阪本順治監督の新作であり、原田芳雄の遺作になった作品である。最期の映画が主演映画で終われてよかった。彼は最後の最期まで映画スターであり、映画俳優だった。これは今時不可能な企画である。昔ならプログラム・ピクチャーとして、こんなタイプの映画も作れたが今の時代では難しい。低予算でフットワークも軽く、でも、映画はとても豊かな作品に仕上がった。いろんな意味で奇跡のような映画だ。
原田芳雄はこんなコメデ . . . 本文を読む
なんとも魅惑的な素材ではないか。しかも、これだけの豪華キャストがこの作品を形作る。それだけでこの夏一番の期待作(の、ひとつ)だった。でも、反対にあまりに当たり前の素材で、今時これでどう見せるのか、という危惧もあった。結果は後者が的中した。
これだけの困難な大作なのに、ポイントが絞り込めず、大味で時代錯誤のラブロマンスでしかない。いやラブロマンスが悪い、というのではない。要は見せ方なのだ。昔な . . . 本文を読む
こういう安易なTVドラマの映画化は昔から日本映画の定番だった。ちょっとTVで視聴率を稼いだらすぐ映画にして、そこそこの興行成績を稼ぐ。しかもお金はかけずにTVと同じキャスト、スタッフで、TV並の安全なものを供給したら観客は喜ぶ。映画であることの誇りとかプライドなんか最初からない。これはただの商品なのだ。TV屋さんはサラリーマンなのだから、芸術なんか作らないし。
なんだか全身の力が抜けるような . . . 本文を読む
今年のHPFは26作品。7月17日から31日まで、3会場で繰り広げられた。昨年までの精華小劇場がなくなり、代わりとしてメイシアター中ホールが新たな会場として加わり、例年通りにウイングフィールドと応典院をメーン会場にして実施された。
僕は残念だが、最終的に今日なんとか最終日に間に合った箕面東高校を含めても、たった4作品しか見ることが出来なかった。これはこの20年ほどで最低の本数である。本当なら . . . 本文を読む
スタジオ・ジブリの最新作だ。今回は宮崎吾朗監督の第2作である。前作『ゲド戦記』は残念な出来だったがあの1本で終わることなく、彼はさらなる挑戦に出た。今度こそ期待できると思う。1作目の気負いを払拭して彼が何を見せてくれるのか。楽しみだった。親の七光りと言われへんな色眼鏡で見られた前作を経て、これが作家としてのスタートとなる。自分が産まれる前の時代を描くという意味では、今回のライバルは父親ではなく、 . . . 本文を読む
とてもいい映画だった。エスコートガールの話なのだが、キワモノでもいやらしい映画でもない。ソダーバーグの映画なのだから当然のことだろうが、それどころか、とても誠実で、生きていくことって何なのか、なんていう普遍的な問題を考えさせられる映画になっている。
彼女はクライアント相手にセックスもするけれど、ただの高級娼婦なんかではない。(しない場合もあるし)それ以上に相手をリラックスさせ、プレッシャーの . . . 本文を読む
荻上直子監督の最新作である。『かもめ食堂』のヒット以降あのパターンの映画はみんな彼女が連作しているように見えるが、実際にはそうではない。『プール』とか『マザーウォーター』は彼女の仕事ではない。キャストが同じでストーリーも異口同音。悪くはないが少々食傷気味だ。そんな中、この本家である彼女の新作の登場である。
映画は相変わらずの脱力感だが、とても面白く見た。全編英語で、日本人はばーちゃんだけ。そ . . . 本文を読む
4話からなるオムニバスである。2009年3月に台湾で公開されヒットした映画らしい。日本では未公開。昨年台湾でDVDを購入してきて、そのまま今日まで見ずに置いたままにしていた。本も映画もせっかく買ったのにそのまま、ということがよくある。どうしても、まず取り急ぐものから優先させてしまうからだ。しかも、毎日の生活に余裕がない。でも、今日ほんのちょっと、時間が出来たから、こんなふうにようやく見ることが出 . . . 本文を読む
佐々部清らしい映画だと思う。とても真面目でストレートだ。ただのエンタテインメントにはしない。でも、メッセージばかりが前面に出る映画でもない。そのへんのバランスがとても上手い。だが、お話としては全体の構成があまりよくない。少女たちと4人の大人たちによる金塊輸送作戦を描くメーンの部分と、その前後の現代の部分とのバランスが悪いのだ。
少女たちのドラマのみに絞り込んで作品全体を作れたならよかったのに . . . 本文を読む
「春の嵐」という素晴らしいタイトルが示す心のざわめきをこの映画は見せたかったのだ。もちろん原題はたぶん別にあるし、邦題も『スプリングフィーバー』とカタカナになっているから、誰も直接的には『春の嵐』とは言ってないけど、僕にはその清々しいタイトルが、この割り切れない映画にぴったりだと思えた。
3人の男たち、2人の女たち。5人の恋愛感情の揺らぎが描かれていく。もっと平穏で穏やかな人生を送りたかった . . . 本文を読む
正面を向いてしゃべる。会話の相手を見ない。前作『ダイダラザウルス』でも試みたことを今回はさらに先へと進めた。テキストを持ち、下を向いてしゃべっていた三田村啓示を中心にして内省的なドラマを作り上げた前作のアプローチはアクシデントからの仕方がないこととはいえ、それでも、今、芝居で可能なひとつの取り組みとして、とても前向きな試みだったと思う。
あの作品を経てその後深津さんが何をするのかと、期待して . . . 本文を読む
終わってみると、なんと2時間20分の大作だった。作っている本人たちにはきっとそんな自覚はない。だらだらバカバカしいギャグを演じているうちに気付くとこんなことになっていただけなのだ。しかも、見ている僕たちもあまり自覚はない。笑って見ていたらこんな時間になっちゃった、って感じだ。それってなんだか幸福なことだ。
たかせさんが久々に自由奔放な芝居を作っている。この無駄な長さがいい。それで、見ていて退 . . . 本文を読む
心がしんと静かになる。この聖なる夜の中で、自分が包まれていることの幸福を感じる。そんなラストシーンを持つこの小説は、ひとりの少年が自分と向き合いながら自分自身への違和感を持て余していく姿が描かれる。
もどかしい。でも、どうしようもない。誰かにわかってもらいたいわけではない。そんなことはどうでもいい。高校3年。6月からクリスマスまで。彼はオルガン部に所属する。そこはなんとなく、クラブのようなも . . . 本文を読む
震災で犠牲になった犬たち。これは彼らを救うことが出来なかった人間が、彼らと共生する世界を作ろうとする話だ。偶然にもこの夏公開される『ロック わんこの島』も同じようなテーマを扱う。(みたい、だ。予告編しか見てないから間違ってたならごめん)災害によって見捨てられた犬とその飼い主の話で、こういうのって前にもあった。『マリと子犬の物語』とかそんなタイトルだった。余談でした。
この芝居は「人と犬(わん . . . 本文を読む
かつて弘前劇場にも所属し、現在は渡辺源四郎商店を主宰する畑澤聖吾の台本によるこの作品は、学校団体のための公演であるにも関わらずとてもよく出来ている。1000人以上のキャパシティーの大劇場で上演してもまるで遜色ない「小劇場」演劇である。これはなかなか出来そうで出来ないことだ。100から200くらいのキャパの劇場でこそ力を発揮するタイプの芝居を大劇場でそのままやって、しっかり観客の胸に届く繊細な作品 . . . 本文を読む