『上の句』を見てからもう2カ月になる。ようやく『下の句』を見た。2部作の常として1作目がよくできた作品であればあるだけ2作目が残念なものになる確率が高いというジンクス通り、今回の作品も、前半、もたもたして『上の句』の感動が損なわれるような展開だ。
何かを成し遂げた後はいつもそうなる。迷いが生じる。もっと高みを目指さなくてはならないというプレッシャー。でも、力が及ばないという現実。 . . . 本文を読む
コーエン兄弟の映画を見て、初めて「つまらない、」と思った。これはショックだ。しかも、これは全然つまらなくなるような映画ではないのに、である。設定のバカバカしさは彼ららしい。こういうタイプのコメディなら得意なはずだ。(というか、彼らはどんなジャンルでも器用にこなせる)なのに、まるで弾まない。はしゃいでるのに空回り。
50年代のハリウッドを舞台にして、映画人たちの、め . . . 本文を読む
3月公開の映画なのだが、ようやく見ることになった。実を言うともうパスするつもりだったのだが上手く時間が合うので見たら、思いもしない傑作で、これを見逃さなくてよかった、と思う。昨年公開の1作目は、中途半端な作品でがっかりだった。前作は、2部作構成で続編への布石だけ、というような終わり方で、騙された気分にさせられたのだが、あの地点ではまだ続編製作は決まってなかったらしい。でも、あの終わ . . . 本文を読む
こんなバカバカしい映画をしっかり作り続ける三池崇史は偉大だ。むちゃくちゃを言う。むちゃくちゃをする。もうやりたい放題し放題。しかも、それが限りなくエスカレートして、映画自体が空中分解してもまるで気にもしない。だいたいヒロインが映画が始まって10分くらいのところで、死ぬなんて前代未聞だ。詐欺じゃないか、とも言える。武井咲を見に来た観客は怒るで! しかも、あの死に方。ないわぁ。ゴキブリ . . . 本文を読む
このあまりに単純なお話をストレートに見せる。あっけない内容。それを演出もそのままで見せるから、芝居は単調になった。1時間50分が長く感じられる。オリジナルの改変をしないのなら、もっとテンポよく見せなくては、今の観客には飽きられる。正しいことを正しいまま言っても、観客の胸には届かない。せめて、演出はもっと「ずるい見せ方」をすべきだった。(でも、それじゃぁ、どうすれば、ずるくなる、と聞かれたら、上手く . . . 本文を読む
これはきついわぁ、と思った。夫婦の問題で、とても個人的なことなのに、まるで自分に対して言われているような、それくらいに描かれるいろんなことがガンガン突き刺さってくる。ずっと一緒にいて、自分の最大の理解者であったはずの妻のことを、ぞんざいに扱い、だんだん煙たがってしまい、距離を置いていく夫。あげくは、若い女と浮気をして、妻を蔑にする。愛が醒めたわけではない。まるで、保護者のような顔をする彼女を疎まし . . . 本文を読む
まずその大胆な料金システムに驚く。HEPホール進出第1作にも関わらず、こういう提案をする。収支がどうなったのかはわからないけど、こういうリスクを冒してまでも、面白いことを追求する。それって、これはそれなりの自信作だ、ということなのだろうけど。それにしても、凄い。
もちろん、それだけではない。まず、舞台美術。ラストの屋台崩しも、手が込んでいて結構複雑な装置だったので . . . 本文を読む
なんと「連合赤軍」を描く。作、演出の中川真一はこの大胆な挑戦に真正面から挑んだ。これは革命についてのレクイエムなのか。それとも、新たな革命への黎明なのか。彼が何を感じ、考え、この素材に今、挑んだのか、それが知りたいと思い、劇場に向かう。だが、なかなかそこが見えてこない。渾身の力作であることは、わかる。しかし、今、これを作る意味が見えない以上、そこには何の意味もない。(少なくとも、僕には)
なぜ、 . . . 本文を読む
まだ若い監督(ルー・ヤンという人だ。メイキングを見たら、30代くらいに見えた。)が、こういう大作映画の監督に大抜擢され、チャンスをものにして、このとても困難な仕事を「無難」にこなしていく。中国映画は今、活況を呈している。こういう大予算のアクション超大作が盛んに作られ、ちゃんとヒットする。映画がまだ、娯楽の王様なのだろうか。でも、こういうハリウッドばりの活劇ばかりでは飽きないか? き . . . 本文を読む
この新人作家のデビュー作『サバイブ』は新鮮だ。(文学界新人賞受賞)僕には関係ないようなエリート層の人たちの鼻もちならないお話なのだが、あまりそういうのは気にならない。男3人の同居生活を描く。ルームシェアではなく、「2夫1妻制(全員男だけど)」ということらしい。ふたりのよく稼ぐ男たちと、家の世話する(家事全般担当)あまり収入のよくない男、という図式。別にホモではない。
「俺は男友達 . . . 本文を読む
『こころの湯』や『胡同のひまわり』のチャン・ヤン監督の新作だ。やはり、彼らしく詰めが甘くて、優しいばかりの凡作である。だけど、彼だから許す。こういうキツイ話を本気で撮ったりしたら、逃げ場がなくて、苦しいばかりだ。だから、適当に抜け道を作るほうがいい。甘いよな、と顔が綻ぶくらいでいい。
今回もしんどい話だ。養老院を舞台にして、死にかけの老人たちが、身を寄せ合い、生き . . . 本文を読む
この小さな本が提示した不思議はただの不思議ではなく、もしかしたら現代の黙示録なのかもしれない。どうでもいいようなことの集積が、実はとんでもないことの始まりであった、かもしれないし、もう始まりなんかではなく、終わってた、なんてことであるかもしれない。1999年に書かれた『魔術師』という短編の孕む不穏な空気に圧倒された。淡々と語られる不思議なできごと。それらがひとつに重なる時、答えが出 . . . 本文を読む
これは凄いわぁ。見ながらその強烈なイメージに圧倒された。というかその大胆な性描写。ふつう芝居でこういうことをしない。(まぁ、亀井さんだから「ふつう」なんかはしないのだけど。)でも、強烈で、鮮烈な青春絵巻。「マンガなら、こういうのはよくやるでしょ、」と舞台監督の塚本さんが終演後の雑談で行っていたけど、山本直樹とかならとこかく、これはエロも含むマンガではなく、エロも含む小劇場演劇なので . . . 本文を読む
久しぶりに心から見たいと願う映画を見た。最近はそこまで何かを執着することがない。だから、なんとなく見る、とか、たまたま見る、とか、仕方なく見る、なんて、のまである。もちろん、嫌々見ることはない。映画を見るのは大好きだ。どんな映画でもわけ隔てなく見たい。時間さえ許せば、みんな見てもいい。だけど、子どもの頃のように、ずっと待ち続けてようやく対面する、という喜びが失われたというような意味 . . . 本文を読む
『ぶらんこ乗り』を読んで彼のファンになった。『麦ふみクーツェ』も大好きだし、『プラネタリウムのふたご』が最高傑作だと思う。だけど、そのあと、だんだん、あまりおもしろいと思えなくなった。でも、すべて読んでいる。
この2月に『よわひ』を読んで、ようやく再認識した。今の彼が好き、と思える。以前の彼ではなく進化し、「ひとひ」とともに、成長していくお父さんの彼の書くドラマが好き、と。実は昨 . . . 本文を読む