状況や経済情勢の推移を見ながら、年間支払額が2000万円を下回らない範囲で返済するというもので、計算上は2103年まで返済が続く可能性があります。
■こうした中、当会では独自の調査に基づき、群銀が、山本一太知事の父親で参議院議員だった故・山本富雄氏に対して、2000年代に32億円もの債権を帳消しにした事実を突き止めました。
この事実の概要は、山本富雄氏が経営していた山田屋が、1980年代後半のバブル景気の際に、リゾートホテル事業として草津の天狗山スキー場の付近にホワイトタウンというホテルを建設して事業を始めたものの、バブル崩壊のあおりで事業に失敗し、32億円ともいわれる巨額の債務を抱えて事業から撤退したのが発端です。
この債務について、自民党県連の県議らが、群馬銀行の当時副頭取だった五十嵐哲夫(後に会長、相談役:1931年04月06日生、2008年10月29日死去)に掛け合い、債権放棄をするように強く働きかけを行いました。こうした表に出せない交渉を任されるのは、群銀の歴代の副頭取の役割となっています。そして、なんと群馬銀行は自民党県連の政治圧力を受け入れて、32億円とも言われる債権を放棄してやったのです。
■このことから、当会は、今年1月9日に、タゴ事件の単独犯とされた多胡邦夫が死去し、安中市と市土地開発公社が民事裁判でタゴに対して損害賠償請求訴訟で勝訴した22億2309万2000円のうち、未回収分の22億653万1500円が、タゴの配偶者や子弟らの全員による相続放棄の結果、永久に回収不能となったため、群馬銀行に対して、タゴの置き土産の負の遺産である、あと残り79年分に相当する15億7000万円の債務を放棄してほしいと申し入れたのでした。
そして、安中市長と市土地開発公社の副市長に対して、早期に群馬銀行のトップと、債権放棄について話し合い、今年12月5日に迫った25回目の2000万円の支払いとそれ以上の支払いをせずに済むように交渉してほしいとお願いをしました。
〇2023年5月23日:安中市土地開発公社巨額横領事件発覚28周年…タゴ死去で市と群銀は今こそ永久モラトリアムの決断を!!↓
■しかし、市土地開発公社の債務保証をしている安中市は、これまでのところ、何もアクションを起こしていません。
群馬銀行にとって、タゴの負の遺産である残り15億7000万円など、簡単に引当金で損金処理ができるはずです。東和銀行ですら、約10億円の回収不能金を単年度で引当金処理したのです。
銀行業界が業績絶好調の今を逃せば、今後、再びチャンスが巡ってくる確証はありません。タゴ亡き後、安中市がタゴ事件の負の遺産を公金で贖う正当性はもはやありません。安中市長と土地会は済公社理事長である副市長に対して、当会は微力ですが最大限の働きかけを行う所存です。
【市民オンブズマン群馬・市政をひらく安中市民の会事務局からの報告】
※関連情報「金融機関での融資審査の流れ」
**********
1.銀行融資の種類
銀行融資は、次の3つに大別できます。
①プロパー融資
②信用保証付き融資
③ビジネスローン
それぞれの特徴は次のとおりです。
■プロパー融資
金利相場:1~3%程度
メリット:金利が安い・信用力向上になる
デメリット:審査に通りにくい。借入期間が短い
■信用保証付き融資
金利相場:1.5~3%程度
メリット:審査に通りやすい。借入期間が長い
デメリット:保証料がかかる
■ビジネスローン
金利相場:10~15%
メリット:審査に通りやすい
デメリット:金利が高い
さらに詳しく見てみましょう。
■プロパー融資
プロパー融資は、信用保証協会が介入せず銀行と直接取引する融資制度です。
信用保証協会とは、信用保証協会法という法律に則って事業者の資金調達を支援する公的機関です。プロパー融資では、審査は銀行が行い、金利・融資限度額・返済期間などを決めます。
メリットは、信用保証協会へ支払う保証料がないので金利が安いことです。また、プロパー融資は企業の実績を厳しく審査する制度であるため、審査通過の実績が信用力向上にもつながります。
デメリットは、審査が厳しく融資を受けられる企業が限定的であることです。また、信用保証協会が介入しない融資は貸し倒れリスクが高いので借入期間が短く、月々の返済額は高くなります。
■信用保証付き融資
信用保証付き融資とは、信用保証協会が公的な保証人として間に入る融資のことです。
審査は銀行と信用保証協会の両方で行われます。
メリットは、プロパー融資より審査が通りやすく、借入期間も5年から10年の長期になるため、毎月の返済額の負担が少ないことです。
デメリットは、信用保証協会へ支払う保証料が発生することです。保証料は、融資限度額もしくは融資額に対して約2%以下の利率で産出されます。
■ビジネスローン
ビジネスローンとは、法人や個人事業種が事業資金を借り入れるための融資のことです。
ビジネスローンは「銀行系」と「ノンバンク」系の2種類があり、銀行系のビジネスローンのほうが3%程度低い金利で利用できます。
メリットは原則として無担保・無保証で融資を受けられるうえに審査に通過しやすい点です。
デメリットは、金利が高いことです。通常の事業融資の金利相場が1~3%程度であるのに対し、ビジネスローンは10~15%程度かかります。
2.銀行融資の審査の流れ
金融機関での融資審査とは、融資を受ける人に返済能力があるかどうかを審査することです。審査の流れは以下のとおりです。
①銀行の選定
②融資の申し込み
③必要書類の準備
④面談
⑤審査の実施
⑥融資の実行
では、どのように審査が進められるのか順を追ってみてみましょう。
■銀行の選定
銀行は、地方銀行と都市銀行の2種類に分けられます。
<地方銀行>
地方銀行とは、横浜銀行や群馬銀行など各都道府県で展開されている地域密着型の銀行のことです。ちなみに、相互銀行や信用金庫から普通銀行に転換した銀行を第二地方銀行と言い、東和銀行(旧・大生相互銀行)もそのひとつです。主に地方に営業基盤を置き、中小企業を顧客としています。
信用保証協会は都道府県単位で活動しており、地方銀行と連携して融資を提供しています。そのため、地方銀行では信用保証付き融資が通りやすい傾向です。
小口取引を取り扱っているうえに審査に柔軟性があるので、事業規模が忠程度であれば地方銀行の融資審査を受けることが推奨されます。
<都市銀行>
都市銀行とは、大都市に本店を構えて全国展開している大手の銀行のことです。
このうち総資産がおよそ1兆ドル以上の銀行をメガバンクと呼び、国内では三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行を指しています。
資金が豊富なため金利が安く、巨額な融資に対応しているのが特徴です。
大口の融資が必要で、なおかつ、大規模な事業を営んでいる場合は、都市銀行への融資の相談がお勧めです。
■申し込み
複数の銀行に相談したうえで原稿を決めたら、融資の申し込みをします。申し込みの際のチェック事項は次のとおりです。
・返済方法
・借入期間
・審査にかかる期間
・申し込みのスケジュール感
こうして、融資を受ける際には、返済方法と借入期間を決めることになります。
返済方法は、一括と分割があり、返済期間は1年以内に完済する短期融資と、1年を超える長期融資があります。
返済期間を短く設定しすぎると毎月の返済額の負担が大きくなってしまうため、収支の現状と見通しを適切に分析し洗濯することをお勧めします。
審査に係る期間は2週間程度で、融資を受けたい日から1か月半ほど前に申し込んでおくと余裕のあるスケジュールとなります。
銀行や融資内容で異なるため、不明な事項は融資担当者に聞いておくことです。
■必要書類の準備
銀行融資の審査には次の書類が必要です。
・決算書
・資金繰り表
・事業計画書
・試算表
・借入状況
・登記簿謄本(法務局で入手)
・印鑑証明書(法務局で入手)
・確定申告書(税務署で入手)※確定申告書は所得税の申告書。納税証明書は、税金を納めたことを証明する書類で、国や市区町村、都道府県などが発行する。
これらの書類をもとに融資の可否や条件が決定されます。
いずれの書類も入念にチェックされますが、とりわけ審査への影響が大きいのは決算書と事業計画書です。
■面談
書類を提出し、融資担当者と面談します。面談では書類だけでは把握でいない事業主の人柄なども見られます。
一般的に面談で聞かれる質問は次のとおりです。
・自己資金はどの程度あるのか。
・融資でカネを得てどのように使う予定なのか。
・どうやって借りたカネを返済していくのか。
■審査の実施
面談の内容と受け取った書類は複数の関係者を巡って最終的に権限者にわたり、融資の可否が決められます。審査期間の目安は融資の種類によって概ね次のとおりです。
・プロパー融資:1か月~2か月程度
・信用保証付き融資:1週間~1か月程度
・ビジネスローン:3日~5日程度
融資の可否以外に、返済期間、金利などの融資条件も決められます。
■融資の実行
融資審査に通過すれば、審査結果の通知と契約について連絡がきます。
契約書が送付されるので、内容を確認して署名、捺印をします。必要書類を郵送し、契約手続きを行います。契約締結から振り込みまでに要する期間は1週間程度です。
審査に係る期間は銀行や融資の種類で異なりますが、概ね次のとおりです。
・申し込み~面談:7~10日程度
・面談~結果連絡:2週間程度
・結果連絡~融資契約:7~10日程度
・融資契約~入金:1週間程度
銀行融資が2回目以降であれば、申し込み~入金まで10~20日程度まで短縮されます。
**********