Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

嵐過ぎ去って、その後

2015-04-02 | 
嵐「ニクルス」が過ぎ去ったようである。一昨日もあまりの強風のために夜中に目が覚めた。気圧も下がっているのかまるで高山にいるような感じになっていた。ミュンヘンの駅でも倒木のために国鉄に複数の死亡者が出て、各地でも倒木で死者が続発した。日本の台風ほどではないが風の強さは時速190KMを超えたようで、新聞の写真を見るとミュンヘンの街中で腹ばいになって寝転んでいる人が多数いる。立ってはいれなかったようだ。

久しぶりに雨が上がり陽射しがあったので一っ走りしに行く。回りが、陽射しのせいもあってか、可也明るい。森の梢が大分落ちて、上に引っ掛かっていた葉っぱなどが一掃されたからだろう。今年の新緑は美しくなりそうだ。被害が出たのは大変だが、自然のサイクルとしては時々これぐらいのことがあっても当然であろう。沢沿いを往路2093歩12分、往復24分4120歩ほどで、珍しく復路に苦労した。気温は摂氏五度と比較的低かった - そう思っているうちに今度は雹交じりの激しい雨降りだ。

就寝前に、普段はあまり観ないYOUTUBEのオペラやコンサート風景などを摘み食いした。気になっていた1994年のカルロス・クライバー指揮のヴィーンでの映像を観ると、明らかにミュンヘンのそれのようには鳴らせていなかった。その公演を聴いた人の話などでもそれほど評価は高くなかったので、1980年代のミュンヘンでのそれを凌駕していなかったと見える。ヴィーンのそれなどからするとややもすると可也いい加減なところもあるので、俗受けはするが一部には批判もあっても当然であったろう。

その後に、ベルリンのフィルハーモニーからのネット中継の触りのようなものを観た。サイモン・ラトル指揮の出来のよさそうなものは無いかと探したのだが、なかなか見つからない。ストラヴィンスキーなどでも他の交響管弦楽団とのものよりも遥かに優れているものはあまり無いようだ。確かに高品質な演奏が繰り広げられているのだが、どちらかといえばとても通向きの質のよさが評価されるものが多い。

ストラヴィンスキーのサルム交響楽のチェリビダッケ指揮の演奏がラディオで流れていた。音響空間シリーズでスパイヤーで旧SDR放送交響楽団との演奏であったが、カイザードームの残響が長い分、それを考慮していつもよりも更に遅めに神経質に音響を組み立てたもので、どこまで聴衆がそれに反応したかは皆目分からない。ショルティー指揮で其処でブルックナーの第二交響曲を体験したときもやはり表現に制約があったことを思い出す。

その後、俗受けして、もはやミュンヘンでは神と崇められているキリル・ペトレンコ指揮のの映像を探した。暮れに再上演を見聞した「影の無い女」が30分ほどあって参考になるが、その他にもフランクフルトや古巣のコーミッシェオパー、ベルリンのフィルハーモニーでの定期、イタリアでの演奏などがあった。イスラエルフィルでのインタヴューが、慣れぬ英語ながらなるほどと思わせる話があった。それによると「管弦楽団をひとつの楽器」と興味を持ったようで、その傾向が今でもよく出ている。スクリャビンの交響曲などもそれでよいと思うが、なにもあれほど高品質な「楽器」を使わなくても表現出来ると思わせるのは客演指揮者であるから仕方ないのだろうか。あまりに座付き管弦楽団で慣れすぎたためか若干野放図に鳴らせることが多すぎるようで、奈落からならばロシア音楽同様それも効果となることも少なくないだろうが、現代の交響楽団演奏ではないだろう。またマーラーを交響曲の中心においているのが面白い。

それにしてもベルリンのフィルハーモニーからのさわり集を観るだけでこれはといった後任候補がいないのが分かる。多くは現在のラトルサウンドよりも後退する感じで時代の逆噴射的な感覚の指揮者が多い。チェルビダッケの悪口を真似るとソフトナーを入れたデュダメル、野蛮なビュシュコフ、とても古風なイェルヴィ、名前の割に失望したのはネルソンズで、ヤニック・ネゼセガンやアラン・ギルバートならばどうなのか、どれもここ十年ほどで有名になったので聞いたことも無い人たちである。ティーレマンならばフィッシャーでも代わらないではないか。先週マタイ受難曲を振っていたマルコンという人がここでもヴィヴァルディーを振っていたのには驚いた。

こうしてみてくると、サイモン・ラトルの後任選びは結構大変である。そもそもラトル自身が既に20歳台前半で多くの優秀なレコーディングを残して、後半には世界のスターになっていたことを考えると、なるほど劇場の世界ではペトレンコのように若くして脚光を浴びた人は珍しいが、それに匹敵するような人はなかなかいないのは当然かもしれない。



参照:
音が鳴り響く環境の考査 2015-04-01 | 音
苦労して獲得するもの 2015-03-30 | 音
受難オラトリオのコムニオン 2015-03-26 | 音
竹取物語の近代的な読解 2014-12-31 | 文化一般
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