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外輪能隆が関西演劇祭に参加した。吉本の作る演劇コンクールにまさかevkkが参加するなんて。エンタメ芝居ではないから違和感があるけど、敢えて彼がその挑戦に望んだ以上、それを見てみたいと思った。企画物だから規定があり1本45分、他の団体と抱き合わせの上演となる。
45分という制約下だから小さな芝居に納めるべきところを、反対にそこで大きなお話を作る。大胆な作劇をする。ベースは人魚姫の物語。部分的にはこれはダンス作品かと思うけど、もちろんそれだけではない。タイトルから水、海が原点となる。そこに漂う船。それはノアの方舟とか、タイタニックとか。さまざまなイメージが連想させる。これはそれらが自在にちりばめられた壮大なドラマでもある。
白と黒。男と女。白いベールに包まれて。黒い幕に覆われて。明確な世界観は提示されない。だがラストで人魚が自らの肉を食うシーンは強烈なインパクトを残す。口から血を流す大下さんの姿を見て、45分に集約された彼女と船に乗る彼がこの水平線の果てに見た世界を想う。「たゆたう、さすらう、」というイメージから始まったドラマが完結する。
旦煙草吸の大下真緒里が書いた脚本をもとにして演出の外輪さんは自在にイメージを広げてこの壮大なスケールの神話を切り取った。ネコザゴーストによるダンスシーンも圧巻である。全体をまとめ上げることよりもイメージをどこまでも広げていくことに腐心した。だからわからないという人も多々あるだろう。エンタメ劇団が多数参加するこのイベントにおいてあきらかに異彩を放つ確信犯である。だけど外輪さんは動じない。というか、敢えてこんな状況を楽しんでいる。充実した楽しい時間だった。