市井昌秀監督の新作は香取慎吾、岸井ゆきのを主演に迎えた夫婦の危機を描いた作品。旦那への不満をSNSで「旦那デスノート」として発信することで怒りを抑えていた妻。だが、それを夫が見てしまうことから起こる騒動を描くコメディ作品という骨格なのだが、単純に笑わせてほっこりさせるという安易なハートウォーミング映画にはならない。だからといって重いタッチになんかまさかならないけど。実にバランスよく楽しめる娯楽映画 . . . 本文を読む
ラストで「少年の名前はハヤブサ」という語り部(生田朗子)によるナレーションが入ったところで初めてこの物語が、あのハヤブサの話だったのか、と気づくという段取りになったなら理想的だったのだろう。アフタートークで生田さんがこの台本をもらい読んでいて「そこまで読んで初めて、あぁ、そうだったのか、と思ったの」と語っているのを聞いたとき僕も「そうか!」と納得した。彼女のようにそこまで何も気にせず(気づかず)こ . . . 本文を読む
なんと30周年だ。驚く。気が付けばそんなにも時間がたっていて、その間途切れることなく続いていたのか。凄いことだ。最近、こういう冠公演が増えている。もちろん消えていったたくさんの劇団もあるけど、こうしてずっと続いている劇団もある。僕は旗揚げ公演からほぼすべての作品を見ている。そこにはさまざまな変遷があり今のオリゴがあるのだが、作、演出、主宰の岩橋貞典はぶれることなく、自分のやりたいことを貫いている。 . . . 本文を読む
コロナのせいで公開がなんと1年以上も延期になってしまったけどようやくのロードショー公開だ。うれしい。結果的に荻上直子監督の4年ぶりの新作となる。前作の直後から企画していたようだがプロデューサーと揉めて制作延期。難産となり、まず先に小説として出版されたのち、ようやくGOサインが出た。だが、完成後もコロナのせいで公開が見送られて、この度ついに公開されたのだ。めでたし、めでたし。
松山ケンイチ演じる主 . . . 本文を読む
2020年11月刊行の作品。少し前の作品だが、まだ読んでなかったので、読むことにした。新作『財布は踊る』やその前の『三千円の使い方』にもつながる内容だ。今彼女の興味の焦点は「お金」を巡る問題なのだろう。老後の暮らしとお金の関係を絡ませて、ひとりの老人がいかにしてこれから先の時間を生きていくのかが描かれる。これは倍賞千恵子主演、早川千絵監督による『PLAN 75』の姉妹編のような小説だ。主人公は同じ . . . 本文を読む
なんと今回の新作は岩井宏行が主演で、タイトルロールの楽助を演じる。彼を色物としてではなく、二枚目にして堂々主役を張らせるのだ。これは凄い。体の大きい(太っている、ということだけど)彼はコメディリリーフとしては貴重な存在だが、彼をセンターにして芝居を作ることは今までなかった。神原組でもすかんぽ長屋でも主役はいつも島上さんだ。そんなのはお約束になっている。でもそのお約束を今回は外した。しかも庄司勝でも . . . 本文を読む
あの横山さんが小説を書いた。それだけで最大限の期待が高まる。でも、読んだ後、これはそのレベルではないな、と思う。今年読んだすべての小説の中でこれがベストワンだ。それくらいに素晴らしかった。彼の芝居は大学の頃の売込隊ビーム『トバスアタマ』からほぼすべて見てきた。iakuになってからの公演はもちろん(ほぼ)すべて見てきた。(今年の夏は孫の子守のため東京に行っていて見れなかったけど。でも初演は見ているし . . . 本文を読む
原田眞人監督の新作は久々のバイオレンスアクション。東映映画によくあるやくざ映画とは一線も二線も(そんな言い方あるのか?)画する作品だ。こんなにもスタイリッシュなヤクザ映画を見たことがない。まぁ原田監督はそのキャリアの初期にもこのタイプのアクション映画は作っていた。郷ひろみ主演の『さらば愛しき人よ』だ。87年作品なのでもう35年も前になるのか。感慨深い。当時はあんなかっこいいアクション映画が日本でも . . . 本文を読む
アマゾン・プライムの扱うマイナーな日本映画のラインナップは凄い。こんな映画が入っているのか、と驚くことも多々ある。それよりなにより、そこにはまるで知らなかった自主制作のような映画まであるのだ。さすがにその全部を見ることはできないし、あまりに出来の悪い映画まで入っているから、慎重に選ぶ。貴重な時間を無駄にはしたくないからね。あたりまえの話だが、この世の中にはたくさんの映画がある。僕たち(もちろん映画 . . . 本文を読む
子供たちのために書かれた本を大人である僕も読む。子供だましなんて言う言葉があるけど、児童書を書く人にはそんなことをする人はいない。恋愛小説の騎手である彼女が書く児童書はいつも明確な目的意識がある。だからある意味少し内容は重くて硬い。ストレート過ぎてきつい。原爆を扱った『ある晴れた夏の朝』なんて特にそうだった。だけど、この重さが胸に染みる。これは誰もがきちんと向き合わなくてはならないことなのだ。
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久々のナンニ・モネッティの新作映画だ。一時期彼の映画祭りのような時代があった。イタリア映画はなかなか劇場公開されないのに、彼だけは別格。あの時代の代表作『親愛なる日記』もこの映画と同時にリバイバル公開される。たぶん『息子の部屋』以来となる日本での新作公開ではないか。(調べるとそうではなかったし、『ローマ法王の休日』も『母よ、』も見ている)
彼らしくない深刻そうで地味な内容で原作ありの作品。(今ま . . . 本文を読む
なんとこれでもう6作目になる。ずっとリアルタイムで刊行されたらすぐに読んでいる。この手の作品で飽きもせず、忘れずに毎回その都度読んできた小説なんて他にない。そういえば神戸遥真の『恋ポテ』シリーズも5冊とも刊行されたらすぐに読んできたけど、本作は6冊なのでこちらのほうが勝ち。(というか、勝ち負けではないけど)世の中にはこういうライトノベルでなら膨大なシリーズがあるようだが、僕はそういうのは一切読んで . . . 本文を読む
監督はこれが長編2作目となる『ペンギン・ハイウェイ』の石田祐康監督作品。2022年9月16日から劇場公開と同時にNetflixでも配信された。だから、ついついTVで(劇場ではなく)見てしまう。そして、少し後悔することになる。これはぜひ劇場でこそ見るべき映画だ、と。暗いシーンが多くて、TVでは見づらいし、テンポが遅くて眠くなるところもある。でも劇場で見たなら緊張感がちゃんと持続できそうだ。こんな単純 . . . 本文を読む
モノクロスタンダードの端正な映画。樋口一葉の短編3作を映画化したオムニバス作品。今井正監督がこの小品小説を丁寧に描いて見せた秀作。だけど、今の時代にこの映画は力を持たない。この映画を見たからといって、あまり何も感じない。昔これも(たぶんTVで)見た気がする。『純愛物語』のようなインパクトがないからそんなことすら忘れている。でも、見たことすら忘れていたのなら初めて(見るような気分で)見たことと同じだ . . . 本文を読む
2時間10分の長編だ。こういうタイプの映画としては長い。アイドル映画の範疇に収まりそうな内容で、70年代の百恵・友和映画でリメイクされていてもよかったのではないかと今さらだが思う。(『泥だらけの純情』なんかよりこれのほうがあの当時の彼らにはぴったり合う)それにしてもこれが1957年のキネマ旬報ベストテンで第2位にランクインしているということに今見たら驚く。これはそんな映画ではない。当時は社会派映画 . . . 本文を読む