ガス・ヴァン・サント監督が、こんなみずみずしい青春映画を撮った。なんだか驚きだ。でも、驚きはそれだけではない。あまりの映画の空疎さ。そっちの方が驚きだ。おしゃれで、ファッショナブルな映画だ。でも、まるで中身がない。
葬式を見るのが大好き(両親を交通事故で亡くした彼にとって、死は身近なものなのだ)な少年と、もうすぐ(あと3ヶ月の命)死んでしまう少女が出会い、過ごす、ひと時の恋愛ドラマ。
少 . . . 本文を読む
例によって疲れているからあまりしんどい映画は見れないけど、でも、映画でも見て疲れを癒せれたならいいな、と思い、レンタルしてきた。ハラハラドキドキのよく出来た映画を期待して、見始める。劇場公開時も、少し気になっていた映画だ。だが、単純そうでこれはそれほど簡単な映画ではない。
大体、ここに描かれるシステムがどんな仕組みなのか、それを考えていたら、頭が痛くなる。すごく難しい。だから、もう何も考えず . . . 本文を読む
これは壮大な冒険物語だ。1942年フランス。ナチのユダヤ人狩りの犠牲になった人たちの悲惨な体験が描かれるのだが、それをサラという少女の目線から描く部分と、現代からあの頃何があったのかを調べていくジャーナリストの視点から描く部分が交錯していく。2つの時代がやがてひとつにつながる。70年以上の歳月を隔てて、サラのなぞを追う女性の想いが、たくさんの人たちの心を動かしていく。
これは過去のお話ではな . . . 本文を読む
実は先に書いたこの小説に関する記事は、読後に書いたのではなく、半分くらい読んだ所で、書いたものだ。だから、あそこにはまるでこの小説がノーテンキなひと夏の物語のように書かれてあるが、既に読んだ人はこれが必ずしもそんな小説ではないことはお見通しだろう。
僕も後半を読みながら、これってちょっと前半と違うじゃん、と思わざる得なかった。秘密のことが、明らかになったところから、だんだん暗い話になっていく . . . 本文を読む
ここまでで終わりにしてもいいくらいに完成度は高い。お話の落とし所は、もうなんとなくわかっているから、着地点には興味はない。ただ、このまどろみの時間(でも、彼らにしてみれば凄い冒険!)をたゆたっていたいだけだ。でも、もう450ページも楽しませてもらったので、結構まんぷくである。第5夜がスタートしたところで、上巻は終わる。お話の途中で、「続く」と出る。いいところで、終わる。なんだかいやらしい。でも、 . . . 本文を読む
なんとNGR初の「王朝もの」である。国造りの話を壮大なスケールで見せていく。なんかNGRではなく、OSKとかSKDとか、タカラズカとか、(要するに歌劇団ですな)そんな感じで、大丈夫なのか、心配だったけど、さすがに浦部さん、負け戦のような芝居はしない。しかも、歌劇ではない。(まぁどこにもそんなことは書いてないんだけど)
ちゃんと勝算があるからチャレンジするのだ。さすが大人である。22年目になる . . . 本文を読む
女性監督である李 玉( リー・ユィー)が、現代の北京を舞台にして、4人の男女が織りなす愛憎劇を見せる。かなりいびつな話だ。登場人物の誰にも感情移入できない。といか、こいつらには嫌悪感を抱く。でも、こんな嫌なやつらのくだらない諍いや駆け引きに魅入られてしまう。
こんな話をなぜ映画にしたのだろうか。まずそこから知りたいと思う。成り金の男とその妻。マッサージパーラーの社長で、妻に隠れて女を買う。そ . . . 本文を読む
バスプールってなんだ? って思った。小説を読み始めるとすぐに答えは出る。バス停のことである。なんだぁ!と思う。意外でも何でもない。想像通りでがっかりする。もっと想定外の何か、を期待した。でも、僕たちの日常にそんな想像を絶するものなんかないし、あったなら困る。知ってしまうと大したことではないけど、知らなければなんだかミステリアスで、ドキドキする。そんなことって、もしかしたら一番大事なものなのかもし . . . 本文を読む
1月公開のイーストウッド最新作をようやく見る。重くて辛気臭い映画だ。しかも、ほとんど部屋の中でしゃべっているだけで、アクションはないし、視覚的な楽しみはない。現在と過去は交錯して、あっちこっちに一瞬でどんどん行き来する。20年代から30年代、若き日のフーパーのFBIを立ち上げる話と、その頃を振り返って、口述筆記で伝記を書かせる話。50年に及ぶ彼とFBIの歴史が紐解かれる。
だが、これは伝記物 . . . 本文を読む
「この海はどんなに深いのだろう」というタイトルがいい。でもこれが浦島伝説だなんて思いもしなかった。作・演出の土橋淳志さんのタッチは、今回も前作に引き続きいくぶん軽い。ブラックボックス(玉手箱)を巡るお話は幾重にも重層的になっていて、お話の構造がなかなか摑めなかった人もいたのではないか。でも、気にすることはない。なんだかよくわからない話に乗せられてぼんやり見ていたらそれはそれで心地よい . . . 本文を読む
2話からなる。ある夫婦の話だ。一つ目の話は、離婚に至る過程を妻の側から描く。二つ目はその後を、夫の側から綴る。ぼんやり読んでいたから、読み終わるまで2つがリバーシブルだなんて気がつかなかった。というか、主人公を変えた続編なのだが、まるで無関係の小説だと思って読んだ。
1話を読んでから、4,5日過ぎて後半の2話目を読んだから、主人公の名前を忘れていたことも大きい。それにしてもうっかりさんだ。お . . . 本文を読む
台湾で爆発的大ヒットとなったTVシリーズの劇場版らしい。それを日本ではTVシリーズと連動することなく公開する。おかげでまるで知名度は低く、当然、劇場には人は来ない。せっかくうまくすればいい商売になりそうな映画を買ってきたのに、東映はもったいない売り方をする。まともな宣伝もなく東映系の番線に乗せ、安易に上映しても誰からも見向き去れないのは分かりきっていたことだろう。
TVシリーズ『ブラック&ホ . . . 本文を読む
吉田修一としてはかなりの大長編である。450ページほどある。でも、それくらいなら『悪人』も同じくらいあった気がする。問題はそんなことではない。内容なのだ。いくらなんでもこれはないだろ、と思った。これってただのエンタメ小説だ。しかもスパイものだったりするし、企業間の抗争とか、エネルギー資源の争奪戦とか、なんだかんだで、今までの吉田修一じゃぁない!
大体僕はこの手の小説は読まない人なのだ。なの . . . 本文を読む
何年か前、この映画の原作を読んだとき、けっこう気に入ったのだが、この映画を見ながら、ずっと違和感を感じていた。それは単純に映画と小説の差なのだろうか。それだけではないだろう。もともとこの題材はけっこう映画向きのはずなのだ。だから映画化はヒットだと思った。昨年11月劇場公開時、すぐに見に行きたいと思い、ちゃんといくつもりだった。だが、評判がかなり悪く、しかもいつものようにすぐに上映が終了したので行 . . . 本文を読む
西川美和監督の第4作。結婚詐欺の話なのだが、コメディーではない。シリアスで見せていくから、かなりきつい。主人公の夫婦を松たか子と阿部サダヲが演じる。計画を立てるのは妻のほうで、詐欺を行うのは夫のほう。反対のほうが上手くいきそうに見えるのだが、実際は美人の女より、別に男前ではなくどちらかというと風采があがらない男のほうが、うまくいくのかもしれない。だから、これで正解なのだろう。情けない男を正直に演 . . . 本文を読む