■東電福島第一原発事故から1年と9か月が経過しようとしていますが、事故で広範囲に撒き散らされた放射性物質による汚染はいろいろな分野で、深刻な爪痕を残しています。にもかかわらず、原発を推進したがる一部の政治家がいまだに跋扈しています。
放射能汚染対策として、政府の原子力災害対策特別措置法があります。これに基づき政府が行ういろいろな措置について首相官邸のホームページhttp://www.kantei.go.jp/saigai/report.htmlに東日本大震災への対応として各種の情報が発表されていますが、食品に関する項目が圧倒的に多いことがわかります。また、とくに食品に関しては、厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001hbkf.html と農水省http://www.maff.go.jp/noutiku_eikyo/mhlw2.html のホームページに連日関係情報が掲載されています。
原子力災害対策特別措置法第20条第2項では、原子力災害対策本部長の権限)として「 原子力災害対策本部長は、当該原子力災害対策本部の緊急事態応急対策実施区域及び原子力災害事後対策実施区域における緊急事態応急対策等を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、関係指定行政機関の長及び関係指定地方行政機関の長並びに前条の規定により権限を委任された当該指定行政機関の職員及び当該指定地方行政機関の職員、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関並びに原子力事業者に対し、必要な指示をすることができる。」と定めています。
この法律に基づいて、政府は先月11月5日付けで栃木・千葉・群馬・茨城・埼玉・新潟・静岡・青森・山梨・神奈川・長野・山形県に対して出荷制限の公示をだしました。
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公 示
平成24年11月5日
1.緊急事態応急対策を実施すべき区域:
青森県、岩手県、宮城県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県の県域
2.原子力緊急事態の概要:
緊急事態該当事象発生日時 平成23年3月11日 16時36分
発生場所 東京電力株式会社福島第一原子力発電所
3.1.の区域内の居住者等に対し周知させるべき事項
関係県知事に行った指示に基づき、当分の間、一部食品の摂取及び出荷を差し控えるようにすること。
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上記の公示に基づき、総理から出荷制限の指示を受けた各県の内容を見てみましょう。福島県、宮城県、岩手県にも当然ながら指示が出ていますが、ここでは、首都圏及びその周辺について纏めてみました。
■群馬県には、平成24年11月14日付で原子力災害対策本部長内閣総理大臣野田佳彦名で群馬県知事大澤正明宛に「次のものについて、当分の間、出荷を差し控えるよう、関係自治体の長及び関係事業者等に要請すること」として次の指示がありました。
1.きのこ類(野生のものに限る):沼田市、安中市、長野原町、東吾妻町、みなかみ町、嬬恋村、高山村
2.茶:渋川市
3.いわな(養殖により生産されたものを除く):吾妻川のうち岩島橋から東京電力株式会社佐久発電所吾妻川取水施設までの区間(支流を含む)、薄根川(支流を含む)
4.やまめ(養殖により生産されたものを除く):吾妻川のうち岩島橋から東京電力株式会社佐久発電所吾妻川取水施設までの区間(支流を含む)、小中川(支流を含む)及び桃ノ木川(支流を含む)
5.いのししの肉:群馬県内で捕獲
6.くまの肉:群馬県内で捕獲
7.しかの肉:群馬県内で捕獲
■栃木県には、平成24年11月19日付で栃木県知事福田富一宛に次の指示が出されました。
1.くり:大田原市、那須塩原市、那須町
2.しいたけ(露地において原木を用いて栽培されたものに限る):宇都宮市、足利市、栃木市、鹿沼市、日光市、真岡市、大田原市、矢板市、那須塩原市、さくら市、那須烏山市、上三川町、益子町、茂木町、市貝町、芳賀町、壬生町、塩谷町、高根沢町、那須町、那珂川町
3.しいたけ(施設において原木を用いて栽培されたものに限る):鹿沼市、大田原市、矢板市、那須塩原市、さくら市、芳賀町、壬生町、那須町
4.なめこ(露地において原木を用いて栽培されたものに限る):佐野市、鹿沼市、日光市、矢板市、那須塩原市、那須烏山市、壬生町、那須町、那珂川町
5.くりたけ(露地において原木を用いて栽培されたものに限る):宇都宮市、足利市、佐野市、鹿沼市、真岡市、大田原市、矢板市、那須塩原市、さくら市、那須烏山市、上三川町、茂木町、市貝町、芳賀町、壬生町、塩谷町、高根沢町
6.きのこ類(野生のものに限る):鹿沼市、日光市、真岡市、大田原市、矢板市、那須塩原市、那須烏山市、益子町、塩谷町、那須町、那珂川町
7.たけのこ:日光市、大田原市、矢板市、那須塩原市、那須町
8.くさそてつ(野生のものに限る):大田原市、那須塩原市、那須町
9.こしあぶら(野生のものに限る):宇都宮市、鹿沼市、日光市、大田原市、矢板市、那須塩原市、さくら市、那須烏山市、茂木町、塩谷町及、那須町
10.さんしょう(野生のものに限る):宇都宮市、日光市、大田原市、那須塩原市
11.ぜんまい(野生のものに限る):日光市、那須町
12.たらのめ(野生のものに限る):大田原市、矢板市、市貝町、那須町
13.わらび(野生のものに限る):鹿沼市、大田原市
14.茶:鹿沼市及、大田原市
15.いわな(養殖により生産されたものを除く):栃木県内の渡良瀬川のうち日光市足尾町内の区間(支流を含む)
16.うぐい(養殖により生産されたものを除く):武茂川(支流を含む。)及び栃木県内の那珂川のうち武茂川との合流点の上流(支流を含む。ただし、塩原ダムの上流及びその支流を除く。)
17.やまめ(養殖により生産されたものを除く):渡良瀬川のうち日光市足尾町内の区間(支流を含む。ただし、庚申川との合流点から下流の部分に限る)及び永野川(支流を含む)
18.牛:栃木県が飼養。当分の間、県外への移動(12月齢未満の牛を除く)畜場への出荷。ただし、貴県の定める出荷・検査方針に基づき管理される牛については、この限りでない。
19.いのししの肉:栃木県内で捕獲。
20.しかの肉:栃木県内で捕獲。
■千葉県には平成24年11月14日付で千葉県知事鈴木栄治宛に次の指示が出されました。
1.しいたけ(露地において原木を用いて栽培されたものに限る):千葉市、佐倉市、流山市、八千代市、我孫子市、君津市、富津市、印西市、白井市、山武市
2.しいたけ(施設において原木を用いて栽培されたものに限る):富津市、山武市
3.たけのこ:木更津市、柏市、市原市、船橋市、八千代市、我孫子市、白井市、栄町、芝山町
4.茶:成田市
5.ぎんぶな:手賀沼及びこれに流入する河川(支流を含む)並びに手賀川(支流を含む)
6.いのししの肉:千葉県内で捕獲。
■茨城県には、平成24年11月9日付の茨城県知事橋本昌宛に次の指示がありました。
1.しいたけ(露地において原木を用いて栽培されたものに限る):土浦市、ひたちなか市、守谷市、常陸大宮市、那珂市、行方市、鉾田市、つくばみらい市、小美玉市、茨城町、阿見町
2.しいたけ(施設において原木を用いて栽培されたものに限る):土浦市、鉾田市、茨城町
3.たけのこ:石岡市、龍ヶ崎市、北茨城市、取手市、ひたちなか市、潮来市、守谷市、鉾田市、つくばみらい市、小美玉市、茨城町、大洗町、利根町、東海村
4.こしあぶら(野生のものに限る):日立市、常陸太田市、常陸大宮市
5.茶:土浦市、結城市、龍ヶ崎市、下妻市、北茨城市、笠間市、取手市、牛久市、ひたちなか市、鹿嶋市、潮来市、守谷市、筑西市、稲敷市、かすみがうら市、桜川市、神栖市、行方市、つくばみらい市、小美玉市、大洗町、阿見町、河内町、五霞町、利根町、東海村、美浦村
6.いしがれい、こもんかすべ、しろめばる、すずき、にべ、まだら:最大高潮時海岸線上福島茨城両県界の正東の線、我が国排他的経済水域の外縁線、最大高潮時海岸線上茨城千葉両県界の正東の線、茨城県最大高潮時海岸線で囲まれた海域の漁獲
7.ひらめ:最大高潮時海岸線上福島茨城両県界の正東の線、我が国排他的経済水域の外縁線、北緯36度38分の線及び茨城県最大高潮時海岸線で囲まれた海域で漁獲
8.あめりかなまず(養殖により生産されたものを除く):霞ヶ浦、北浦及、外浪逆浦、これらの湖沼に流入する河川並びに常陸利根川で採捕
9.うなぎ:霞ヶ浦、北浦、外浪逆浦、これらの湖沼に流入する河川、常陸利根川並びに茨城県内の那珂川(支流を含む)で採捕
10.ぎんぶな(養殖により生産されたものを除く):霞ヶ浦、北浦、外浪逆浦、これらの湖沼に流入する河川並びに常陸利根川で採捕
11.いのししの肉:茨城県内で捕獲、ただし、貴県の定める出荷・検査方針に基づき管理されるいのししの肉については、この限りではない。
■埼玉県には、平成24年11月5日付で埼玉県知事上田清司宛に、次の指示が出されました。
1.きのこ類(野生のものに限る):鳩山町、ときがわ町、横瀬町、皆野町
■新潟県には、平成24年11月5日付で新潟県知事泉田裕彦宛に次の指示が出されました。
1.くまの肉:新潟県(佐渡市及び粟島浦村を除く)内で捕獲。
■静岡県には、平成24年11月5日付で静岡県知事川勝平太宛に次の指示が出されました。
1.きのこ類(野生のものに限る):静岡県御殿場市、小山町
■ちなみに青森県には、11月5日の公示前の平成24年10月30日付で、青森県知事三村申吾宛に次の指示が出ていました。
1.きのこ類(野生のものに限る):青森市、十和田市、階上町
2.まだら:東通村尻屋埼灯台と北海道函館市恵山岬灯台とを結ぶ線、同線の中心点の正東の線、北海道えりも町襟裳岬灯台の正南の線、最大高潮時海岸線上青森岩手両県界の正東の線、青森県最大高潮時海岸線で囲まれた海域で漁獲
■山梨県には、平成24年10月26日で、山梨県知事横内正明宛に次の指示が出ていました。
1.きのこ類(野生のものに限る):富士吉田市、富士河口湖町、鳴沢村
■神奈川県には、平成24年10月19日付で神奈川県知事黒岩祐治宛に、次の指示が出されていました。
1.茶:湯河原町
■長野県には、平成24年10月1日付で長野県知事阿部守一宛に、次の指示が出されていました。
1.きのこ類(野生のものに限る):小海町、軽井沢町、御代田町、南牧村
■山形県には、平成24年9月10日付で山形県知事吉村美栄子宛に対して次の指示が出ていました。
1.くまの肉:山形県内で捕獲
これら野田総理からの指示では、「当分の間、出荷を差し控えるよう、関係自治体の長及び、関係事業者等に要請すること」とありますが、守られているのかどうかはまったく不明です。
茶、きのこ類、たけのこ、くま、いのしし、しか、家畜、川魚等の出荷差し控えの指示が出ている地域は、土地が汚染されているという目安です。関東地方全県以外にも、新潟県や長野県、山梨県、静岡県までヨウ素やセシウムを含んだ放射性物質が降り注いでいたことがわかります。
2~3年で綺麗な状況に戻ることは到底考えられないため、今後半永久的に注意が必要な地域として記憶しておく必要があります。
また、原発事故の真相を隠してきた政府の発表ですので、公示の内容が正しいかどうかもきわめて疑問です。
栃木県や茨城県はほとんど全県にわたり汚染食品の指定がされていますが、なぜ東京都の奥多摩地区が指定されていないのか疑問です。神奈川県も茶だけというのはへんです。
■というわけで、群馬県ではなぜかシイタケは出荷規制の対象外となっていますが、栃木県と群馬県とで放射性物質のシイタケ原木に対する影響はそれほど異なるものでしょうか。
ところで、先日、11月中旬、群馬県北部の中之条町で中国産の干しシイタケを購入して測定してみたところ、なぜか放射線レベルがゼロになりませんでした。
当会ではベラルーシ国ATOMTEX社MKC-AT6130型の放射線測定器を使用して食品の表面汚染の測定を行っています。
http://www.atomtex.com/en/products/radiation-monitors/at6130-radiation-monitor
念の為、販売元に確認してみたところ、「中国産だから安全なはず」という説明でしたが、「この値段で国産はあり得ない」というので、「どういうルートで仕入れたのか?」と尋ねたところ、「長野県の卸問屋から」とのこと。しかし、中国産となると産地偽装の疑いもあることから、「放射線量を測ったデータはあるのか?」と訊いたところ、「そうした記録はもらっていない」とのことでした。
とにかく、少量であるが、ベータ線量がゼロではないため、念の為、卸問屋に産地を確認することと、長野県のそれなりの検査機関でサンプリングして線量を測ることを勧めました。
■まさか、福島やその周辺のシイタケ栽培農家から本来廃棄されるべき汚染商品をかき集めて産地偽装して中国製と称して販売ルートに乗せていることはないでしょうが、きちんとトレーサビリティできるように、記録を残しておかないと消費者の安心は得られないでしょう。
【ひらく会情報部】
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