をあまりに厳格かつ形式的に適用すると社会常識と矛盾し、社会に悪影響を与えることがあります。3月8日のテレビ朝日・スーパーモーニングはその好例を示しました・・・社会への悪影響と共に。ここには法の不完全さを考慮することなく、法を常識より優先する愚かな態度が見られます。
まず取り上げられたのは「万が一の不可抗力の事態に対しては、一切の異議申し立てをいたしません」との一文がある手術承諾書です。大沢孝征弁護士は「あきらかな過失があった場合に、責任を免れることはできない。過失を事前に放棄させる取り決めは、公序良俗に反していて無効と考えられる」とし、「これを書かせたことで、無知な患者が諦めてくれる場合がありうる、という以上の意味はない」と説明します。
明らかな過失、というのが問題になりそうですが、まあこれはその通りなのでしょう。しかし次に出された問題はちょっと見過ごせないものです。以下、記憶によるので多少不正確な点があるかもしれません。番組は質問に対して大沢弁護士が答える形式です。
(質問) ある患者が診療所へ行ったところ、医師は診療科目ではないとして断るが、患者はどうしても診てもらいたいと言うので、医師は仕方なく診察した。ところがその後、容態が悪化し、別の病院で診察を受けたところ、最初の医師の誤診が明らかになった。この場合、最初の医師の責任を問えるか、という質問です。
この質問に対し、大沢弁護士は医師の責任を問えると答えます。医師には正当な理由なしに診療を拒否できないという応召義務がある、そして診療科目というのは自分達が決めたものに過ぎず、国家試験では全科目を受けているわけだから、診療科目を理由に診療を拒否することはできない、と言います。
眼科や皮膚科の医師のところに腹痛を訴える患者が来ても診察を拒否できず、誤診をすると責任を問われるというわけです。専門化された診療科目に細分された現在の医療体制を無視したもので、木を見て森を見ず、まるで小学生の屁理屈のようです。
また大沢弁護士は誤診に対する医師の責任を無条件で認めているようですが、誤診率は10~30%程度などといわれるようにかなりの高率であり、鉄道や航空機のように安全性がほぼ確立した分野と同列に扱えるものではありません。医療に完全性を求め、誤診に法的な手段をとろうとするような患者が増えれば、現在の医療体制は維持できないと思われます。現状ではある程度の誤診は止むを得ないという認識でなければ医師との信頼関係はできません。
この番組の目的は法に疎い患者に入れ知恵をすることだと思われますが、このような現実を無視した極論は有用というより弊害の方が大きいと思われます。この子供のような意見、ほとんど冗談のような意見を真に受ける視聴者がいないとは限らないからです。
この番組は患者側と医療側との対立を煽ることになるでしょう。このような理屈を振り回す患者が増えれば医療側は対応に苦慮し、防御策をとらざるを得なくなります。患者側と医療側の信頼関係を損なうことになれば大変不幸なことです。この番組の制作者は医療全体のことなどどうでもいいと考えているのでしょうか、それとも単なる愚かさのなせることなのでしょうか。
参考拙記事 もうひとつの報道被害・・・医療崩壊を推進するマスコミ報道
まず取り上げられたのは「万が一の不可抗力の事態に対しては、一切の異議申し立てをいたしません」との一文がある手術承諾書です。大沢孝征弁護士は「あきらかな過失があった場合に、責任を免れることはできない。過失を事前に放棄させる取り決めは、公序良俗に反していて無効と考えられる」とし、「これを書かせたことで、無知な患者が諦めてくれる場合がありうる、という以上の意味はない」と説明します。
明らかな過失、というのが問題になりそうですが、まあこれはその通りなのでしょう。しかし次に出された問題はちょっと見過ごせないものです。以下、記憶によるので多少不正確な点があるかもしれません。番組は質問に対して大沢弁護士が答える形式です。
(質問) ある患者が診療所へ行ったところ、医師は診療科目ではないとして断るが、患者はどうしても診てもらいたいと言うので、医師は仕方なく診察した。ところがその後、容態が悪化し、別の病院で診察を受けたところ、最初の医師の誤診が明らかになった。この場合、最初の医師の責任を問えるか、という質問です。
この質問に対し、大沢弁護士は医師の責任を問えると答えます。医師には正当な理由なしに診療を拒否できないという応召義務がある、そして診療科目というのは自分達が決めたものに過ぎず、国家試験では全科目を受けているわけだから、診療科目を理由に診療を拒否することはできない、と言います。
眼科や皮膚科の医師のところに腹痛を訴える患者が来ても診察を拒否できず、誤診をすると責任を問われるというわけです。専門化された診療科目に細分された現在の医療体制を無視したもので、木を見て森を見ず、まるで小学生の屁理屈のようです。
また大沢弁護士は誤診に対する医師の責任を無条件で認めているようですが、誤診率は10~30%程度などといわれるようにかなりの高率であり、鉄道や航空機のように安全性がほぼ確立した分野と同列に扱えるものではありません。医療に完全性を求め、誤診に法的な手段をとろうとするような患者が増えれば、現在の医療体制は維持できないと思われます。現状ではある程度の誤診は止むを得ないという認識でなければ医師との信頼関係はできません。
この番組の目的は法に疎い患者に入れ知恵をすることだと思われますが、このような現実を無視した極論は有用というより弊害の方が大きいと思われます。この子供のような意見、ほとんど冗談のような意見を真に受ける視聴者がいないとは限らないからです。
この番組は患者側と医療側との対立を煽ることになるでしょう。このような理屈を振り回す患者が増えれば医療側は対応に苦慮し、防御策をとらざるを得なくなります。患者側と医療側の信頼関係を損なうことになれば大変不幸なことです。この番組の制作者は医療全体のことなどどうでもいいと考えているのでしょうか、それとも単なる愚かさのなせることなのでしょうか。
参考拙記事 もうひとつの報道被害・・・医療崩壊を推進するマスコミ報道