劇団四季はこの台本の上演権を今すぐ買えばどうだろうか。ミュージカルとして改変し、上演したなら、きっと大成功するはずだ。これなら和製ミュージカルで、世界に向けて発信することも可能だろう。ブロードウエイでのロングランも夢ではない。
冗談抜きで、とてもよく出来た作品だと思う。2時間以上の大作なのだが、その上演時間を飽きさせることはない。堂々たる作品である。脚本はこれが長編は初めてらしい松本高誌さん . . . 本文を読む
まさか『ターミネーター』を見て泣かされるとは、思いもしなかった。映画の終盤スカイネットに単身乗り込み、カイル少年を助けるサイボーグ・ターミネーターであるマーカス。彼が自分はスカイネットに利用されていただけだと知り、それでも人間としての矜持を守り戦う姿に感動した。
25年の歳月を経て再びターミネーターが今よみがえる。シリーズの最新作というよりも、未来を舞台にしたターミネーターサーガの第1章とい . . . 本文を読む
小劇場の舞台としてはとても広いアイホールを使っているにも関わらず、ほんの少しだが、わざと空間を狭く使っている。はせさんはこの劇場で公演をするときにはいつも空間の広さを最大限に使うような演出をしてきた。基本的には四方囲み舞台だった。だが、今回はそうしない。しかも、天井のライトをかなり下にまで落としているし、舞台の両サイドもいっぱいいっぱいは使わない。背後の壁の奥には、緑の木々が仕込んであるし、客席 . . . 本文を読む
1974年に廃山となった島。炭坑を中心に栄えたこの島は一転廃墟と化す。それから35年。だれも省みることもなかったここに、やってきてコミューンを作る若者たち。かって炭坑の町として栄えた名残がそこここに残る無人島。2つの時間をつないで、新たな歴史が描かれていく。かってここで暮らした人たち。やがて、閉山されるのを待つ時間の中、それでもただ静かに日常生活は続く。自分たちの生活が奪われていく不安を抱え生き . . . 本文を読む
作りたいものを作った。ただ、それだけだ。だが、それだけのことがこんなにも心地よい。全力で作り上げたことの充実感。よくぞ、ここまでやってくれたものだ。この映画を手掛けた齋藤勝監督は初めての映画に戸惑いながら、持てる力の全てを出し切って一世一代の賭けに出た。私財をなげうって、この映画を作った。自主制作の映画が手掛ける題材ではない。中途半端にしたなら、失笑しか生まない。腰を据えて本気で見せてもどれだけ . . . 本文を読む
とてもいやな話だ。いじめによる自殺。同じグループだった女の子たちは事実を隠蔽しようとして、口裏を合わせて黙秘を決め込む。親たちが学校に呼ばれる。だが、彼らもまた自分たちの子供をかばうため、事実を受け入れようとしない。
ディスカッション劇だが、話し合いを通して前向きな解決が引き出されるのではない。泥沼である。事件の核心には迫っていくが、それが何の解決にもならない。子供たちは反省するでもなく、標 . . . 本文を読む
ある島の住民が一夜にして消えた。事件から16年後、生き残った2人の子どもたちは成長し、彼らによる世界を2分する戦いが始まる。なんだかワクワクしないか。「それは神が残した、最後の光」「それは神が堕とした、最悪の闇」この2人による世界の明日を賭けた戦いが始まる、のかと思った。なのに、なんだか中途半端でよくわからない映画になってしまっている。これはいったいどういうことだ?
手塚治虫が残した黙示録を . . . 本文を読む
なんとも不思議な味わいの芝居である。設定自体は最初コメディーなのか、とすら思わせる。だが、実際はそうではない。くすくす笑わせるような芝居にはならない。
いくらなんでもこれは変な男だ。そんな男が主人公である。彼はリヤカーを引いてやってくる。農家が作った野菜を産地直送で販売する、はずなのだ。なのに、彼は売らない。彼には拘りがある。彼が売る野菜のよさを理解できる、そんな納得のいく消費者にしか渡さな . . . 本文を読む
これもゴンドリーの新作同様、ただの趣味の映画だ。ストーリーも突っ込みどころ満載で、それをごまかしごまかし見て行かなくてはならない、というところまでよく似ている。わざとらしい西島秀俊演じる売れない貧乏作家を主人公にしたコメディーだとでも割り切ったら、笑って許せるのかもしれないが、作り手はけっこう真面目に「幻想怪奇もの」みたいなタッチで見せていくから、しかたなく観客である僕も一応シリアスとして応対す . . . 本文を読む
こういうアナログのハンドメイド映画がミシェル・ゴンドリーの得意技なのだけれども、すごく甘くて、緩くて、なんか見てるとだんだん眠くなってしまう。『エターナル・サンシャイン』1本だけの人だったとは、まだ言わないけど、あれだけが突然変異のような傑作で、他はただの趣味の映画の域を出ない。
今回もビデオレンタル屋(DVDではないところも、彼らしい)を舞台にし、この店のすべてのビデオから画像が消えてしま . . . 本文を読む
「くすんでいた毎日が、少しずつ色づいて回りはじめる。」このコピーに心惹かれた。この本を読んだのは正解だったようだ。この短編集には心地よい風が吹いてる。最初の『アンデスの声』を読んだ時、胸がいっぱいになった。このちいさな町から生涯、一歩も(ではないけど、まぁ、ほんとは「ほとんど」くらいだ)出ることもなく、生きて、そして死んでいく。そんな老人の心の中に広がる風景。じっちゃんとばあちゃんとの暮らし。孫 . . . 本文を読む
こういう小説はたくさんある。青春小説で、スポーツを題材にして、高校生の日常を淡々と描く。弓道を題材にしたというのも特別ではない。『武士道シックスティーン』と比較する必要なんてないが、ついつい較べてしまいたくなる。すると圧倒的に物足りない。この小説があまりに淡白だからだ。
余白だらけの作品だ。熱血から程遠い。それが悪いとは言わない。いや、反対にそこがこの作品の魅力だったりする。マイナースポーツ . . . 本文を読む
劇場には観客が5人だ。公開からまだ9日目。ブルク7での上映は1日に3回。しかも夜の回はレイトショーしかない。しかたないから9時40分なんていう回で見ることとなる。『シン・シティー』のフランク・ミラー監督が初めて単独で監督した作品だ。これはぜひ見ておきたい。
『バットマン』の新シリーズ第2弾『ダークナイト』があれだけ評判になった後、この企画で彼があれを超える作品を目指したのは当然のことだろう。 . . . 本文を読む
2時間15分の長尺が、あっという間だった。こんなにも面白い芝居に仕上がるなんて想像もしなかった。従来の青年団の芝居とはまるで違う。それは演出が平田オリザではないからだ、なんて言わさない。たとえ原作が別人であろうとも、台本、演出協力として平田さんの名前があり、青年団の役者たちが出演しているし、オリザさんによるプロデュース作品なのだ。ここには確かな平田さんの企みがある。もちろんそれは演出家の企みでも . . . 本文を読む
昨年の『セチュアンの善人』に続き今年もブレヒトに挑戦した劇団往来の新作。しかも今回は正攻法だ。真正面からこの素材に挑む。とはいえ往来らしい仕掛けはある。現代の日本の政治状況をコントとして挟み込みながら、遠い過去でしかない20世紀初頭の帝政ロシアでのお話を、必ずしも、ただの歴史のお勉強のようには見せたりはしない。しかも、タッチはあくまでも重厚である。
当時の政治状況や、時代背景をきちんと抑えて . . . 本文を読む