隅田清監督の2019年作品だ。今頃Amazonで配信されているのをたまたま見つけた。実は公開時にぜひ見たいと思っていたのだが、地味な公開しかしなかったから見逃していた。彼のデビュー作『ワルボロ』(松田翔太、新垣結衣主演)は東映のよくある〈不良「学園もの」青春映画〉である。『ビーバップハイスクール』が大ヒットしてその何匹目かのドジョウ、安易なB級映画のはず、だった。しかし彼はこれをそんなつまらないバ . . . 本文を読む
ゆっくり休み休み読もう、って思ったけど、やはり2日で読んでしまった。第1章を読んだところで簡単な感想を書いた。(『小鳥とリムジン①』)あの段階で少し先に書いておきたかったからだ。続く第2章で驚きの展開をする。『小鳥の人生』と題されたエピソードは親友だった美船の話でもあり、突然の彼女の自死で幕を閉じる。こんな残酷な話が待ち受けている。もちろん小鳥の話だってあり得ないことだ。子どもがこんな酷い仕打ちを . . . 本文を読む
バルタザール・コルマウクル監督作品。アイスランド映画である。こんな映画が作られたことに驚きわ禁じられない。これは1969年と2020年を往還して描かれるラブストーリー。アイスランドからロンドンへ。コロナでロックダウンが始まる時、50年前の記憶を辿る旅。さらには東京まで。そして広島に。認知症になり薄れゆく記憶の中、大切だった時間、もう一度あの人に会いたいと願う老人のひとり旅。
コロナを描く . . . 本文を読む
香港映画が熱い。記録的大ヒットとなった『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』、『破・地獄』に続いてこの映画である。毎週歴史的大ヒットを記録しただけでなく、映画史に残る傑作の3連発だ。それをこの1ヶ月の間に見ることになった。こんなことはあり得ない。トニー・レオン演じる無一文の男は違法取引から巨万の富を築き、成り上がる。彼の犯罪をなんとかして暴こうとする捜査官のアンディ・ラウ。先日見た『危機航 . . . 本文を読む
ソル・ギョングとチャン・ドンゴンが主演する。それだけで興味深いが、ホ・ジノの新作だからこれを見た。それにしてもこんなに凄い映画だとは思いもしなかったから驚いた。うれしい悲鳴だ。もちろん僕はホ・ジノの映画はもれなくすべて見る。だけど、『八月のクリスマス』を超える映画を期待したわけではない。あれは僕の生涯ベストテンの一作である。あれは若くして死ぬという理不尽な運命を静かに受け入れるアジョシを描く素晴ら . . . 本文を読む
たったひとりの少女が生き抜くための戦いを静かに愛おしむように描く佳篇。久しぶりにしっかり読んだ。丁寧にゆっくり1ページずつ。最近(というか、ここ最近のかなりの歳月)毎日たくさんの本、映画、を読んで、見て、きっと雑にそれらの作品と接していた気がする。芝居は案内が来なくなったのであまり見に行くことがなくなったけど、芝居も。余談だが、今仕事で山田詠美の『晩年の子供』を読んでいる。高2の授業で取り上げられ . . . 本文を読む
このタイトルがいい。カバーの小学校の絵もいい。校舎から校庭を望む。傘立てには2本の傘。夕暮れ。なんだか少し切なくなる。お話はこの絵そのまま。廃校が決まった小学校が舞台となる。北九州の田舎町。そこで暮らす人たち。5つのお話。廃校になるこの学校での最後の秋祭りの1日。描かれるのはそこでのさまざまなドラマ。これも最近よくある短編連作だけど、こういうのが今は読みやすいから読者にも喜ばれるのだろうか。ただ、 . . . 本文を読む
バカリズムの新作はなんと宇宙人がいる日常の日々のスケッチ。富士山の近くにある町を舞台にしてシングルマザーの42歳市川実日子の毎日が描かれる。中学生の娘とふたり暮らし。近くのホテルで働いている。自転車で25分。健康のために自転車通勤してる。だけど今は冬だから寒い。そんなこんなのどうでもいい話から始まる。同僚の54歳、高橋さんという地味なオッサンが宇宙人だと知ることから始まるドラマはまるでそんな衝撃的 . . . 本文を読む
毎年続々と出る小路幸也の新刊。今回は高校生を主人公にしている。いささか趣きを異にする。だけどやはりいつものようにコミュニティのお話を展開する。もちろんそこにはちゃんと世代の異なる大人も混じる。ここは家庭の事情からアルバイトもする高校生たちの集う場所。通称バイト・クラブ。クラブといっても何か特別な活動をしているわけではない。暇な時にここに来て体や心を休めるだけ。オーナーはそんな苦学生にカラオケハウス . . . 本文を読む
コロナ禍の影響から何度となく公開延期を繰り返しあれだけ気合いを入れて作った大作時代劇なのに結局まるで興業的には振るわないまま劇場から去ってしまった前作『峠 最後のサムライ』から2年。小泉堯史監督80歳の最新作である。今回は完成から短いスパンでの公開になった。反対に宣伝が行き届いていないのではないか、という不安もある。地味な映画である。思った以上に小さな話だ。だからよかったと思う。命をつなぐ。ただそ . . . 本文を読む
なんとまだ1月なのに今年3本目の福田雄一監督作品である。(勘違いで2本目)この後城定秀夫監督も一気に3本怒濤の劇場公開というのがあるけど、売れっ子監督は凄い勢いで新作を連発する。大丈夫か、そこまでして、と心配になるけど余計なお世話だろう。(これも勘違いで城定秀夫も2本連続でした。『笑う蟲』と『悪い夏』だけでなく『死に損なった男』も彼の新作だと勘違い)福田雄一は『新解釈三國志』を見てしまった時、呆れ . . . 本文を読む
昨日見たこの芝居が気になって仕方ない。ここに描かれるお話がまるで頭に入ってこなかった。見ながら「大丈夫か、オレ!」って思うくらいに。だから終わった後、久野さんにちゃんとお話できてない。見た直後感想を書いたけど、なんだかなぁという感じ。(余談だが、最近ますます時間があるから、しかもスマホで書くから、帰りの電車や近くの喫茶店でコーヒーでも飲みながらすぐにこのブログを書いてしまう。だから感想が感情的にな . . . 本文を読む
昨日『敵』を見た後、凄く不快で、あれってなんだろうか、と考えた。醜悪だと思った。そして、僕は渡辺儀助に感情移入しすぎていたのだと気づく。77歳の老人に12年後の自分を重ねて、こんな老残はあり得ないとひとり憤慨していた。感情的になりすぎていたのだ。冷静になって映画を見ていない。情けない話だ。だけど、たまたま最近高齢者の仲間入りを果たして少しテンションが上がっていた。まだ以前とまるで変わらないのに調子 . . . 本文を読む
『ここはどこかの窓のそと』の続編というわけではない(らしい)。もともと久野さんは前作の再演を考えていたようだが、前作を下敷きにした新作書き下ろしとなった。円と線のお話から始まる。秋と冬の境目のお話が続く。最後には二つの五角形の角が取れたら円になる話に。結局よくわからないお話を熱く語る人たちのお話。舞台美術が素敵だ。シンプルだけど、心地よい。舞台中央のドラム缶焼却炉からは、ずっと煙が上がっている。木 . . . 本文を読む
吉田大八監督の新作である。東京国際映画祭でグランプリを始め最優秀監督賞、主演男優賞の三冠を獲得した。モノクロの映像が美しい。そこにひっそりと存在する老人。ひとり暮らしの平穏な日々のスケッチ。70代の後半になる。後期高齢者である。長塚京三が演じる。久しぶりの映画ではないか。しかも主演である。12年ぶりの映画主演らしいが、彼が主演した作品なら僕はダントツで『恋と花火と観覧車』が好き。渡辺儀助77歳、妻 . . . 本文を読む