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映画・演劇のレビュー

オフィースコットーネ『山の声』

2019-05-31 21:13:34 | 演劇
  久々に見る『山の声』が以前ほどの輝きを感じさせないのはなぜだろうか。後半、アイホールの広い舞台いっぱいに、怒濤のような雪を降らせて驚かせるにもかかわらず、である。 主人公であるふたり(というか、これは2人芝居だけど)の芝居がルーティンワークに見えてしまったのは、僕だけか? 今まで何度となくこの作品を見ているから、新鮮な気持ちで舞台と向き合えなかったのかもしれないが、この芝居を初め . . . 本文を読む
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「冠」~Kan~『痒み』

2019-05-31 21:08:18 | 演劇
久しぶりに小劇場演劇ならではの魅力に富んだ芝居を見た。ここには小さな空間だからこその興奮と感動がある。よくわからないけど、引き込まれ、ドキドキしながら見守る。そしてラストまで一気に引き込まれていく。    「フツー」の大学の七人の女子大生たち。写真サークルの卒業展の準備。メンバーのひとりが失踪する。それから10年。毎年恒例のサークルのメンバーによる定例食事会(同窓会ですね) . . . 本文を読む
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『ここは退屈迎えに来て』

2019-05-31 20:57:32 | 映画
  昨年の秋に公開された廣木隆一監督作品。このささやかな映画がとても素晴らしい。なんでもないお話なのだ。だけど彼らが抱える痛みが胸に沁みる。いくつもの断片が提示されていく。そこで暮らす若者たちの姿がコラージュされていく。特定の誰かではない。だが一応中心に据えてれるのは、東京で暮らしていたけど、古里に戻ってきた女。でも、彼女のお話と並行してここでずっと暮らす女や男たちが描かれる。群像劇で . . . 本文を読む
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オフィース・コットーネ『埒もなく、汚れなく』

2019-05-29 20:51:23 | 演劇
  2時間10分の大作である。少し長い。終盤の大竹野と小寿枝さんのシーンは、作品全体の見せ場なのだが、ラストの『山の声』執筆シーンへと一気に見せていくにしては、そこで芝居が停滞してしまうくらいに長くなっている気がする。それまでのいいテンポで進んできた作品のバランスがここで崩れるのは惜しい。しかし、あそこで2人の関係が明確に成り、そして、彼がどこに向かっていこうとしていたのかが、見えてく . . . 本文を読む
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『居眠り磐音』

2019-05-29 20:47:36 | 映画
これはあかんわ、と思った。昨年の『空飛ぶタイヤ』がとてもよかったから、その後の本木克英監督には期待大だったのだけど、前作『少年たち』、そして本作と、全く新しいジャンルに挑戦するチャレンジャーなんだけど、今年連続でこけてしまった。もちろん2作品ともまるでダメというわけではない。それどころかこれだけ異なるジャンルに挑んで健闘している。『少年たち』の冒頭の長回しなんかちょっとした感動もんだった。ジャニー . . . 本文を読む
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劇団息吹『人を食った話』『すももの木』

2019-05-29 20:14:54 | 演劇
『人を食った話』は田舎町の取調室を舞台にして自由自在の老婆と東京からやってきた検事によるマイペースのやりとりを描く短編作品。最後までそのタッチは崩さない。そして、いつのまにか彼女のペースに乗せられてしまう。なんのひねりもない小品だけど、その素朴さがいい。へんにストーリー展開で仕掛けると、あざとくなる。このくらいのさりげなさがちょうどいいのかもしれない。 15分の休憩をはさんで2本目は『すももの木 . . . 本文を読む
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『轢き逃げ 最高の最悪な日』

2019-05-23 20:38:08 | 映画
凄くいい。水谷豊の監督第2作。前作は悪くはないけど、というレベルの映画だっただけにあまり期待はしなかった。でも、見始めてしばらくしてこれはちょっと違うと思い始まる。このさりげなさ、でも、この緊張感は半端ではない。気負うことなく、この最悪な出来事を見せていく。「人生が終わったな」という瞬間をこんなにもリアルに見せられたら、そこからどう話を展開させるのか、心配になるほどだ。 だけど、大丈夫。自然体の . . . 本文を読む
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『若おかみは小学生!』

2019-05-19 21:41:11 | 映画
とてもさわやかで心に沁みる傑作である。こういうアニメ映画が作られ、公開される。それってすごい。素材としては地味すぎて劇場用長編映画にするなんて、なかなか思わないのではないか。商業的に成功するはずもない、と却下されそうな題材だ。まずはTVアニメとして作られたらしい。それを劇場用に新たに作り上げた。DVDには映像特典としてTVアニメの第1話が収録されていたが本編を見た後連続してそれを見たのでその差異が . . . 本文を読む
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『チア男子!!』

2019-05-19 21:40:58 | 映画
今更この小説を映画にするか、と僕は思う。朝井リョウによる原作が出たときに、これは実に面白いと思った。映画にしたらいいのに、とも。だけど、なかなか映画化されず、後発で『チアダン』とか、似たタイプの青春映画が出てしまったから、もういいでしょ、って感じ。(アメリカ映画だけど『チアーズ!』とかいうのもあった。) でも、この小説をどんなふうに映画にしたのかは気になるから、ついつい見てしまった。見てよかった . . . 本文を読む
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瀧羽麻子『うちのレシピ』

2019-05-19 21:25:10 | その他
6人の視点から描く6つのエピソードを通して2つの家族から新しい家族が生まれてくる。これは結婚にまつわるドラマだ。若い二人が出会い、結婚し、子供が生まれ、というどこにでもあるお話を、食にまつわるエピソードを介して綴っていく。さりげないけど、いつもながら、瀧羽麻子は上手い。時制も前後したり飛んだりするけど、そのバラバラのピースが描かなかった部分も含めてその全体像を見事に提示する。フレンチレストランを舞 . . . 本文を読む
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『芳華』

2019-05-18 17:57:46 | 映画
70年代中国を舞台にした青春映画。文革の嵐の後、中国が変わり始める時代、文工団(文芸工作団)に入ったひとりの少女と彼女の周囲の人たちの群像劇。ナレーションで私はこのドラマの主人公ではない、とお話の語り部である少女が言う。主人公はこのふたりだ、と雨の中ここにやってきた少女と彼女を迎えに行っていた青年の姿が描かれる冒頭から、中年になったそのふたりが手を取り合うラストまで、そういうとこれは正統派ラブスト . . . 本文を読む
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『二重螺旋の恋人』

2019-05-17 21:00:56 | 映画
オゾンの新作だ。今回も彼らしい緊張感のある映画でドキドキしながら見守ることになる。腹痛を訴える女が精神科で治療を受ける。内科ではなく。心と体はつながっている。彼女の心の病はどこからきてどこへとたどりつくのか。どうすれば治せるのか。彼女が治療を受けた医師と恋仲になる。彼には双子の兄がいる。その存在を隠し続けたこと。彼と暮らしながら、兄とも付き合う。だが、本当は何なのか。実は彼にはそんな兄なんかいない . . . 本文を読む
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劇団きづがわ『鶴彬―暁を抱いて』

2019-05-17 20:26:10 | 演劇
いつものパターンの、再演である。昨年大ヒットしたこの作品をいつものようにブラッシュアップさせて再度お披露目する。今回はゆったりとした状態で観劇できでよかった。(劇団にとっては不本意だろうが)昨年の初演時は満杯の観客で、立ち見で見た。大変だった。だけど、客席も熱気が溢れ、いい芝居を観たという満足感があった。 さて、今回は2度目なので、冷静に見れる。実話の劇化というものはいろんな意味で難しい。フィク . . . 本文を読む
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真紅組プロデュース『慶應不思議草子』

2019-05-17 19:30:14 | 演劇
「平成の終わり、令和の始まり」という節目だからこそ、こういう時代の移り変わりの瞬間をとらえた作品に取り組むことにしたのだろう。慶応3年から4年、明治元年へと変わる瞬間をクライマックスにして見せる。倒幕、尊王攘夷に揺れる京都を舞台にしたドラマは枚挙にいとまはない。だが、竜馬や新選組を中心に据えるのではなく、中岡慎太郎は出てくるけど、お話の中心はあくまでも庶民の側にあるというのが真紅組らしい。しかも、 . . . 本文を読む
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『愛がなんだ』

2019-05-06 15:23:23 | 映画
GW中3度劇場に行った。毎回満席で見れなかった。しかたなく3度目は立ち見で見ることにした。小さな劇場でしかしていないし、テアトル梅田でしか見れないから、というのもあるのだろうけど、それにしても凄い盛況ぶりだ。『希望の灯り』にもわけてあげたい。今はほとんどの劇場は座席指定定員制なので立ち見はないのだけど、テアトル梅田はちゃんと入れてくれる。劇場サイドの壁にもたれて地べたに座って見た。近年稀にみる貴重 . . . 本文を読む
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