野田秀樹のオリジナルは大竹しのぶによる1人芝居なのだそうだが、今回evkkはそれを2人芝居として再構成した。(3パターン用意してオリジナルに忠実な1人芝居ヴァージョンもある)僕が見たのは宮下牧恵が主役を務める2人芝居ヴァージョン。
実にシンプルで美しい、いつもながらのevkkなのだが、野田戯曲なので、膨大な台詞がある。こんなにもストーリーラインが前面に出たevkk . . . 本文を読む
若手劇団の芝居を見る楽しみは、彼らが何を目指し、何を伝えようとしているのかを知ることにある。そういう目的意識が明確な芝居だったとき、それがたとえ拙かったとしても、満足できる。大切なことは、何が出来たか、ではなく、何を目指したか、にある。表現のレベルが想いには届かないもどかしさすら、そこでは作品の力になる。若さの特権だ。そして、そういう意味でもこの作品は見てよかった、と思える。
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最初の30分ほどを見逃したけど、大丈夫。これはどこから見たって楽しめる、そんな芝居になっている。野外で上演され、たまたま通りがかった人が、何となく、足を止め、見入る。なんだか、不思議な光景がそこにある。なんだ、なんだ、と見続ける。なんかおもしろくて、ついつい最後まで見ちゃった、と。そんなふうに作ってあるからだ。
大阪は夏の夜の公演で、今年も楽市が見られる幸福に酔う。シンプルな . . . 本文を読む
これは実に久々のヘルツウォーク映画なのだ。そして、取りあえずは、なんとかヘルツウォークらしい映画でホッとした。もちろん、ほんとうは、もっと気狂いみたいな映画を期待したけど、さすがにそういうものはもう作らない(作れない)のだ、と残念に思う。主人公はニコール・キッドマンだし、普通の商業映画のようだし。
前半は退屈だった。テンポも緩やかで、女版『アラビアのロレンス』(ロレンスも出て . . . 本文を読む
たった81分の映画なのだが、この濃密さ。テンポが早いから、一瞬も目が離せない。情報量は多いわけではないけど、登場人物が多いから、ひとりひとりの短い描写からいろんなことを理解しなくてはならない。覚えきれないよ、だいたい誰が誰でどうした、ということもわからない。10人以上の主要人物が11分間の中で右往左往する。そうなのだ。この映画はある日の午後5時から5時11分までの出来事が描かれる。事件はそのラスト . . . 本文を読む
『コップ・カー』のジョン・ワッツがスパイダーマンを手掛けたらこんなふうになったのか。確かに悪くはない。この起用は成功だ。軽いノリで楽しめる映画になった。しかし、まだ、このレベルでは納得はいかない、というのも事実だろう。確かに今までの「ヒーローもの」とは一線を画す。でも、ノーランの『ダークナイト』を見た時のような衝撃はない。だってこれはよくある「青春(もの)映画」でしかない。ハイスク . . . 本文を読む
原作となったアニメ映画をそのまま実写化する意味って、どこにあるのか。これは実写ですればいいようなことをあえてアニメでした映画だった。でも、それが結果的に、アニメならではのストーリー展開をする映画になっていた。だからこれはそのままでは実写映画として成り立たない。そんなことは重々承知の上で、それでもこれをする意味、それが知りたいと思い見たのだが、結果は実に残念だった。
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三池崇史はなぜ、この映画を引き受けたのだろうか。もちろん、何でもありの彼だから、オファーされたら、蹴ったりはしないだけ、なのかもしれないけど、もういい加減この手のマンガは飽きてないか。なんでもする。そこにそれなりの面白さを見出して、楽しもうとする。その姿勢を崩さないのは立派だ、けれども、観客である僕らは、さすがにもう飽きてしまった。
まず、この映画のストーリーに全く興味をひかれな . . . 本文を読む
こういうちょっと不思議なラブコメディ(みたいなもの)をベルギー映画は得意だ。(と、偉そうに書いたけど、実はこれはオランダ映画らしい)平気な顔してありえないようなことをやってくれる。現実の世界の中で平気の屁でやる。まるで当たり前のように描かれる。自殺幇助の会社。幸せにあの世への旅を提供する。そんな事業が現実世界でに成立するわけはないけど、ベルギーならあり得るみたいだ。社長は父親で4人兄弟がサポートす . . . 本文を読む
これは渾身の力作である。今時、こんな芝居は誰も作らない、という芝居を作り続けた異才、大竹野正典の息子である大竹野春生の新作。父親と比べられるのは嫌だろうけど、この作品を見た以上、ぜひ比較したくなる。大竹野がずっとこだわり続けた家族の話に、今回大竹野春生は挑戦した。そして、そこには父親にはなかった視点がある。
大竹野春生は自分にしか書けないものを書く。そこになんの遠慮がいるだろうか . . . 本文を読む
番外編である。昭和40年代を舞台にして、今回は我南人と秋実さんの出会いを中心にしてワンエピソードで見せる。お話はいつも通り、よく出来すぎていて、嘘クサいところもあるけど、でも、なんとも心地よいから、素直に騙されようと思えられる。そして、幸せな気分になれる。こんなふうにしてあのふたりが出会ってやがて、結婚するのか、と。まだ40代の勘一さんや、何より我南人が20過ぎで、秋実さんは高校生 . . . 本文を読む
近未来の架空の国(といっても、充分、日本だけど)を舞台にしたコメディ。戦争が終わって荒廃した国を復興させるためにひとりのアイドルが奮闘する。戦後の何もない焼け跡から生まれた歌。山崎モモエは、山口百恵ではなく美空ひばりがモデルになるべきだろうが、さすがにそれはない。
アイドルとテロを中心に据えて、今の日本にむけての皮肉が描かれる。アイドルを作ることが . . . 本文を読む
1950年代、アイルランドからニューヨークにひとりやってきた女の子を主人公にして、彼女がたったひとりでブルックリンの町で生き抜いていく姿を描く。最初はなかなか上手くいかないし、寂しかったけど、だんだんここに自分の居場所を確保していく。彼女が確かにここで生きていく勇気と力を身につけていく過程が丁寧に描かれていて、スクリーンから目が離せない。(DVDで見たからスクリーンじゃないけど)
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『パワーレンジャー』を見た。これだけの大作なのに、まるでお客が入っていない。本国ではそれなりにヒットしたようだが、日本では難しいようだ。東映の「戦隊もの」が原作である。それがアメリカに渡り、25年。製作費120億の超大作映画として、よみがえった。前半はまるで青春映画のようなタッチで5人の男女の姿が描かれていく。彼ら5人のお話がちゃんと描かれていて、そこから不思議な力を手にした彼らがその能力を磨いて . . . 本文を読む
浜辺美波の演じた少女の姿が目に焼き付いて離れない。たった1年間に満たない最期の時間を、風のように駆け抜けていった姿が。
原作を読んでいたから、ちゃんと知っていたはずなのに、そのいきなりの退場に衝撃を受けるのは、主人公の少年と同じようにまだ今は「彼女が死なない」と、その瞬間は信じたからだ。それくらいに彼女は強い。彼女の強さに引っ張られるようにして、ひとりでいることが . . . 本文を読む