習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『シグナル100』

2020-01-30 21:02:57 | 映画
こういう映画を今作っても全く観客の支持を得ない。今更『バトルロワイヤル』って、どうよ、ときっとみんなも思ったはずだ。36人のクラスメートの高校生たちが殺し合いをする24時間限定バトル。それを88分ノンストップで見せていく。残酷なシーンは山盛りあって、何度となく目を逸らさずにはいられない。 コミック原作のお話には全く説得力はなく、目先のショックシーンの連打だけで、ここにはまともなストーリーはない。 . . . 本文を読む
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烏丸ストロークロック『まほろばの景 2020』

2020-01-30 20:54:23 | 演劇
2年前の初演も見ている。緊張感ある素晴らしい舞台だった。いささか観念的で、難しい芝居だったが、お話としてではなく感覚的に伝わってくる。震災によっていろんなものを失い、これから先どう生きたらいいのかに不安を抱える人たちの姿を、1人の青年が山に入るという行為を通してあぶり出していく。今回のほうがわかりやすい。 もともとはワークショップで作られた短編だった。それを様々な人たちへの取材を通して膨らませて . . . 本文を読む
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レトルト内閣『モダンガールはネコを探して』

2020-01-30 20:44:47 | 演劇
今回のレトルト内閣はとっても軽い。この軽やかさは彼らの持ち味で、ヒロインの福田恵の「わたし、調べます!」という一言で話が弾んでいくのがとても心地よい。お嬢さん探偵のささやかな大冒険というパッケージングだ。 だけど、いつのまにか、彼女は、周囲に対して疑心暗鬼に陥ることになる。なんだか自分だけがみんなから騙されているのでないか、と。そんなふうにして軽いタッチからいささか重苦しいタッチへの微妙な変化を . . . 本文を読む
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コンブリ団『紙屋悦子の青春』

2020-01-27 20:59:48 | 演劇
とても丁寧に作られた作品だ。最初から最後まで慈しむように作られてある。作品に対する愛情がしっかり伝わってくる。ある場所、ある時代を確かに生きたこと。それが戦争の時代でなくとも構わない。彼らはそこにいる。自分たちの生を全うしたこと。それだけが大切で、それだけをちゃんと描けたならいい。そういう作り手の意図を明確にするために具象的な舞台美術にはしなかった。この一見何もないような空間は、シンプルで清潔。彼 . . . 本文を読む
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今村夏子『むらさきのスカートの女』

2020-01-27 20:46:52 | その他
とても怪しい女がいる。そして、そんな彼女のことがとても気になる女がいる。彼女を尾行して、彼女の行動を観察して、できることなら、彼女とさりげなく言葉を交わして、友だちになりたいと思っている。それっていったいどういう心境なのか。わけがわからない。そんな異常者2人を読者である僕たちも見守っていくことになる。終盤で、ふたりはもしかしたら同一人物なのではないか、と一瞬不安になるが、(そういうオチはつまらない . . . 本文を読む
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『リチャード・ジュエル』

2020-01-27 20:33:23 | 映画
毎年1本ずつ新作を作り続けるイーストウッド。しかも、さまざまなジャンルに挑戦している。80代の後半を過ぎても衰えることなく旺盛なその意欲と気力と体力には恐れ入る。凄すぎる。静かな怒りを秘めたこの作品はこれだけの力作であるにもかかわらず、気負うことなくさらりと作り上げる。そこには悲壮感はない。これが最後の映画になるかもしれないという気負いはさらさらない。これからも毎年1作をずっと続けていきそうな勢い . . . 本文を読む
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『ラストレター』

2020-01-17 22:38:53 | 映画
まだ今年に入って映画館では1本しか見ていないのだけど、この映画は見る前から今年のベストワンだと決めていた。公開初日の今日さっそく見てきたのだが(だからこれでまだ今年映画は2本目)、やっぱりこれがベストワンだと確信した。すばらしい映画だ。 思い描いていた映画とは少し違ったけど、これでいいと思った。予想を心地よく裏切られた。原作小説を読んだとき、「これが映画化されたらいいな」と思っていた。もちろん書 . . . 本文を読む
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藤野恵美『涙をなくした君に』

2020-01-15 21:19:04 | その他
小学1年生になったばかりの息子を持つ母親が主人公だ。どこにでもいそうな家族。夫はテニスのプロだったが、今は自分たちのために生きてくれている。彼はかってテニスで世界中を回っていたが、自分の才能に見切りを付けて、今はインストラクターをしている。そんな優しい夫とは当然育児と家事を分担している。そして、彼女はちゃんと仕事もバリバリこなす。何不自由ない理想的な暮らし。何一つ文句のつけようのない日々。だけど、 . . . 本文を読む
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『パラサイト 半地下の家族』

2020-01-15 21:10:50 | 映画
圧倒的な面白さでグイグイ引っ張ってくれる。さすがポン・ジュノだ。ジェットコースターにでも乗せられた状態で、作品世界に一気に引き込まれていく。こんなバカバカしいことはありえないだろ、と思いつつも、乗せられる。貧富の差を、まず、半地下という空間で提示し、そこにあからさまな豪邸を対比させるところからお話を紡ぎ出す。笑いとスリル、意外性で文句のない作品か、と思わせる。 だが、途中から「これはちょっとやり . . . 本文を読む
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劇団冬の甲子園『MAGIC』

2020-01-15 21:01:59 | 演劇
作り手は、まず観客に面白いお話を見せたいのだな、ということは伝わってくるのだけど、その見せ方や描き方がちょっと拙いから、乗り切れない。どんなに嘘くさい話でも勢いに乗せて冗談のように飛ばしてくれたなら、笑いながら見ていられるのだけど、それもない。 クライマックスに向けて緊張感を持続できないし、見せ場となるはずの、6時間生放送を乗り切れるのか、という部分もまるでサスペンスを感じさせないまま終わるのに . . . 本文を読む
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『スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け』

2020-01-01 20:06:26 | 映画
『スターウォーズ』の第1作を見た時の感動は忘れない。アメリカでの公開から1年。待ち続けてようやく日本での上映が始まり、熱狂の中での対面となった。あの夏からもう40年ほどの月日が過ぎたのだ。 こういうシンプルな娯楽活劇を求めていたのだ。この大冒険映画に拍手した。(じつは、スピルバーグの『未知との遭遇』のほうがすっとすごいじゃないか、と当時は思ったのだけど。それは今は言わない)続く『帝国の逆襲』もお . . . 本文を読む
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『家族を想うとき』

2020-01-01 16:15:57 | 映画
ケン・ローチが引退を撤回して作ったこの熱い映画を目のあたりにして、作りたいもののためなら、いくつになっても立ち上がり、立ち向かっていこうとする彼の姿に感動した。年老いてもやりたいことがあり、訴えたいことがあったなら、こんなにも力強く、優しい映画が作れるのだ。そんなあたりまえのことを改めて教えられた。 前作である『わたしはダニエル・ブレイク』は僕にはちょっと納得がいかなかった。問題意識はわかるけど . . . 本文を読む
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