3年ぶりにストーンエイジが活動を再開した。東京公演と大阪公演では、同じタイトルの別作品を用意して上演したらしい。僕が今回見たのはその大阪版。(鮒田直也さんの手による東京版も見たかった)アサダタイキさんの作、演出によるこの作品は、いい意味でも悪い意味でも、今までのストーンエイジらしさをひきずった緩さを持つ芝居になっている。
いいかげんなストーリーとノーテンキな展開は、時にはイライラさせられるが . . . 本文を読む
マーチン・スコセッシの新作なのだが、なんとも中途半端な作品だ。『ケープ・フィァー』ラインでの仕事で、作りものめいた設定の中、いかにも「お話」という感じの謎解き映画は始まる。まぁ、悪くはない映画だが、わざわざ見るまでもない。
前半は一体どうなっていくのか、と結構ドキドキもする。しかし、ちりばめられた謎がうまく機能していかないからだんだんイライラしてくる。さらには後半に入ると、話自体が何でもあり . . . 本文を読む
|フェデリコ・フェリーニ監督の「8 1/2」のミュージカル版「ナイン」の映画化。何よりもまず、これがフェリーニの『81/2』を題材にしたミュージカルと聞き、ものすごく興味を持ってしまった。そんなんありか、と思った。
期待というよりも、そんなアホな企画でよくもブロードウエイミュージカルが出来たものだな、という驚きがまずある。それを『シカゴ』のロブ・マーシャルがアカデミー俳優たちをきら星のように並 . . . 本文を読む
4年間の記憶を失うという事実が大切なのではない。このリアルとはほど遠い映画がおもしろいと思えるとしたら、それはこの映画が【忘れてしまう】ということを巡る寓話として機能したときだ。誰が私にキスをしようが、しまいが、そんなことどうでもいい。彼女はそのことを覚えていないことが気持ち悪い。
たかが、キスのひとつやふたつで大騒ぎするほどのことはない。だいたい元カレが彼女の部屋に忍び込んできて、記憶のな . . . 本文を読む
なぜだろう。今頃別役が、なぜかとても新鮮だった。アイホールの現代演劇レトロスペクティヴがあんなにもおもしろかったにも関わらず、どこかで違和感が拭い去れなかったのとは裏腹に、この同じように古い作品の上演がまるで違和感なく受け入れられたのはなぜか。アイホールの3作品に感じた居心地の悪さは、それらが中途半端に古いことと、時代をくっきりと象徴した内容であったことが影響しているはずだ。それが、今の感覚では . . . 本文を読む
5つのエピソードからなる短編集。高校に入学して、新しいスタートを切ったこどもたちの群像劇になっている。
うまく人とつきあえない不器用な少年少女たちが、それぞれ、自分とむきあい、自分に出来る範囲で努力して、日々の生活を送りゆく姿は、読んでいて胸にしみる。決してうまい小説ではない。『スノウ・ティアーズ』を既に読んでしまった以上は、このたった1年半前のこの作品が、とても幼いものと見えることは事実だ . . . 本文を読む
若い集団によるエネルギッシュな舞台を見ていると、思わず応援したくなる。ちょっと特異な設定のもと、のびのびと自分たちの想像力の翼を広げて、1本のドラマを立ち上げていこうとする姿勢は買う。ダンス・シーンを中心にして見せていくのも悪くはない。
高校のクラブ予算会議。生徒会長と各部のキャプテンたちによる予算分捕り作戦が描かれていく、はずなのだが、気がつけばなんだか話がどんどん横滑りしていく。予算折衝 . . . 本文を読む
シアターカフェNYANで2時間の長編を上演することは無謀ではないか、という外野のいらぬ心配を他所にして、伊藤昌弥さんはしたたかにこの作品を仕立ててしまった。参りました、と言うしかない。
この作品が示した方向性が、今後のこういう狭い空間での演劇の一つの可能性を押し広げることになればいい。作り込めないスペースでの演劇についてはこれまでも様々な挑戦はなされてきたが、この芝居の当たり前の仕掛けは目か . . . 本文を読む
アサヒカメラに連載された『シーナの写真日記』の02年1月号から09年6月号を収録したもの。写真とエッセイからなる。まぁ、いつものシーナさんだ。読んでいて(同時に見ていて)なんだかこちらまでのんびりした気分にさせられる。旅の空の下で、写真を撮り、人と出会い、それを繰り返していく。永遠にそんなふうにして人生を過ごす。昔からそうだし、今もずっとそんな感じだ。
椎名さんの本を読み始めてもう何10年た . . . 本文を読む
久々のジョナサン・デミである。あの『羊たちの沈黙』の監督の、と言う方がわかりやすいだろう。それくらいにあの1作はインパクトが強い。そしてあれ以降彼の映画はいまいちパンチの効かない映画が多い。ということで、忘れかけていたところに本作が登場した。
これがまた久々に彼らしい映画になったのがうれしい。インディーズ出身の彼だからこそできる大胆な手持ちカメラ多用のホームムービーのような映像がこのドキュメ . . . 本文を読む
74年にタイムリープする、ってなんか凄くないか。なぜ、よりによって74年だったのだろうか。あまりに身近すぎて、あの時の、ときめきとか、憂いがよみがえってくる。
中学3年から高校1年になる春。この映画が描いた時代である。主人公の芳山あかり(仲里依沙)は18歳だし、彼女が出会う青年(中尾明慶)は20歳。あかりの母親である芳山和子は17歳か。
僕である。74年の僕の話だ。高校入学前夜である74 . . . 本文を読む
阪本順治監督の傑作映画ではない。僕はよくは知らないのだが、これは人気ゲームらしい。世界中で大ヒットしたゲームソフトの実写映画化がこれらしい。ゲームマニアなら誰でもよく知ってるものらしい。
こういうゲームの映画化はほんとに多い。需要と供給の関係から製作されるのだろうが、いつもつまらない。今回も試写会に誘われたから、ついつい見てしまったが、僕には何の意味も持たない映画だった。格闘シーンがだらだら . . . 本文を読む
また高校生小説だ。それでなくても普段から高校生ばかり見てるんだから、プライベートは勘弁して欲しい。(と、いうのは、嘘だ。僕は自分の高校生たちと同じように、映画や小説の中の高校生たちも大好きだ)
すばる小説賞を受賞したこの小説は、まだ大学生の新人作家が書いたとても胸に痛く切ないドラマだ。現役世代と限りなく近いリアルな小説だ。感傷的で甘い作風は、描かれることと今の時間があまりに近くて充分な距離が . . . 本文を読む
とても簡単な話なのだが、それをとても丁寧に見せていく。その結果映画は間延びするか、と思ったのに、反対で、極度の緊張感を伴い、最後まで息を詰めてスクリーンを見守ることとなる。一瞬たりともスクリーンから目が離せない。これはもう見事と言うしかない。
たった一度、剣の手合わせをしただけ。だが、その後ずっとその男を想い続けて、彼を見守り続ける。罠に嵌められて自害した彼のために敵討ちまでする。自分には許 . . . 本文を読む
キャスリン・ビグローの『ハートブルー』が大好きだった。あんなにもおもしろいアクション映画はなかなかない。ドキドキしながら楽しめて、ドラマとしての奥行きがあるから見た後には余韻がちゃんと残る。単純なアクション映画ではないのだ。FBI捜査官キアヌ・リーブスがパトリック・スゥエイジ率いる銀行強盗団グループの潜入捜査をするうちに、彼らの自由さに染まっていき、その魅力の虜になる。スリルを楽しむための犯罪。 . . . 本文を読む