Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

俗物図鑑のための閻魔帳

2009-04-21 | 試飲百景
「やっぱり、妻もソヴィニオン・ブランかな、これだけ九十点ついていたし」

「阿呆!そんな点数本などを見ているから一生馬鹿者であり続けるのだ」と怒鳴りはしなかったが、そう思いながら向かい側に座る家族づれに:

「本来ならば独特の香りがあってね」と、スグリの香りがしない不甲斐なさに腹立てながら、

「評価本なんて、あんまり当てにならんよ。リースリングなんて山あり谷ありだけど、なにもわかっとらんからね」。

これは危ない男だと向こうも思ったのか、少々驚いていたが。

「一体、ソヴィニオン・ブランてどんな葡萄ですかね」と聞いてきた。

「まあ、なんちゅうことはないわさ、今流行だからね。フランスの名前だからおフランスでしょ。ほら、ニュージランドなんかで有名だって言うけど、最近この界隈で結構良いものが出来ているから、プファルツの物の方が良いなんてね言う変わり者もいるからね。やっぱりゲオルク・モスバッハなんてね」

「兎に角、暑い夏など新鮮な緑のサラダなどにも美味いわな」

小学校へ行こうかという長男と長女を連れたボンからヴァケーションに滞在していた若夫婦であったので、なにも嫌味の一つもカマス必要はなかったので、おとなしくしていたのだが、言いたい事は分かっただろうか、いや分からなかっただろうな。

もう一軒は、フランス人夫婦で奥様が通訳をされていたが、旦那は典型的なフランス男のもじもじとハッキリしないなよなよタイプであり、旦那の好みはその会話からちっとも聞き取れなかった。要は、リースリングのあまり酸が強く張り出しているのは駄目というので、新しい鋭いものよりも熟れた2007年産などを試したが、どうも今一つリースリングは分かっていないようだ。パリから引っ越して今はどこに住んでいるか知れないが、態々ドイツワインを賞味しに来るにしてはお粗末である。恐らくどこかに書いてあったドイツで有名な醸造所で尚且つフランス名前のここへとやって来たのだろう。恐らく前任者のシュヴァルツ親方の時からのお客さんであろう。

なにが言いたいかと言えば、ああした有名になった醸造所は禄でもないお客さんが集まるので、リースリング以外のワインを準備しておいて、適当に金儲けをしなければいけないのである。名門有名ブランドが極東などで塵のような商品で商売をするやりかたや、学術書に強い古本屋かエロ本で儲けているようなビジネスモデルがここにもある。

お蔭で、ピノブランもムスカテラーもご相伴したのだけれども、なにも態々高い金を出して買うほどのものではない。不味くはないがそれだけのものである。去年までいた客相手の若い子も辞めてまた新顔になっていたが、見習いを使うと言うよりも雇用の問題がこの醸造所には付き纏うようで、専門的な知識も十分にない者が評価本を見てやって来る客を相手するという大変具合の悪い悪循環に陥っている。更に盗難事件後、個人客向けの試飲会をしなくなったので益々フィードバックする機会を失っている。

結局、お目当てのMCリースリングという格安のグーツヴァインを買いこんだ。モモの香りに香ばしさがあって今年のものは昨年のものより今の時点では良い。

「これはお徳用ですよ。日々の食事に。」と若夫婦に奨めて上げた。それを半ダース買ったようだが、まだ素直な心がある内は救われる。

キャビネットクラスのオルツヴァインもなかなか土壌というか土地柄の特徴を上手く出しているが、如何せんその特徴自体が一本10ユーロ近く取るには物足りない。シュペートレーゼクラスを次には試すのだが、そもそも高価なワインを購入させるほどの質があるかどうかは難しいところだろう。



参照:
意志薄弱なワイン談義-試飲百景 2005-04-18 | 試飲百景
情報の洪水を汲み尽くす阿呆 2009-04-12 | マスメディア批評
コメント (2)
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