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習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『陽だまりの彼女』

2013-10-17 21:06:28 | 映画
原作を読んだ時、あのラストの展開はないわ、と思った。ファンタジーですか? そうでしたか。でも、いきなりすぎます。なんてね。そんなふうに、なった。目が点です。驚きモモの木。と言うわけで、もう、ネタばれしているから、僕はこの映画に最初から乗れない。

 知らなかったなら、どんな気分で見られただろうか、とも思うけど、後の祭りだ。しかし、さすが、三木孝浩監督だ。このとんでもなく奇想天外な話を、絶妙な匙加減で見せてくれる。だから、だんだん気にならなくなる。

彼らにとって大切なのは今と言う時間なのだ、この後何が来るかなんて、関係ない。そんな気分にさせてくれる。主役の2人も素晴らしいから、そのうちあのオチなんて気にしなくなる。映画は、重くもなく、軽すぎることもない。

主人公2人のラブストーリーを、自分たちだけで閉じていくから、その時点で既にこれはファンタジーになってしまう。だから、すべてが夢だったと言われても腹は立たない。もちろん、これは夢オチではない。どちらかというと、リアルすぎて、際どいくらいだ。しかし、「リアル恋愛」は、本人たちのファンタジーなのだから、これでよい。反対にこのくらいのほうが、リアルに見える。

原作とは少し変えたラストの処理が月並みなのも、とてもいい。人間の彼女と出会うまでの通過儀礼として、このすべてを描くことで、幸福なハッピーエンドが信じられることになる。『ソラニン』の頃から三木孝浩は一切ぶれない。一貫して若い二人の前に立ちはだかる試練を真摯に描いていく。それは『僕らがいた』2部作だけではなく、『管制塔』も含めて、いつも同じだったから、今回もこの素材なのに、それを貫き、成功させる。

もうひとりの恋愛映画の旗手、新城毅彦の新作も2週間後公開される。こちら(『潔く柔く』)も楽しみだ。まるで三木のデビュー作『ソラニン』のような設定で、死者にこだわり続けることにどれだけの意味があるのか、が描かれるようだ。いつも同じ話だが、そこから無限のラブストーリーが作られていく。それでいい。飽きられることなく、いくつもの物語がこれからも作られていくのだろう。



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