ホ・ジノ監督の新作なので、何があっても見る。昨年夏、韓国に行った時、上映していたので、見ようか迷った。字幕なしでは理解に苦しむだろうと、わかっていても一刻も早く見たい、とも思ったが、大事な映画を中途半端に見るのはもったいない、と断念した。やはりあの時はやめていて正解だった。この映画は、僕には字幕無しでは難しい。きっとこの複雑な人間関係が理解出来なかったことだろう。
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メル・ギブソン10年振りの監督作品、ということよりも、この映画が彼のデビュー作であるピーター・ウイアー監督の『誓い』を思い出させることに驚いた。戦場を舞台にして、伝書鳩のように走り続けた彼の姿が今回の映画の主人公の姿と重なり合う。アンドリュー・ガーフィルドの無邪気そうな顔と、あの時のメル・ギブソン。(不安があったのでちょっと調べたら『マッドマックス』の方が少し先だった。でも、僕の中 . . . 本文を読む
水谷豊、40年越しの夢の実現。ひとりの映画監督の誕生は、今の時代、どうということない日常の一コマになってしまったが、昔はそうではなかった。70年代、撮影所から監督が生まれることがなくなり、まだ自主映画からどんどん新人が排出されることもなかった不毛の時代、長谷川和彦は『青春の殺人者』で映画監督になった。そのとき、主演した同士が若き日の水谷豊だ。あの映画との出会いは多くの人たちの人生を . . . 本文を読む
この1ヶ月で見た映画の中で、一番残念だったのが、この映画だ。ずっと以前、(たまたま)原作を読んだとき、これは実に映画向けの題材だ、と思った。今という時代の気分がきちんと捉えられてある。未来に向けてのひとつの答えがしっかりと提示できる、と思った。なのに、出来上がった映画は、安易なラストに向けて失速する。
ヤマモトという男の謎解きがこんなにも陳腐なものになっていること . . . 本文を読む
このSF小説は凄い。SFなんてめったに読まない僕が言っても説得力はないかもしれないけど、しかも、ここに描かれた世界観を半分も理解できてないけど、難しくてよくわからないなりに、でも、そのすさまじさはちゃんと伝わってくる。圧倒的なイマジネーションの世界だ。
短編連作なのだが、すべてがつながっている。1つめの『海の指』を読みながら 難解すぎて、止めようか、と思ったけど、 . . . 本文を読む
10年続いた應典院舞台芸術大祭space✕drama○のトリを飾るのが、遊劇舞台二月病だということが、なぜか晴れがましい。別に関係者でもない僕がそんなふうに喜ぶのは、お門違いなのだが、でも、彼らが芝居を始めた最初の頃からずっと見てきたから、しかも、立ち位置がかなり危うい劇団だと思いながら、だからこそ、応援してきたから、嬉しい。こんなふうに立派になって、なんて父親目線だ。
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創立55周年を迎え、世代交代が進行する劇団未来の新作。しまひろみちが演出を担当するようになって、彼の試行錯誤を暖かく見守りながら、彼に自由を与え、様々なチャレンジをさせる。彼の迷走に付き合う。劇団の先輩たちが支える。こういう集団って、素晴らしい。そして今回、そこから確かな手応えの残る傑作をものにした。昨年の『その頬、熱線に焼かれ』も素晴らしかったが、今回は、もっと身の丈にあった作品 . . . 本文を読む
ここには書いてない10本の映画 2
実はTOHOシネマズが1ヶ月フリーパスになったから、大阪周辺でこの1ヶ月間に上映されているすべての映画を見てみよう、という行為に挑戦した。そのおかげで、仕事が忙しくなり、芝居を見る時間も少なくなり、わかっていたことだけど、思った以上に大変だった。しんどすぎて、楽しめないし。
仕事帰り、毎日のようにレイトを見たから睡眠時間もかなり減る。仕事はい . . . 本文を読む
石井裕也監督最新作。『本を編む』『バンクーバーの朝日』でメジャー映画でも成功を収めた彼が再び、マイナーな映画に戻り、これまでの集大成となる傑作を作る。この小さな映画の描く寂しさは今を生きることの痛みだ。
ふたりの男女が東京の町をさすらうように生きる日々を通して、僕たちはこれからどこにむかっていくのかを考えさせられる。傷をなめ合うように寄り添うのではない。ふたりの距 . . . 本文を読む
森絵都『出会いなおし』
最初の3つの物語が素晴らしい。こういうふうに、ものごとを受けとめることが出来るって、凄いと思った。自分らしく生きるって、100人100通りの生き方がある、ってことだけれど、自分はひとりなので、残りの99通りは、実は理解の外。なのに、人は自分の生き方に人の生き方を当てはめようとしてしまう。バカだ。
もちろん、理解の範囲内のこともたくさんある。でも、そうじゃ . . . 本文を読む
これは金哲義お得意の大河ドラマだ。3世代の年代記である。ただ、扱う題材が従来の自分のまわりのことではなく、自分の外の世界に題材をとる。前回は映画館。今回は美術館と、場所がまずある。ここ数年新しい試みとして、この「場所」から始まる、というパターンは興味深い。それが小さなコミュニティであることも、何らかの意味を持つかもしれない。まぁ、これはたまたま映画館であり、今回は美術館であっただけ . . . 本文を読む
「咲田とばこ 劇団ラストステージ」と、チラシの隅に、黒背景に黒字で極力目立たないように書かれてあるのを発見したとき、そのいじらしいほどのひっそり具合に、驚く。(最初は気付かず、見逃していた)なんだが、はせさんらしい。
今回は咲田さんがタイトルロールで、主演。でも、敢えて華々しく彼女に活躍してもらう、わけではない。いつもと変わりなく、でも、今回キャスト数を絞ったぶん . . . 本文を読む
ストーリーがあまりに単純すぎる。しかも単調すぎて想いが迫らない。後半の2部なんて3シーンしかない。ホームレス歌人との対峙。サークルの仲間との語らい、再び今度はみんなで歌人と向き合う。それだけでラストに突入する。しかも横並びの会話のみ。芝居がまるで立体的ではない。表面的なストーリーのみ。テーマばかりが前面に出て、ドラマに奥行きがでないのがつらい。
大熊町から会津若松 . . . 本文を読む
熊切和嘉監督がこういう青春映画を撮る。これは一応高校生の部活の話でもある。このパッケージングは意外だった。
稽古中、木刀で父親の頭を叩き、廃人にしてしまった。その罪の仮借を抱き続け、酒に溺れる男が、剣道を始めたばかりの高校生を通して、再起していくまでが描かれる一応熱血青春活劇。わかりやすい話なのだが、まるで、そのわかりやすさを裏切るようなドラマ運びをする。綾野剛は . . . 本文を読む
12支のえとをやりきった超人予備校は、果敢にも今度はえと以外の動物にチャレンジする。今回はタヌキだ。『タヌキ・イン・ワンダーランド』である。というか、タヌキはこのワンダーランドの住人だから、アリスにあたるのは、ふたりの人間たち。上原日呂と日枝美香Lなのだが、彼らが別々にこのタヌキの世界に迷い込み、そこで体験する不思議を描くというのが、今回のお話。いつも通り、とてもバカバカしく、楽しい。タヌキの学校 . . . 本文を読む