今年のラスト・ムービーはこの映画にした。アンソニー・ミンゲラが10年振りでオリジナルに挑んだ作品だ。彼のデビュー作『愛しい人が眠るまで』は大好きだったけど、『イングリッシュ・ペイシェント』『リプリー』『コールド・マウンテン』と続いた3作品は超大作だが、なんだかしっくりこなかった。この3本と10年間のおかげで、僕の中で彼への評価はとても低いものになっていたから、今回も正直期待していなかった。だが、 . . . 本文を読む
ほんの少し残念な気分だ。悪い映画ではない。「デンマークが産んだ恐るべき才能」というキャッチフレーズも決して誇大広告とは思わない。しかし、この映画はつくり方が甘すぎる。
スザンネ・ビアの前作『しあわせな孤独』を見た時、これは強烈だ、と思った。しかし、今回この作品を見て、感じた違和感は実はあの作品にも少なからずあったものだと気付いた。ハリウッドがリメイクしたがる気持ちがよくわかる。この作品の甘さ . . . 本文を読む
1 悪人(吉田修一)
2 通天閣(西加奈子)
3 一瞬の風になれ(佐藤多佳子)
4 夕暮れのマグノリア(安東みきえ)
5 下流志向(内田樹)
6 「三十歳まではなんとか生きるな」と思っていた(保坂和志)
7 ボーイズ・ビー(桂望美)
8 246(沢木耕太郎)
9 夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)
10 迷子の自由(星野博美)
11 強運の持ち主(瀬尾まいこ)
12 カオスの娘(島 . . . 本文を読む
1 ツォツイ(ギャヴィン・フッド)
2 弓 (キム・ギドク)
3 ロズ・イン・タイドランド(テリー・ギリアム)
4 サンクチュアリ(瀬々敬久)
5 素敵な歌と舟は行く(オタール・イオセリアーニ)
6 親密すぎるうちあけ話(パトリス・ルコント)
7 セブンス・コンチネント(ミヒャエル・ハネケ)
8 夢遊ハワイ
9 市川崑物語(岩井俊二)
10 世界はときどき美しい(御法川修)
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1 孔雀、我が家の風景(クー・チャンウェイ)
2 天然コケッコー(山下敦弘)
3 長江哀歌(ジャ・ジャンクー)
4 バッテリー(滝田洋二郎)
5 あしたの私のつくり方(市川準)
6 幸福な食卓(小松隆志)
7 東京タワー、オカンとボクと時々オトン(松岡錠司)
8 善き人のためのソナタ(フロリアン・ヘンケル・フォン・トナースマルク)
9 転校生、さよならあなた(大林宣彦)
10 檸 . . . 本文を読む
1 越境する蝸牛(太陽族)
2 nine(アイホール+小原延之)
3 月夜にようこそ(ニュートラル)
4 アインシュタイン・ショック(ジャブジャブサーキット)
5 僕たちの好きだった革命(金蘭会高校)
6 その公園のベンチには魔法がかかっている(ニュートラル)
7 ワールド・トレード・センター(燐光群)
8 箱師よ、その町の暁に釘を打て(Ugly duckling)
9 夜叉ヶ池 . . . 本文を読む
壁井ユカコのこの小説は2人の女の子の友情を描く。24歳と17歳。二つの時間を行き来して、2人の女の子のあの頃と今を描く。
イチゴミルクが大好きだったあの頃。そして、もうイチゴミルクなんて、甘いものは飲めなくなってしまった今。(僕は40代になった今もイチゴミルクが大好きだが・・・)あの頃、夢を現実として信じたかった。だから彼女の嘘を純粋に信じていた。だけど、いつまでもそんな嘘を無邪気に信じては . . . 本文を読む
『レッドバイオリン』のフランソワ・ジラールの新作。19世紀フランス。若き軍人(マイケル・ピット)がひとりの美しい女(キーラ・ナイトレイ)と出会い恋に落ちる。至上の愛を手に入れた幸福な若者は仕事のために、彼女と離れ、遥か異郷の地、この世の果てにある日本へと旅立つ。この世で一番美しい布であるシルクを求めて。そこで、彼は絹のように美しい肌を持つ少女(芦名星)と出会うことになる。
なんだか、自分勝手 . . . 本文を読む
これは思いもかけない拾い物だ。近頃こんなにもおもしろいハリウッド映画を見た事がない。今レンタルが始まっている『オーシャンズ13』のオーシャンズ・シリーズなんていうオタク映画を見るくらいなら、こっちを見たほうがずっといい。こんなにもよく出来たお話をハリウッドがオリジナルで作れるなんて凄い。まぁ、どこにでも優れた才能はいる、という当たり前の話なのだが。
1時間48分の中に収められた情報量は凄ま . . . 本文を読む
前作『姑獲鳥の夏』は雰囲気ばかりが先行して、内容が全く追いついてこない失敗作だったが、今回は原田眞人を監督に迎え、装いも新たに京極ワールドに取り組んだ。
全編中国ロケ(上海である)で見せる昭和27年の東京は、うらぶれた風景が独得の雰囲気を漂わせており、そんな不思議な場所を舞台にして、猟奇的な連続殺人(箱の中に腕と足が入っている)の謎を追う京極堂(堤真一)たちの姿が描かれる。
とても早いテ . . . 本文を読む
去年の『大奥』に続く東映女性時代劇シリーズ第2弾(なんて、誰も言っていないが勝手に付けた)である。だから、全く期待しないで見に行ったのだが、予想に反して、これがなかなか良く出来ていた。
所詮TVの映画版でしかない『大奥』とは違いこちらは撮影所出身で東映生え抜きの新鋭橋本一監督作品である。ある意味で心意気が違う。(と、それは結果を出したから言えたことだが)
テンポの早いオープニングから一気 . . . 本文を読む
井上一馬は僕にボブ・グリーンを教えてくれた人だ。もうあれから20年くらいは経つ。最近ボブ・グリーンって読んでないけど、新刊は出ているのだろうか。
『アメリカン・ビート』が出版されたとき、なぜかすぐに読んだ。あの時の新鮮な感動は忘れられない。そんな彼を日本に紹介したのが井上一馬だ。翻訳家だった彼が小説にチャレンジしたのが本作である。しかも、誘拐ミステリーである。
ボブ・グリーンのコラムの数 . . . 本文を読む
キム・ギドクの幻のデビュー作がようやく日本で公開された。96年の作品である。10年以上前の作品だが、やはり最初からキム・ギドクは変わらない。すべてのキム・ギドク的なものがこの中には封じ込まれてある。
最近は洗練され、暴力的なイメージ(直接の暴力描写も)と、性描写が控えめになってきたが、このデビュー作はやりたい放題だ。だが、日本上陸第1作『魚を抱く女』にあったえげつなさはさすがにまだない。表現 . . . 本文を読む
市川拓司の小説はいつも同じだ。一人ぼっちの男の子(や女の子)が大切な人に出会い、相手の事をずっと思い続けていく。遠く離れてしまってもいつまでも待ち続ける。いつか願いは叶う。『今、会いに行きます』からこの『そのときは彼によろしく』まで、一貫している。
映画化された作品はそれぞれ原作のエッセンスをしっかり抽出した出来になっている。慌てずにゆっくり小説で描かれたことのすべてを見せていく。今までの作 . . . 本文を読む
クリスマスイベントとして企画されたUgly ducklingのアトリエ公演。自分たちのカフェをそのまま使った素敵な小品だ。劇団異国幻燈舎によるお話や、れき風のミニ・コンサートを間に挟み、全体を構成している。
can tutkuという小空間自体がまるでお芝居のセットのように見えるのも面白い。まさかあのカウンターはこの芝居のために作られたセットではあるまい。
クリスマスの夜にやってくる不思 . . . 本文を読む