マイケル・ウインター・ボトムの新作。『イン・ディス・ワールド』に続き、今回もロードムービーのスタイルで、あれよあれよという間に場所とストーリーが移動していく。イギリスからパキスタンへ。そして、アメリカによる空爆が始まったアフガニスタンへと。興味半分での旅がとんでもないことになっていく。
アフガンに入ってから、徐々に状況が悪化していき、何とか逃げ出そうとするが、うまくいかず事態は混迷していく。 . . . 本文を読む
マーブルコミック映画化シリーズの新作『ゴーストライダー』を今頃見た。この映画は3月に公開され、後発の『スパイダーマン3』の大ヒットを尻目に(先陣を切るはずが)驚異の大不入りを記録し、消えていった作品である。こんなものを今頃再上映するのはホクテンザしかない!ということで、いつものように数人の客とわびしく見た。この映画にこの劇場はよく似合っていた。
映画自体は実はなかなか良く出来ている。ニコラス . . . 本文を読む
ダイアン・アーバスが写真を撮り始めるきっかけとなった出来事を描く幻想的なドラマ。これは彼女の自伝ではなく、彼女のイメージを映画化したという断り書きが最初にクレジットされる。現実と幻想のあわいに生きた彼女の世界を一つの事件を通して描いていくというスタイルは買うが、必ずしも上手くはいってない。
ひとつ上の階に引っ越してきた顔に包帯を巻く謎の男に心惹かれ、彼との付き合いを通して、現実世界から幻想の . . . 本文を読む
とても分かりやすく気持ちよく見れる作品に仕上がっている。さすがベテランの当麻さんは、ストーリーテラーだ。淀みなく男女7人の幻想的な小さな旅を見せる。ただし、結末部分は少し長くなりすぎた。説明的すぎて、そこまでのいいテンポを崩してしまうのは残念だ。
彼らが満月を見て、心震わせるとてもいいシーンで終わっても良かったのではないか。なのに、ここからが腕の見せ所とでも思ったのか、いくつもの事実を明るみ . . . 本文を読む
こういうタイプのエンタメは最近あまり見ないようにしている。正直言って時間の無駄だからだ。もちろんそれは僕にとってのことで、好きな人はどんどん見たらいい。なんら問題ないし、この手の作品を極めることも演劇の一つの正しいあり方だと思う。
昔、まだ全く観客から見向きもされていなかった頃の、新感線も、こういい方向で作品を作り続けていた。(今もあまり変わらないが)初期のつかこうへい作品から、オリジナルへ . . . 本文を読む
とてもよく出来ている。2時間程にコンパクトに纏めてあるのもいい。無駄は極力排除して、シンプルな構造にする。どうしてもこういう大作はへんなところに力が入り、独りよがりになりがちだが、さすがベテラン劇団は違う。大味になるとこういう善意の芝居は見てられなくなる。作り手の押し付けがましさが鼻に突き出したら最低で、目を覆いたくなるものが出来る。なのに本人たちは気付かなかったりする。自分たちは正義だなんて思 . . . 本文を読む
アクスピと鉛乃文檎による共同ユニット。というか、「いっしょに芝居やらへん?」という軽いノリで始めた公演に見える。行き当たりばったりで、いいかげん。だけどそれが、ただの身内受けをねらっただけのものにはならないのが、いい。軽やかなフットワークと確かな技術で安心して見ていられる作品になった。
全体は3部構成で、前半はアクスピによる『救世主伝説かぶとむし』。間に塚本さんによる紙芝居『かぶとむし団の冒 . . . 本文を読む
名作44本を選んでそこに描かれる名セリフを解説する本。なんでもない本だが、選考した作品が、とてもあたりまえのものばかりで、映画の入門書としても、よく出来ている。普通の人がまず見たらいい映画がセレクトされている。
読みながら、そういえば、昔こんな映画に夢中になったなぁ、なんて中学時代を懐かしく思い出していた。50年代以前の映画なんて、定番傑作が並び、昔は誰が見ても「いい映画」って確かにあったと . . . 本文を読む
こういうTVドラマのような緩い恋愛ドラマをわざわざ小説として読むなんて、めったにしないけど、手元に読む本がなかったから、ついつい読んでしまった。TVの連続ものなんて、もう何年も見た事がないけど、確かこんな感じだったなぁ、と懐かしく思いながらページを繰る。
30代後半の2人の女性の友情と、それぞれの年下男性との恋愛が描かれる。仕事、育児、将来への不安、といった誰もが抱えている悩みを描きながら、 . . . 本文を読む
昨年の日本映画ベストワン(このブログの、ですが)に輝いた『やわらかな生活』の広木隆一監督最新作。これを見逃すわけにはいかない。但し、かなり不安もあった。広木は昨年、本作のパート1でもある『恋する日曜日』も手掛けているが、それが期待に反してとても平凡な出来だった。同じ時期に撮った2本の間にこれだけのレベル差が出来たのはなぜか。明らかに作品への温度差が違う。台本と素材の差もあるが、それにしてもなぜそ . . . 本文を読む
園子温が2002年に撮った作品がようやく公開され、DVDにもなった。映画史に残る傑作『紀子の食卓』で大ブレイクする以前、今、この鬼才がその才能を遺憾なく発揮するきっかけを作ったのはきっとこの作品であったろう、と思わせる。そんな作品だ。
91年、バブルが弾けた後の日本で、無気力にただヌルイだけの毎日を過ごしている大学生シン(オダギリ・ジョー)が、ある日突然ニューヨークにやって来る。彼はただ、「 . . . 本文を読む
岩田ユキの長編第1作。豊島ミホの同名小説の映画化。一作年、原作を読んだ時、とても端々しい感銘を受けた。ノスタルジックなのに、決して懐古趣味ではない。地方都市の高校生たちを主人公にして、昔ながらの高校生活をとても自然なタッチで描くのだ。
まだ若い作者が、過去を懐かしむためではなく、等身大の「あの頃」としてリアルに描こうとしていたところに共感を抱いた。ことさら自分たちの高校生活を美化するでもなく . . . 本文を読む
過激で挑発的な『西瓜』とは違いこちらはとても分かりやすいストーリーラインを持ち、そこから一歩もはみ出す事もない。しかも、感傷的な映画になら、いくらでも出来る設定にもかかわらず、ツァイ・ミンリャンはそういうことは一切しない。
ピーター・ボクダノビッチの『ラスト・ショー』と同じ話なのだが、30年以上の歳月を経た今、この素材を扱った以上、あの甘く緩いだけの映画の二の舞は踏むはずがない。ラストショー . . . 本文を読む
僕が見たDプロは夫婦の静かな時間を描く3連作となっている。(『可児君の面会日』はあまり静かな時間とは言い難いし、『驟雨』だって妹が大騒ぎしているが、そんなことも含め静かな時間と敢えて認識したい)市井のなんでもない日々をさらりと描いた作品が並ぶ。それを深津篤史は特別何の工夫もなく、そのまんま舞台に乗せていく。単調でつまらないものになり兼ねないのに、当然そうはならない。そっけないくらいにさりげない。 . . . 本文を読む
2部構成、3時間の大作。45年、62年、95年という3つの時代を描く。京城(ソウル)から長崎浦上に戻ってきた4姉妹(と生まれたばかりの弟)の歴史が綴られていく。大掛かりな舞台装置は見事。電動式で回転する円形舞台を中心にして、上手の奥、2階部分といくつものアクティングエリアを用意して、重層的なドラマを見せていく。それらの空間を縦横に使い、いくつものシーンを断片的に見せていくことになる。
松田正 . . . 本文を読む