なんてシンプルな物語だろうか。今までのアグリーの芝居とは全く違ったテイストの作品になっている。わかりやすくて、ストーリーも読みやすい。次の展開を見切ることができる。予定通りの結末へと、つながっていく。1時間15分という短さも今まではなかったことだ。
だが、そういうルックスとは裏腹に、実はとても難解な芝居でもある。とても感覚的で、それがきれいに収まっているように見えながらも、歪つにはみ出してい . . . 本文を読む
よしもとばななの優しい世界をしっかり再現した映画となっている。今まで彼女の小説はあまり映画化がなされていない。それだけ彼女の独自の世界観を映像化するのは難しいということだ。あまりストーリーに起伏がないから、物語としての面白さがないのも、その理由であろう。小説としては心地よく、その雰囲気に浸っているうちに読み終わる。後にはあまり何も残らない。それが彼女の魅力だ。
長尾直樹監督は『鉄塔武蔵野線』 . . . 本文を読む
2巻の終盤で、主人公の兄が大怪我をするシーンがある。でたか!と思った。黄金のパターン展開だ。こういう事件を入れなくてはストーリーを作れないのか、とがっかりしたが、3巻に入ってから、持ち直しフィニッシュに至ると、もう一度最初の輝きを取り戻してくる。特に県大会、高校生活最後の試合のところからは予想通りの展開なのに胸が熱くなる。
100M準決勝。「なぜか、その時、いけると思った。抜こうとは思わなか . . . 本文を読む
映画としてのバランスを著しく欠いている。これは大失敗作だと思う。しかし、作り手はそんなこと承知の上でやっているようにも見える。ならば、どうしてそんなことをするのか。わからない。何か深い意図があったのだろうかと勘ぐりたくなる。僕が理解していないだけではないか、と不安になるくらいだ。
大竹しのぶのスーパー母ちゃんの話なのだが、彼女とその息子(石田卓也)が主人公である。(『東京タワー ボクとオカン . . . 本文を読む
こんなにも女々しい男の話を延々見せられて、泣いてしまうなんて、正直言って恥ずかしい。いい映画なんだから、なんて胸張って言うのも、ちょっと気が引ける。いくらいい映画だからって、大の大人が泣かんでもいいやろ、と思う。
松岡錠司監督の久々の新作である。わざと泣かそうなんて一切していない。ただ、淡々とボクとオカンの日々を綴っていくだけである。きちんと時代を描いている。ことさらそれを強調したりするわけ . . . 本文を読む
いくつものイメージがこの芝居を象徴的に彩っている。ヤクザ、娼婦をドラマの中心に据えて、この町から出て行きたいのにそれが出来ない人々の物語という枠組みを設定する。この吹き溜まりのような場所で女たちは生きる。そこに迷い込んだ足の悪い女。最初はゲームの世界に迷い込んだはずだった女がそこで人探しをする。ゲームだから何度でもやり直しが効くはずだった。しかし、この世界はいつの間にかリアルな空間に変容していく . . . 本文を読む
土橋流エンタテインメント。とても解り易くて、メリハリのある芝居なので2時間があっという間に過ぎていく。個性的な面々が暮らす作家マンションを舞台にして、そこでの人間模様が描かれていく。これで、事件か何かが起きて、その中で右往左往する様を描いたりしたら全く別の芝居になりそうなフォーマットなのだが、もちろんそんなふうにはしない。しかし、そんな展開があってもおかしくないような構成になっている。
今ま . . . 本文を読む
いくらなんでも、これは変だよ。こんなのをダンス公演だなんて言われたら、ちょっとええっ、と言うしかないのだけれど、まぁボーダレスな時代なので(笑)そういう枠組みに収まらない作品のほうが面白い、ということにしておこう。
こんないい加減な書き方をしてしまうくらいにこの作品は不思議なのだ。芝居とか、ダンスとかいう分類なんてどうでもいいが、なんじゃこれ、という驚きが大きい。面白ければそれだけでいいのだ . . . 本文を読む
最悪のコンディションの中で見た。1日働いてボロボロになった身体を引き摺ってシネリーブル梅田に行く。9時15分からのレイトショーしか上映がないから、仕方ない。少し頭も痛いし、身体は休養を欲しがっている。なのにこんな時間から映画を見る。明日はいつも通りに仕事があるから、6時には起きなくてはいけないのに。
疲れているから座ってしまったら安心して眠くなる。やばい。何度も意識を失いそうになりながら、見 . . . 本文を読む
三浦しをんの弱小大学の駅伝部が箱根駅伝を目指していく『風が強く吹いている』には負けるけど、こちらも胸にきゅんとくる作品で、ページを繰る手が止まらない。サッカーで挫折した少年が、高校に入って陸上部に入り、初めての競技に戸惑いながらも、走ることの単純さ、その魅力に取り憑かれ、ショートスプリンターとして、そして、チームリーダーとして、高校でのクラブ活動に、全力を尽くしていく日々が描かれていく。もう文句 . . . 本文を読む
新撰組はシアターアーツと銘打って、劇団のスキルアップのために、毎年3月から5月くらいまでアトリエで3~4本くらいを連続で実験公演を行う。普段ならやらない(やれない?)ような企画に次々チャレンジしていく姿勢は素敵だ。
そして、一昨年の唐十郎(『少女都市』)、昨年の寺山修司(『奴婢訓』)と、大御所の大作をスタジオガリバーの小空間の中に作り上げ、とても刺激的な作品に仕立てたが、今年はドイツの現代演 . . . 本文を読む
2、3分からせいぜい4,5分くらいまでのショートコントがとてもテンポよく続いていく。フラットな仕上がりで、さらりと見せるので、70分という上演時間がきっと限界だろう。スマートでスタイリシュに作りたいと思ったから、こういう作り方になったのだろう。よく考えて構成されている。
へんに力が入ってしまうとベタになってしまってみっともない。そのへんも作り手はよくわかっている。場数を踏んでいるから計算高い . . . 本文を読む
新刊を中心に恋愛小説を続けて読んでいると、なんとなく今という時代に求められているものが見えてくるような気がする。(まぁ錯覚かもしれないが)
それにしても、どの本の中でもなぜか穏やかな恋が次々描かれている。主人公の年齢的な問題もあるのだろうが、恋愛が一時的な感情ではなく、静かで落ち着くもの、という認識が定着しつつあるのか、なんて。
山田詠美の『無銭優雅』は42歳の2人が主人公。この小説はち . . . 本文を読む
東電OL殺人事件を題材にして神原さんが芝居を作ると聞いた時、とても意外な気がした。今までの彼女の作品カラーとこの題材が全く重ならない気がして、一体どんなものが生まれてくるのか、とてもワクワクさせられた。
出来上がった作品はいい意味でも、悪い意味でも、神原さんにしか作れない作品になっている。そこには感心させられた。そして、こんなにも叙情的な作品になっている。事件自体を描くのではなく、彼女が抱え . . . 本文を読む
とてもおもしろかった。1時間の完璧な空間造形がなされた作品は、ラストで斜めに傾いたドアに手をかけて、外に出て行くシーンまで、見事に作り上げられている。これは世界であり、宇宙だ。闇の中から繰り返されるいくつものイメージの連鎖。倒れ、起き上がる運動。ゆっくりと動いていく。ダンサーたちが作り上げる世界に引き込まれていく。
闇の中に浮かび上がる赤茶けた空間。隆起する地面。一部が剥がれ、盛り上がってい . . . 本文を読む