噛みつき評論 ブログ版

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NHKの存在理由

2011-03-07 09:41:09 | マスメディア
 商業放送は「儲けが第一」という宿命から逃れることはできません。それを「誠実」に実行してきたからこそ、業種別の生涯給与で放送業は約4億4千万円(05年度)と2位を1億5千万円以上引き離し、堂々首位の座を保っています。しかしその宿命の故、興味本位の内容、視聴者への迎合は必然的な属性となります。

 あたりまえのことながら、公共放送であるNHKの存在理由は商業放送には期待できない放送の公共性を実現することにあります。しかし近年、NHKの公共性に対する認識には疑問を感じます。

 総合テレビの夜7時の定時ニュースはその日の出来事をまとめたもので、NHKが個々の事実の重要度をどのように判断しているかがわかります。例えば3月4日のトップは熊本の幼児殺害事件、2番目はネットを使ったカンニング事件であり、この二つで時間のほとんどが費やされました。その後、前原外相の献金問題に短く触れ、7時27分頃から軍事予算2桁増という中国の軍拡の脅威を簡単に伝えました。

 興味本位の編集という点では民法に決して引けを取らないわけで、NHKという民放がもうひとつできたような印象を受けます。ネットを使ったカンニング事件は数日前からトップを独占してきた報道です。幼児殺害事件では現場の見取り図を用意し、事件現場のスーパーからの実況まであり、詳細な説明を聞かされました。恐らくこの後も容疑者の逃走経路や生い立ちが詳しく続報されるでしょう。悲惨な事件の詳報は視聴者の娯楽になるとでも心得ているのでしょうか。

 ニュースの採用基準は視聴者をあっと驚かせるもの、好奇心をかきたてるものなどいろいろあるでしょうが、公共放送では視聴者に知らせる必要のあるものが優先されてよい筈です。この日の例で言えば、隣国の急速な軍拡は国際情勢を認識する上で重要なことですが、興味本位のニュースに圧倒されている感があります。これではNHKの存在理由がありません。

 NHKは良質の番組も比較的多く提供しており、政治問題、国際問題を扱う硬派の番組もあります。だからといって知らせる必要のあることはちゃんと報道しているということにはなりません。硬い番組は視聴者が限られており、影響力が少ないからです。7時のニュースのような視聴率の高い番組でこそ公共放送の役割を果たす必要があると思います。

 NHKをはじめとするメディアが必要かつ十分な情報を国民に提供しなければ、それは選挙の投票行動に影響して、どうしようもない無能な政権を生み出すことにつながります。投票行動はメディアによって与えられた情報の反映であることを自覚していただきたいと思う次第です。