昨年の『織田信長』を見逃している(悔しい!)から久しぶりのブルーシャトルプロデュースである。先日見た劇団ひまわりでの公演に続く大塚雅史、作・演出作品。これはエンタメ作品だけど、何度となく取り上げてきた幕末期を生きる若者たちの群像劇は青春ドラマとしても楽しめる。
彼らが不安な時代を全力で生きていく姿はいつも感動的だ。これは偉人伝ではない。名もない若者たちの戦いの物語。吉田松陰を演じた松田岳が素晴ら . . . 本文を読む
11月公演に続いて今月も冨田倶楽部を見ることが出来た。彼らは今年の春からスタートして来春までの1年で10本(ほぼ毎月1本)の芝居を作り上演する、なんていう無謀なことに挑戦している。そんな冨田倶楽部の12月公演。今回は堀江佑未の作品。演出クレジットはない、ということはみんなで相談して作っているのだろう。もちろん中心メンバーである升田さんと作者である堀江さんが(たぶん)リードしているのであろうが、台本 . . . 本文を読む
深津戯曲にオダタクミが挑む。何故『うちやまつり』ではなく『熱帯夜』だったのか、が気になっていた。深津篤史の代表作に取り組むのは敷居が高いとでも思ったのか。本人に聞きたかったけど、それはまたの機会にしよう。
仕上がった『熱帯夜』が素晴らしすぎてそんな疑問は瑣末な話だと思う。この作品のわからなさに痺れる。桃園会の同作品以上のわからなさ。これは『うちやまつり』の前日譚として書かれたスピンオフ作品である . . . 本文を読む
今年のクリスマス公演は昨年に引き続いてしろみそ企画のなかしまひろきの作、演出。(というのは間違いで、なかしまさんは一昨年! 昨年は伊地知さんでした)彼がふだんの邂逅とは一味違う世界を見せてくれる。ファンタジーだけど、今回はあまりに等身大の人たちの群像劇でこんな邂逅は見たことがない。なかしまさんだからこそ可能だった邂逅ワールドだろう。ここは昭和に建てられたオンボロアパート。そこで暮らす訳あり住民たち . . . 本文を読む
劇団大阪、シアター生駒の杉本進が演出、主演する。娘を演じるのはシアター生駒の中西康子。もちろんこれは言わずと知れた井上ひさしの傑作戯曲である。公演会場は東生駒ギャラリー宗。狭い空間が心地よい。このふたり芝居を朗読劇として見せる。原爆投下から3年後の広島。ひとりぼっちの娘のもとにあの日亡くなった父がやって来る。なんと客席と役者たちとの距離は1メートルない。こんなにも近くで芝居を見るなんて生まれて初め . . . 本文を読む
このタイトルを読んだだけでは気づかないだろうが、このタイトルを音で聞いたらなら「これはもしかして、」と思うことだろう。もちろんそうである。これは芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を下敷きにした作品である。(と思う)
とは言っても、まるでお話は違う。芥川をリメイクしたわけではなく、蜘蛛も雲も出てこない。ただ手を差し伸べるものに縋りたいという想いは共通する。僅かな細い糸にでも縋りつきたい。だけど叶わない。
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今年も近大舞台芸術専攻の年末年始、創作演習公演を見に行くことが出来た。この先も2本見る予定。水沼健の指導による本作は土田英生作品に挑戦する。MONOの作品を水沼さんの演出で見ることが出来るってなんだか贅沢。きっとMONOによるこの作品はとても面白かったのだろう。この作品は微妙なニュアンスによって楽しむことができる作品だが、それは大学生たちの芝居によって表現できるものではない。彼らはとてもよくやって . . . 本文を読む
大沢秋生の芝居を見るのはいつ以来だろうか。90年代(調べたら93年から2000年代だったけど)ニュートラルの数々の作品で一世を風靡した。あれから気の遠くなるほどの時間が過ぎていった。この芝居を見ることにしたのは彼が演出を担当しているから。それだけ。もちろんレトルト内閣の福田恵が企画、主演しているというのも魅力的だったけど。ピン芸人だというどくさいスィッチ企画が台本を担当する。彼のことは僕は全く知ら . . . 本文を読む
内藤裕敬の作、演出。チラシがまるで出回っていないので、ほんとうにこの公演はあるのか、と心配したけど大丈夫だった。ウイングで話を聞くと敢えてチラシを作らない(配布しない)という方針らしい。納得する。事前情報はまるでなく、大旅軍団という劇団のことも知らないで、内藤裕敬が作、演出をするということだけで見たのだが、内藤さんらしい作品で楽しめた。作りが緩くて役者たちの裁量に委ねられる芝居は『青木さん家の奥さ . . . 本文を読む
今年最後の神原作品。今年も例年通り年に4回芝居を打つ。そして最後は恒例のオムニバス『わらわら草紙』である。今回も3話からなる短編集。来年は4本にしよう、と神原さんが話していたけど。きっと来年もあるということかぁ。しかもこの『わらわら草紙』は次回で10回目になる。そして、彼女は来年も年に4本芝居をすることになる。
今回の共通テーマは「お祝い」。ということだが、あまりストレートなものではないから、後 . . . 本文を読む
外輪能隆が関西演劇祭に参加した。吉本の作る演劇コンクールにまさかevkkが参加するなんて。エンタメ芝居ではないから違和感があるけど、敢えて彼がその挑戦に望んだ以上、それを見てみたいと思った。企画物だから規定があり1本45分、他の団体と抱き合わせの上演となる。45分という制約下だから小さな芝居に納めるべきところを、反対にそこで大きなお話を作る。大胆な作劇をする。ベースは人魚姫の物語。部分的にはこれは . . . 本文を読む
今年初めに二兎社によって上演されたという永井愛の新作(ではなく、2003年作品の再演だった。どおりでお話がなんだか古いなと思ったはずだ)に劇団きづがわが挑む。これは楽しい。わかりやすい展開で安心して見れる。出てくる人たちがみんな悪人っていうのも凄い。しかもスーパーを改革させようとして戦っていたはずのあの店長も、って、なかなか凄い。善と悪の戦いという壮大なドラマを潰れかけたオンボロスーパーを舞台にし . . . 本文を読む
evkkの公演と抱き合わせ上演だったので見ることになった。初めて見る劇団である。こういう偶然も楽しみたいと思い見始めた。
なんとこの劇団は創立40周年になるらしい。凄い。しかも劇団の座長が23歳の娘さんに変わったという。実の娘である。母子2代で芝居をする。そんな小劇団がある。(さっきまで見ていた劇団きづがわも主宰の林田さん夫婦と娘さんである彩さんでずっとやっているけど)
僕はこ . . . 本文を読む
久々の劇団大阪公演である。15年振りの再演となる。前回は初めてこの戯曲を見たからかもしれないが、当事者である子どもたちが出ない芝居に憤りを感じた。その後他の劇団での公演も見ているが、今回久々に劇団大阪による公演を見て感心した。今回も、もちろん熊本一による演出。劇団大阪にとっては2年振りの本公演であり、しかも第90回の節目にもなる。役者たちがとてもいい。それぞれが勝手だけど、自分の子どもを守りたいと . . . 本文を読む
長尾高校以外に見た二作にも少し触れておく。長尾を含めていずれも役者たちが達者で安心して見ていられる。予選を勝ち切って府大会に出場している学校なのだから当然かもしれないが、実に上手い。冒頭の前説だけで感心させるワンエピソードを成立する精華高校作品は、『椿姫』をベースにしたメインの話(らしいが、僕にはどこが椿姫なのか、わからなかった)に、さまざまな生徒たちによるエピソードを絡めて描く高校生アルアル。恋 . . . 本文を読む