2008年は、高級ドイツワイン協会VDPプファルツの百周年が祝われる。多くの催しが、三月のイルミネーションに始まり十一月まで計画されている。
そもそもVDPは、Der Verband Deutscher Prädikats- und Qualitätsweingüter e.V.の略で19世紀に横行した混ぜ物のパンチワインに対して自然な高級ワインを売り物にオークションをした約百年前に創立した組織のようである。
各地域の前身母体は幾らか異なり、VDPとして組織された時期も異なるようだが、今年はモーゼルザールとプファルツが百周年を祝う。双方のジョイント企画もあるが、特にプファルツは、昨年秋VDPの代表に地元のクリストマン氏が選出されたことで、華やかな様相を呈している。
現在、プファルツで26件の醸造所が選考基準を満たしてここに加盟している。この団体に加盟しているからよいワイン醸造所とは言えないが、所謂高級ワインを上手に作るワイン醸造所は全て加盟している。
そもそも、高級ワインのその基準を時代に合わせて決定して行くのがこの団体であり、その歴代団体幹部となる醸造所の発言権が強いことは外部からでも良く知れる。反対に、その基準に不満がある醸造所は脱退して行き、ドイツワインのメインストリームから外れる事となる。
高級ワインとは、一体何を指すかは、何度もここで繰り返しているので、安易な定義はしないが、消費者であり愛好家である我々は、その現在の方針による成果を厳しく審査して、購買を決定して行けばよい。この団体以外のワインが高級と思う者もあれば、高級よりも美味いワインがあると思えばそれを購入すればよいだけである。
ただし、こうした名門が集まった指導的な団体の方針と外れ、独自に主張をして行くことはやはり難しく、ロビー団体でもあるVDPの方針は法制上も尊重されるものである。例えば、EU議会で見送られた、加糖によるアルコール度の水増しの禁止法案などはこうした団体の高品質のワインには殆ど影響がないかも知れないが、一般のモーゼルやアール周辺などのワイン農家にとっては死活の問題であったことも事実であろう。
その意味からもVDP加盟の醸造所はエリート中のエリートであって、ワイン産地の地元でもスーパー買いをする一般消費者にとっては縁遠い存在かも知れない。現時点で、リースリングワインなら最低一本5ユーロは支払わないと買えないからだ。すると、通常のレストランではグラス一杯がこの価格以上になり高くてなかなか飲めない。
さてその品質や哲学は、前任者の不凍液混入スキャンダルで傷ついたドイツワインの名を救済したナーエのカトリックのプリンツ・ツー・ザウル氏に代わって、プロテスタントのクリストマン氏が代表に就任して、それを継続しながらもよりバイオ農業への集中が予想されていることは、ここでも取り上げた。具体的には、今後その最低基準が何処まで底上げされるかにあるかも知れない。
コンセプトでもタクティクスでもないが、これはドイツワインの商品イメージとしての前者でもあり、世界市場を狙った後者でもあるのは断わるまでもない。そうして、アメリカ大陸のコーラワインとの差異を明らかにして行くのが肝要なのである。そのような事情を旨として、戦後の民主主義的なNPO組織は極端に走ることはありえないのだろう。
その歴史を見ていると1971年の法律改正によって、呼称からも「自然」と言う言葉を使えなくなったのはなるほどと思わせる。伝統的な醸造や葡萄作りは存在しても自然などはありえない。その意味からも土壌を活かすグランクリュ制度を、歴史的な地所の土地の強さに従って、2001年からVDPが独自に導入制定している。所謂、エルステス・ゲヴェックスもしくはグローセス・ゲヴェックスとドイツ語圏以外では受け入れれ難い呼び方を使用して、基本的には辛口のリースリングワインを各々のVDP醸造所のフラッグシップとしてリリースされている。
歴史的に食物連鎖に優れ肥沃な土地であり続けたグランクリュの土壌において、耕地面積あたりの収穫を極力押さえたこのカテゴリーのワインは、二年以上経ってから初めてその真価を発揮するリースリングワインであり、抽出される要素が凝縮しているので十年後にも楽しめる商品価値が設定されている。
これは、過去にスキャンダルがあったような高価なアイスヴァインを筆頭とする甘口のどうしようもないワインの国際評価を払拭する方針としての最高級辛口リースリングの格付けであり、これの評価を持って硫化物の多量混入したVDP以外の醸造所からの質の悪いアイスヴァインなどを早く市場から駆逐してもらいたいものである。
写真は、プファルツの記念年のためのカードである。この写真の人物を二桁特定出来る人は業界人であろう。
追記:懇意の醸造所がこの団体に加盟していないのを発見した。最近は買っていないが規模も比較的大きく名門であってなかなかよいリースリングを醸造している。当然ながら加盟して指導的な立場にいるかと思ったがいなかった。先代を含めてそれほど偏屈の親仁さんにも見えないのだが、一度理由を聞いてみたいものである。しかし、その独自のコンセプトを説明するにはかなりの広報活動が必要になる。謂わばVDPの基準は工業会でのISOみたいなものである。業界団体のガイドラインに乗せるその効用の方が大きいと思うのだが、様々な考え方があるのだろう。確かに、そこのワインは、充分に選ぶ必要があったのも事実である。
参照:
加盟醸造所リスト
VDP-PFALZ
文化的土壌の唯一性 [ マスメディア批評 ] / 2008-01-03
技術信仰における逃げ場 [ 雑感 ] / 2007-11-06
そもそもVDPは、Der Verband Deutscher Prädikats- und Qualitätsweingüter e.V.の略で19世紀に横行した混ぜ物のパンチワインに対して自然な高級ワインを売り物にオークションをした約百年前に創立した組織のようである。
各地域の前身母体は幾らか異なり、VDPとして組織された時期も異なるようだが、今年はモーゼルザールとプファルツが百周年を祝う。双方のジョイント企画もあるが、特にプファルツは、昨年秋VDPの代表に地元のクリストマン氏が選出されたことで、華やかな様相を呈している。
現在、プファルツで26件の醸造所が選考基準を満たしてここに加盟している。この団体に加盟しているからよいワイン醸造所とは言えないが、所謂高級ワインを上手に作るワイン醸造所は全て加盟している。
そもそも、高級ワインのその基準を時代に合わせて決定して行くのがこの団体であり、その歴代団体幹部となる醸造所の発言権が強いことは外部からでも良く知れる。反対に、その基準に不満がある醸造所は脱退して行き、ドイツワインのメインストリームから外れる事となる。
高級ワインとは、一体何を指すかは、何度もここで繰り返しているので、安易な定義はしないが、消費者であり愛好家である我々は、その現在の方針による成果を厳しく審査して、購買を決定して行けばよい。この団体以外のワインが高級と思う者もあれば、高級よりも美味いワインがあると思えばそれを購入すればよいだけである。
ただし、こうした名門が集まった指導的な団体の方針と外れ、独自に主張をして行くことはやはり難しく、ロビー団体でもあるVDPの方針は法制上も尊重されるものである。例えば、EU議会で見送られた、加糖によるアルコール度の水増しの禁止法案などはこうした団体の高品質のワインには殆ど影響がないかも知れないが、一般のモーゼルやアール周辺などのワイン農家にとっては死活の問題であったことも事実であろう。
その意味からもVDP加盟の醸造所はエリート中のエリートであって、ワイン産地の地元でもスーパー買いをする一般消費者にとっては縁遠い存在かも知れない。現時点で、リースリングワインなら最低一本5ユーロは支払わないと買えないからだ。すると、通常のレストランではグラス一杯がこの価格以上になり高くてなかなか飲めない。
さてその品質や哲学は、前任者の不凍液混入スキャンダルで傷ついたドイツワインの名を救済したナーエのカトリックのプリンツ・ツー・ザウル氏に代わって、プロテスタントのクリストマン氏が代表に就任して、それを継続しながらもよりバイオ農業への集中が予想されていることは、ここでも取り上げた。具体的には、今後その最低基準が何処まで底上げされるかにあるかも知れない。
コンセプトでもタクティクスでもないが、これはドイツワインの商品イメージとしての前者でもあり、世界市場を狙った後者でもあるのは断わるまでもない。そうして、アメリカ大陸のコーラワインとの差異を明らかにして行くのが肝要なのである。そのような事情を旨として、戦後の民主主義的なNPO組織は極端に走ることはありえないのだろう。
その歴史を見ていると1971年の法律改正によって、呼称からも「自然」と言う言葉を使えなくなったのはなるほどと思わせる。伝統的な醸造や葡萄作りは存在しても自然などはありえない。その意味からも土壌を活かすグランクリュ制度を、歴史的な地所の土地の強さに従って、2001年からVDPが独自に導入制定している。所謂、エルステス・ゲヴェックスもしくはグローセス・ゲヴェックスとドイツ語圏以外では受け入れれ難い呼び方を使用して、基本的には辛口のリースリングワインを各々のVDP醸造所のフラッグシップとしてリリースされている。
歴史的に食物連鎖に優れ肥沃な土地であり続けたグランクリュの土壌において、耕地面積あたりの収穫を極力押さえたこのカテゴリーのワインは、二年以上経ってから初めてその真価を発揮するリースリングワインであり、抽出される要素が凝縮しているので十年後にも楽しめる商品価値が設定されている。
これは、過去にスキャンダルがあったような高価なアイスヴァインを筆頭とする甘口のどうしようもないワインの国際評価を払拭する方針としての最高級辛口リースリングの格付けであり、これの評価を持って硫化物の多量混入したVDP以外の醸造所からの質の悪いアイスヴァインなどを早く市場から駆逐してもらいたいものである。
写真は、プファルツの記念年のためのカードである。この写真の人物を二桁特定出来る人は業界人であろう。
追記:懇意の醸造所がこの団体に加盟していないのを発見した。最近は買っていないが規模も比較的大きく名門であってなかなかよいリースリングを醸造している。当然ながら加盟して指導的な立場にいるかと思ったがいなかった。先代を含めてそれほど偏屈の親仁さんにも見えないのだが、一度理由を聞いてみたいものである。しかし、その独自のコンセプトを説明するにはかなりの広報活動が必要になる。謂わばVDPの基準は工業会でのISOみたいなものである。業界団体のガイドラインに乗せるその効用の方が大きいと思うのだが、様々な考え方があるのだろう。確かに、そこのワインは、充分に選ぶ必要があったのも事実である。
参照:
加盟醸造所リスト
VDP-PFALZ
文化的土壌の唯一性 [ マスメディア批評 ] / 2008-01-03
技術信仰における逃げ場 [ 雑感 ] / 2007-11-06
VDPに加盟していない(させてもらえないを含め)醸造所でグローセス・ゲヴェクスの畑を持っているところは、GGを名乗れるんでしょうか?
現在のVDPが目指す方向性は間違ってはいないのでしょうが、善良な弱者をも犠牲にするような強者の論理にならないことを願います。
ちなみにVDPに加盟していない懇意にされているという醸造所はどこですか?
VDP非加盟と言えばフォン・シューベルトも加盟してません。理由はわかりませんが、まぁ今更加盟するメリットもないからでしょうが、一度ちゃんと尋ねてみたいと思っています。
ただこうしたギルドに発するような業界団体が、ロビイストとなり、EUの法制化に対しても発言力を持つことは、下からの民主主義としてとても重要です。それが、上からのものとして加入審査などが映る場合もありえますね。
基準化と明確化は、外部に対しての重要な表示であるので、一醸造所がこれを受け入れられないと言うケースも多いでしょう。しかし、工業のISOと同じで、反発も多いのも想像出来ますし、後記の冊子でも「誰でも自分の子供のようなワインをとやかく言われるのは厭だ」と書いてます。
重要なのはグロバリゼーションから、モーゼルの崖の小さな地所は淘汰される事実予想で、それならば如何に生き残って行くかの選択です。つまり、VDPは神ではない訳で、対応策としての政治なのです。幾らドイツの大臣がブリュッセルでモーゼルの零細農家を護ってくれと叫んでも通らないのです。政治の政治たるところです。
若手醸造家の養成システムも動いていることを付け加えておきます。
VDPに加入していなければGGなど名乗る必要もないでしょう。各々がだから努力しなければいけないのは述べた通りです。