■平成20年8月3日に発生した首都高タンクローリー横転炎上事故。10月14日の時点で、首都高が、事故を起こした多胡運輸に損害賠償を請求することを発表した賠償金の試算の基とした金額は、復旧工事費が約20億円、08年8月・9月にかけて通行止めや渋滞などから発生したと考えられる25億4千万円の減収分の合計約45億4千万円でした。
首都高からは、今のところ正式な損害賠償請求が出された気配はなさそうですが、まだ、首都高炎上事故の補修のための残工事があり、損害額が確定しないのが理由かもしれません。いずれにしても、今年度中に請求予定ということでしたから、あと1ヶ月足らずの間に、首都高は、対処方針を決めなければなりません。
一方、多額の賠償金の支払請求の意向を首都高から示されて、これほどマスコミで全国的に報じられれば、通常の経営者であれば、卒倒してしまうでしょうし、また、取引銀行はすぐさま債権の保全や回収に走るに違いありません。
ところが多胡運輸は、いつもと変わりなく(?)営業を継続しているように見えます。関東運輸局が昨年10月10日に多胡運輸に下したタンクローリー5台の55日間の使用停止処分も、12月3日に既に終わっており、多胡運輸は無事?に年を越しました。次の関門は、今月末までに首都高が出そうとしている45億円規模の損害賠償請求ですが、いまのところ、多胡運輸も、それを支えている元請の運送会社も、表面的には何事もなく業務を継続しています。
【写真上】多胡運輸の近況(2月21日撮影)。
【写真上】いつもは構内に1、2台はかならず見かけるタンクローリーが珍しく1台も見当たらない。稼働率が高いのか、それとも・・・。
【写真上】多胡運輸の元締め運送会社の近況(2月17日撮影)。特に変わった様子もなく営業中。
■これまでも当会のブログで報告したとおり、安中市土地開発公社巨額横領事件で単独犯とされた元職員の親族が経営し、地元ではダイクンイと呼ばれる超大物政治家と緊密な関係のある運送会社から仕事をもらっている多胡運輸のメーンバンクは、群馬県の西南部を営業エリアとしている甘楽信用金庫(現・しののめ信金)であることが、これまでの当会の調査で分かっています。
この金融機関は、安中市土地開発公社事件で、群銀の影に隠れた形で報道されませんでしたが、元職員は、なぜか群銀だけをターゲットに、偽造書類を作成していました。元職員は、群銀や、しののめ信金の外にも、東和銀行(旧大生相互銀行)、群馬県信用組合、農協からも公社の公有地先行取得等の事業費や事務費を借り入れていました。
これらの金融機関と元職員との実質的な関係から見ると、群馬銀行の場合は、タゴと親しかった行員らを除けば、会社としては騙され役としてネガティブな関係でした。それに比べると甘楽信用金庫は180度異なる関係だったと言えます。
甘楽信用金庫の場合は、巨額の公社のカネを動かしていた元職員に、名義上とはいえ、会社として貸し付けていた800万円の住宅ローンを、元職員が懲戒免職になったその日に、期日前に満額返済してもらえました。なぜ、元職員は、会社としての甘楽信金に対して、これほどまでに関係を配慮したのか、当会は1999年に閲覧した刑事記録から、この格差の背景と理由について、注目してきました。
■平成7年5月31日、安中市土地開発公社の元職員タゴが、安中市役所で懲戒免職の通知を示されていたころ、ひとりの銀行マンが、同市役所の直ぐ前にある甘楽信用金庫安中支店で、退職届を出していました。
その日、甘楽信用金庫は、タゴに貸し付けていたはずの住宅ローン800万円を期日前に満額返済されました。その時間は確かではありませんが、安中市が警察署に提出した上申書(本文末尾参照)によれば、平成7年5月31日午後4時に、市役所内で、タゴが懲戒免職を言渡されたことから、その日の午前中に、市役所前にある甘楽信金の安中支店で、800万円を一括して返済したと考えられます。
■この上申書によると、前日の5月30日の11時頃、タゴの直属上司である高橋弘安次長宛にタゴが電話して「明日帰宅して、31日午後話をしたい」と連絡しました。実際には、タゴはその直後に帰宅し、タゴと親しいプロパン業者が直接タゴに会って事情を聞いていました。タゴの自宅は市役所の目と鼻の先ですから、タゴが帰宅すればすぐ分かるはずですので、上申書の高橋次長の説明内容には、にわかに信じがたいものがあります。
すると、タゴは、30日午後に帰宅する際に、甘楽信金安中支店に立ち寄り、残金をポンと支払ったのでしょうか。タゴの自宅の登記簿には、根抵当権の解除日として5月31日と明記してあるので、その可能性は小さいと思われます。
では、タゴは、5月31日の午前9時に、甘楽信金安中支店がオープンしたあと、返済したのでしょうか。それもどうも考えにくいことです。というのは、タゴの自宅から甘楽信金支店までは、あるいて1分足らずですが、市役所の職員の目があることから、コソコソ出かけるしかないためです。
タゴは5月31日12時30分ごろ、高橋次長に「家にいる。弁護士とアポイントが取れた」と連絡してきました。だから、それから後に、甘楽信金安中支店に借金の返済に出かけたとも思えません。
■当会の推測では、タゴが甘楽信金支店に行ったのではなく、甘楽信金支店の職員が、タゴの家に行き、タゴから申し入れのあった残金一括返済の手続きをタゴの自宅で行なったのではないか、というのが、実際のタゴの行動だと考えています。
では、巨額横領事件がまさに安中市役所のなかで発覚し、関係者が血眼でタゴの動向を監視しているはずの状況下に、なぜ甘楽信金の職員が、市役所の直ぐ目の前にあるタゴの自宅に遠慮なく自由に入れたのか。なぜ、タゴが自宅にいることを知って、タイミングを合わせたかのように、タゴの自宅を訪問したのか。これらの疑問は、甘楽信金のこの職員が、事前に、タゴから自宅に来るように連絡を受けているからだと考えられます。
この甘楽信金の職員が、タゴの自宅を訪問して、住宅ローン800万円の残金期日繰上げの一括返済を受け、会社として、債権回収を果たし、公社事件で群銀が騙しとられた途方もない金額に比べれば僅かとはいえ、損害の発生を瀬戸際で未然に防げたわけです。
タゴ事件の刑事裁判の冒頭で、検察官から行なわれた冒頭陳述のなかで、この甘楽信金の職員のことが簡単に語られました。それによると、タゴと極めて親しく、タゴが大量の骨董品を複数の骨董業者から買いつけた際に、取引を仲介したとされています。当会のその後の調査でも、この甘楽信金職員は、タゴと竹馬の友で、マージャンが大好きで、大量の骨董品を、仲介者としてタゴに成り代わって業者から購入していたことが確認できました。
■その職員のことについて、当会は、甘楽信金の総務課に問い合わせましたが、頑なにノーコメントを続けたため、不審に思った当会では、粘り強い調査を続けた結果、前述のように、なんとタゴが懲戒免職を市役所の市長室で受け取っていた頃、勤務先の甘楽信金に退職届を出していたことが判明しました。当然、所属先の甘楽信金は、市役所から公社への貸付金の問い合わせを受けており、市役所でたいへんなことが起きていることについて、知らないわけはなかったはずです。なぜ、20年も勤務してきた行員が突然辞表を出したのに、慰留しなかったのでしょうか。
あるいは、甘楽信金は、安中市役所で起きている大変な事態を知っていたからこそ、タゴの無二の親友だったこの職員が出した辞表の意味を理解して、直ちに円満な退職手続きを取ったのかもしれません。あるいは、最後の最後で、タゴに貸し付けてあった未回収の債権を、この職員が首尾よく回収し、会社としてタゴ事件での係わり合いから開放された功績として、この職員が出した辞表の意味を詮索せず、直ちに受領したとも考えられます。しかし、この不可思議な職員退職の背景は真相について、甘楽信金はいまだに何も語ろうとしません。
■注目される重大なことは、タゴと家族のように付き合っていた甘楽信金の行員が、古物商の免許を持っていたことです。普通、行員は兼職を禁じられていますから、通常は古物商の免許は取得できないはずです。甘楽信金は行員が古物商を兼職していたことを知っていて辞表を受理したのでしょうか。しかし、行員の退職理由は、タゴ事件と関係なく、懲戒免職でなくて自己都合だったことが、当会のネットワークによる周辺調査で確認済みだったので、この行員の退職には、甘楽信金として、有責性は問わなかったと見るべきでしょう。
タゴは横領金を管理していましたが、古物商の免許は持っていませんでした。だからタゴが買ったと供述している大量の骨董品取引では、免許を持つ仲介者の存在が不可欠でした。勿論、タゴが直接骨董免許のある骨董品店に赴き、相対で直接購入することは可能です。だから報道では、あたかもタゴが直接購入したかのように書かれており、私たちもそれを信じていました。ところが実際には、警察の情報管制が介在していたことが、その後、当会が、栃木県足利市の骨董商の男性からヒヤリングした結果、明らかになっています。
古物商の免許は、実は警察が行っています。古物の売買、交換をする営業には、盗品等の混入の恐れがあるため、「古物営業法」、通称「古物商法」により、都道府県の公安委員会の許可を 受ける必要があると法律に定められています。この古物営業法とは盗品の売買を防止するための法律に他ならないからです。この古物営業を営むため、公安委員会から許可を受けた者を「古物商」といい、古物営業の形態によって次の3種類に分類されています。
①個人事業又は法人事業として営む古物商
上記説明の通りだが、さらにネット上で古物取引を行う場合は公安委員会への届出が必要。 届け出られたURLは公安委員会のHPに掲載される。
②古物市場主
古物商間での古物の売買、交換するための市場(古物市場)の営業を営むため公安委員会から許可を受けた者をいう。
③古物競りあっせん業
インターネットを利用して、古物を売却しようとする者と買受けようとする者との間で 競りが行われるシステムを提供する営業、即ち、インターネットオークションを営むこと。この場合、営業開始日から2週間以内に公安委員会に届出が必要。
では、タゴの仲介者は、どのようにして、骨董品を入手したのでしょうか。
■古物商は、古物営業法で、出先での買取を禁じられており、売り手の自宅以外の場所での買い取りは違法となっています。古物営業法によると「営業の制限」として、盗品の闇取引による流通を防ぐため、古物商同士の取引以外では、出張での買い取りや交換が出来る場所を売り手の住居に制限しています。違反すると1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。なお、フリーマーケットやバザーに出される商品は、廃品として「古物」の定義から外れるため、違法ではありません。
当会が、当時、タゴに大量の骨董品を売ったと報道された足利市の骨董商から聴取した情報や、閲覧したタゴ刑事事件の記録によると、タゴは、計4つの骨董商から骨董品を買い付けていました。タゴは、仲介者が美術館設立用と偽ってこれらの骨董商から購入した大量の骨董品の一部を、自分の妻が経営する喫茶店に陳列するとともに、噂を聞きつけた飛び込み客から、相対でいくつかの骨董品を買ったとされていますが、これらは、閲覧した刑事事件記録には含まれていませんでした。タゴが飛び込み客から骨董品を購入すれば、古物営業法違反ですが、警察はそのことをよく知っていますから、この事件を詐欺事件として幕引きを図る輩たちから何らかの圧力がかかったと考えられます。
タゴは古物商の免許を持っていませんから、骨董品を買付ける場合には、骨董品を扱っている店に行かなくてはなりません。反対に、骨董品を売る店は、古物商の免許が必要ですから、出張での買い取りはできないことになっています。このことから、タゴの仲介者の存在が不可欠となりますが、足利の骨董商が告白したように、警察は、甘楽信金の行員が、古物商の免許を持っていて、タゴへの骨董品の仲介をしていたことは、当然知っていましたが、足利市の骨董商にも、仲介者のことは誰にも言わないように口止めしていました。
■注目されるのは、古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、①相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認するか、②相手方からその住所、氏名、職業及び年齢が記載された文書(その者の署名のあるものに限る。)の交付を受けなければならないことです。
したがって、古物商免許を持つ甘楽信金の行員は、当然、こうした情報を記載した台帳を持っていなければならないので、警察は、この行員が仲介者として、誰から骨董品を購入して、タゴに売り渡したのか、或いは委託されてこうした行為を働いたのかを把握したはずです。しかし、閲覧した刑事記録には、まったくこの情報は含まれていませんでした。
■さらに注目すべきことがあります。古物営業法による古物区分として次の13種類が挙げられています。
①美術品類
【例】絵画、書、彫刻、工芸品、登録日本刀など
②衣類
【例】着物、洋服、敷物類、布団、帽子、旗など
③時計・宝飾品類
【例】時計、眼鏡、コンタクトレンズ、宝石類、装飾具類、貴金属類、オルゴール、万歩計など
④自動車
【例】その部分品を含む。タイヤ、バンパー、カーナビ、サイドミラーなど
⑤自動二輪車及び原動機付自転車
【例】その部分品を含む。タイヤ、サイドミラーなど
⑥自転車
【例】その部分品を含む。かご、カバーなど
⑦写真機類
【例】カメラ、ビデオカメラ、望遠鏡、光学機器など
⑧事務機器類
【例】レジスター、パソコン、コピー機、計算機など
⑨機械工具類
【例】工作機械、医療機器、家電製品、電話機など
⑩道具類
【例】家具、CD、DVD、玩具、ゲームソフトなど
⑪皮革・ゴム製品
【例】鞄、バック、靴、毛皮、化学製品など
⑫書籍
⑬金券類
【例】商品券、乗車券、各種入場券、切手など
■これらはいずれも、タゴの横領金の使途先として、警察の調べで、タゴが購入していた品目に合致するからです。主な項目として、①の美術品の類はマスコミ報道されたとおりです。そのほか、②衣類にしてもタゴは高額な背広を常時着用し、年始などには高級和服を着ていました。これらは妻の経営する喫茶店に隣接する洋品店から購入したものもあるようですが、実際には、骨董ルートで購入して、使途不明金が少なくなるように偽装供述した可能性も否定できません。③の時計や宝飾品類もタゴやその配偶者は愛用していました。④の中古自動車は、10台近く、高級車をとっかえひっかえ乗り回していました。そのほか、株券やゴルフ会員権、リゾート会員権などにも投資していましたが、これらの広義には金券類ということができます。また、タゴは自宅に大量の記念コインや古銭を保有していました。
大量の骨董品はもとより、これらの中古品、金券類、古銭類の保有に関して、当然、タゴは無類の親友であり古物商の免許を持つ甘楽信金の行員から何らかの情報を得ていたものと考えられます。とくに記念コインの類は、金融機関の関係者の協力なくしては、個人で多種多量に収集することは困難です。タゴにゴマをすって取り入っていた群馬銀行の職員らの可能性もありますが、タゴと親密に接触していた金融マンが古物商の免許を持っていれば、タゴのコレクションの充実にこれほど適した人物はいないでしょう。
■その重要人物が、タゴの懲戒免職の日にタゴの自宅でローン債権を回収し、その日に、自ら辞職届を長年勤務してきた甘楽信用金庫(現・しにのめ信用金庫)に提出し、会社側もそれをただちに受理したことについて、信金に説明を求めても、個人情報ということで一切応じようとしません。昨年8月3日に、タゴの実弟が経営する運輸会社の保有するタンクローリーが、首都高5号線で横転炎上事故を起こしても全く記者会見をしないのも、タゴ事件に関わった個人、法人が事件発覚以降14年が経過しようとするのに、全く説明責任をはたそうとしない実態と、なぜか共通しているのです。
そして、近々予想される、首都高から45億円にのぼる損害補償請求についても、まったく動揺もせず、営々と業務を続けているように見える多胡運輸の姿は、その周囲を取り巻くバリアーの中に、メーンバンクのしののめ信用金庫(旧・甘楽信組→かんら信組)の抱える他言できない複雑な事情が見え隠れしていることを示しているのではないでしょうか。
【ひらく会情報部・特別調査班】
<参考資料>
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上申書
※受付印7.6.14第110号 群馬県安中警察署
住所 群馬県安中市安中一丁目二三番一三号
上申人 安中市 市長 小川勝壽
住所 群馬県安中市安中一丁目二三番一三号
上申人 安中市土地開発公社 理事長 小川勝壽
住所 東京都港区虎ノ門一丁目一五番一一号 虎ノ門SSビル五階
右上申人ら代理人 弁護士 田邊勝己
同 菰田 優
電 話 〇三(三五〇七)〇六三三
住所 群馬県安中市安中一丁目二三番三二号
被疑者 多胡邦夫
上申の趣旨
被疑者多胡邦夫については、平成七年六月二日、既に逮捕済みでありますが、さらに後記のとおり刑法第一五五条第一項、第一五八条第一項、第二四六条第一項の有印公文書偽造、同行使、詐欺罪に該当する余罪が存するものと認められるので、捜査の上、厳重に処罰されたく、上申します。
上申の理由
一 安中市及び安中市土地開発公社は、今回の被疑者多胡邦夫の公文書偽造、同行使、詐欺事件について、既に平成七年六月二日小川勝壽安中市長か御署に赴き口頭にて告発を行ったものでありますが、今回、安中市及び安中市土地開発公社の立場を明確にするため、本上申に及びます。
二 今回‘の事件は、群馬銀行を被害者とする詐欺事件でありますが、公社職員による悪質な犯罪であり、公社としても道義的責任を痛感しております。平成七年五月一七日の借入残高証明書取得後の事件発覚以来事実解明に努め、迅速なる調査の結果、平成七年五月三一日には被疑者を懲戒免職といたしましたが、従来通り捜査機関に全面的にご協力申し上げることをお約束いたします。既に公社、並びに市側の資料の提出、公社職員の事情聴取に全面的にご協力いたしておりますが、今後もさらに真相究明のため、ご協力いたします。
他方、安中市及び安中市土地開発公社は市民に対し、疑惑解明の結果を報告し、説明する義務を負っております。事実、これまでの報道の中には横領事件と間違えているのではないかと思われるものや、非難を市及び公社に集中させるものが目立ちました。今後は、捜査当局にご協力申し上げる中で、捜査に支障のない範囲で、安中市としても真相を明らかにして参りたいと思料いたしております。
また、今回の直接の逮捕事実は、平成七年三月三一日の詐欺の分のみと聞き及んでおりますが、被疑者は平成二年四月一六日、「湯浅市長の特命により、表面に出せない土地を先行取得するため」との欺罔行為により、全く架空の「安中市土地開発公社理事長湯浅正次特別会計」名義の被疑者自身の口座を開設し、以後一三回に亘り多額の金員を公社借入金名目で借り入れ、同口座から現金を引き出す方法で金員を詐取していたものであります。それ以前についても犯行を重ねていたようでありますが、客観的資料に基づき、市及び公社の立場として告発可能なものは平成二年四月一六日以降の犯行分と思料しております。
いずれにせよ、捜査内容や起訴事実の確定は捜査当局の専権事項であり、市及び公社は如何なる要請にも全面的にご協力いたすことを重ねて明言いたします。
三 捜査当局のご参考になるか否かは別として、市及び公社が被疑者を懲戒免職にするまでの事実経過を別紙時系列表にまとめましたので添付いたします。
右別紙時系列表について付言すれば、市及び公社は、公社側の最初の事情聴取の段階での被疑者の弁解について重大な関心を寄せております。被疑者が全くの虚偽の事実を述べたのであれば群馬銀行行員に対する名誉毀損罪にも該当する悪茸な行為であります。被疑者を許すことはできません。他方、市及び公社は今回の事件に共犯者はいないと信じておりますが、群馬銀行の管理体制については疑問を抱いております。刑事的には被害者側の落ち度の問題であろうかと思料いたします。この点についても、捜査上ご協力できることがあればお申し付け下さい。
四 以上、厳正なる捜査のうえ、被疑者を厳罰に処していただきたく上申する次第であります。
平成七年六月一四日
上申人ら代理人 弁護士 田邊勝己
同 菰田 優
群馬県安中警察署長 殿
【時系列表】
被疑者 多胡邦夫 昭和27年3月30日生
昭45・06 入庁
昭54・10 建設部都市計画課主事
昭55・04 安中市土地開発公社設立(理事長 湯浅正次)時に同公社職員を併任
平2・04・01 高橋次長就任。経理チェックを強化。
平2・04・16 「安中市土地開発公社理事長湯浅正次特別会計」名義の多胡個人の口座開設。栃木県小山支店から転勤してきた伊藤誠支店長代理が担当して開設。市長の特命事項を処理するために表に出さない土地を先行取得するために使うという理由。
その後、借入として13回、約36億3千万円。
平7・04・01 教育委員会社会教育科社会教育係長に転任。清水裕之が入れ替わりに公社職員(市都市計画課と併任)として任命される。・
平7・04・12又は18 群馬銀行安中市派出所の田崎操が公社を訪れ、竹内に対し「公社の融資の残高を教えてほしい」上司の高橋次長がいないので、「翌日来て下さい」と答えた。翌日高橋が「群馬銀行は借入残高を承知しているので、なぜ聞くのか」と田崎に対し言ったところ、「いろいろの調べに使いたい、できれば他行分も教えて下さい」と言った。他行分の明細は教えられないが、公社全体の総額と群馬銀行のものは教えてもよいとして、公社の借入金総額約十九信円と群馬銀行の約10億1700万円の借人分を書面でその日のうちに竹内が派出所に届けた。
その時には、銀行からなんら返答はなかった。
平7・04・19 高橋次長、竹内主任、清水が群馬銀行安中支店に挨拶に行った。山添次長、栗田が対応に出た。多胡が転勤になったので、挨拶に来たと述べた。
平7・05・08 多胡、1485万円現金引き出し(5/23頃判明)
平7・05・17 群馬銀行安中支店から公社借入金残高証明47億6596万円を取得した。24日の監査、30日役員会に備えるべく取得した。
平7・05・18 11時10分
高橋、竹内、群馬銀行へ訪問。融資課長栗田、融資担当次長清水、渉外次長山添に対し、「残高とあわないので明細があったら見せてほしい」と言ったところ、貸出明細照会票を出した。
「金銭消費貸借契約書を見せてほしい」。「このとおりある」と言って袋の中に入っていた証書を見せた。金額欄の「金」と正規の数字の間の狭いところに、偽造の金額が割り込ませるように加筆され、改ざんがされていた。「本人の字かどうかもわからない。いかにもつけ加えているではないか」と言ったところ、「本部の監査でも本人の筆跡に間違いないということで検査はすんでいる」と支店長が答えた。
半期に一回利息を払うところ、「総額が異なるのであれば7・3・31に支払った利息では足りないのではないか」と質したところ「間違いなく頂いている。もう一つ安中市土地開発公社理事長湯浅正次 特別会計口座番号058-969という口座かおる」とのことだった。「そんなはずはない」と述べると、「平2・4・16開設の特別会計がある」とし、口座開設時に記入した普通預金印鑑票を見せてきた。「だれが作ったのか」と質すると、清水融資課長が「多胡さんが作っております」と答えた。普通預金印鑑票は多胡の筆跡だった。
「特別会計口座に幾らあるか」と聞いたところ、2億7500万円あった。引き出しできないようにしてくれと頼み、過去の資料を本部から取り寄せるなどして全部見せてほしいと依頼し、12時40分帰庁。高橋が竹田主任、加部部長に相談。市長に報告。
銀行に連絡し、6時に群馬銀行を訪問。市長は安中市商工会青年部通常総会終了後、市長も7時に訪問。
松井支店長、清水次長、山崎次長、加部事務局長、高橋次長、竹内主任出席。
預金取引履歴明細表の二枚だけを出してきた。払い出しの伝票の原本を見せてもらった。
公社の借入金台帳と照合した。金銭消費貸借契約書も見た。狭いスペースに書き込みがなされているので、明らかにおかしいと指摘した。
借入は31本あり、金額欄の数字の順についているものが12本あった。その前の金銭消費貸借契約書も公社の台帳とつき合わせてチェックした。履歴明細表に記載してある金銭消費貸借契約書は原本が存在した。「多胡の指示により、特別会計に振り分けた」との説明があった。「それはおかしい」と指摘した。市からの依頼書はなかった。
市長到着。説明を求めたところ、「湯浅市長の特命で、特別会計、口座を作った」と松井支店長が説明。「特命など間いていない。特命の依頼書などないはず」
「4月に、田崎に公社の残高を書いた書類を渡したのになぜおかしいと言わなかったのか」
銀行側の資料は、明細書が2枚、伝票も1部だったので翌日の昼までに本部の資料も全部調査するということだった。
平7・05・19 1時
銀行から(清水次長か)全部揃ったという連絡があったので、群馬銀行に4時頃来庁を依頼。
市長、助役、収入役、加部局長、高橋が対応した。第一応接室に次長2人が来た。支店長は支店会議で来られないとのことだった。
市長が、「こんな重大な事件で支店長が来ないのはどういうことだ」と言った。
履歴表の2枚目以降の部分を持ってきた。伝票の一部をもってきた。契約証書の写しを4~5枚受け取った。経緯についての説明があった。「200回以上引き出されている。Cというのが現金です。残高はこれだけです」「コジョウ・タゴ」の振込票を持ってきた。
市長は、「こんなに額が出ているなら、特命を何で確認しなかったのか」と問いただす。
平7・05・22 公社調査
平7・05・23 〃
平7・05・24 午前中 公社監査
2時 多胡に事情聴取。高橋・竹田・竹内 「残高は何だ」
多胡「これは違う。俺かやったのではない。不正の事実はあるがこんなに多くない」
伊藤支店長代理か主犯というニュアンスで「伊藤が絡んでいる話なので、伊藤代理と話をする。26日までに連絡する。伊藤の他にもいる。名前は出せない」と弁解した。
平7・05・26 高橋・竹田・竹内 多胡に事情聴取。
多胡「伊藤に連絡を取ったか、仕事中で28日の日曜に会うことになっている。そこで話をつける」
リミットは市長の指示により、29日と通告。銀行次長に伊藤の件を話し、調査をお願いした。
平7・05・29 9時 高橋・竹田・竹内 多胡に事情聴取。
多胡「29日伊藤と会。たところ、額は違うし、この金は別口座にプールしている。それで返済すれば1億円くらいになる。伊藤も自宅を売却し残りも俺が払えば済む。伊藤から銀行に電話を入れてもらい、支店長と相談したうえで、自分が行って話をつける」ということだった。伊藤は12時ころ支店長と会うと言っていたと言った。
3時に多胡が銀行に行くということだった。3時には高橋が同席すると言った。そこで教育課に3時頃多胡が退席したかを確認したところ、3時から休みをもらったと教育課の者が言ったので、役所のすぐ前にある多胡の家を見に行った。
丁度その時、多胡は車で出ていった。その前に、安中支店次長に「多胡か行ったら電話くれ」と頼んでいたところ、4時20分頃、銀行(山添)から電話あり、「多胡が来ていない」とのことだった。
慌てて高橋、竹内が銀行に行った。伊藤から電話あったかど聞いたところ、一切ないとのことだった。支店長が伊藤に確認したところ、2月の結婚式以来会っていないと言われたそうである。
市役所に戻り、市長に報告し、銀行を呼んだ。
5時に多胡から電話があり、「係長(注:高橋か?)はどうした」「銀行に行った」と答えたところ、「じゃあいい」と切られた。その間、役所、自宅にも戻っていなかった。
七時
支店長、次長2人が来庁。市長が疑問点の指摘をし、相手が答える形で話し合いが行われた。市側、銀行側、双方テープを取りながら会話をした。
再度、伊藤氏の件を話した。伊藤本人に確認してくれと要請。「多胡本人を呼んでこい」ということになったが、本人が所在不明。
6時頃、子供だけ家にいた。「お父さんもお母さんいない」とのことだった。
7時30分頃、再度本人を呼びに行ったところ、子供もいなかった。
公社職員は、帳簿等の調査をしながら、11時くらいまで多胡の帰ってくるのを待っていた。
11時頃、高橋宅に奥さんから電話があり、「本人は出られない。本人は錯乱状態で話を初めて聞いた」「いまどこにいるんだ」「遠いところにいる」「とにかく明日出てこい」子供も一緒にいるとのことだった。
11時30分、市長に連絡。職員全員に連絡し、12時頃集合。身内にも連絡。
2時30分まで捜索したが、見つからない。
平7・05・30 朝
高橋宅に電話あり、「今日は行けない、明日には帰るので、31日午後話をしたい」
1時30分、帰宅したらしく、多胡の懇意にしている■■■■■が本人から事情聴取していた。小諸に行ったという話で、自殺を図った。左手の手首にキズバンがはってあった。ホースを買った。共犯者はいないらしい。
平7・05・31 12時30分頃、「家にいる。弁護士とアポイントが取れた」との電話が高橋にあった。
4時
懲戒免職を言い渡し、本人から確認書を取得。本人に出頭を促す。
出頭するときは電話をしろと言った。
平7・06・01 市としても警察に事前に捜査依頼することを決定。
平7・06・02 午前
市長が 警察へ告発の相談に行った。
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【注記:当会では、タゴ事件が公社内部で発覚してから約1ヶ月後に警察に出されたこの上申書の内容が全て真実だとは考えていません。内容に矛盾点や説明不十分な箇所が多々見られるからです。それでも、事件直後の驚天動地の中で弁護士に作成させたとはいえ、十分推敲する間もなく作成せざるを得なかったため、現在では事件関係者から決して語られることのない事件の重要なヒントが含まれているのも事実です。本来、記載する必要もないはずの「共犯者はいないらしい」などと第3者のコメントを装い、取って付けたような記述がそのことを物語っています。】
首都高からは、今のところ正式な損害賠償請求が出された気配はなさそうですが、まだ、首都高炎上事故の補修のための残工事があり、損害額が確定しないのが理由かもしれません。いずれにしても、今年度中に請求予定ということでしたから、あと1ヶ月足らずの間に、首都高は、対処方針を決めなければなりません。
一方、多額の賠償金の支払請求の意向を首都高から示されて、これほどマスコミで全国的に報じられれば、通常の経営者であれば、卒倒してしまうでしょうし、また、取引銀行はすぐさま債権の保全や回収に走るに違いありません。
ところが多胡運輸は、いつもと変わりなく(?)営業を継続しているように見えます。関東運輸局が昨年10月10日に多胡運輸に下したタンクローリー5台の55日間の使用停止処分も、12月3日に既に終わっており、多胡運輸は無事?に年を越しました。次の関門は、今月末までに首都高が出そうとしている45億円規模の損害賠償請求ですが、いまのところ、多胡運輸も、それを支えている元請の運送会社も、表面的には何事もなく業務を継続しています。
【写真上】多胡運輸の近況(2月21日撮影)。
【写真上】いつもは構内に1、2台はかならず見かけるタンクローリーが珍しく1台も見当たらない。稼働率が高いのか、それとも・・・。
【写真上】多胡運輸の元締め運送会社の近況(2月17日撮影)。特に変わった様子もなく営業中。
■これまでも当会のブログで報告したとおり、安中市土地開発公社巨額横領事件で単独犯とされた元職員の親族が経営し、地元ではダイクンイと呼ばれる超大物政治家と緊密な関係のある運送会社から仕事をもらっている多胡運輸のメーンバンクは、群馬県の西南部を営業エリアとしている甘楽信用金庫(現・しののめ信金)であることが、これまでの当会の調査で分かっています。
この金融機関は、安中市土地開発公社事件で、群銀の影に隠れた形で報道されませんでしたが、元職員は、なぜか群銀だけをターゲットに、偽造書類を作成していました。元職員は、群銀や、しののめ信金の外にも、東和銀行(旧大生相互銀行)、群馬県信用組合、農協からも公社の公有地先行取得等の事業費や事務費を借り入れていました。
これらの金融機関と元職員との実質的な関係から見ると、群馬銀行の場合は、タゴと親しかった行員らを除けば、会社としては騙され役としてネガティブな関係でした。それに比べると甘楽信用金庫は180度異なる関係だったと言えます。
甘楽信用金庫の場合は、巨額の公社のカネを動かしていた元職員に、名義上とはいえ、会社として貸し付けていた800万円の住宅ローンを、元職員が懲戒免職になったその日に、期日前に満額返済してもらえました。なぜ、元職員は、会社としての甘楽信金に対して、これほどまでに関係を配慮したのか、当会は1999年に閲覧した刑事記録から、この格差の背景と理由について、注目してきました。
■平成7年5月31日、安中市土地開発公社の元職員タゴが、安中市役所で懲戒免職の通知を示されていたころ、ひとりの銀行マンが、同市役所の直ぐ前にある甘楽信用金庫安中支店で、退職届を出していました。
その日、甘楽信用金庫は、タゴに貸し付けていたはずの住宅ローン800万円を期日前に満額返済されました。その時間は確かではありませんが、安中市が警察署に提出した上申書(本文末尾参照)によれば、平成7年5月31日午後4時に、市役所内で、タゴが懲戒免職を言渡されたことから、その日の午前中に、市役所前にある甘楽信金の安中支店で、800万円を一括して返済したと考えられます。
■この上申書によると、前日の5月30日の11時頃、タゴの直属上司である高橋弘安次長宛にタゴが電話して「明日帰宅して、31日午後話をしたい」と連絡しました。実際には、タゴはその直後に帰宅し、タゴと親しいプロパン業者が直接タゴに会って事情を聞いていました。タゴの自宅は市役所の目と鼻の先ですから、タゴが帰宅すればすぐ分かるはずですので、上申書の高橋次長の説明内容には、にわかに信じがたいものがあります。
すると、タゴは、30日午後に帰宅する際に、甘楽信金安中支店に立ち寄り、残金をポンと支払ったのでしょうか。タゴの自宅の登記簿には、根抵当権の解除日として5月31日と明記してあるので、その可能性は小さいと思われます。
では、タゴは、5月31日の午前9時に、甘楽信金安中支店がオープンしたあと、返済したのでしょうか。それもどうも考えにくいことです。というのは、タゴの自宅から甘楽信金支店までは、あるいて1分足らずですが、市役所の職員の目があることから、コソコソ出かけるしかないためです。
タゴは5月31日12時30分ごろ、高橋次長に「家にいる。弁護士とアポイントが取れた」と連絡してきました。だから、それから後に、甘楽信金安中支店に借金の返済に出かけたとも思えません。
■当会の推測では、タゴが甘楽信金支店に行ったのではなく、甘楽信金支店の職員が、タゴの家に行き、タゴから申し入れのあった残金一括返済の手続きをタゴの自宅で行なったのではないか、というのが、実際のタゴの行動だと考えています。
では、巨額横領事件がまさに安中市役所のなかで発覚し、関係者が血眼でタゴの動向を監視しているはずの状況下に、なぜ甘楽信金の職員が、市役所の直ぐ目の前にあるタゴの自宅に遠慮なく自由に入れたのか。なぜ、タゴが自宅にいることを知って、タイミングを合わせたかのように、タゴの自宅を訪問したのか。これらの疑問は、甘楽信金のこの職員が、事前に、タゴから自宅に来るように連絡を受けているからだと考えられます。
この甘楽信金の職員が、タゴの自宅を訪問して、住宅ローン800万円の残金期日繰上げの一括返済を受け、会社として、債権回収を果たし、公社事件で群銀が騙しとられた途方もない金額に比べれば僅かとはいえ、損害の発生を瀬戸際で未然に防げたわけです。
タゴ事件の刑事裁判の冒頭で、検察官から行なわれた冒頭陳述のなかで、この甘楽信金の職員のことが簡単に語られました。それによると、タゴと極めて親しく、タゴが大量の骨董品を複数の骨董業者から買いつけた際に、取引を仲介したとされています。当会のその後の調査でも、この甘楽信金職員は、タゴと竹馬の友で、マージャンが大好きで、大量の骨董品を、仲介者としてタゴに成り代わって業者から購入していたことが確認できました。
■その職員のことについて、当会は、甘楽信金の総務課に問い合わせましたが、頑なにノーコメントを続けたため、不審に思った当会では、粘り強い調査を続けた結果、前述のように、なんとタゴが懲戒免職を市役所の市長室で受け取っていた頃、勤務先の甘楽信金に退職届を出していたことが判明しました。当然、所属先の甘楽信金は、市役所から公社への貸付金の問い合わせを受けており、市役所でたいへんなことが起きていることについて、知らないわけはなかったはずです。なぜ、20年も勤務してきた行員が突然辞表を出したのに、慰留しなかったのでしょうか。
あるいは、甘楽信金は、安中市役所で起きている大変な事態を知っていたからこそ、タゴの無二の親友だったこの職員が出した辞表の意味を理解して、直ちに円満な退職手続きを取ったのかもしれません。あるいは、最後の最後で、タゴに貸し付けてあった未回収の債権を、この職員が首尾よく回収し、会社としてタゴ事件での係わり合いから開放された功績として、この職員が出した辞表の意味を詮索せず、直ちに受領したとも考えられます。しかし、この不可思議な職員退職の背景は真相について、甘楽信金はいまだに何も語ろうとしません。
■注目される重大なことは、タゴと家族のように付き合っていた甘楽信金の行員が、古物商の免許を持っていたことです。普通、行員は兼職を禁じられていますから、通常は古物商の免許は取得できないはずです。甘楽信金は行員が古物商を兼職していたことを知っていて辞表を受理したのでしょうか。しかし、行員の退職理由は、タゴ事件と関係なく、懲戒免職でなくて自己都合だったことが、当会のネットワークによる周辺調査で確認済みだったので、この行員の退職には、甘楽信金として、有責性は問わなかったと見るべきでしょう。
タゴは横領金を管理していましたが、古物商の免許は持っていませんでした。だからタゴが買ったと供述している大量の骨董品取引では、免許を持つ仲介者の存在が不可欠でした。勿論、タゴが直接骨董免許のある骨董品店に赴き、相対で直接購入することは可能です。だから報道では、あたかもタゴが直接購入したかのように書かれており、私たちもそれを信じていました。ところが実際には、警察の情報管制が介在していたことが、その後、当会が、栃木県足利市の骨董商の男性からヒヤリングした結果、明らかになっています。
古物商の免許は、実は警察が行っています。古物の売買、交換をする営業には、盗品等の混入の恐れがあるため、「古物営業法」、通称「古物商法」により、都道府県の公安委員会の許可を 受ける必要があると法律に定められています。この古物営業法とは盗品の売買を防止するための法律に他ならないからです。この古物営業を営むため、公安委員会から許可を受けた者を「古物商」といい、古物営業の形態によって次の3種類に分類されています。
①個人事業又は法人事業として営む古物商
上記説明の通りだが、さらにネット上で古物取引を行う場合は公安委員会への届出が必要。 届け出られたURLは公安委員会のHPに掲載される。
②古物市場主
古物商間での古物の売買、交換するための市場(古物市場)の営業を営むため公安委員会から許可を受けた者をいう。
③古物競りあっせん業
インターネットを利用して、古物を売却しようとする者と買受けようとする者との間で 競りが行われるシステムを提供する営業、即ち、インターネットオークションを営むこと。この場合、営業開始日から2週間以内に公安委員会に届出が必要。
では、タゴの仲介者は、どのようにして、骨董品を入手したのでしょうか。
■古物商は、古物営業法で、出先での買取を禁じられており、売り手の自宅以外の場所での買い取りは違法となっています。古物営業法によると「営業の制限」として、盗品の闇取引による流通を防ぐため、古物商同士の取引以外では、出張での買い取りや交換が出来る場所を売り手の住居に制限しています。違反すると1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。なお、フリーマーケットやバザーに出される商品は、廃品として「古物」の定義から外れるため、違法ではありません。
当会が、当時、タゴに大量の骨董品を売ったと報道された足利市の骨董商から聴取した情報や、閲覧したタゴ刑事事件の記録によると、タゴは、計4つの骨董商から骨董品を買い付けていました。タゴは、仲介者が美術館設立用と偽ってこれらの骨董商から購入した大量の骨董品の一部を、自分の妻が経営する喫茶店に陳列するとともに、噂を聞きつけた飛び込み客から、相対でいくつかの骨董品を買ったとされていますが、これらは、閲覧した刑事事件記録には含まれていませんでした。タゴが飛び込み客から骨董品を購入すれば、古物営業法違反ですが、警察はそのことをよく知っていますから、この事件を詐欺事件として幕引きを図る輩たちから何らかの圧力がかかったと考えられます。
タゴは古物商の免許を持っていませんから、骨董品を買付ける場合には、骨董品を扱っている店に行かなくてはなりません。反対に、骨董品を売る店は、古物商の免許が必要ですから、出張での買い取りはできないことになっています。このことから、タゴの仲介者の存在が不可欠となりますが、足利の骨董商が告白したように、警察は、甘楽信金の行員が、古物商の免許を持っていて、タゴへの骨董品の仲介をしていたことは、当然知っていましたが、足利市の骨董商にも、仲介者のことは誰にも言わないように口止めしていました。
■注目されるのは、古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、①相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認するか、②相手方からその住所、氏名、職業及び年齢が記載された文書(その者の署名のあるものに限る。)の交付を受けなければならないことです。
したがって、古物商免許を持つ甘楽信金の行員は、当然、こうした情報を記載した台帳を持っていなければならないので、警察は、この行員が仲介者として、誰から骨董品を購入して、タゴに売り渡したのか、或いは委託されてこうした行為を働いたのかを把握したはずです。しかし、閲覧した刑事記録には、まったくこの情報は含まれていませんでした。
■さらに注目すべきことがあります。古物営業法による古物区分として次の13種類が挙げられています。
①美術品類
【例】絵画、書、彫刻、工芸品、登録日本刀など
②衣類
【例】着物、洋服、敷物類、布団、帽子、旗など
③時計・宝飾品類
【例】時計、眼鏡、コンタクトレンズ、宝石類、装飾具類、貴金属類、オルゴール、万歩計など
④自動車
【例】その部分品を含む。タイヤ、バンパー、カーナビ、サイドミラーなど
⑤自動二輪車及び原動機付自転車
【例】その部分品を含む。タイヤ、サイドミラーなど
⑥自転車
【例】その部分品を含む。かご、カバーなど
⑦写真機類
【例】カメラ、ビデオカメラ、望遠鏡、光学機器など
⑧事務機器類
【例】レジスター、パソコン、コピー機、計算機など
⑨機械工具類
【例】工作機械、医療機器、家電製品、電話機など
⑩道具類
【例】家具、CD、DVD、玩具、ゲームソフトなど
⑪皮革・ゴム製品
【例】鞄、バック、靴、毛皮、化学製品など
⑫書籍
⑬金券類
【例】商品券、乗車券、各種入場券、切手など
■これらはいずれも、タゴの横領金の使途先として、警察の調べで、タゴが購入していた品目に合致するからです。主な項目として、①の美術品の類はマスコミ報道されたとおりです。そのほか、②衣類にしてもタゴは高額な背広を常時着用し、年始などには高級和服を着ていました。これらは妻の経営する喫茶店に隣接する洋品店から購入したものもあるようですが、実際には、骨董ルートで購入して、使途不明金が少なくなるように偽装供述した可能性も否定できません。③の時計や宝飾品類もタゴやその配偶者は愛用していました。④の中古自動車は、10台近く、高級車をとっかえひっかえ乗り回していました。そのほか、株券やゴルフ会員権、リゾート会員権などにも投資していましたが、これらの広義には金券類ということができます。また、タゴは自宅に大量の記念コインや古銭を保有していました。
大量の骨董品はもとより、これらの中古品、金券類、古銭類の保有に関して、当然、タゴは無類の親友であり古物商の免許を持つ甘楽信金の行員から何らかの情報を得ていたものと考えられます。とくに記念コインの類は、金融機関の関係者の協力なくしては、個人で多種多量に収集することは困難です。タゴにゴマをすって取り入っていた群馬銀行の職員らの可能性もありますが、タゴと親密に接触していた金融マンが古物商の免許を持っていれば、タゴのコレクションの充実にこれほど適した人物はいないでしょう。
■その重要人物が、タゴの懲戒免職の日にタゴの自宅でローン債権を回収し、その日に、自ら辞職届を長年勤務してきた甘楽信用金庫(現・しにのめ信用金庫)に提出し、会社側もそれをただちに受理したことについて、信金に説明を求めても、個人情報ということで一切応じようとしません。昨年8月3日に、タゴの実弟が経営する運輸会社の保有するタンクローリーが、首都高5号線で横転炎上事故を起こしても全く記者会見をしないのも、タゴ事件に関わった個人、法人が事件発覚以降14年が経過しようとするのに、全く説明責任をはたそうとしない実態と、なぜか共通しているのです。
そして、近々予想される、首都高から45億円にのぼる損害補償請求についても、まったく動揺もせず、営々と業務を続けているように見える多胡運輸の姿は、その周囲を取り巻くバリアーの中に、メーンバンクのしののめ信用金庫(旧・甘楽信組→かんら信組)の抱える他言できない複雑な事情が見え隠れしていることを示しているのではないでしょうか。
【ひらく会情報部・特別調査班】
<参考資料>
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上申書
※受付印7.6.14第110号 群馬県安中警察署
住所 群馬県安中市安中一丁目二三番一三号
上申人 安中市 市長 小川勝壽
住所 群馬県安中市安中一丁目二三番一三号
上申人 安中市土地開発公社 理事長 小川勝壽
住所 東京都港区虎ノ門一丁目一五番一一号 虎ノ門SSビル五階
右上申人ら代理人 弁護士 田邊勝己
同 菰田 優
電 話 〇三(三五〇七)〇六三三
住所 群馬県安中市安中一丁目二三番三二号
被疑者 多胡邦夫
上申の趣旨
被疑者多胡邦夫については、平成七年六月二日、既に逮捕済みでありますが、さらに後記のとおり刑法第一五五条第一項、第一五八条第一項、第二四六条第一項の有印公文書偽造、同行使、詐欺罪に該当する余罪が存するものと認められるので、捜査の上、厳重に処罰されたく、上申します。
上申の理由
一 安中市及び安中市土地開発公社は、今回の被疑者多胡邦夫の公文書偽造、同行使、詐欺事件について、既に平成七年六月二日小川勝壽安中市長か御署に赴き口頭にて告発を行ったものでありますが、今回、安中市及び安中市土地開発公社の立場を明確にするため、本上申に及びます。
二 今回‘の事件は、群馬銀行を被害者とする詐欺事件でありますが、公社職員による悪質な犯罪であり、公社としても道義的責任を痛感しております。平成七年五月一七日の借入残高証明書取得後の事件発覚以来事実解明に努め、迅速なる調査の結果、平成七年五月三一日には被疑者を懲戒免職といたしましたが、従来通り捜査機関に全面的にご協力申し上げることをお約束いたします。既に公社、並びに市側の資料の提出、公社職員の事情聴取に全面的にご協力いたしておりますが、今後もさらに真相究明のため、ご協力いたします。
他方、安中市及び安中市土地開発公社は市民に対し、疑惑解明の結果を報告し、説明する義務を負っております。事実、これまでの報道の中には横領事件と間違えているのではないかと思われるものや、非難を市及び公社に集中させるものが目立ちました。今後は、捜査当局にご協力申し上げる中で、捜査に支障のない範囲で、安中市としても真相を明らかにして参りたいと思料いたしております。
また、今回の直接の逮捕事実は、平成七年三月三一日の詐欺の分のみと聞き及んでおりますが、被疑者は平成二年四月一六日、「湯浅市長の特命により、表面に出せない土地を先行取得するため」との欺罔行為により、全く架空の「安中市土地開発公社理事長湯浅正次特別会計」名義の被疑者自身の口座を開設し、以後一三回に亘り多額の金員を公社借入金名目で借り入れ、同口座から現金を引き出す方法で金員を詐取していたものであります。それ以前についても犯行を重ねていたようでありますが、客観的資料に基づき、市及び公社の立場として告発可能なものは平成二年四月一六日以降の犯行分と思料しております。
いずれにせよ、捜査内容や起訴事実の確定は捜査当局の専権事項であり、市及び公社は如何なる要請にも全面的にご協力いたすことを重ねて明言いたします。
三 捜査当局のご参考になるか否かは別として、市及び公社が被疑者を懲戒免職にするまでの事実経過を別紙時系列表にまとめましたので添付いたします。
右別紙時系列表について付言すれば、市及び公社は、公社側の最初の事情聴取の段階での被疑者の弁解について重大な関心を寄せております。被疑者が全くの虚偽の事実を述べたのであれば群馬銀行行員に対する名誉毀損罪にも該当する悪茸な行為であります。被疑者を許すことはできません。他方、市及び公社は今回の事件に共犯者はいないと信じておりますが、群馬銀行の管理体制については疑問を抱いております。刑事的には被害者側の落ち度の問題であろうかと思料いたします。この点についても、捜査上ご協力できることがあればお申し付け下さい。
四 以上、厳正なる捜査のうえ、被疑者を厳罰に処していただきたく上申する次第であります。
平成七年六月一四日
上申人ら代理人 弁護士 田邊勝己
同 菰田 優
群馬県安中警察署長 殿
【時系列表】
被疑者 多胡邦夫 昭和27年3月30日生
昭45・06 入庁
昭54・10 建設部都市計画課主事
昭55・04 安中市土地開発公社設立(理事長 湯浅正次)時に同公社職員を併任
平2・04・01 高橋次長就任。経理チェックを強化。
平2・04・16 「安中市土地開発公社理事長湯浅正次特別会計」名義の多胡個人の口座開設。栃木県小山支店から転勤してきた伊藤誠支店長代理が担当して開設。市長の特命事項を処理するために表に出さない土地を先行取得するために使うという理由。
その後、借入として13回、約36億3千万円。
平7・04・01 教育委員会社会教育科社会教育係長に転任。清水裕之が入れ替わりに公社職員(市都市計画課と併任)として任命される。・
平7・04・12又は18 群馬銀行安中市派出所の田崎操が公社を訪れ、竹内に対し「公社の融資の残高を教えてほしい」上司の高橋次長がいないので、「翌日来て下さい」と答えた。翌日高橋が「群馬銀行は借入残高を承知しているので、なぜ聞くのか」と田崎に対し言ったところ、「いろいろの調べに使いたい、できれば他行分も教えて下さい」と言った。他行分の明細は教えられないが、公社全体の総額と群馬銀行のものは教えてもよいとして、公社の借入金総額約十九信円と群馬銀行の約10億1700万円の借人分を書面でその日のうちに竹内が派出所に届けた。
その時には、銀行からなんら返答はなかった。
平7・04・19 高橋次長、竹内主任、清水が群馬銀行安中支店に挨拶に行った。山添次長、栗田が対応に出た。多胡が転勤になったので、挨拶に来たと述べた。
平7・05・08 多胡、1485万円現金引き出し(5/23頃判明)
平7・05・17 群馬銀行安中支店から公社借入金残高証明47億6596万円を取得した。24日の監査、30日役員会に備えるべく取得した。
平7・05・18 11時10分
高橋、竹内、群馬銀行へ訪問。融資課長栗田、融資担当次長清水、渉外次長山添に対し、「残高とあわないので明細があったら見せてほしい」と言ったところ、貸出明細照会票を出した。
「金銭消費貸借契約書を見せてほしい」。「このとおりある」と言って袋の中に入っていた証書を見せた。金額欄の「金」と正規の数字の間の狭いところに、偽造の金額が割り込ませるように加筆され、改ざんがされていた。「本人の字かどうかもわからない。いかにもつけ加えているではないか」と言ったところ、「本部の監査でも本人の筆跡に間違いないということで検査はすんでいる」と支店長が答えた。
半期に一回利息を払うところ、「総額が異なるのであれば7・3・31に支払った利息では足りないのではないか」と質したところ「間違いなく頂いている。もう一つ安中市土地開発公社理事長湯浅正次 特別会計口座番号058-969という口座かおる」とのことだった。「そんなはずはない」と述べると、「平2・4・16開設の特別会計がある」とし、口座開設時に記入した普通預金印鑑票を見せてきた。「だれが作ったのか」と質すると、清水融資課長が「多胡さんが作っております」と答えた。普通預金印鑑票は多胡の筆跡だった。
「特別会計口座に幾らあるか」と聞いたところ、2億7500万円あった。引き出しできないようにしてくれと頼み、過去の資料を本部から取り寄せるなどして全部見せてほしいと依頼し、12時40分帰庁。高橋が竹田主任、加部部長に相談。市長に報告。
銀行に連絡し、6時に群馬銀行を訪問。市長は安中市商工会青年部通常総会終了後、市長も7時に訪問。
松井支店長、清水次長、山崎次長、加部事務局長、高橋次長、竹内主任出席。
預金取引履歴明細表の二枚だけを出してきた。払い出しの伝票の原本を見せてもらった。
公社の借入金台帳と照合した。金銭消費貸借契約書も見た。狭いスペースに書き込みがなされているので、明らかにおかしいと指摘した。
借入は31本あり、金額欄の数字の順についているものが12本あった。その前の金銭消費貸借契約書も公社の台帳とつき合わせてチェックした。履歴明細表に記載してある金銭消費貸借契約書は原本が存在した。「多胡の指示により、特別会計に振り分けた」との説明があった。「それはおかしい」と指摘した。市からの依頼書はなかった。
市長到着。説明を求めたところ、「湯浅市長の特命で、特別会計、口座を作った」と松井支店長が説明。「特命など間いていない。特命の依頼書などないはず」
「4月に、田崎に公社の残高を書いた書類を渡したのになぜおかしいと言わなかったのか」
銀行側の資料は、明細書が2枚、伝票も1部だったので翌日の昼までに本部の資料も全部調査するということだった。
平7・05・19 1時
銀行から(清水次長か)全部揃ったという連絡があったので、群馬銀行に4時頃来庁を依頼。
市長、助役、収入役、加部局長、高橋が対応した。第一応接室に次長2人が来た。支店長は支店会議で来られないとのことだった。
市長が、「こんな重大な事件で支店長が来ないのはどういうことだ」と言った。
履歴表の2枚目以降の部分を持ってきた。伝票の一部をもってきた。契約証書の写しを4~5枚受け取った。経緯についての説明があった。「200回以上引き出されている。Cというのが現金です。残高はこれだけです」「コジョウ・タゴ」の振込票を持ってきた。
市長は、「こんなに額が出ているなら、特命を何で確認しなかったのか」と問いただす。
平7・05・22 公社調査
平7・05・23 〃
平7・05・24 午前中 公社監査
2時 多胡に事情聴取。高橋・竹田・竹内 「残高は何だ」
多胡「これは違う。俺かやったのではない。不正の事実はあるがこんなに多くない」
伊藤支店長代理か主犯というニュアンスで「伊藤が絡んでいる話なので、伊藤代理と話をする。26日までに連絡する。伊藤の他にもいる。名前は出せない」と弁解した。
平7・05・26 高橋・竹田・竹内 多胡に事情聴取。
多胡「伊藤に連絡を取ったか、仕事中で28日の日曜に会うことになっている。そこで話をつける」
リミットは市長の指示により、29日と通告。銀行次長に伊藤の件を話し、調査をお願いした。
平7・05・29 9時 高橋・竹田・竹内 多胡に事情聴取。
多胡「29日伊藤と会。たところ、額は違うし、この金は別口座にプールしている。それで返済すれば1億円くらいになる。伊藤も自宅を売却し残りも俺が払えば済む。伊藤から銀行に電話を入れてもらい、支店長と相談したうえで、自分が行って話をつける」ということだった。伊藤は12時ころ支店長と会うと言っていたと言った。
3時に多胡が銀行に行くということだった。3時には高橋が同席すると言った。そこで教育課に3時頃多胡が退席したかを確認したところ、3時から休みをもらったと教育課の者が言ったので、役所のすぐ前にある多胡の家を見に行った。
丁度その時、多胡は車で出ていった。その前に、安中支店次長に「多胡か行ったら電話くれ」と頼んでいたところ、4時20分頃、銀行(山添)から電話あり、「多胡が来ていない」とのことだった。
慌てて高橋、竹内が銀行に行った。伊藤から電話あったかど聞いたところ、一切ないとのことだった。支店長が伊藤に確認したところ、2月の結婚式以来会っていないと言われたそうである。
市役所に戻り、市長に報告し、銀行を呼んだ。
5時に多胡から電話があり、「係長(注:高橋か?)はどうした」「銀行に行った」と答えたところ、「じゃあいい」と切られた。その間、役所、自宅にも戻っていなかった。
七時
支店長、次長2人が来庁。市長が疑問点の指摘をし、相手が答える形で話し合いが行われた。市側、銀行側、双方テープを取りながら会話をした。
再度、伊藤氏の件を話した。伊藤本人に確認してくれと要請。「多胡本人を呼んでこい」ということになったが、本人が所在不明。
6時頃、子供だけ家にいた。「お父さんもお母さんいない」とのことだった。
7時30分頃、再度本人を呼びに行ったところ、子供もいなかった。
公社職員は、帳簿等の調査をしながら、11時くらいまで多胡の帰ってくるのを待っていた。
11時頃、高橋宅に奥さんから電話があり、「本人は出られない。本人は錯乱状態で話を初めて聞いた」「いまどこにいるんだ」「遠いところにいる」「とにかく明日出てこい」子供も一緒にいるとのことだった。
11時30分、市長に連絡。職員全員に連絡し、12時頃集合。身内にも連絡。
2時30分まで捜索したが、見つからない。
平7・05・30 朝
高橋宅に電話あり、「今日は行けない、明日には帰るので、31日午後話をしたい」
1時30分、帰宅したらしく、多胡の懇意にしている■■■■■が本人から事情聴取していた。小諸に行ったという話で、自殺を図った。左手の手首にキズバンがはってあった。ホースを買った。共犯者はいないらしい。
平7・05・31 12時30分頃、「家にいる。弁護士とアポイントが取れた」との電話が高橋にあった。
4時
懲戒免職を言い渡し、本人から確認書を取得。本人に出頭を促す。
出頭するときは電話をしろと言った。
平7・06・01 市としても警察に事前に捜査依頼することを決定。
平7・06・02 午前
市長が 警察へ告発の相談に行った。
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【注記:当会では、タゴ事件が公社内部で発覚してから約1ヶ月後に警察に出されたこの上申書の内容が全て真実だとは考えていません。内容に矛盾点や説明不十分な箇所が多々見られるからです。それでも、事件直後の驚天動地の中で弁護士に作成させたとはいえ、十分推敲する間もなく作成せざるを得なかったため、現在では事件関係者から決して語られることのない事件の重要なヒントが含まれているのも事実です。本来、記載する必要もないはずの「共犯者はいないらしい」などと第3者のコメントを装い、取って付けたような記述がそのことを物語っています。】