張り出し舞台で客席はコの字型に作ってあり、3方向から舞台から舞台を囲むようになっている。舞台奥の本来の舞台となる部分にはナイトクラブの設定がなされており、そこではもう一つのドラマが並行して展開していくことになる。アンサンブルとしてのドラマが本編と時には同時進行で、あるいは本編に挟み込まれながら演じられていく。背後のドラマは無言劇である。あくまでもこれはテネシー・ウィリアムズの短編戯曲の2本立てで . . . 本文を読む
とてもわかりやすい芝居だった。わかりやすすぎて、不思議な気分だ。林慎一郎さんがこんなにも捻りのない芝居を作るなんてことは今まで1度としてなかったはずだ。単純すぎて拍子抜けした、というのではない。それどころかここまで単純な話をこんなにもスリリングに描いた手腕には脱帽する。おもしろいのだ。当然ながら。
だが、なぜここまでわかりやすい芝居を作ろうと彼がしたのか、それが気になって仕方ない。思わず終演 . . . 本文を読む
2組のグループが湘南の古い旅館のロビーで集う。ひとつは、この旅館にずっと住んでいる作家と、彼の再婚相手となる女性、そして、彼の3人の娘たち。もうひとつは、高校のボート部のOBたち。彼らはここで今夜同窓会を開く。この2組のお話を中心にして展開されていく。そこに、もう一組。なんだか訳ありふうの男女も登場する。
この作品も、いつもの平田オリザさんの芝居と同じだ。公共の場所を舞台にして、そこで彼らが . . . 本文を読む
楳図かずおの傑作漫画を高橋洋脚本、鶴田法男監督で描く期待のホラー映画。こういう企画がどこから生まれてくるのか、なんだか不思議だが、生まれたのだから、見ねばなるまい。ということで、見てしまった。
昨今の日本映画は漫画の映画化が大手を振っているが、人気コミックの安易な映画化ではなく、こういう古典を今更やるなんて、どういう経緯から生じるのだろうか。ということで、見てしまった。
「見てしまった」 . . . 本文を読む
こういう長編のダンス作品はとても難しい。ダンスは、芝居と違ってストーリーを持たない。だが長編を支えるためには幾分かのストーリーラインがなくては持たない。それは維新派を見ても同じように思う。せいぜい20分くらいの短篇としてなら成立するが、それ以上のものはどうしても単調になりがちだ。
それでも長編として表現する場合にはなんらかの仕掛けが必要だ。その一番単純な方法がストーリーなのである。流れいく意 . . . 本文を読む
最近こんなにも楽しみだった小説はない。まるで子供の頃に戻ったみたいで、無邪気に香織と早苗の2人のその後が気になってしかたなかった。
だが、読んでみると思ったとおり、前作には及ばない。分かっていたことだがでも、なんだかそれは悔しい。だいたいあの小説はあれでもう終わってしまっていた。なのに、強引に続編を書くから、こんなことになってしまうのだ。
もうすべて終わったことなのだ。もちろん2人の人生 . . . 本文を読む
『死神の精度』とよく似たストーリーラインを持つ。ただ、あの映画はファンタジーだが、こっちはリアルな話だ。設定は面白いがそれを支えるだけの世界観はないから、いささかリアリティーには欠けるが、きちんとした人間描写でなんとかその弱点をフォローする。さすが『樹の海』『犯人に告ぐ』の瀧本智行監督である。
3話構成。24時間以内で死ぬことを告知する(まさに死神だ!)という仕事。その後、彼らの人生に関与し . . . 本文を読む
つまらなかったなら泣くぞ、と思いながらかなりドキドキして劇場に足を運んだ。『ナイト・ウォッチ』のロシア人監督のハリウッド進出第1作である。かなりぶっとんだ映画だという評判だった『ナイト・ウォッチ』にはがっかりさせられた。あんなにもド派手なアクションを見せながらもお話がよくわからないし、もたもたするからだんだん退屈してくる。せっかくの迫力映像が台無しだった。
いくら凄い映像を見せようともお話が . . . 本文を読む
読み終えてちょっとため息をついた。やるせない気分になったからばかりではない。山本文緒、やるじゃない、という賞賛の気持ちからだ。今までのように自分の不幸をねちねち書いていくのではなく、対象との距離のとり方がとてもいいと思った。題材が恋愛とは少し違うところにシフトチェンジしたために、距離が取りやすかったのかもしれない。
3話ともそれぞれに面白かったが、表題作の『アカペラ』のラストの突き放し方が素 . . . 本文を読む
『野を焼く』以降高橋恵さんの作品には目を見張らされる。自分を見つめる厳しい目と、この世界をきちんと描いていこうとする冷静さ。そのバランスから、絶妙な緊張感を孕み持つ空間を作り上げていくのがすばらしい。前回、太陽族の岩崎正裕さんとの共同制作となった『フローレンスの庭』を通して、作家としてのキャパシティーをさらに広げた感のある彼女が再び自らのフィールドに戻って来た最新作がこの『冬のトマト』である。 . . . 本文を読む
このリーディング・ドラマというスタイルにどうしようもない違和感を持つ。最初、役者たちの手にした台本が芝居に対する集中力を削ぐ。ストレートに芝居世界に入れないのだ。役者たちの肉体が芝居を損なっていくようにすら見える。これがラジオドラマだったなら、全く違和感なくすんなり受け入れられたかもしれない。出来ることなら目を閉じてドラマに集中したかったくらいだ。
錚々たる関西小劇場界を代表する役者たちが一 . . . 本文を読む
9月のアトリエ公演『メイズ』は今までのNGRとは少しタッチの違う作品で、とても興味深く見た。あれは芝居がきちんと完結していかないまま宙ぶらりんになった作品で、かっての浦部さんはそういう芝居を作らなかったはずだ。(いつもきちんと決着をつけなくては終わらせない。)シンプルだけど、一筋縄ではいかない、というところもよかった。
あれは象徴としての機械を巡る物語だ。工場で働く女たちは繰り返し繰り返し同 . . . 本文を読む
瀬々敬久監督の新作である。しかし、よりによってこういう青春映画が彼のところに回ってくるなんてなんだか、不思議だ。しかも彼がそれを引き受けたのも、謎だ。いくら考えても瀬々さん向けの題材とは思えない。
ということで、かなりびびりながら見た。そして、期待を遥かに超越する。ものすごくびびってしまった。これは一体なんだ!これがあの瀬々敬久作品なのか?僕にはまるで納得がいかない。こういう毒にも薬にもなら . . . 本文を読む
映画監督、原田眞人による初の長編小説。かっての『タフ』や『KAMIKAZE TAXI』さらには『さらば愛しき人よ』といった初期の頃の彼に戻ったようだ。最近は社会派監督のようになってしまったが、こういうノワールでこそ彼は力を発揮する。本業の映画の方では今はこういう企画が通らないから、小説の世界でやってしまうなんてとても彼らしい。
500ページに及ぶ大作である。そしてもちろん彼の本領を十二分に発 . . . 本文を読む
とても真面目な芝居だ。登場人物の感情の動きがあまりにストレートすぎて、見ていてちょっと腰が引けてしまうくらいだ。こんなにも単純に物事が運ぶのなら世の中楽だ、と思う。現実にはありえない。しかし、こんなにも真面目な人たちなら、こんなふうになってもいいと思う。真面目な人が損ばかりする世の中で、真面目に生きる人がハッピーエンドを迎える芝居があったっていいではないか。
いい年した兄と妹が二人で暮らす部 . . . 本文を読む