ぽぉぽぉたんのお部屋

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ベイビー・ブローカー

2022-07-12 | 映画のお話
フランスで撮った「真実」は観ていないが、
「パラサイト」もとうとう観ないでしまった・・・
同じポン・ジュノ作品の「殺人の追憶」で田舎の刑事を演じた
ソン・ガンホの演技は素晴らしかったが、
あんな暗くて重くて凄まじい作品とは違って、
いつもの是枝監督らしい観終えた後のほのぼのとする安心感があった。
昔、こじんまりとした講演会があった時に、大学生の時に教育実習に行った先で
担任と衝突して首になりそうになった話をしていたのが懐かしい・・


「ベビーブローカー」はカンヌ国際映画祭のエキュメニカル審査員賞受賞。
耳新しいが「人間の内面を豊かに描いた作品に贈られる」らしい。
主演のソン・ガンホも韓国人俳優初の最優秀男優賞を受賞した。

是枝作品「誰も知らない」で柳楽優弥が受賞した年齢とは大分開きがあるが
最近めざましい勢いの韓国映画だ。
これからもどんどん注目の俳優が出てくるのだろう。

極端な展開や過激な印象の韓国映画だが、是枝監督作品はそういうタイプでは
ないので、韓国映画を作るのは何だか不思議な感じがしていた。
登場人物、それぞれの生い立ちや人生の哀愁がにじんでいて
相変わらず、元気な子役がいて彼らしい作品だった。

ベイビー・ブローカーが裏の仕事の
借金だらけのクリーニング店主と赤ちゃんポストで働く施設出身の男
それを執拗に追う刑事主任と部下の女性たち。
翌日思い直して戻ってきた赤ん坊の母親、
(子役は相変わらずオーディションで自由奔放な個性派の子を選んだようだが)
隠れて乗っていた施設の子が加わった辺りから
どんどん展開してゆく感じだ。

ただ高く売れればいいと旅にでたはずが、赤ちゃんの幸せを真剣に願うようになり、
母になることをあきらめたはずの母親や刑事の心が変化してゆく・・・

そして
「生まれてくれてありがとう」という言葉が出てきた辺りから
少し鼻に着くぐらいに繰り返されて
その場にいるひとりひとりに、子どもを捨てたはずの母親が語り掛ける。
「うまれてくれてありがとう」と・・・

しつこいくらいにみんなに言ってきかせるあたりから
是枝監督らしくないような気がしたのだが
今回はあえてそうしたかったのかもしれない。
血のつながりはなくても家族となれることは繰り返し作品に出てきていたが
今回ははっきりと繰り返し言葉にしている。
日本映画ではないのだ。

ベイビー・ボックス出身の子どもたち、様々な事情で施設で育った子どもたちの
「自分は生まれて来て良かったのか、
自分が生まれたことで誰かを不幸にしてしまったのかもしれない」という
想いがそれで少しは和らいでくれるのならと思う。
そうして、社会にいる大人たちには、わかってほしいと思った。

母親が床に置いて捨てた赤ちゃんを
刑事がそっと抱いてベビーボックスに入れるシーンが一番心に残った。
そんな風に見えない彼女の心の底に沈んだ澱のような懊悩が
最後に子供と戯れるシーンで晴れたような気がした。

 



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