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映画・演劇のレビュー

広小路尚祈『ある日の、タクシー』

2024-09-30 05:34:00 | その他
先日見た『パリタクシー』が素晴らしかったけど、元タクシー運転手でもある広小路さんの新作は久々にタクシードライバーが主人公。12のさまざまな場所が舞台になるエピソードが綴られる。   伊勢から始まり、飛騨高山まで。ご当地タクシー運転手がお客さんを乗せて旅のお供をする。僕も行ったことがある場所がかなりの確率で出てきたからなんだか楽しい。   流しのタクシーではなく、お迎えし . . . 本文を読む
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川本三郎『遠い声 浜辺のパラソル』

2024-09-30 04:37:00 | その他
町歩きが好きだ。知らない町をふらふらと何のあてもなく歩いて行くとさまざまな光景に出会う。たった一人で知らない町に身を任せる。ここで暮らす自分を夢想する。町には生活の匂いがする。幻の自分はそこに一瞬紛れ混む。朝と夕暮れがいい。早朝のまだ人々の活動が始まる前の町。あるいは夕暮れの人々が帰りに就く前の町。もちろん真昼の人通りの少ない場所や時間もいい。人恋しいくせに、人が煩わしい。わがままなのだ。これは映 . . . 本文を読む
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『憐れみの3章』

2024-09-29 21:08:00 | 映画
こんな狂った映画が堂々と全国公開でロードショーされる。これは普通ならミニシアターでひっそりと公開されるべき作品である。だが今年、エマ・ストーンが主演でアカデミー賞で注目された『哀れなるものたち』のコンビの新作だからこういう形で公開したのだろうが、もともとヨルゴス・ランティモス監督はマニアックな映画を作る変人だ。前作だって大作だけどアカデミー賞に引っかかるようなメジャー映画ではない。   . . . 本文を読む
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名取佐和子『銀河の図書館』

2024-09-29 05:27:00 | その他
名取佐和子の新作は、今回もまた図書館が舞台だ。このタイトルだし、期待しかない。前作『図書室のはこぶね』の続編であり、もちろん野亜高校の図書室が舞台である。ただお話も登場人物も変わるけど。イーハトー部の活動は図書室でされる。宮澤賢治さんの研究をする弱小同好会。部員は新入生の女子1名を入れて4人。しかも部長である風見さんは不登校でずっと不在。主人公は2年になったばかりのチカ。彼は不本意なままこの高校に . . . 本文を読む
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『西湖畔に生きる』

2024-09-28 06:24:00 | 映画
『春江水暖』で世界からも、もちろん僕からも注目された中国のグー・シャオガン監督の第2作。予告通りの山水画シリーズの第2作。だけどまるで前作とは違うタッチの作品になっていて、戸惑う。お話はリアルではなくある種の寓話で、極端なデフォルメがなされている。だからお話に違和感を感じてなかなか受け入れ難い。リアルとシュールのバランスがわからないのだ。母親の地獄めぐりと彼女を救済するために息子もまたその地獄を体 . . . 本文を読む
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中之島に鼬を放つ『中之島デリバティブⅢ』

2024-09-28 06:16:00 | 演劇
今年で3年目になるという極東退屈道場、林慎一郎による中之島芸術センター主催ライブ・パフォーマンス。前2作は見逃したので今回初めて参加する。なんと2時間20分に及ぶ大作である。この企画の完結編であり、前作の流れを踏襲する。もちろん単体でも楽しめるようになっている。 最初の40分は、劇場内でのお芝居だが、そこからはホールを出て、センター内から夜の街をクルージング。1時間の後、再びホールに戻って来て、 . . . 本文を読む
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『ビートルジュース ビートルジュース』

2024-09-28 05:26:00 | 映画
なんと36年ぶりの続編である。ありえないスパンで製作された。世の中にはもうこんな映画があったことなんか忘れられている。それをティム・バートン監督だけでなく、マイケル・キートンが演じるし、ウィノラ・ライダーもちゃんと出て復活させる。役者のふたりはあの頃に戻って演じた。年齢を感じさせない。そんな3人が再結集しての続編である。相変わらずのハイテンションは健在。70代になっても変わらない。まぁ、ビートルジ . . . 本文を読む
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『五目少女』

2024-09-26 20:43:26 | 映画
ペク・スンファ監督。2017年作品。58分という上映時間は長編劇映画としてはかなり短いけど堂々たる作品である。元囲碁の天才、イ・パドゥク(=囲碁という意味らしい。囲碁をするために生まれてきた!)は幼いころからその才能を発揮して成長した。だけど1度の挫折から囲碁ができなくなる。今は碁会所でバイトする日々。演じるパク・セワンがキュートでかわいい。お供の小学生とふたりで、起死回生、五目並べに挑む。 軽 . . . 本文を読む
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小林光恵『ナイチンゲール7世』

2024-09-26 06:33:00 | その他
ルパン3世の看護師版みたいなタイトルで内容もそんな感じです。痛快な医療ものを期待して読み始めたけど、残念だがあまり弾まない。これは文体の問題だと思います。会話中心だからキャラクターが立たない。お話は今医療現場で問題になっているタイムリーなことばかりだけど、切り込みが浅いからあまり驚きはない。天才看護師ナイチンを中心にしたチームも個性が際立っていないのも残念。エンタメのはずなのに、爽快感がない。 . . . 本文を読む
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『森の中のレストラン』

2024-09-25 22:55:00 | 映画
今日本ではこんな感じの映画がたくさん作られて公開されている。自主映画に毛が生えたような長編劇映画が量産されて誰にも知られないまま消えていく。もちろんその中には傑作だって隠れている(かもしれない。)誰かが発見することで日の目を見ることもあるだろうけど、ほとんどは見るに値しないか、わざわざ見るたびに疲れてしまうものばかり。Amazonプライムではそんな膨大な素人もどきの映画が配信されている。 これは . . . 本文を読む
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『マッシブ・タレント』

2024-09-25 22:41:00 | 映画
偉大な俳優、ニコラス・ケイジ。数々の傑作映画に出て素晴らしい演技を見せた名優。と、書いたっていいけど、失笑を買うことだろう。今は断ることなく90分程度のB級映画を量産している。だけどニコラスは凄い。こんな映画を自分から作ってしまう。自虐ネタを使ってここまで遊ぶ尽くすのは普通じゃない。しかもただのB級ではない。かなりの大作仕様で、これだけの仕掛けを用意できるって凄い。自らのキャリアを使って笑いをとり . . . 本文を読む
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『ぼくのお日さま』

2024-09-25 05:29:00 | 映画
こんな小さな話でいい。この若い監督は自分がやりたいものに誠実に向かう。小さく収めようとするんじゃない。小さな世界を大切にするんだ。90分という上映時間もそう。スクリーンサイズにスタンダード・サイズを選んだのも。もちろん登場人物の少なさも。これは『僕はイエス様が嫌い』で第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞した奥山大史が今回も監督・脚本・撮影・編集を手がけ、池松壮亮を主演に迎えて . . . 本文を読む
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谷川俊太郎『からだに従う』③

2024-09-25 04:55:00 | その他
いつまでこれを読んでいるのか、と思うが、仕方ない。まだ読んでいる。ようやく老いに辿り着く。最後のエピソードは2001年の4月、朝日新聞に書いた『風穴をあける』という文章。その時、彼は70歳。詩について書いた文である。これを最後に持ってきたのは作為的な選択だろう。   僕はこれを読んでいる間に、他の本は5冊読み終えている。基本通勤用にして読んだからこれだけの時間かかった。20代から70 . . . 本文を読む
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谷川直子『その朝は、あっさりと』

2024-09-25 04:44:00 | その他
これは強烈な作品だ。介護を描くハートウォーミング家族小説か、と油断していた。甘い物語かと高を括っていた。リアルでシビアな老人介護、看取りが描かれる。90代の頑固なジジイを介護する80代の妻と子どもたち。   長年教師をしていた頑固老人が認知症になり、徘徊、というところからスタートする。次の章『トイレ地獄』は強烈だ。ウンチまみれ、オシメに放尿すること。他人事ではない。それは明日の自分を . . . 本文を読む
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風祭千『真夜中を切り裂け!』

2024-09-23 08:59:00 | その他
サブタイトルに『僕らをつなぐビブリオバトル』とあるからビブリオバトルを描く部活小説なのかと思ったが、少し違う。確かに高校の文芸部が舞台になるし、部活動でビブリオバトルを繰り返すけど、メインになるのは、クラスメイトからのイジメである。昔なかよしだった友人が高校に入って同じクラスになった時、わけもなく、一方的な虐めを始める。しかもピンポイントで彼だけを、みんながいるところで。授業中だってお構いなしに。 . . . 本文を読む
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