大ヒットTVシリーズの映画化、といういつものパターンである。だけど最近はこの手安易なTV局製作映画の惨敗が続いている。そんな中、この作品は昨年の秋に公開されて50億に迫るまさかの大ヒットを記録した。
菅田将暉が主演している。だが、そのおかげではない。だって今年の秋(今ですね)公開中の彼が主演した黒沢清の新作『クラウド』は大惨敗している。その差は何なのか、なんてことも気になってまず、配信スタートし . . . 本文を読む
Amazonでの配信が終了するので、久しぶりにクエイ映画を見ることにした。今から40年近く前に見た『ストーリート・オブ・クロダイル』が初体験だった。あの不気味な世界は衝撃的だった。何がなんだかわからない。だけど強烈なインパクトを与える。
今回見た3作品は、昔見たような気もするけど、全く覚えていない。相変わらず不気味な映画だった。『人工の夜景 ― 欲望果てしなき者ども』『ヤン・シュヴァ . . . 本文を読む
これは地下アイドル赤羽瑠璃シリーズの第2作。前作のことを忘れていたから、最初この小説、前に読んだ気がする、なんて思った。相変わらず間抜けである。
地下アイドル東京グレーデルのカリスマ、赤羽瑠璃の熱烈なファンである地味男の恋人。彼女は彼の推しである赤羽瑠璃に一方的に嫉妬する。これはそんないびつな恋愛感情を描く短編から始まった4話からなる連作。最初は赤羽瑠璃を巡る3人の女の話。そして最後 . . . 本文を読む
5才の頃、母を亡くした「僕」のその後の日々を綴る。イギリスから転校して来たさりかちゃんとの交流を中心にした少年時代がゆっくりとしたタッチで描かれていく。5歳から6歳に。春には小学生になる半年間ほどの短い時間。唯一の友だち、さりかちゃんとの間に距離が出来ていく終盤の展開が悲しい。
ハロウィンの日のこと、誕生日プレゼントのゲーム機、雪の日の時間。こんなにも決定的になるとは思いもしなかった。しかもここ . . . 本文を読む
この秋最大の超大作映画の登場である。これだけのスケールの映画が、こんなにも地味に公開されるって何なんだろう。もったいない。しかもあまりヒットしていないみたいだ。残念でならない。『ピンポン』でデビューして以来、映画化が困難なマンガの映画化を次から次へと成功させてきた曽利文彦監督渾身の一作である。今回,江戸時代のコミックとも言える滝沢馬琴の最高傑作『南総里見八犬伝』とそれを執念で書き上げた馬琴本人を描 . . . 本文を読む
この手の新人監督の作品が次から次へと作られて公開される。幸せな時代になった。だけど簡単に消費され消えていく。これは道本咲希監督劇場用長編デビュー作品。ENBUゼミナールの製作した低予算映画だけど、志は高いから悪い映画ではない。だけど成功しているとは言い難い。大阪の芸大、写真科(大阪芸大というわけではない)の卒業生4人。主人公のナオは才能に恵まれて周りから一目置かれている。卒業後はドイツ留学する。前 . . . 本文を読む
2021年の6月7日に母が亡くなった。コロナ禍のことである。母の死のショックは大きく、だけど今は(あの時は)それから先のことが思いやられる。連絡を受け大急ぎ病院に駆けつけた時には既に亡くなっていた。大変だった。弟と妻に連絡して来てもらうようにしたが、病院からはいきなり葬儀にことを聞かれて、予定はありますか、とか言われて、あるわけないやん、と憤慨しながら、仕方ないから病院提携の葬儀屋に来てもらうこと . . . 本文を読む
山田太一が亡くなって、倉本聰は元気に90代を迎える。富良野で暮らし始めてもう40年になるらしい。早いものだ。TVドラマの両巨匠の時代を並走した。まぁ、リアルタイムで彼らの仕事を目撃しただけだけど。そんな頃が懐かしい。
当時の僕は(今も)山田太一派だったけど、あの頃の倉本聰もすべて見た。それだけ凄かったのだ。ショーケンの『前略おふくろ様』や『北の国から』は毎週欠かさず見た。単発の日 . . . 本文を読む
大切だった犬と私。ふたりの交流を描く中編小説。アフリカで暮らした少女時代。虎と名付けた大人しい犬との暮らし。大人になった今、同棲している彼との暮らし。あの頃のことが想起される。
ここには何もない。幼い頃の記憶に残る出来事に今もまだ振る舞わされ続ける悪夢。現在の彼女の苛立ち、戸惑い、ためらいは結婚に踏み切れないから、だけではない。虎を愛し育てて、見棄ててきた悔恨。
自由のない世界 . . . 本文を読む
5話からなる連作。最初の専業主婦、北川さんが仕事を再開する話がとても面白くて、この先どうなるのか、楽しみになる。だけど、2話からは利用者の話で、しかもフューチャーマートもおしゃべりレジもあまり関係ない。
そうなのだ。これは画期的な「おしゃべりレジ係」の話だったのである。最近のスーパーは経費節減からセルフレジが増えているけど、なんだか味気ないと思うのは自分がオッサンで機械オンチだからか。まだ、今で . . . 本文を読む
武田操美、第30回「OMS戯曲賞大賞」受賞作品の凱旋公演。彼女はこんなにも怖い話をこんなにも厳しく、そして優しいタッチで語る。しかも、たくさんの笑いに包み込んで。
記憶を失くすくらいに怖い体験をした。親友を無くした七美(小石久美子)は夢の中で一子(武田操美)に逢う。1年間誰とも接することなく、過ごした。宇宙飛行士の訓練として。そんな夢を見ることから始まるこれはふたりの友情物語。どこまでが本気でど . . . 本文を読む
2日に分けて見ることにしたのは正解だった。この重量級の2本を連続して見るのはかなり過酷ではないか。だけど、劇団は2作品連続鑑賞が出来るように便宜を図る。役者たち、スタッフは大忙しで準備している。朝の回が終わると30分後には昼の部が始まるからだ。今日で2日目。今週、来週の2週間の公演である。今の若い劇団未来はとことん攻める。さて、こちらは女性キャストだけで見せる作品。2時間半の戯曲を30分縮めて2時 . . . 本文を読む
なんとなく読み始めたけど、なかなか話に乗れないのはこれがシリーズの第4巻だったことも当然影響しているのだろう。しかもそんなことも知らずに読み出したから複雑な人間関係も把握できないまま読むことななった。だいたいこれが4巻目だと知っていたなら、ここからは読まなかったと思う。だけど、もしかしたらここから読んだのは正解だったのかもしれない。今僕は大河ドラマよりも晩年というポジションに心惹かれているし。
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ゴン駄々吉が何をしてくれるのか。ドキドキする。毎回信じられないようなバカな芝居を誠実に全力投球して見せてくれるからだ。しかもこのタイトルだ。チラシも大胆。そこにはわけのわからない世界が展開するはず、と期待する。その期待は驚きになる。今までの作品だって呆れてしまうくらいにめちゃくちゃだったけど、今回は完全にタガが外れている。役者たちはもうどうとでもして、って感じでヤケクソに。冒頭、巨大な太陽が上がり . . . 本文を読む
深津篤史の初期作品である戯曲に橋本匡市が挑戦する。これは2020年2月に若手演出家コンクール決勝で上演された作品らしい。コロナ禍で無観客上演となった幻の作品。だから今回再演であるにも関わらず、観客は初めて劇場でこれを見ることになる。どうりでこんな作品を万博設計で見てないな、と思ったのは当然のことだった。僕が忘れていたわけではない。舞台美術は段差のある空間の和室。畳の部屋に置かれたちゃぶ台。それが段 . . . 本文を読む