レオス・カラックスは懐かしい。80年代、僕がまだまだ若かったころ、夢中で映画を見ていたころ、彗星のごとく現れた「新しいフランスヌーヴェルヴァーグ(!)の騎手だった。これはそんな彼の13年振りの長編映画らしい。
しばらく彼の映画が公開されていないな、とは思っていたけど随分ご無沙汰していたものだ。『ポーラX』以来の新作長編ということらしい。でも、この映画は2012年作品と記載があるから、僕にとっては . . . 本文を読む
大好きな万城目学、久々の新作。しかもこんなのも分厚い本(上下巻で1000ページに及ぶ)を読めるなんてとても幸せ。今回もどんな破天荒な冒険を見せてくれるのかと、ドキドキしながら本をめくる。3兄弟のとんでもない冒険が始まり、どこに行きつくのやら、わけのわからない怒濤の展開にふむふむとうなづきながら、ページをどんどこめくることになる。彼らの不思議な能力がどういうふうに発揮されお話が展開していくのか、興味 . . . 本文を読む
この夏一番の話題の超大作。この映画もまたご多分に漏れず何度となく公開が延期されようやく上映することになった作品だ。すごいお金をかけた作品だからヒットしてもらわなくては困るのだろうけど、このコロナ禍で、タイミングを失すると大失敗するだろうから、配給会社は大変だと思う。何度も宣伝の仕切り直しをするたびに、本来なら不要なお金がかかり、鮮度は下がり色褪せていくだろうし。(とりあえず無事ヒットしてよかったで . . . 本文を読む
久々の佐藤正午の映画化である。原作は1000ページに及ぶ長編らしい。それを2時間にまとめるのは至難の業だろう。だからか、映画はすごいスピードで話が展開していく。あれよあれよという間にあちらこちらへと話はしっちゃかめっちゃかで、振り落とされそうだ。何がどうしてどうなっているのやら、ちゃんと見ているはずなのに、わからない。きっと最後まで見ていたらすべてがうまく収まるところにおさまってどんどん深まる謎だ . . . 本文を読む
東京オリンピックの年まで4年連続で上演するというとんでもないプロジェクトを最初に聞いた時は「本気か!」という驚きしかなかったし、「大丈夫なのか、」と心配もした。だけど、作、演出のオカモトさん、制作のの鉾木さんを中心とするチームは見事それを成し遂げてくれた。いろんな大変を全部クリアして、自分たちの作ったとんもない芝居を大事にして、それを壮大なプロジェクトに仕立ててやり遂げた。立派だ。
5年前初めて . . . 本文を読む
このなんでもない映画がとても胸に沁みる。ここには特別な「何か」があるわけではない。震災で被災したふたりの少女が避難所で出会った老婆に導かれて3人で岬にある古い家で暮らす日々が描かれる。心を閉ざした少女たち(ひとりは交通事故で両親を同時に無くし、声を出せなくなっている。追い打ちをかけるように3・11で被災し、面倒を見てくれていた親戚もなくし身寄りはいない。もうひとりは親からの虐待を受け、逃げてきた先 . . . 本文を読む
白石和彌監督がこの映画をどう作るか、それがとても楽しみだった。今の時代にヤクザ映画である。ありえない。だからそれをありえさせた時何が起こるのか、ドキドキするではないか。しかも3年前の前作は過激で挑発的だった。もちろんあれくらいしないと今の時代にヤクザ映画を作り意味はない、とも思う。主人公の刑事を演じた役所広司も素晴らしかった。ただ、映画の終盤で彼が死んだところから主役は松坂桃李に引き継がれるが、そ . . . 本文を読む
時間が出来たから偶然この映画を見ることになった。隙間の時間に合う映画がこれしかなかったからだ。だけど、予想したほど酷い映画ではなかった。というより、期待(してないけど)以上の映画だった。
ちゃんとしたハリウッドの娯楽大作だけど、やりたい放題のビジュアルはもう何をされても驚かないし、反対にその過剰な派手さには醒めてしまうのだが、この映画はそんな過剰さを逆手に取った過激さを提示する。冒頭、なんとも不 . . . 本文を読む
村上春樹の短編小説の映画化(「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」)なのだが、上映時間が2時間59分。さすがにそれはないでしょ、と驚く。きっと誤植で1時間59分の間違いではないかと思った。でも、映画はやっぱり3時間だった。
原作のなかの言葉がそのまま出てくる。濱口竜介監督は上映時間5時間の『ハッピーアワー』も撮っているけど今回は西島秀俊主演の(一応)商業映画だ。そんな枠内で . . . 本文を読む
このタイトルで中堅造船会社(と、いっても造船会社だから大企業)の話。なんだか調子いい軽い小説か、と思わされるが、そうじゃない。働く人たちの哀歓を描くお仕事小説(と、こういうふうに書くとやはり軽いか)だ。7人のお話の短編連作。意に沿わない配置換え、人事異動、昇進、左遷などや人間関係のお話が中心になる。企業で働くことの悲喜こもごものドラマは多かれ少なかれ心当たりがあるだろう。誰の胸にも響く。
好きな . . . 本文を読む
こんな不思議な映画を作る人がいるんだ。しかも、それをこれ見よがしに見せるのではなくなんとも自然体でさりがなく。わざとらしさはまるでないから、素直にこの異常な世界を受け止められる。こんなさびれた温泉町にこんなへんてこな人たちが住んでいる。コメディではなく、ただなんとなく日常生活のスケッチをしただけ。気負いもへったくれもない。
永瀬正敏の郵便屋がバイクに乗って手紙を届ける。彼は常にサングラスをはずさ . . . 本文を読む
寺地はるなの旧作をどんどん読んでいる。読み残していた作品がこんなにもあるとは思わなかった。『ビオレタ』でデビュー以降欠かさず読んでいると(勝手に)思っていたが、そんなことは全くなかった。ものすごい量の小説を量産している。しかも、どれも重くて暗くて、心に沁みるものばかりだ。
『水を縫う』が高校生の課題図書に選ばれたので読んだ(実は昨年出版されたときに読んでなかった)のだが、これが実に面白くて、それ . . . 本文を読む
3週間ぶりの芝居だ。とてもうれしい。しかも昔何度か見て好きだったこの作品である。久しぶりに再見できる。さらには演出が虚空旅団の高橋恵さんだ。彼女がこういうタイプの芝居を器用にこなすとは思えない。だから、反対に期待が高まる。この難しい題材と向き合い、勝算もなく引き受けまい。今までの彼女の芝居とはまるで違う新境地を見せてくれることは確信できる。期待しないはずはない。ワクワクするではないか。
こういう . . . 本文を読む
紆余曲折を経てようやく公開された山田洋次監督の最新作。89歳の監督による89本目の映画だ。山田監督は先日亡くなった僕の母と同い年である。関係ないけど。
松竹100周年記念映画だ。たしか松竹50周年映画も山田監督作品だった。『キネマの天地』だ。(でも、あれは86年作品だから今から35年前、ということは50周年ではないよな)どちらも撮影所が舞台になる。映画作りのお話だ。2部作のようになっている。いや . . . 本文を読む
この大胆なタイトル同様、映画本体も実に大胆。トリュフォーへのオマージュではない。何度となく見た予告編の「うん、暗殺、気をつける」という上白石萌歌のせりふには笑わされる。高校生が父親に会いに行くお話なのに、暗殺って、と。描かれるのは夏休みのささやかな冒険だ。高校2年生の女の子が初めて自分の実の父親に会いに行く5日間。家族には内緒で。父親はとても同級生のモジくん。細田佳央太)の兄(千葉雄大演じるこの「 . . . 本文を読む