園子温がこんなタイプの映画を作るなんて誰も思いもしなかったろう。だいたい本人だって作っていながら、そんな自分に驚いているはずだ。これは、ありえない。だが、そんな映画が作られてしまった。それも事実で、しかもこの思いがけない映画が、予想に反してこんなにも感動的で泣かされるだなんて思いもしなかった。
確信犯的なものではなく、題材と向き合っていくうちに自然とこういう映画が作られることとなった、らしい . . . 本文を読む
角田光代が旅した世界中のいくつもの場所で、その時その時に感じたいくつものこと、それが書かれてあるエッセイ集。昨年僕が一番感動した本、星野博美『愚か者、中国をゆく』に角田さんが触れているのもうれしかった。この2冊に共通するものが僕の感じる旅のスタンスだ。
だから、この本を読んでいて無性に旅がしたくなった。忙しいから、という理由でもう1年以上どこにも行ってない。昨年夏の長崎以来、国内にも行ってな . . . 本文を読む
なんだかとってもうれしい気分になれた。佐藤信介監督による初のアニメ映画なのだが、こういう一見子供向けの映画でもいつもの彼の世界観がちゃんと継承されていて、見ていてこれはとてもいい気分だ。なつかしい風景が無機質なCGで描かれる。それが当然最初は違和感を与える。だが、だんだん快感に変化していく。その計算された変貌ぶりは実に見事だ。それはビジュアルだけの問題ではない。ストーリーの作り方も含めてだ。
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昨年の『100年トランク』の姉妹編になっている。モノトーンで静かな芝居だ。前作が100年という長い時間を描いたことに対して、今回は1夜という短い時間を描く。この対比は意図的だ。スピンオフの『トランク5部作』を含めると7時間近くにもなる前作と違い、今回は90分足らずの長さだ。あっと言う間の出来事である。この一瞬のお話は、前作の描いたことと見事に符合する。セットにして見ると、樋口さんと池田さんが目指 . . . 本文を読む
とてもよく出来た映画に仕上がっていた。世紀の大イベントでもある『20世紀少年』の完結編である。3部作として構想され2年かけて上映させる。60億とかいう日本映画史上最高最大のスケールで作られて、しかも大ヒットした。日本テレビが総力をあげて作り、最高の形で公開する。現状の興行形態だからこそ成立した映画であろう。投資に見合うだけの、というかそれ以上の利益をしっかり生む。すごいことだ。ハイリスク、ハイリ . . . 本文を読む
ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ウソン3大スター共演で韓国では大ヒットを記録したアクション大作がようやくの日本公開である。大阪ではなんとなんばTOHOで上映させる。しかも1番スクリーンである。絶対2週目からは小さな劇場に移されるのは必至なので、無理して公開初日に劇場に駆けつけた。最近はシネコンのせいで、映画は封切られたらすぐに行かなくては見れなくなる。しかも条件がどんどん悪くなる。なんだか . . . 本文を読む
池田千尋監督の第1回監督作。まだ27歳の女の子が作った映画だ。でもこんなにも堂々たる作品で劇場映画にデビューした。凄い。なんでもない映画なのになんだか風格さえ感じさせる。わざと粗い粒子の画像を採用し、このなんとも懐かしく不思議な世界を描いた。
だいたいあのおんぼろアパートってなんだろうか。今時あんな家どこにもない。現代から見放されたような場所で、偶然から3人の男女が(と、いっても3人は別々の . . . 本文を読む
もういいかげんこういう優しいだけのお話はやめてくれ、と思う。なのに重松清はまたやってくれる。厭なら読まなければいい。なのに、やはり読んでしまう。そしてやっぱり泣いてしまう。恥ずかしいよ。正直言って。嵌まるのではない。断じて。ただ、どこまでも優しいその世界に浸っていると、なんだか心地よい。だから、やめられない。
1歳半の時に母親を亡くしてしまった女の子(というか、そのときはまだ赤ちゃんですが) . . . 本文を読む
横浜聡子監督が『ウルトラ・ミラクル・ラブストーリー』に先駆けて放った凄い映画がこれだ。このただの自主映画!からすべては始まったのだ。まぁ、そんなこともう誰もが知ってることだろう。今頃この映画を見て興奮するなんて、大人げないからしない。
それに正直言うとそんなに興奮しなかった。もう十分情報が入っていたから驚けなかったのだ。それってほんとは残念な話だ。ただ、今見たから言えることは確かにある。その . . . 本文を読む
林慎一郎さんが6月の『後ろ前の子供』に続いて連続で放つ新作だ。三枝希望さんの戯曲を彼が自分なりの料理した前作もよかったが、やはり自分のフィールドに戻り、自分目線で放つ彼の作品は面白い。自由自在に個人的な感傷をこんなにも客観的でクールなタッチで綴る。
自分の両親を題材にして、でもあくまでもプライベートな作品にはしない。この距離感こそが彼の持ち味だ。敢えて両親には取材しなかったらしい。あくまでも . . . 本文を読む
この手のハリウッドのアクション映画はもう食傷気味だ。ほんとなら絶対見ない。だが、監督の名前を見て驚いた。あの『ツォツイ』を撮った南アフリカの新鋭ギャヴィン・フッドなのである。なにかの間違いではないか、と自分の目を疑ったが、間違いない。彼である。彼がハリウッドに招かれて撮ったのがこの映画なのだ。そうとわかると、俄然興味が湧いてきた。このなんでもないアクションが、もしかしたら驚天動地の傑作になるので . . . 本文を読む
若手公演である。主宰者である寺田夢酔さんは今回は製作総指揮にまわって、普段は舞台監督の奥田宏人さんが久々に作、演出を手掛ける。実に刺激的な舞台だ。いつものよろずやとはまるで違うタッチで、役者たちも普段と違う緊張感の中で、実にいい芝居を見せる。
芝居自身はかなり微妙だ。ひとりよがりスレスレのところで、提示される『今』という時代の気分が、3つの物語を通して描かれる。それぞれの話が錯綜する中で、8 . . . 本文を読む
なぜアニメーションでの映画化なのだろうか。この企画を映像化する上でアニメである必然性は全然ない。それどころかアニメで描くことのデメリットのほうが大きいはずだ。製作費もかかるし、リアリティーに於いても実写には遠く及ばない。なのに、敢えてアニメにこだわる。
2002年から2003年渋谷を舞台に、田舎から上京してきた少女が路上でライブ活動を繰り広げる。それをサポートした学生たちとの交流と友情との物 . . . 本文を読む
NASAが秘蔵してきた貴重なフィルムを大放出して、それをもとになぜかBBCが作ったという映画。だからこれはアメリカ映画ではなく、イギリス映画で、そこになんとなく心ひかれた。アメリカの行け行けムード漂う映画なら、あまり見たいとは思わなかったが、なぜイギリス人の若い監督がこの企画を引き受け、何を目指したのか。そこが僕の興味の争点だ。
だいたいこの映画のスタートは監督が生まれる以前の話である。彼が . . . 本文を読む
今回の仮面ライダーはなかなか豪華だ。平成ライダーシリーズ10周年記念作品らしい。とはいえ相変わらずの夏の定番枠で作られた作品なので、上映時間は1時間そこそこ。だが、話の展開に無理がなく、おもしろい。平成ライダーだけではなく、昭和ライダーも総出演で、しかもタイトルにあるようにショッカーが復活!これって、オールドファンのための映画にもなっている。
TVのディケイドは見たことがないから、全然話は知 . . . 本文を読む