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承前)政府・東電の統合記者会見では今も変わらず毎日嘘が繰り返されている。それをマスメディアは批判的には伝えていないのだろう。明白な嘘は、水素爆発の可能性の予測に関するものだけでなく、特に住民の被曝に関しての政府の見解に明白である。
安定ヨウ素剤への判断に関しての質問に対して、あのような持続的な汚染や当初の強い放射線物質の拡散に関しては予想がつかなかったと回答している。それが被曝して内部被曝の疾病を避けられなくなっている子供たちへの責任逃れの政府の見解なのである。
駐日ドイツ連邦共和国大使シュタンツェル博士が語ったように、当初からドイツ国内での専門家の言説と同じように東京の外交筋では二ヵ月後にテプコが発表したような事故情勢分析がなされていた。つまり、日本政府内での分析も全く同じであったのは自明である。
在京の各国大使館はそれぞれ核の専門となる技官を備えており、ドイツ連邦共和国ですら複数名がそれに従事しており、合衆国などは日本に千名もの核の専門家を配置していると語った。それ以外にもウェスティングハウス社などの専門家が首相官邸につめたことは広く知られている通りである。
要するに事件当時蜂の巣を散らすように逃げ去った外交官などの動きとその根拠となる放射線被曝への分析は正しい日本政府の分析と共通していて、SPIEDIEの分析や気象庁の通常の気象データーを合わせれば詳細な核被曝濃度が情報として政府内で共有されていたのは間違いない。
それにもかかわらず、子供たちへの被曝を避けるための処置は一切なされなかったのが事実である。なるほどチェルノブイリ事故では、ヨウ素剤が多く使われた東欧の諸外国では放射能のチリが届くまでに幾らかの時間があったが、日本政府はその結果を知りえていた訳で、ヨウ素剤の副作用に関しても十分な知見があったことに違いない。未必の故意の加害への審判への証拠は揃っているだろう。政府の事故対応や東電の原発運営は、起こりうる被曝や事故への確からしさや見地から決して想定外ではなかったのである。
ドイツ大使は、改めて福一内でのその被曝量の激しさとしてロボットの故障を挙げて、それが決してカメラの故障やレンズの曇りではなくて、放射能の強さから故障したという恐らく専門家の見解を紹介した。それは恥ずかしながら見落としていていた見解で、技術的に興味を持った。
ライプチッヒの四重奏団への大使館援助などについても話があった。音楽家のアイデアが膨らんで、いつも指導している芸大の生徒たちを伴って、福島などでも演奏会を開こうと名案が出たとき、芸大の教授は生徒たちをそんな危険な場所へは行かせられないと許可をしなかったと裏話を披露した。
芸大教授の判断は至極当然だろう。寧ろ興味深いのはその情報源と見地なのだが、同時にそれを支援した大使には会場から批判的な質問が飛んだ。「どうしてそんな危険な地域にドイツ国民を送り込んだのか?」。
「ミュンヘンよりも大気中の放射能は弱い地域も多く、十分に認識しているので問題ない」と大使は答える。そして、東京への観光を招致するのだ。なるほど、東京のそれと日光などのそれと、仙台のそれとを比較する意味も少なくなってきている。しかし、食物などによる内部被曝はそこでは完全に切り去られている。日本旅行に行って、一体何を食せというのだろう?
多くの日本人は疑心暗鬼から、海外に移住しようとしているとも披露された。要するに情報を持ってそれを分析するだけの知見のある人達と情報をマスメディアに頼るしかないもしくはそれを判断できない人達との情報格差が開いている。食料に関してもチェルノブイリのとき以上に自由市場へと流れた放射能に汚染されたそれは経済力のない国や地域へと自然と流れていく。情報も経済も国境の無い南北問題なのである。外交官とそのパートナーはそこでは必ず持つ者の代表である。
緑の党のトリティン元環境大臣の訪日の話題が上った。質問に答えて、「元大臣は日本に緑の党が無いことを知らなかったようだ」と、その言明の引用をしようとしたが忘れたとした。そのレセプションに招かれた環境運動家についても通常の招待の枠組みで行ったということだった。その説明内容にやはり大使の立場が逆に良く出ていたように感じた。
こうした世界を取り巻く環境を認識すれば誰でも理解できるに違いない。こうした世界のシステムを透視できるようにするためにも緑の党のような市民運動政党が国政で激しい野党として定着しない限り、情報を共有することなど出来ないのである。官僚組織は世界共通でそれに何かを期待するのはそもそも間違っているのである。日本のそれはドイツのそれが手本になっているのだから間違いない。
参照:
イスラム社会の民主化を読む 2011-02-12 | マスメディア批評
死んだ方が良い法秩序 2007-11-21 | 歴史・時事
日本のゴルバチョフへの条件 2011-06-28 | 文学・思想
東電との如何わしいスクラム 2011-06-26 | 歴史・時事
細野補佐官のついた嘘 2011-06-08 | テクニック
彼らの勇気と行動を讃えよう 2011-06-27 | BLOG研究