こんな映画を見るつもりは一切なかった。だが、偶然、この映画の封切りの前日だ。日本橋を用事で歩いていたのだが、この映画の宣伝の幟が、延々と続くのを目撃してしまった。ここまでするか、と感心したのだが、なんだかよくわからないけど、その時このアニメってなんかすごそうだ、と思った。それが見るきっかけだ。興味はなかったけど、そこになんだか運命的なものを感じて見に行くことにした。結構偶然の出会いって好きなので . . . 本文を読む
驚きである。金蘭が新感線の芝居に挑戦するなんて。新感線は山本先生の趣味には、全くそぐわないのではないかと勝手に思っていた。派手な立ち回りと、つまらないギャグもいっぱいあって、冗長だけど、商業演劇としての完成度はとても高いエンタメ芝居である。
それを金蘭流にアレンジするのは、一見簡単そうに見えて、実はとても難しい。中途半端なことをすると、目も当てられないような失敗作になる。かといって、自分たち . . . 本文を読む
前説が楽しい。中学生部員が、自由奔放に、この舞台で遊んでいる。高校生の先輩たちがこれから本番を演じるのに、その前にここまで好き放題して、場を掻っ攫ってしまっていいのか、と心配になるくらいだ。みんな役者ぞろいで、まるで芝居が始まったのかと思わせるくらいだ。
あの後ではさぞかしやりづらいのではないか、と思うが、そんな心配は杞憂にすらならない。まるで問題ない。高校生たちはもっと過激でバカだからだ。 . . . 本文を読む
1時間ほどの小さな作品だが、とても、真面目に誠実に作られてあり、好感が持てた。いかにも高校生らしい、という、そんな言い方がとてもぴったりの作品である。無理することなく自分たちの等身大のお話が展開する。サブタイトルにある「アイスと手紙と、ときどき隊長」の隊長って何? と気になっていたのだが、芝居を見るとすぐにわかる。あまりに単純すぎて、笑ってしまうけど、かわいい。お風呂にいる黄色のアヒルのおもちゃ . . . 本文を読む
これはもう映画ではない。この恐るべき映像体験をどう形容すべきなのか。拠り所とする言葉を持たない。たぶんこれは映画なのだが、その映画というものを見て、こんなにも衝撃を受けたことがない。今まで何千本もの映画を見てきて、ほとんどめぼしい映画は見落としていないと豪語出来るはずの僕が言うのだから、嘘でもないし、大袈裟な話でもない。ただの事実だ。2時間43分、ただスクリーンを茫然として見つめているだけである . . . 本文を読む
今のミジンコターボの完成形。これが持てる力のすべて、だ。全力投球という表現者としては、あたりまえの行為が、こんなにも清々しい。気負うことなく、全力を注ぐ。2時間の大作を見終えたときの満足感は、スゴイ作品に出会えたことではなく、今まで積み上げてきたものが、どれだけ尊いものだったかを、気づかせる。試行錯誤の彼方で、たどりついた世界。それがここにある。うわさ話の3部作の完結編。HEPから、ABCへと、 . . . 本文を読む
さだまさしが父との別れをつづった自伝的小説。登場人物は、すべて実名で(たぶん、そうだろう)出てくる。小説というには、あまりにストレートで、本人の日記のようだ。大切なことを、大切なまま、記憶し、記録し、それをたくさんの人たちに見てもらいたい、というのが、彼の願いなのだろう。そんな想いは確かに伝わってくる。
だが、それを読んで、どうしろ、というのか。1編の小説としては、これはちょっとなぁ、と思う . . . 本文を読む
『時をかける少女』の衝撃は誰もの胸の中にあるだろう。あれはアニメーション映画のひとつの可能性を指示した金字塔だ。だから続く『サマーウォーズ』には期待したし、そのぶん失望も大きかった。細田守監督は前作の路線を踏襲するのではなく、ちゃんと新しい冒険をして挑戦する。その姿勢は守りに入って安全な作品を作ることなく、きちんと玉砕するのも、厭わないという清々しいものだった。だが、映画自体は大ヒットして、それ . . . 本文を読む
とてもよく出来た小説である。心地よい夢のように人生が流れていく。50数年間を共に過ごした家との別れ。同じ時間を共に生きた弟との最後の1日。取り壊されることが決まった家で過ごす最後の時間。ようやく2人だけで、誰に気兼ねすることなく過ごす最後の1日。
2人が出会った日から、今日までが順を追って回想されていく。とても丁寧に、どんなささいなことも、書き残すことなく、ちゃんと綴られていく。すべてが美し . . . 本文を読む
ジョニー・デップ渾身の一作。自分の作りたい映画を、自らプロデュースして、主演する。とても幸福な話だ。ハリウッドのトップスターになったから出来るのだろうが、それでもこういうマニアックな素材は商業ベースに乗りにくいから大変だったことだろう。
伝説のジャーナリストの若き日を描く青春映画なのかもしれないが、それにしても、ジョニー・デップが20代の青年を演じるのは、ちょっと無理がないか。どうしてもやり . . . 本文を読む
とても驚かされるような設定である。なんじゃこれ、と思わされる。でも、それはただのおふざけではない。ひとつのスタイルとなっている。その方法を武器にしてどんな芝居を見せてくれるのか、ドキドキした。しかも、それがとてもスタイリッシュで、おしゃれだ。
どこにでもあるような3人家族の話なのだが、彼らの家のリビングにある電化製品たちを、人間が演じるのだ。冷蔵庫とか、電子レンジや、TV、パソコン、携帯、蛍 . . . 本文を読む
最近なんだかこのタイプの小説に嵌っている。とは言え、それは、まぁ、先日も書いたけど『この女』とこれが僕の中ではつながっているというただそれだけの理由からなのだが。
誰かを捜す。失われた大切なもの。その過程で彼女の秘密が明らかになっていく。ある女の生きてきた軌跡をたどる旅を通して、自分自身が回復していく。同じように壊れてしまいそうになっていた男が、彼女と出会うことで、回復していく。でも、その事 . . . 本文を読む
今年もHPFが始まった。今回は8本見る予定で準備している。いつものことだが、なかなかスケジュールの調整が難しいけど、できるだけたくさん見たいと思う。それと、出来るだけ初めて見る学校の作品にチャレンジしたい。どうしても、これだけは外せないと考えるうちに、定番高校ばかりになるというのがパターンだ。そこで、今回は日時指定だが、かなりお任せにも、した。
僕の1本目は信愛の『GAP』だ。信愛らしい作品 . . . 本文を読む
昨年、台湾だけでなく、香港でも記録的大ヒットを飛ばした青春映画なのだが、日本ではいつまでたっても公開されない。本国でDVDになったので、買ってきてもらって、ようやく見ることが出来た。かなり期待したのだが、正直言うと少し肩透かしを食らった気分だ。この手の軽い青春映画が、なぜ、ここまで熱狂的に受け入れられたのか、よくわからない。『海角7号』のときも、悪い映画ではないけど、そこまで熱狂するか、と首を傾 . . . 本文を読む
先日見た『苦役列車』、ちょうどその直前に読んだのがこの小説。さらには今読んでいる野中柊『彼女の存在、その破片』。まるで予定していたようにつながっている。まぁ、いつもそんな感じなのだが、こんなにも、無意識につながることもある。いずれも、ひとりの女を巡る話で、行方不明になった女を捜す話だ。というか、それは野中柊の本で、これは女が行方不明(男も)になったところで、終わる。『苦役列車』では、女はいなくな . . . 本文を読む