久々に藤原新也を読む。しかも小説だ。今は新刊しか読まない日々が続いているけど、これは2017年の出版。手にとったのはいつものようにたまたまだ。図書館でたまたまこの本を見かけて、「最近藤原新也を読んでないけど、」と思い、「じゃぁ、」と借りてきた。
藤原新也が好きだった。最初に読んだのは『全東洋街道』だ。そして、続いて当時出版されたばかりの『東京漂流』。この2冊の衝撃はまだ20歳だった僕には強烈だっ . . . 本文を読む
三池崇史監督の最新作。デビューからずっと彼の作品は見ている。過激な描写だけではなく、そこには思いもしない驚きが隠されている。だから好きだった。でも、多作ゆえそこにはとんでもない作品も多い。今も相変わらず量産しているけど、最近はシリーズ物や、なんだかセルフリメイクのような作品ばかりで、新機軸はない。さすがに飽きてきた。
今回もシリーズの第3作で完結編ということだ。生田斗真主演、宮藤官九郎脚本、三池 . . . 本文を読む
これは2020年に創立25周年を迎えた葛城市の市民劇団「くすのき」の記念公演だ。ほんとうならたくさんの観客を迎えて大々的に上演したであろうはずが、コロナのため関係者のみの無観客での公演になった、らしい。今回の公演は、その3月に公演された作品の映像上演である。「25周年記念公演スクリーン上映会」と銘打たれた改めての一般観客へのお披露目公演だ。
evkkの外輪能隆は、この10年ほど、この市民劇団の公 . . . 本文を読む
コンスタンスに作品作りを続ける入江悠監督の最新作だ。『シュシュの娘』は未見だが、その前の大作『AI崩壊』にはガッカリした。だけど今回は、前川知大(「劇団イキウメ」)による同名舞台の映画化である。しかもわざわざ韓国を舞台にして、繰り広げられる。この不思議な出来事をどういうふうに見せてくれるのか。ただのホラーにはならないはずと期待した。
最初は、それなりにワクワクさせられた。何が起きるのか、つかみど . . . 本文を読む
短編『おいしい家族』を長編にした同名作品で本格デビューし、さらにはあの『君が世界のはじまり』を撮ったふくだももこ監督の最新作だ。彼女が自分と同世代の女性たちを主人公して今を生きる女性たちの姿を描く作品である。これを見逃すわけにはいかない。すでに目にした批評では、なんだか評判がよくないみたいで、それってどういうことかと気になっていた。だからさっさと自分の目で確かめたい。
30代後半にさしかかった3 . . . 本文を読む
帯には芥川賞候補作とある。それだけで僕は偏見の目で見てしまうそうになる。芥川賞受賞作は独りよがりの作品が多くてつまらない。この作品もそんな小説なら嫌だな、と思い手に取る。まだ若い作家による初めての小説らしい。震災を扱うというのも、どうだかなぁ、と思ったが、読み始めて、驚く。とてもいい。
短いいくつものエピソードが時系列で並ぶ。2011年から2021年までの10年間、彼女の見たこと、感じたこと、出 . . . 本文を読む
なんとも懐かしい田中守幸作品だ。25年ぶりの再演となる。劇団往来としての公演も見ているし、展覧会のAでも(上演していたら、だが)見ているかもしれない。これは小劇場空間での芝居にぴったりの作品だ。でも、これをすさまじい人数のキャストを総動員して贈る。ザ・ブロードキャストショウの15周年記念公演である。
演出はもちろん往来の鈴木健之亮。今、このコロナ禍で、狭い空間での大人数のキャストでの芝居はNGに . . . 本文を読む
夢のようなお話だ。でも、これは実話である。日本画の常識を覆すような大胆な作品を作り、画壇に認められた女流画家、片岡球子の生涯を描く。こんなにも心地よい芝居を見ることができてうれしい。100分間の至福だった。
これは「あきらめないで頑張り続けると努力は実る」とかいうようなお話ではない。ここには評伝劇にありがちなそんな苦難のドラマはない。でも、だからといって彼女がノーテンキにただ好きな絵を描いてきた . . . 本文を読む
劇団大阪らしい作品で、まじめで正直。とても気持ちのいい作品に仕上がっていた。だけど、それはあまりに直球すぎて、見ていて少ししんどいところもある。痛し痒しだ。見る前僕はこれはもっとコミカルな作品なのかと勝手に想像していた。笑っているうちにやがて背筋がゾッとしてくる、という感じ、を。でも、そうではなかった。この芝居は観客である我々の胸のド真ん中に差し込んでくる。ドストライクなのである。
主人公の上田 . . . 本文を読む
ここ数本、つまらない映画ばかり見ている。あまりに残念過ぎて、もう映画館で映画を見るのはしばらくお休みしようかと思ったほどだ。しかも、ネット配信の新作映画には当たりが多い。劇場よりTVで見ていたほうがいい、となりそうだ。でも、それはもちろん間違いである。自分がわざとそういう可能性のある映画ばかりにチャレンジしただけで、ふつうに選べばいい映画はたくさん公開されているからだ。そこで、今回はあえて安全圏で . . . 本文を読む
デパートの大食堂の思い出は、同じようにデパートの屋上遊園地の記憶と連動している。幼い日の大切な思い出である。先に大阪に出てきていた父親と再会したのは、難波の高島屋の屋上だった。まだ3歳か、4歳くらいのことで、はっきりとは憶えていない。昭和30年代の後半のことだ。写真が残っていて、それを見たらぼんやりと確かにそういうことがあったような気になる。ようやく父の仕事が軌道に乗り、徳島から呼び出された母親と . . . 本文を読む
途中休憩をはさんで2時間、それでも弛緩することなく緊張感を持続させる。いや、それどころかその5分の休憩が緩衝材になる。コロナ対策のための喚起休憩が作品の勢いを削ぐことなく、この緊張を和らげることになるのである。これをもし2時間休憩なしで一気に見せたなら観客の方が息切れしてしまうのではないかと思うほど、重くて、キツイ芝居だ。でも、役者たちが実に上手いから、最後までこの張り詰めた緊張は持続する。見事だ . . . 本文を読む
恒例になった『わらわら草紙』の最新作だ。今回は3話構成で、80分。毎回のことだが、個性豊かな作家たちが頑なに自分たちの世界をおなじみの役者たちを使って自由自在に見せていく短編連作。もちろん、各作品にはまるで共通項はない。神原さんの世界を踏襲する気なんてさらさらないのがいい。彼女もそんなことは望んではいないし。もちろん神原さんもいつも通り、好きなように自分の世界を見せる。それでいい。そんな潔さが心地 . . . 本文を読む
金子修介監督の久々の新作である。もちろん久々と言いつつも実は何本も公開されている。でも、僕はもう見ていない。それだけなのだけど、実はそれだけではない。21世紀に入って小さい規模の彼らしくない映画はたくさん作られている。でも、それはまるで彼らしくはない映画ばかりだ。きっと自分の企画ではないのだろう。与えられたものを引き受けただけ。そんな気がする。僕は自由に彼らしい映画を見たい。だから、がっかりしたく . . . 本文を読む
これにはがっかりした。それほど凄い映画を期待したわけではないのだから、ハードルは低いのだ。なのに、ここまでダメな映画を見せられることになるとは思いもしなかった。『エターナルズ』以上にがっかりである。監督は『ボーン・アイデンティティー』のダグ・リーマンである。彼はトム・クルーズ主演のSF大作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』だって手掛けている。このジャンルの映画ならエキスパートのはずなのだ。どちら . . . 本文を読む