彼女の心は少しずつ壊れていた。そして、ある日突然、他の人格が入ってきて爆発する。自分には言えないことを言う。他人が(といっても、母親をはじめとする一番身近な人たちだ)憑依して、本音を話す。彼女が抱えるものを、ひとつひとつ見せてくれる。
優しい夫は彼女を守ろうと必死になる。でも、彼にできることなんか知れているし、彼自身が自分に何ができるか、気づいてはいない。自分の身に降りかかってきた災難のように思 . . . 本文を読む
これが角川春樹の最後の監督作品になるらしい。78歳。8本目の映画。今まで毎回全く違うジャンルの映画を作ってきた。どれもそれほど面白くはない。だけど、彼は自分の撮りたい映画を作ってきた。『犬神家の一族』を皮切りにして一世を風靡した製作者として数々の作品を作ってきた。角川映画は70年代から80年代の日本映画界をリードした。でも、映画監督としては評価されていない。趣味の域を出ない作品しか作れなかったから . . . 本文を読む
久しぶりに映画館で映画を見た。と、いっても1週間ぶりだ。ぜんぜん久しぶりではない。でも、ネットフリックスで散々映画を見ているから、映画館は久しぶりだという気分にさせられる。ネットフリックスで膨大な映画(ドラマやアニメはさらに凄い量だ)を見ていると、見た鼻から忘れていく。タイトルを記録しておかないと、何を見たかもすぐ定かではなくなる。映画はここでは消費されるだけ。たいへんな想いをして作られたはずの作 . . . 本文を読む
「破天荒な芝居と映画とを見て、小説も読んだ。たまたま重なっただけだけど、なんだかうれしい。だいたい本格的な芝居を見るのも久しぶりのことだ。」と、 まず、今朝は書いた。これはその破天荒すぎる小説のお話。今日は1日この小説も読んだ。
こんな小説ありか、と思う。2歳の頃から好きだった男性と結婚する。彼は幼馴染とかではなく、ずっと年上で、出会ったときは彼はもう中学生だった。ということは10歳くらいの年 . . . 本文を読む
破天荒な芝居と映画とを見て、小説も読んだ。たまたま重なっただけだけど、なんだかうれしい。だいたい本格的な芝居を見るのも久しぶりのことだ。と前回も書いた。で、これはその映画。
『テネット』も大概な映画だったが。これもそう。写真集の映画化なんて今までなかったはず。詩集の映画化なんていうのもあったけど(石井裕也の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』だ。)今回の中野量太監督はインスパイアは作者である浅田正 . . . 本文を読む
破天荒な芝居と映画とを見て、小説も読んだ。たまたま重なっただけだけど、なんだかうれしい。だいたい本格的な芝居を見るのも久しぶりのことだ。
ある夏の日、とある地方の集落で暮らす夫婦のところにいつものように近所の老人がやってくる。これはそんな1日のスケッチだ。そして、これはある種の不条理劇であり、コメディでもある。だが平田オリザが演出するので、そうはならない。淡々とした日常のスケッチになる。だけど、 . . . 本文を読む
とても微妙な映画だ。特別な出来事は何もない。14歳の少女の心の揺らぎだけが丁寧に描かれていく。だけど、芦田愛菜から目が離せない。だけど、それが大きなドラマにはならないから、映画としてはなんだかもどかしい。こんなにも何もないお話で1本の映画が成立する。だからといってこれは愛菜ちゃんの一人芝居ではない。大森立嗣監督は日常の描写から彼女の内面の葛藤を丁寧に掬い取る。怪しげな宗教に嵌ってしまい、信じること . . . 本文を読む
こんなにも痛ましい映画を見なくてもいいのではないか。そう思う。つらくなるばかりだ。でも、これを見たいと思ったのは、正直な映画と向き合いたいという想いからだ。それと、わざわざたくさんある映画の中からこれを選んだのは、今の自分の気分と近いからだ。
まったく気が晴れないことばかりで、何もしたくはない。だから、映画も見ないのだが、それに見ても、素直に楽しめない、今は純粋に映画の世界に浸れないからだ。だか . . . 本文を読む
今の自分の想いと通じる映画は傷ましい気分と納得。どうすればいいか。どうしようか、その想いも交錯し、身につまされる。60代の男が主人公だ。まだ、老人とは言えないけど、仕事もせず、無為に時を過ごす。妻が出ていき、ひとりぼっちになった。台湾で暮らす母親も死んだ。帰るところもない。というか、台湾からアメリカにやってきて、30年以上の歳月が経つ。ここが彼の場所だ。子供はふたりとも独立した。娘は今、精神を病ん . . . 本文を読む