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映画・演劇のレビュー

オリゴ党『ばいなら』

2023-09-30 16:58:00 | 演劇
30周年を迎えた記念大作の後、今回は少し地味目な作品に挑むオリゴの最新作。いかにもの岩橋さんらしい芝居で、話は曖昧で何を描こうとしているのかが、なかなか見えてこない作品。だからイライラさせられた人も多いのではないか。一応、「過疎化した田舎町、打ち捨てられた古民家カフェを舞台にして、町民たちの奮闘を描く」ということにはなっている。彼らはアイドルを招聘してイベントを行い町起こしを図り、移住者を呼び込も . . . 本文を読む
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辻村深月『この夏の星を見る』

2023-09-30 08:50:00 | その他
昨夜は名月で、きれいな満月を楽しめた。TVでは次は7年後とか言ってたけど、7年くらいならまだ生きているから見ることが可能だろう。  たまたまこの本を昨夜から読み始めた。2020年の夏のお話である。コロナ元年だ。今、すべてを奪われたあの年の物語を綴る小説が大挙して出版されている。僕たちはあの年感じたことは忘れてはならないだろう。先日の川上弘美に続いて今回は辻村深月。500ページに渡らんと . . . 本文を読む
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『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う』

2023-09-29 17:00:00 | 映画
福田雄一監督最新作。あきれるくらいにバカバカしい設定がいかにも彼らしい。全く期待することなく、まぁNetflixオリジナル映画だし、橋本環奈が赤ずきんちゃんだし、で何も考えずに見始めたが、5分で「これはダメだわ、」と思う。何度となく、やめるためにリモコンを手にして止めたけど、勇気がなくて、また続きを見てしまった。僕は自分が見たいと思って見始めた映画を途中で止めることが出来ないのだ。結局どこにこの話 . . . 本文を読む
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『伯爵』

2023-09-28 18:42:00 | 映画
地味なモノクロ映画だった。Netflixの新作で、配信がスタートしたところ。スペイン映画でノースターで監督も知らない人。このそっけないタイトル。アート映画かと思ったら、内容は吸血鬼の話みたい。なんとなく心惹かれて見始めたけど、延々とナレーションが続いてなかなかストーリーに入り込めない。おぞましいホラーではなく、静かな映画。   だが、本題に入るとこれが実に面白いのだ。これは思いがけな . . . 本文を読む
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『沈黙の艦隊』

2023-09-28 12:49:33 | 映画
監督は『ハケンアニメ!』の吉野耕平。まだキャリアも浅い若手監督にこれだけの大作映画を任せるのは冒険だ。このプロデューサーの大英断を支持したい。だいたいこの企画自体がそれだけで大冒険なのだけど。出来上がった映画は期待通りの出来で満足した。いきなりのラストもあれはあれでいい。その先は観客の想像に任せる。2時間以内という上映時間に収めたのもいい。ムダはなく、スリム。だけど、見せるべきところはしっかり見せ . . . 本文を読む
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葦原かも『どんなイチゴも、みんなかわいい』他2冊

2023-09-28 12:34:57 | その他
今月の児童書は3冊。イチゴが大好きだからこの本を手に取った。ここには特別なことは何もない。どこにでもいる小3の女の子の日常スケッチだ。彼女にとっての大きな出来事(学芸会、ダンス発表会、学校の屋根裏散歩)もあるが、それも事件やイベント自体はほとんど描かれない。その前のきっかけの部分だけでお話を止めて、次につなぐ。これはなかなかうまいスタイルだ。きっかけさえちゃんと描けたなら、結果はついてくるから、そ . . . 本文を読む
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『ガメラ リバース GAMERA -Rebirth-』

2023-09-28 10:48:00 | 映画
Netflixのオリジナルシリーズ。全6話からなるアニメーション。アニメ版の劇場用映画『ゴジラ』3部作を手掛けた瀬下監督作品なので期待した。  50分前後の6話だからスケールとしては2時間半くらいの映画2本分くらいの長さだが、1話ごとに一応独立するエピソードに仕立て上げられている連続ドラマスタイル。   子どもたちを主人公にした「ひと夏の冒険もの」になっている。なぜ子ども . . . 本文を読む
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川上弘美『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』

2023-09-28 07:51:00 | その他
このわけのわからないタイトルそのままのつかみどころのない小説だ。最初は何を読んでいるやら、とかなり戸惑ってしまったけど、だんだん慣れてくる。そうするとこのまったりとした世界はそれなりに心地よい。ようやくいつもの川上弘美だと安心する。100ページくらいまでかかった。   幼稚園の頃、カリフォルニアで過ごした。その後、東京に戻って50年ほど。もうすぐ60になる3人の再会からの交流が描かれ . . . 本文を読む
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『グランツーリスモ』

2023-09-27 07:53:00 | 映画
偶然見ることになったのだが、これがなかなかいい映画だった。なんと監督は『第九地区』のニール・ブロムカンプだ。(脚本は『アメリカン・スナイパー』などのジェイソン・ホール)彼の映画だと知っていたなら、最初から見る映画リストに入れていた。チラシを見ると監督名はどこにも書いてなかった。(後でしっかり見たら裏に目立たないように書かれてあったが)それにも驚いた。敢えて隠していたのか。じゃぁその意図はなんだ? . . . 本文を読む
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窪美澄『ルミネッセンス』

2023-09-26 14:25:00 | その他
昨日『二周目の恋』を読み終えたが、その最後のエピソードが窪美澄だった。海辺の別荘を舞台にした女同士の恋愛小説。その延長というわけじゃないけど、彼女の最新短編集を続けて読む。 同じように心に沁みる。町の片隅でひっそりと生きる孤独な人たちがそこには描かれる。女子校の数学教師。50代の主婦。いずれも何の夢もなく生きているだけ。3つ目は再会したふたりの恋。さらには虐めに遭う中学生、ここに移り住んできた3 . . . 本文を読む
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『ダンサー・イン・Paris』

2023-09-25 14:54:00 | 映画
セドリック・クラピッシュ監督の新作がやってきた。同世代のデプレシャンの新作と同時時期に公開されるなんてなんだか嬉しいので、同じ日に見てきた。同時期に一世を風靡したフランス映画の新鋭監督だったふたりが今もコンスタンスに活動を続けているのだ。ふたりは僕とも同世代で60代になる。 クラピッシュは『猫が行方不明』がたぶん最初だ。それから日本で公開された映画はすべて見ている。(デプレシャンは『そして僕は恋 . . . 本文を読む
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『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』

2023-09-25 14:45:00 | 映画
アルノー・デプレシャン監督の久々の新作だ。何の前置きもなく説明はないまま始まる。どんどん話は進む。いがみ合うふたり。何があつたらここまで敵対心を持てるとか、と思うくらいにいがみ合う。どうしてこんなに険悪な関係になったのかはわけがわからない。映画を見ていたらやがてはわかるのだろうと思うけど、なかなか答えは出ない。わからないまま話は進む。それにしてもいくらなんでもこれは酷い。決定的な何かがなくてはここ . . . 本文を読む
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projectおふざけチャン『金羊毛と陰謀論』

2023-09-24 13:28:00 | 演劇
初めて見る劇団だ。いつものことだが、ドキドキする。先日見させていただいた「でめきん」のメンバーも参加している。劇団としては4年振りの公演となるらしい。ちょうどコロナ禍に入り公演が出来ない日々を経ての今回の公演なのだろう。満を持しての公演だ。気合いが入っている。舞台からは作り手の想いがしっかり伝わってくる。90分を全力で駆け抜けていく。  眠れない男がいる。羊を数えて夜を明かす。30万匹 . . . 本文を読む
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『二周目の恋』

2023-09-24 09:30:00 | その他
7人の女性作家たちによる恋愛小説アンソロジー。タイトルにあるように最初の恋ではなく、二周目の恋。二度目の恋でもない。いつもの作家だけではなく、初めての方もふたりいる。その初めての作家の作品がとてもいいから、またご贔屓が増える。   まず、波木銅の『フェイクファー』がいい。金子由里奈監督の『ぬいぐるみとしやべる人はやさしい』と連動してリンクするような作品。(読んでから調べたら、この作家 . . . 本文を読む
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延江浩『J』

2023-09-24 08:20:00 | その他
瀬戸内寂聴の最期の愛人だった男の告白。敢えて彼女のことをJと記載することで、ある種のフィクションを加味したことにする。ノンフィクションじゃない。小説だとアピールする。まぁ、あまり気にしないようだけど。作家は(延江浩でなくてもいい)は母袋(語り部であるJの愛人)の話に耳を傾けながら、Jのこれまでの軌跡も追いかける。85歳の彼女と母袋が出会ったのは37歳の頃。それからの数年間が描かれる。   . . . 本文を読む
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