舞台となるのは1980年代初頭のアイルランドの田舎村。そこで暮らす9歳の少女コット。これは彼女が過ごす特別な夏休みを描いた素敵な小品だ。スタンダードサイズの95分の小さな映画がこんなにも愛おしい。彼女はほとんど喋らない。上手く話せない。学校の授業での本読みでもちゃんと読めない。自分を出せない。自信もない。彼女にはお姉ちゃんがふたりいるけど、大事にされていない。学校でもお家でも居場所はない。もう9歳 . . . 本文を読む
こんなB級SF映画もたまにはいいかも。もしかしてこれは隠れた傑作か、と微かな淡い期待も抱いて見始めたけど、当然世の中そんな甘いものではない。冒頭の殺人シーンから安っぽく、これはダメかな、と思った。
もちろん、やはりたいした映画ではなかった。だけど、結局は最後まで見てしまった。まぁ時間はあるから構わないし、それなりには楽しめる。もちろん日本未公開の新作カナダ映画。(後で調べたら2018 . . . 本文を読む
こんな異常でマニアックなB級映画感覚のモンスター映画をこれだけの大作として作られたことは奇跡だ。これは新種のフランケン映画である。『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンのコンビが再び挑む作品。
まるで昔懐かしい大林宣彦監督の映画(『ハウス HOUSE』思わせる)を見ているような驚きビジュアル連続技。まずその映像世界に魅了される。モノクロからカラーへの移行もスムーズ。 . . . 本文を読む
ケネス・ブラナー監督、主演によるアガサ・クリスティ原作のポアロシリーズ第2弾。前作である『オリエント急行殺人事件』よりずっと面白い映画に仕上がっている。ロケーションが素晴らしい。まず、豪華客船での連続殺人までの前半がいい。そこまでは観光映画としても楽しめる。
冒頭の若き日のポアロの戦場でのエピソードもいい。ここは本編に至る前の導入部分だが、一気に作品世界に引き込まれる。(まるで別 . . . 本文を読む
もう明らかに『テルマ&ルイーズ』のパクリのタイトル。ここまであからさまなオマージュは普通ならしない。パロディの域に達している。このカバーのイラストも凄い。まるで劇画タッチ。
しかし本編は必ずしもパロディとは言えないような内容で『テルマ&ルイーズ』を踏襲しているわけではない。先日見た映画『緑の夜』も『テルマ&ルイーズ』で、先日読んだ宇佐美まこと『誰かがジョーカーをひく』もそ . . . 本文を読む
『ケチる貴方』は極度の冷え性の女性が主人公。あまりのことについていけない。極端な展開は彼女の内面で処理されるから周りには見えない。80ページほどの中編。もう一篇の『その周囲、58センチ』は脂肪吸引手術にハマる女の話。こちらも周りには知られない。基本独白で展開する40ページほどの短編。この2本立て。
ふたつとも極端を描きながら平然としている。いくらなんでもここまでするか、と思うけど、彼女たちにはそ . . . 本文を読む
今絶好調の内田英治監督作品。続々と新作が公開される。しかもオリジナル台本でさまざまなタイプに挑戦するのは凄い。ただ結果はまるで出ていない。プログラムピクチャーなんてもうないから、数だけ作ってもダメだろう。それなりの映画でもダメだろう。未だ代表作と言える映画はない。評判がよかった『ミッドナイトスワン』も傑作とは言い難い。 さて、今回はなんと恋愛映画である。浜辺美波と山田涼介が主演して、声を . . . 本文を読む
現代と過去(追憶)を交互で描き、自分と祖母の今とあの頃を通してこれからを描いていく。背景はコロナ禍、ブラック企業というよくあるパターン。戦争とコロナを交互に描きそこからどこに辿り着くのか。全体のバランスが悪いからなんだか読んでいて落ち着かない。現在を生きる主人公の女性が亡くなった祖母と7日間電話でつながり,毎夜30分ほど話をする。祖母のことばを通して彼女は生きる力を取り戻す。コロナに罹ってひとり自 . . . 本文を読む
予測不可能な展開に唖然とする。これは幻なのか、と何度も思うけど、そうじゃないみたいだ。安易になんでも幻にしてごまかす映画とは違う。説明不足のまま話は進む。説明不要だと言わんばかりに。彼女の置かれた状況は悲惨。だけどそれを受け入れて生きるしかないと思っていた。だが、ひとりの破天荒な女に出会ってまさかの一夜を過ごすことになる。たった92分の映画だが、次から次へと進む展開に圧倒される。
描 . . . 本文を読む
とてもいい映画だった。傑作というわけではないけど、ここからは在りし日の香港が偲ばれる。華やかな街だった香港の記憶がよみがえる。それだけでいい。そこには庶民のささやかな喜びがある。100万ドルの夜景が消えてしまったことを知らなかった。この数年で9割ものネオンが姿を消してしまったなんて信じられない。
2010年の建築法改悪からネオンは違法とされていたなんてまるで知らなかった。ということは . . . 本文を読む
コロナ禍の終わり、北京にやって来た菖蒲さんの北京便り。3年間コロナの北京で単身赴任中の夫に頼まれて仕方なくやって来た。初めての北京は驚きの連続。青島での8日間隔離からスタートして、まだコロナ禍のゴーストタウンからようやく解放された北京で過ごす日常のスケッチ。ゼロコロナから解放されて街には人が出てきている中、感染者は激増して、菖蒲夫婦もコロナに罹る。
ふたりで仲良く暮らすのかと思ったら . . . 本文を読む
これは6話からなる短編集。犯罪小説集とある。それからパンデミック。コロナ禍が舞台となる。今人気爆発の一穂ミチだが、今回はかなり残念。まず前半3篇を読んだ。死者がやって来て、生きている人たちに罪を思い出させる。人を殺した女の話もある。自らの手で殺す。後悔はある。だから出てくる。死んだ者が、出ることもある。生きているけど後悔に苛まれる。毎日ストレスを溜め込んで気がついたら、ぼろぼろになっていたから。だ . . . 本文を読む
初めて高橋洋の監督作品を見る。『女優霊』や『リング』の脚本家として知り、その後もさまざまなホラー映画の脚本を手掛けて来た彼は映画監督としてもいくつかの作品を作っているが今まで見る機会がなかった。マイナーな作品ばかりだから劇場公開も密かにしかされていないからだ。
これも相変わらずの配信で発見した映画で、さっそく見ることにした。72分の短い映画。ワンシチュエーションで登場人物もほぼ7 . . . 本文を読む
またやってしまった。これは以前読んだ本だ。確かに読んだ記憶があり、だけど記録には残ってないから(このブログにも僕の記録ノートにも)勘違いかも、と思い読み始めたが、すぐにやめた。確実に読んだとわかったから。だいたいこの本は昨年3月に出たばかりの本だから、忘れるほうがどうかしている。それくらいに呆れ返るほど乱読しているということであろう。
木村紅美の本は淡いから、そうなる。こんなことは以 . . . 本文を読む
J・A・バヨナ監督が14年ぶりに母国語であるスペイン語の映画を手がけた。ウルグアイからチリまでの飛行機に乗った45名の仲間たち。それはウルグアイのラグビーチームの遠征隊とそのサポーターである家族や友人たちである。(だから、英語ではなくスペイン語でなければならない)彼はハリウッドで大作映画を手掛けた実践と実績を経て、自分が一番やりたかった映画に挑む。大予算が必要な作品を娯楽映画としてではなく、ヒュー . . . 本文を読む