TVシリーズは(ほとんど)見ていないが、TVが始まる以前にこの原作は読んでいる。とても面白かった。それだけにTVの『ガリレオ』シリーズの延長線上でこの小説が映画化されるということに少し違和感があったが、それは杞憂だった。『県庁の星』の西谷弘監督作品なので、たぶん大丈夫だとは思っていたが、見終えてほっとした。
天才数学者、石神役を堤真一が演じるというのにも実はかなり不安があった。映画としてのア . . . 本文を読む
前作『こうふく、みどりの』と2部作をなしている、ということだが、直接の関係性はない。装丁仕様が一卵性双生児のようになっているから、そう言えるわけで作者がそう位置付けなければ誰もそんなふうには思わない。
2039年と2009年。39歳という年齢。2つの時代の物語が交互に描かれていく。父親が誰なのかもわからない子供を妻が身籠る。自分は全てを許してその子を自分の子どもとして育てようと言う。それは妻 . . . 本文を読む
「3時間20分はあんまりな長さだ。冗長で、完全に自分の世界に酔っている」だなんて言ってもいい。だが、そんな周囲の雑音に戒田竜治さんは全く耳を貸さない。(はずだ)彼はわが道を行く。何よりもまず、この自分の世界を愛しく思っている。それでいいのだ。独りよがりすれすれで作られたこの作品は、何かと異論もあるだろうが、1本筋の通った気持ちのいい作品だと思う。まずそのことを言っておこう。
この芝居はこれま . . . 本文を読む
とてもストレートで、見ていて少し怯んでしまいそうになる作品だ。この生真面目さが作、演出を担当した芳埼洋子さんのよさだ、とも言える。
象徴的なエピソードがざっくりと核心のみを突いてくる。父と息子、母と娘、さまざまな家族模様がこの芝居の中に挿入されていく。それをピン・ポイントで見せていく。
8人の男女により繰り返される遊びから芝居は始まる。彼らが何なのか、最初はよくわからない。やがて彼らは森 . . . 本文を読む
公開されたときぜひ見たいと思ったのに、例によって苛酷な上映環境ゆえ、劇場には行けなかった。モーニングショーだけ、とかそういうのはやめて欲しい。まぁ、お客が入ってなんぼ、なので公開されるだけましか、とも思うが。それにしても、である。ようやくDVDになったので、レンタルしてきた。
内モンゴルの風景が美しい。劇場で見たならそれだけでも感動しただろう。トゥヤーという女性の生活が綴られていく。半身不随 . . . 本文を読む
イオセリアーニの4年振りの新作である。相変わらずのノンシャランぶりで、彼のやることはいつもいつも同じだ。それがうれしい。
一国の大臣が辞職させられる。なのに彼はその大事件を人事みたいに受け止める。まるで何とも思ってないだけでなく、仕事から解放されて、無邪気にのんびり人生を送ろうとする。お金なんかなくても、家もなくてもなんとかなるさ、と暢気に構えている。そして、現になんとかなっていく。
お . . . 本文を読む
これを現実の風景として見るとなんだか少しいびつで、ありえないな、と思うが、今僕らが生きるこの世界を、少し歪ませるとこんなにも不気味なものに見える可能性は十分ある。
家族4人はばらばらで、同じ家で暮らしているはずなのに、全く心が通い合っていない。表面的には普通にも見えるが、ひとりひとりはとても異常だ。
兄は、いきなり米軍兵士となって中東の戦場に行く。家族を守るために戦争に行く、と彼は言うが . . . 本文を読む
朗読劇と銘打っているが、これはジャンルとしては完全にひとり芝居だ。テキストを持ち朗読するシーンも一応あるけれども、それも全体の中での演出のひとつであろう。
まぁ、ジャンル分けなんて別にどうでもいい。作品が面白かったかどうかが大切で、それ以外の事はどうでもいい。70分ほどのこの作品は、舞台の上で役者である豊島さんが「ひとり」であることを、作品自体の力としたとてもよく考えられた芝居だと思う。
. . . 本文を読む
これはプロローグでしかない。ここから始まる壮大なプロジェクトの序章である。だいたい『OASIS』と言いながらも、まだどこにもそれは描かれていない。それはこれから先のお話なのだ。だいたいこの芝居が「オアシス」にまで行き着くことが出来るのかすら不明だ。
リーディングというスタイルで、小原さんはこれから作られる死刑制度をテーマにした新作の予告編を作り上げた。だが、これはただの予告ではない。核となる . . . 本文を読む
なぜ今頃もう一度『櫻の園』なのだろうか。見ながらずっとそのことばかりが気になっていた。18年の歳月を経て中原俊監督が再びメガフォンを取る。
もちろん単純な再映画化ではない。あの映画をもうひとつのストーリーのもとに映画化する。だからこれは別の映画だ、といってもいい。続編と言うことすら可能だ。だが、そんなふうにはしない。大ヒット作のパート2ならさんざん作られるがこれはその類のものではない。だいた . . . 本文を読む
たまに、こういうアクション映画を見てハラハラドキドキするのは精神衛生上とてもよろしい。いつも高尚な芸術映画ばかり見てる人には顰蹙ものの映画だろう。だが、見てて単純に楽しいよ。こういう映画は。さすがスピルバーグ印だ。話もよく出来ている。
だが、ここまで壮大なクラッシュを見せられたら、さすがにやりすぎだろ、とも思う。劇場を出たときエレベーター待ちで、横にいたオバサン2人組が「何が映ってるのかすら . . . 本文を読む
世界24カ国。13の世界遺産をロケして作り上げた壮大なロマン。夢と冒険の世界を現実の風景を通して作り上げていく。今の時代は何でもCGによって視覚化出来てしまうけれど、この映画は現実ではない空想の世界を現実の建物や風景をそのまま使って、見たこともない驚きの世界として見せてくれる。
この広い世界にはまだまだ僕たちの知らないような美しい人工の風景(建造物のことです)がある。その壮大なランドスケープ . . . 本文を読む
何よりもまず、この映画の事を書かなくてはならない。黒沢清によるこの不快な映画はある意味で『キュア』そして『カリスマ』以来の衝撃だと言える。もちろん初期のあの2作品以降、すべての映画が衝撃の連続だとも言える。だが、ここまで異様な雰囲気を醸し出す映画はなかった。徐々に慣れてきたというのもあったかもしれない。ウエルメイドとなり、黒沢印の映画としてブランド化してきたことも事実だろう。
これは、彼にと . . . 本文を読む
フランソワ・オゾン監督の映画を見て初めて違和感を感じた。彼がなぜこんな映画を撮ったのか、わからない。いつも刺激的で寡黙な作品を突き放したタッチで作り続けてきた彼が初めて英語を使った作品なのだが、それと映画自体のタッチとはあまり関係ないはずだ。だが、それではこんなにも陳腐なシンデレラストーリーを彼が作ろうと思ったのはなんなんだ?
もちろんこれは、ただのシンデレラストーリーではない。夢を現実にし . . . 本文を読む
まず、結論から言おう。事前の予想通り、ニュートラルの大沢秋生さんの演出した第一夜が素晴らしい出来だった。全体のラストにこれを持ってきたのも正解だ。そのことを書いた上で以下、詳細を述べていく。
それにしてもとんでもない作品だった。全11話からなる短編連作。(第1話のみ演劇バージョンと映像バージョンがあるのだ)言わずと知れた夏目漱石の作品を関西の若手演劇人が分担して作り上げた。全体の構成、演出 . . . 本文を読む