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映画・演劇のレビュー

加藤秀行『海亀たち』

2018-02-26 21:44:18 | その他
『シェア』『キャピタル』の新鋭がまた、とても魅力的な作品を仕立ててくれた。このなんとも言い難い空気が好き。たまたまTVでタイに行ってしばらく生活する旅行番組を見た直後読んだので、微妙にシンクロして面白さがアップした。   何をしてもうまくいかない閉塞感。若くして人生をあきらめてしまったような気分。会社を辞めて起業する男の話なのに、それってなんだあ? ベトナムでゲストハウスを開業する。ダナンの浜 . . . 本文を読む
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冷凍うさぎ 『No Surprises』

2018-02-26 21:40:06 | 演劇
面白い芝居なんだけど、作りが緩いから作者の意図が充分には伝わりきらない。わざとメリハリのない作り方をしてはぐらかすような見せ方をしているのだろうが、それがもどかしい。上手く作れば、よくわからないということが魅力にもなるはずなのだ。意図的に意図が伝わらないように作っている(気がする)。なのに、それが惜しいところで空回りしている。 ストーリー自体は実に単純なので、必要以上の説明は不要だろう。チラシに . . . 本文を読む
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『昼も夜も』

2018-02-26 21:37:07 | 映画
塩田明彦監督の『昼も夜も』を見た。劇場公開はされていないようだ。ネット配信とDVDだけか。最近こういうタイプの映画も増えている。(これって映画というのか?)低予算だけど自由な作り方が可能だ。 山間の国道沿いにぽつりとある中古車販売の店の前、少女が車から引きずり抛り出されるシーンから始まる。映画の舞台はこの中古車販売店。 養父の跡を継いで、この店を切り盛りしている青年が主人公。彼は赤ちゃんの頃、 . . . 本文を読む
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『リバーズ・エッジ』

2018-02-25 08:52:18 | 映画
とてもつらい映画だ。こういう現実から目を背けたい。これが90年代の前半という時代の空気を再現しているとは思わない。あの頃だって楽しいことはあったはずだ。というか、あまり覚えていない。目の前の自分の毎日しか見ていなかったから、バブルの頃だって、まるで印象に残っていないのだから、さもありなんであろう。嫌な時代の気分を描いているというよりも、嫌なものを見せられた、という気分だ。しかし、彼らの閉塞感と寄り . . . 本文を読む
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『不能犯』

2018-02-23 22:32:37 | 映画
  たまたま時間が空いたから埋め草として見た映画なので何の期待もしていない。ほんとなら他の映画で見たい作品がいっぱいあったのだが、これしか時間が合わなかったので、思い切って見ることにした。こういうパターンで偶然見る映画が当たりである確率は実は高いのだ。しかも、土曜の昼間だったので、席が後2席しか残っていないという絶体絶命のピンチを切り抜けて劇場に駆け込んだ。TOHOシネマズの最前列なんかで映画を . . . 本文を読む
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『東京ウインドオーケストラ』

2018-02-23 22:27:41 | 映画
   ありえないことが起きてしまった。もうどうしようもない。それをどこに収めていくのか。最初はお互い気づきもしなかった。だが、なんだか、おかしいな、とは思っていたはずだ。でも、呼ばれたのは事実なんだから、行っちゃえ、と思い屋久島まで来た。有名なオーケストラとよく似た名前だったから間違えられて招聘された市民楽団が、市の大ホールでコンサートをすることになる。その顛末記だ。   10人のメンバーは . . . 本文を読む
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『だれかの木琴』

2018-02-23 22:15:43 | 映画
  東陽一監督の久々の新作。どうして井上荒野の作品なんか今頃取り上げるのだろうか、と不思議だった。80代に達した彼ほどの巨匠がこんなタイプの小説を取り上げるということが不思議だったのだ。だが、出来上がった作品を見てそんなつまらない先入観がどれほど愚かなことかと、思い知らされる。老境に達した巨匠の仕事ではなく、今も最前線で映画と向き合う俊英の偉業に目を見張らされる。全盛期の傑作『サード』よりも僕は . . . 本文を読む
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DIVEプロデュース『流れんな』

2018-02-21 19:20:16 | 演劇
  感情的な芝居で、その感情がガンガン表に出てきて、ドンドンぶつかり合う。あまりに激しすぎてひいてしまうくらいだ。オリジナルであるiakuの舞台とはまるでタッチの違う作品になった。同じ台本なのにこんなにも肌合いの違うものになるんだ、と驚きを通り越して衝撃的。 抑えたタッチの渋い作品だった上田一軒演出作品とは、まるで違う樋口演出に戸惑いながら、でも、だんだんそこに引き込まれていく。力でグイグイ押 . . . 本文を読む
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浪花グランドロマン『舞う、舞え、王妃』

2018-02-21 19:18:54 | 演劇
  ザ・九条の閉幕プログラムの1本として上演される浪花グランドロマンの新作。5年間にわたって大阪の新しい小劇場として愛され、活用されてきたスペースがこんなにも短い期間で閉鎖されるのは残念だ。NGRはここで初めての公演となる。小空間なら自分たちのアトリエがあるからわざわざ外で打つ必要はない。だけど、敢えて今回ここで公演しようとするのには、この空間に対する浦部さんの何らかの想いがあるからだろう。何度 . . . 本文を読む
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『王様のためのホログラム』

2018-02-21 19:17:30 | 映画
  トム・ティクヴァの新作は、驚きの連続で、1時間38分の短い映画なのに、とんでもなく遠い世界へと連れ去られる。不思議の国、サウジアラビアに出会い、想像を絶する体験をする。現実の世界なのに、こんな現実が今この世界のどこかに確かにあるのか、という衝撃。もちろん、それは現実のサウジで、この風景は実際に彼らが見たものなのだ。主人公のアメリカ人はここで王様に自社の商品を売るためにやってきた。会議用ホログ . . . 本文を読む
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烏丸ストロークロック『まほろばの景』

2018-02-17 10:52:48 | 演劇
    会話劇からさらなる進化を遂げた烏丸ストロークロック最新作。いつものように地方で短編を作りそれを長編にするというのは同じだけど、音楽と言葉のコラボで、ストーリーよりも感覚的なものを優先する。5、7調のリズムのセリフもそうだし、ラストの山伏のシーンが圧巻。高い山に登り、山の神になる。1本のストーリーではなく、いくつものイメージをつないでいく。あわい(間)を大事にしたということらしい。決して . . . 本文を読む
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『嘘を愛する女』

2018-02-17 10:47:25 | 映画
  前半の東京での描写がいい。あそこで暮らすとあんなふうになるのだろうな、と思う。大都会はひとりには寂しい。大阪で暮らしていると、そこまでは感じないことが、きっと東京でなら感じさせられる、そんな気がする。娘が東京で暮らしているから、最近、時々向こうに行くけど、そのたびに感じさせられるのだ。東京の町を歩いていると、孤独が身に沁みる。   3・11のシーンから始まる。ひとりぼっちの女(長澤まさみ . . . 本文を読む
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瀬那和章『雪には雪のなりたい白さがある』

2018-02-17 10:43:02 | その他
   4話からなる短編連作だ。公園を舞台とする。甘い小説だけど、この甘さは嫌いではない。春の風、夏の陽射し、秋の落ち葉、冬の寒さ。四季を舞台にして、4つの公園の4つの風景が4人の主人公たちの人生に局面を鮮やかに描き出す。ここからもう一度始めよう、と思う。そんな彼ら、彼女たちの姿を公園が包み込む。それぞれの場所が印象的に描かれるのもいい。一度行ってみたい、と思った。彼らと同じ場所を歩いてみたい、そ . . . 本文を読む
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畑野智美『海の見える町』

2018-02-17 10:38:20 | その他
  こんなところに住んで、この小説の4人の主人公たちと同じように、ひとり静かに暮らしたいと思った。もちろん、今の自分が、ではなく、彼らよりもずっと若い頃の自分が、である。本を読んでまわりにいてくれるほんの少しの人たちと穏やかに暮らす。別に何もなくていい。ただ、平穏に時を過ごす。そんな暮らしに憧れた。石坂洋次郎の小説が好きで、あそこに出てくる人たちのように何もないけれどささやかな幸せに包まれて、何 . . . 本文を読む
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『マンハント』

2018-02-17 10:30:05 | 映画
  ジョン・ウーが初心に戻って派手なアクション映画を作る。もうこんなにもワクワクドキドキすることはない。しかも、あの『追捕』である。お話を中国に置き換えたのではなく、大阪を舞台にしたというのも、期待をそそられた。   だけど、映画はスカスカのお話と、異常な日本が描かれるとんでもない映画で、ついていけない駄作。もともとのお話自体があり得ない。70年代から80年代にかけて一世を風靡した西村寿行の . . . 本文を読む
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