習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

藤野千夜『団地のふたり』

2022-05-31 18:01:22 | その他
読みやすくて、楽しくて、でもちょっぴり切なくて、一瞬で読み終えてしまった。ゆっくり読んだはずだけど、余白だらけで、サクサク読めてしまうのだ。もったいない。できることなら、もっと時間をかけて読みたかった。余白だらけを満喫したかったのだ。それくらいにこのどうでもいい話は素敵だ。こんなふうに過ごしていたい、と思わされる。ちょっぴり寂しいけど、それでもそんなふたりが愛おしい。 今ではもう古くなった団地。 . . . 本文を読む
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『犬王』

2022-05-29 16:52:17 | 映画
湯浅政明監督最新作。今回は「能」を扱う。そしてこれは先日見た傑作『平家物語』の続編のような映画だ。もちろんあのアニメ『平家』と同じサイエンスSARUが制作している。壇ノ浦に沈んだ三種の神器を探し出すところからお話は始まる。何が始まるのかと、ドキドキしながらスクリーンを見守る。そこには今まで誰もが見たことのない世界が繰り広げられるはずだ。原作も『平家』の古川日出男。(『平家物語 犬王の巻』だ)期待は . . . 本文を読む
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『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』

2022-05-29 16:45:54 | 映画
2019年ベルリン映画祭のコンペに選ばれたにもかかわらず中国政府の検閲で引っ掛かり、なんと出品が取りやめになった(技術的な問題があり、取り下げたという説明があったらしいが、それってなんなんだか)といういわくつきの映画だ。巨匠チャン・イーモウの新作。彼は今も中国国内にとどまり、精力的に作品を作り続ける。北京オリンピックの開会式の演出を手掛け体制側の人間として、認識されているけど、政府の御用監督かとい . . . 本文を読む
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藤原七瀬『雷轟と猫』

2022-05-29 16:25:20 | その他
読む小説がことごとく面白いから、それは(もしかしたら)自分の選択が素晴らしいのではなく、自分の満足感がおかしくなっているのではないか、と不安になってきたのだが、大丈夫だった。ここ数冊読む本がなくて少し守備範囲を広げたら、つまらない小説が数冊続いた。なんと僕が途中で読むことを断念したものまである。(もちろん、それをどれ、とは言わないけど)そういうわけでこの小説もあまりに惨くて途中でやめよう、と思った . . . 本文を読む
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餓鬼の断食『対岸は、火事』

2022-05-29 10:27:17 | 演劇
まだ若い20歳前後の大学生たちによる作品。3月に公演を予定していたにもかかわらずコロナのせいで延期されていた作品だ。ようやく上演される。うれしい。ウイングカップ参加作品。「餓鬼の断食」は劇団名ではなく作、演出、主演の川村智基のユニット。70分ほどの小さな作品だが、とても個性的で、楽しい。 描かれるのは、6人の男女による小旅行(みたい)。大きな荷物を抱えて、迷いに迷ってようやくたどり着いた宿泊先。 . . . 本文を読む
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劇団未来『橋の下のガタロ』『川向う』

2022-05-29 09:20:28 | 演劇
信じられないことだが、なんと40日も芝居を見ていなかった。この4月の中旬から昨日まで。それまでは毎月15本くらいをコンスタントに見ていたのに、コロナ禍でこの3年、公演もなくなり、(でも月に4、本は見ていたのだけど、)劇団からの案内もあまり来なくなり、気がつくとこんなことになっていた。でも、映画や小説はコンスタントに見ているから気にもしてなかった。それにしても驚きだ。でも、昨日久々に2本見て、そろそ . . . 本文を読む
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南杏子『アルツ村』

2022-05-26 12:25:18 | その他
これはちょっとしたホラーだ。なんなら清水崇監督の「恐怖の村シリーズ」の1作として取り上げてもいい(笑)、ほどに。(残念だが、あのシリーズはもう終了したみたいだけど)DV夫から逃げ出した妻と娘が紛れ込んだ山間の村。地図にもないそこはアルツハイマーの老人たちを収容する施設だった。もちろんこれはホラーではない。シリアスな「医療もの」である。これは認知症高齢者の看取りまでを請け負う施設、現代の姥捨て山。そ . . . 本文を読む
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『鋼の錬金術師 復讐者スカー』

2022-05-25 11:32:26 | 映画
実写映画化された『鋼の錬金術師』はとても残念な作品だった。壮大なスケールで描かれるはずのお話が、なんだかとても小さな世界にすっぽりと収まってしまう。圧巻のSFXで描かれたはずのビジュアルは、そんなつまらないお話の中に収められて、なんだか書割然として、しょぼい。『ピンポン』や『あしたのジョー』という実写化不可能と思われた漫画を優れたあれだけの映画に仕立てた曽利文彦監督なのに、どうしてこんなことになっ . . . 本文を読む
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戸森しるこ『十一月のマーブル』

2022-05-25 11:05:01 | その他
これは図書館では一応児童書に分類されているけど、これを子どもだけに読ませるのはもったいない。というか、ジャンル分けは一般書であってもまるで問題ない作品であり、内容だ。それどころかとてもハードでこういうのを小学生に与えるのは過激かもしれない。だが、今どきの読書好きの小学生なら十分理解できるのだろう。そして、何よりこれはとてもよくできている。大丈夫だし、読ませたい。 というか、これでは子供には少し難 . . . 本文を読む
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『大河への道』

2022-05-24 11:01:44 | 映画
北川景子主演、藤沢周平主演、藤沢周平原作の隠れた傑作映画『花のあと』の中西健二監督の作品だから見た。実はつい最近までそのことを知らなかったから、これはただのコメディタッチの映画ではないかと思い、まるで見る気はなかったのだが、インタビューで北川景子が「中西監督だから、」と言っているのを読み、そうだったのかと思い、それなら絶対に見なくては、と思ったのだ。久々の中西健二作品である。そして『花のあと』以来 . . . 本文を読む
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『平家物語』

2022-05-24 10:30:00 | 映画
こんなお話だったのか、という驚きの展開、納得の結末。自分が今見ているのはあの『平家物語』なんだよな、と何度も問いかける。新解釈というわけではない。これはまごうことなくあの古典の名作である。だが、その切り口の新鮮さと大胆さに圧倒される。これが「軍記もの」であることを終盤まで忘れさせる。清盛の死から、終盤、義仲の挙兵くらいからようやくこれが従来の『平家物語』なんだと思わされるのだが、戦記ものとしてのエ . . . 本文を読む
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高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』

2022-05-22 09:11:21 | その他
相変わらずかなりへんな小説だ。高瀬さんは書きたいことが明確だが、書き方が不明確。いつもあっさりしているから、ぼんやり読んでいると、なにがなんだか、と思うくらいに焦点が絞れれないままで、終わっている。今回だってそうだ。 ある会社での1年間が描かれる。大きな事件は起きない。でも、ちゃんと小さな事件を起こしている。でも、気づかない、あるいは、気づかないフリして過ごす。だいたいタイトルにも明確にあるよう . . . 本文を読む
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『小さな恋のメロディ』

2022-05-21 09:41:57 | 映画
先日たまたまBSでこの映画を見た。平日の昼間から家でいるからこそ、可能な所業だ。懐かしさに駆られて、久々に見る。中学生くらいの時にTVの映画劇場で見たのが最初の出会いだ。とても感動した。その夜はラストシーンでトロッコを漕いでいくふたりの姿が目に焼き付いて、興奮したまま眠りについたことを鮮明に覚えている。「日曜洋画劇場」だったのなら淀川長治さんの解説もついていたことだろう。 あの頃、子供でお金もな . . . 本文を読む
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天童荒太『包帯クラブ ルック・アット・ミー』

2022-05-21 09:30:57 | 演劇
15年ほど前に出版されベストセラーになった小説『包帯クラブ』の続編。映画化もされた。僕は先に映画を見て、すぐに原作も手にしたけど、キャストや内容すらまるで忘れていた。柳楽優弥、石原さとみ、田中圭が主演で高校生を演じていた。というか、彼らは当時まだ十分高校生だった。ファンタジックなお話だが、痛ましい。堤幸彦監督作品。映画はまるで話題にはならなかったけど、とてもいい作品だったことをこの続編小説を読みな . . . 本文を読む
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『生きててよかった』

2022-05-19 09:51:10 | 映画
このとんでもないタイトルと、あのポスターの写真、図柄。それだけでこの映画を見てもいいかも、と思った。知らない人(監督も主演も無名の人。というか、僕が知らないだけだが)が作った映画で、「ボクシングもの」とかあまり好きじゃないけど、この圧倒的なインパクト。そして、ダサい。 昔こんな映画があったな、と思う。そうだ、これは『どついたるねん』に似ている。同じように「ボクシングもの」で、顔のアップのポスター . . . 本文を読む
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