若手劇団で、デビュー作で、いきなりHepホールで公演を行うなんて、もうそれだけで大胆。しかも、よくある派手で、わかりやすくて、楽しいエンタメではなく、地味な家庭劇。ひとりよがりスレスレのラインで勝負を賭けるのも、作り手の自信と若さの証明だろう。なんだかそれだけでドキドキするではないか。
一体これは何なのか、わからないまま、ストーリーが進んでいく。3つのエピソードが . . . 本文を読む
これはなんだぁ、思わず、のけ反るような芝居だ。近年稀にみる珍種。びっくりしゃっくり。こんな舐めた芝居を見るのは久しぶりのことだ。どうなるのか、予想もつかない。というか、オレは何を見ているのか、と自分の目を疑う。これは芝居だと言えるのか。悪夢のような2時間だった。
そのうち、ちゃんとしたお話になる、と信じて2時間10分耐えた。周囲の人たちは、楽しそうにしている。僕だけ異次元ポケット . . . 本文を読む
小説だと思って読み始めたら、エッセイ集だった。(というか、本を開いたら、そんなことすぐにわかる)でも、このタイトルの小説をぜひ、読んでみたかった。そこにはどんな秘密が描かれてあるのだろうか。夢のような世界が広がるのか。それとも、悪夢か。
図書館が大好きだ。旅行に行くと、いつもその土地の図書館を巡ることになる。別にそれが目的なんかではないけど、ついつい図書館を見かけ . . . 本文を読む
『愛して飲んで歌って』
これがアラン・レネ監督の最後の作品になった。学生の頃、『去年マリエンバードで』に憧れて、ようやく見た実物の『去年マリエンバードで』に感激し、映画というものの本当の魅力を知った。10代の僕にとって、レネは映画の神様だったのだ。
それからすべての作品を追いかけた。広島、原爆を扱った『二十四時間の情事』、アウシュビッツを描くドキュメント『夜と霧 . . . 本文を読む
3月のウイングフィールドは若手劇団(「若劇」)の作品が、連続して上演される。たまたまなのだろうけど、とてもドキドキするし、刺激的で(そのぶん、少し見るのは怖いけど)楽しいラインナップだった。(残念ながら、この後、月末の淀川工科の芝居は見に行けない)
ウイングカップの後夜祭(表彰式と講評)を挟んで、ここでは若い劇団の芝居をたくさん見た。ウイングだけではなく、この2月 . . . 本文を読む
この密室劇の緊張感はなかなかのものだ。グザヴィエ・ドランが演じる青年に翻弄される精神病院の院長が主人公。失踪したドランの担当医の所在を巡り、本来なら人の心を読むはずの精神科医が、一人の患者である青年(実に厄介なやつなのだが)に簡単に振り回されていく。
シンプルな人間関係、登場人物、単純な話。だが、その底には複雑な仕掛けが施されてある。冒頭の少年時代のシーンから一気 . . . 本文を読む
『ハイ・ヌーン』(『真昼の決闘』ね)が編み出した上映時間と映画内の時間が一致する、というパターン。だが、これはそれだけではない。主人公は車から出ない。登場人物は彼ひとりだけ。しかも、運転しながら、ずっと電話してるだけ。夜の8時半くらいから10時まで。自宅に戻るはずだったのに、愛人が出産(まだ予定日まで2カ月あるのに、破水した!)のために入院した病院のあるロンドンに向けて走る。
& . . . 本文を読む
鬱病から休職していたサンドラはなんとか回復して職場復帰するはずだった。なのに、電話一本でいきなり会社から首にされる。彼女がいなくても、職場はまわることがわかったからだ。彼女の首を受け入れたなら、16名のスタッフには、1000ユーロのボーナスが支給される。そんな話、ありか。憤慨した彼女は会社と戦うことにする。社長の提案は、週末の2日間で、16名の過半数から、サンドラの復帰(それはボー . . . 本文を読む
『父帰る』『ヴェラの祈り』のアンドレイ・ズビャキンツェア監督第3作。今回初めて上映時間が2時間を切った。1時間49分という手頃な長さ。ロシア映画は重くて長い、という従来のパターンから抜け出した意義は大きい。、まぁそういう半分冗談のようなことだけではなく、これは彼のここまでの2作品から大きく前進した作品になった。
ファーストシーンを見た時、また、また、これはきつくて . . . 本文を読む
作者にとってなんと10年振りの新作長編となる自伝的小説。らしい。そういえば。原田宗典なんて久しく読んでなかったな、なんて思いつつ、本を手に取った。そのまま、読み始めた。彼と僕とは同い年で、そんな彼が、ここで「死を巡るお話」を書く。今、このタイミングでこういうものを読むことになった偶然を思う。身近な人が死ぬ。身近だった人も死ぬ。そういうことが続くと、死について、考えざるを得ない。落ち . . . 本文を読む
なんだか可愛いタイトルなのだが、これは50代の冴えないおじさん(大学で非常勤講師をしている小松)が主人公で、彼が、年下の友人宇佐美(だから、うさちゃん)と、飲みながら話す。それだけ。
小松とうさちゃん。それに小松が好きになる同じ年(だから52歳)の女性みどりさん。(彼女にはちょっした秘密がある)この3人のお話で、短いエピソードとすら言えないほどのお話がどんどん綴ら . . . 本文を読む
「劇団浮狼舎番外公演」とクレジットされているけど、本公演としての上演は今は不可能という状態であることが、神原さんからの案内や、当日パンフの「口上」の文から十分伝わってくる。「旗揚げから28年」。解散ではなく、メンバーがいなくなる、という状態でそれでも浮狼舎として芝居を打つ。そんな神原さんの心意気に胸が熱くなる。もちろん、「本公演」をしないのではない。メンバーさえ集まればいつでもスタンバイOKである . . . 本文を読む
キューブリックの『2001年宇宙の旅』の冒頭の衝撃的なシーンがこのタイトルの所以なのだが、芝居自体もあの場面に言及している。主人公のふたりの出会いのシーンでそれは語られる。工藤俊作と久保田浩演じる男たちは駅のベンチで出会い、会話を交わす。ここはリアルな場所ではなく、そこは幻想と出会う場所で、宮沢賢治のファンタジーを思わせる。もちろん、『銀河鉄道の夜』だ。ということは、ふたりはジョバ . . . 本文を読む
3人の男の子たちのお話から始まる。中学の卒業式の後、思い出作りのため、山に登る。だが、事故に会い、雪が積もり、下山できなくなる。ひとりの少年が助けを呼びに行く。彼の帰りを待つ怪我して意識のない少年と、もうひとりの少年。タイトル前のこの冒頭のエピソードの後、現在の時間に飛び、お話が始まる。あれから20年。
最初は何の話なのか、なかなか分からない。事件が起きて、そこからは一気に作品世 . . . 本文を読む
このストレートなタイトルとそれに呼応するような内容。最初は、こんなつまらない小説を読んでしまったことを後悔した。途中で何度となく止めようと思った。でも、途中で辞めるのは嫌いだから(でも、本気で時間のムダ、と思うとすっぱりやめるけど)最後まで読んだ。とりあえずは、納得はしたから、いいとする。だけど、あのオチはないわ、と思う。ああいう安易なオチを用意するから小説のレベルが下がる。もちろ . . . 本文を読む