これは東映の新プロジェクト「TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY」第1回作品らしい。ということは、先に公開された『神回』は第2回作品なのか。(まぁ、いいけど)調べたら2本とも第1回制作作品でした。まぁそうでしょね。面白い発想の台本を低予算で新人に監督デビューさせるというこの企画は凄くいいと思う。2本とも今までありそうでなかった作品だった。狙い通りの映画が出来上がった。ただ売り . . . 本文を読む
ふたつの時代、ふたりの時間から描かれる100年の物語。とある老舗出版社(明らかに小学館がモデル)の100周年記念事業のために創設された学年誌創刊100年企画室に勤務することになった明日花が主人公。彼女はここでの仕事を通して戦時中祖母がこの出版社で働いていたことを知る。
若き日の祖母が学年誌編集部で過ごした時間と今、ここで孫である明日花が戦時中のことを調べる時間が交互に描かれる。祖母の . . . 本文を読む
先日ボクシング映画の新たな傑作『春に散る』を見たから、今年公開されたもうひとつのボクシング映画であるこれも見ることにした。『ロッキー』から派生した『クリード』シリーズの第3作である。今回、初めてロッキーが出ない。クリード単独作品になる。しかも、チャンピオンから引退した後の話。もちろんまたカムバックするけど。
相変わらずボクシングシーンでは派手な音楽が終始鳴り響くいつものパターン。『春 . . . 本文を読む
凄いスケールの大作である。400ページに及ぶ長篇本格SF小説にあの『バッテリー』のあさのあつこが挑んだ。というか、彼女はあらゆるジャンルで成果を上げているから、今更驚くことはない、はず。なのにやはりいろんな意味で凄いから驚くことになりました。まず世界観。10年後の近未来の設定。怖い世界がリアルに描かれる。あり得ないけど、あり得そう。壮大なスケールの話になりそうなのに、敢えて世界を広げない。登場人物 . . . 本文を読む
カンボジア系フランス人監督であるダビ・シュー作品。韓国映画ではなくフランス映画。なのにカンボジア代表として、アカデミー賞にも出品された。(カンボジアも製作に入っているけど)ヒロインを演じたパク・ジミンも韓国人ではない。韓国系フランス人。映画は感情的になることなく客観的な視点を確保して見せてくれるのがいい。映画は前半部分が面白い。養子縁組で赤ちゃんの時にフランス人夫婦に貰われてフランスで育った韓国人 . . . 本文を読む
『Gメン』と言われると、もちろん「75」と続く。丹波哲郎だ。だがこれは昭和のGメンのリメイクではなく令和のGメンである。20世紀のGメンでもなく、21世紀のGメンで『クローズ』みたいな学園ものでアクション青春映画。「学園のてっぺんを取っちゃる!」とかいう感じか、と最初は思って見ていたが、喧嘩だらけの映画だけどそうじゃない。もちろん例によってこれも漫画の映画化。シリアスではなく、バカバカしいバカコメ . . . 本文を読む
今TVドラマ化されてオンエアー中の小説の第2作が文庫で発売された。一作目はかなり前に単行本で出た時に読んで面白かったから、今回も楽しみだった。ただ、TVドラマは見てないけど、ドラマのキャストがアタマに浮かぶから読みにくい。成田凌と小芝風花をイメージして読んでしまい、何だかなぁ、である。
まぁそれはさておき、この小説、かなりヘンテコで読んでいて、それでいいの、と思うことが多々ある。わか . . . 本文を読む
イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督の長男パナー・パナヒの長編監督デビュー作。父親の意思を受け継いで果敢にイランの現実と向き合って、ひとつのあり方を提示するが、それは熱いばかりのメッセージに終わるわけではなく、ましてや政治プロパガンダではない。明るく元気すぎる無邪気な弟の姿に象徴する前向きな姿勢と、確実な困難を受け止めて、国外脱出に不安を抱えたままで挑む兄の後ろ向きな姿勢が対比される。何度となく車を . . . 本文を読む
久々のクロネンバーグ監督作品。なんと8年ぶりとなるらしい。80代になってもう何本も撮れないだろう。これが遺作になるかも知れない。先日見たバリー・レビンソンもそうだった。80年代一世を風靡した彼らが晩年を迎える。最後に何を遺すのか。
最初の1本は『スキャナーズ』。当時『イレーザーヘッド』と2本立で見た。衝撃的だった。もちろん、後者が。でも、クロネンバーグ作品も面白かった。その後、『ビデオドローム』 . . . 本文を読む
これは「私は私」というある1人の女性のお話。AはAというパターンで、くり返しの言葉が延々と続く。同語反復が延々と続くのだ。明確なストーリーはないけど、飽きさせないのはこの芝居は同語反復の積み重ねからある種のドラマを提示するからだ。
芝居自身はいつものパターンだが、とても新鮮。思い返すと最初に見たうさぎの喘ギ『うさり』(18)も同じ芝居が2度繰り返されるという驚きの芝居だったが、あの時は繰り返しに . . . 本文を読む
第66回群像新人賞受賞作。新人のデビュー作を読むのは楽しい。ドキドキしながら読み始めた。コロナ禍直撃の頃、公園にある縛られ地蔵の前で高二の女の子が、同い年の女の子と出会う。しずくとタマキ。ふたりで過ごす時間が描かれる。不妊治療に失敗してそれでもまた子供を産みたいと苦しんでいる母と偏頭痛に苦しめられる娘しずく。父親の死んだ理由。彼女の秘密。同じようにもうひとりの女の子タマキ(本当はメイ。タマキは死ん . . . 本文を読む
なんと沢木耕太郎の小説の映画化である。沢木さんがこんな小説を書いていたなんて知らなかった。だから最初『一瞬の夏』の映画化か、と思った。ポスターに「ふたりは『一瞬』だけを生きると決めた」と書かれていて、「原作、沢木耕太郎」という文字を見た瞬間、心躍った。もちろんタイトルが違うし、あのノンフィクションをドラマ化するのは難しい。ないわな、と思う。ただ、この小説のテーマやお話は確実に通じるものがある。これ . . . 本文を読む
川上未映子のエッセイ集だ。2011年から22年までの日記でもある。一歩ずつ毎回を進んでいく。無理せず確実に。彼女のそんな姿勢が伝わってくる。出産から始まり子育てに奮闘する期間がこのエッセイの背景にある。彼女がまず大事にしたのは作家としての自分、ではなく母親としての毎日だ。だがそれは当たり前の話で、目の前に赤ちゃんがいる。もちろん自分が産んで育てている我が子だ。この子は彼女がいないと死んでしまう。誰 . . . 本文を読む
「広島県尾道を舞台にして、昔ながらの豆腐屋を営む職人気質の父と頑固な娘の心温まる愛情を描いたドラマ」(と解説に書いてあった)は、あまりに古くさい昭和テイストの人情劇。時代背景は平成の終わり(2014〜15年)とあるがこの話が成り立つのは昭和50年代くらいまでであろう。藤竜也と麻生久美子が親子を演じる。三原光尋監督は『しあわせのかおり』(これは良作!)につづき、藤とは3度目のタッグとなる。たぶんこれ . . . 本文を読む
6年の歳月をかけて作られた短編連作映画だ。4話は2014年から19年にかけて作られた4本の独立した映画だが、つながっているからオムニバスではなく長編作品になっている。春から冬まで、高校時代から社会人になって挫折するまでの4話になっている。ただひとりの女性ではなく複数の女性たちの話。重なる人もいるけど。脚本、監督は川崎僚。これも女性監督による映画だ。最近やけに女性監督の映画が多い。ようやくそんな時代 . . . 本文を読む